インタビュー
18年の時を経て蘇る「マフィア」,開発者メールインタビュー。オリジナルの雰囲気はそのままに,最新技術でより楽しめるように
2Kのクライムアクション「マフィア」シリーズだが,その最初の作品である「マフィア」は2002年に発売された。その後,2010年に「マフィア II」(PC / PS4 / Xbox One),2016年に「マフィア III」(PC / PS4 / Xbox One)と順調にシリーズを積み重ねている。
初代「マフィア」は各国のゲームメディアから非常に高い評価を受け,当時の4Gamerプレイレビューでも「マストバイ!」と言い放ったほどのタイトルだった。日本でも2003年にズーから日本語版が発売されたが,既に終売となっており,手に入れるのは難しい。Steamで配信されてはいるのだが,こちらは日本語が含まれていないため,少々ハードルが高い。また海外ではPS2/Xboxでもリリースされたが,日本では未発売のため,こちらも同様にハードルは高いだろう。
そんな状況にあった「マフィア」が,2020年9月25日にリメイク版「マフィア コンプリート エディション」(PC / PS4 / Xbox One)として発売される。それに先立って,開発元であるHangar 13のヘッドデザイナー アレックス・コックス氏(Alex Cox氏)にメールインタビューを行う機会を得た。「マフィア コンプリート エディション」に関して気になるあれやこれやを聞いてみたので,ぜひとも一読してほしい。
4Gamer:
9月25日に発売する「マフィア コンプリート エディション」は,初代「マフィア」のリメイク作品とのことですが,どのようにリメイクされたのでしょうか。
初代「マフィア」を改めて見て,とても懐かしい気持ちになりました! ゲーム業界は目まぐるしく変化しますし,「マフィア」はもう20年近く前の作品ですからね。
作品の根幹であるストーリーやキャラクター,そして設定には,2020年になっても変わらない魅力がありますが,2002年の技術とプレイ感は今の感覚で見るとかなり古い印象です。初代「マフィア」の開発に携わっていたりファンだったりした開発チームでさえ,評価するためのプレイ中にかなり苦戦させられる場面もありました。ただ,私たちはこれをチャンスだと捉えました。
初代「マフィア」は古い作品で,今やプレイできる人も少ないのが現実です。何百万人ものファンの方々が,後続タイトルである「マフィア II」や「マフィア III」から「マフィア」シリーズを知り,初代「マフィア」をプレイしていないということもわかっています。その方たちはきっと,シリーズ第1作である初代「マフィア」をプレイしてみたいはずだと考えました。
開発プロセスは,初代「マフィア」を分析して残すものと変更するものを割り出すだけでなく,ただのコピーに留まらず,いかにして初代「マフィア」のファンにも新しいものを提供できるかを考えるところから始まりました。
リメイク版の設計図が出来上がったところで,実際にゲームの制作に取り掛かりました。具体的には,ストーリーをいかにして再現するかということです。脚本の書き直し,新キャストの選定,ムービーの撮影を行ったため,この段階がリメイク版制作にあたってもっとも複雑で,気を使わなければならない工程だったかもしれません。初代「マフィア」のストーリーに思い入れのあるファンの方がとても多いため,しっかりと時間を割きました。
4Gamer:
その魅力的なストーリーと,雰囲気を再現した街並みなどで「マフィア」は,当時高い評価を得ましたが,改めてリメイクされた本作でウリとなる部分を教えてください。
コックス氏:
ゼロから「マフィア」を作り直し,すべての要素を大幅に改良することで,今のプレイヤーが楽しめる作品に仕上がっています。ストーリーやキャラクター,初代「マフィア」の雰囲気はそのままに,脚本を業界でも最高水準のストーリーに昇華させるために大幅に書き直し,全てのムービーを新キャストと,最新のモーションキャプチャー技術で撮り直しています。
サウンドトラックも再収録し長さが倍以上になっただけでなく,ゲームの状況に応じて曲の激しさも変化させることができるようになりました。ロスト・ヘヴンの街は,2002年のものよりはるかに細かく描写されています。
建築物や街ゆく人々や車両は,あらためて時代考証をしっかりと行っています。細かいディテールまで描画されているだけでなく,バリエーションも増え,状況に応じて変わるようになりました。
そして,改善されたグラフィックスデザイン,ライティング,雰囲気で初代「マフィア」の全てのミッションをプレイできるようになっています。
ストーリーとグラフィックスに加え,ゲームプレイも刷新しました。初代「マフィア」のシステムは非常に古いものですから,シューティングのアクションとシステムを「マフィア III」のものに変更し,今日のプレイヤーに馴染みのあるゲーム体験になるよう調整しています。
4Gamer:
「マフィア コンプリート・エディション」で追加された要素について教えてください。
コックス氏:
「マフィア コンプリート・エディション」は基本的に初代「マフィア」に忠実なリメイクなのですが,いくつか手を加えている部分もあります。まず,全てのミッションの細部を調整し,新たなシーンやクリア条件,チャレンジ要素が追加されています。他のキャラクターと会話するシーンも増えていますね。例えば主人公のトミーがロスト・ヘヴンの街を運転しながら仲間と会話するようになったことで,ストーリーにかなりディテールが加わりました。
他には,「マフィア」シリーズとして初めてバイクに乗れるようになっています。加えて,「マフィア II」「マフィア III」にはなかった,初代「マフィア」の要素をいくつか復活させています。例えば,全ての乗り物をマニュアルで運転できる機能や,自動的に制限速度に従うようにする「スピードリミッター」スイッチなどです。これらの機能はオプション画面でオン/オフを切り替えられ,プレイヤーが好みの設定でプレイできるようになっています。
4Gamer:
リメイクにあたって気をつけた部分はなんでしょう。
コックス氏:
2002年に発売された「マフィア」は,ムービーシーンを用いたストーリー展開をスタンダードとする当時のゲームのスタイルを確立するきっかけとなった作品です。ですから,私たちはストーリーと映画のような演出のクオリティを高めることに注力しました。
ファンの皆さんは特にストーリーとキャラクターたちに思い入れがあることもわかっていましたので,最新技術を活用してムービーシーンのキャラクターグラフィックス,脚本,モーションキャプチャーといった撮影術の改善に取り組みました。何かを変更するたびに初代「マフィア」ファンに愛されていた要素が変わってしまうリスクが発生しますから,バランスの取り方が難しかったです。
もう一つこだわったのは,リメイク版のゲームプレイを誰でも楽しめるものにすることです。初代「マフィア」のシステムや機能はかなり古く,現在のプレイヤーにとっては非常にとっつきにくいものです。2020年の主流なゲームに慣れたプレイヤーにこの作品を楽しんでもらうためには,大幅な変更を加える必要があることは明白でした。そこで「マフィア III」のゲームエンジンを採用し,現在のゲーマーに馴染みのあるハイクオリティなゲームプレイ・システムを導入しています。
4Gamer:
初代「マフィア」は60種類の車と12平方キロメートルの街も当時を再現する魅力的なものでしたが,本作でも車の種類と街の広さは同じなのでしょうか。
コックス氏:
初代「マフィア」にあった乗り物はほとんど再登場しますし,新しいものも追加しています。正確な数はわかりませんが,50種類以上あることは確かです。車両は1930年代当時に使われていたヴィンテージ・モデルのような走りを再現していますし,モデルを作り直しましたので見た目も素晴らしいです。
このゲームのストーリーは1930年から1938年の8年間にわたって展開されるのですが,街中を走っている車の種類も時代が進むにつれ変わってきます。ミッションを進めると,より新しいモデルが登場するようになりますよ。
リメイク版ロスト・ヘヴンのモデリングは,初代「マフィア」を忠実に再現したものです。より快適に運転できるよう道路網に少し手を加え,いくつかのミッションで使うロケーションを移動させていますが,街のレイアウト自体はほとんど変わっていません。街の外はかなり拡大されていますので,マップ自体は全体的に大きくなっています。
4Gamer:
なぜ新作の4を開発するのではなく,初代をリメイクすることになったのでしょうか。
コックス氏:
「マフィア III」の開発終了後,私たちはまずシリーズ以外に開発してみたいゲームのアイデアを探り始めました。現在開発を進めている新しいプロジェクトがあるのですが(詳細は残念ながらまだお話できません!),「マフィア III」の発売後はそちらに1年ほど集中する必要がありました。
再び「マフィア」シリーズに目を向ける余裕が出てきた頃に「次は三部作を1つのプラットフォームでプレイできるようにしよう」と決め,シリーズ3作品のコンプリート・エディションを収録した「マフィア トリロジーパック」を作ることになりました。
3作品の中では,全く新しい作品として生まれ変わり,シリーズをプレイし始めた方にとっては新鮮なストーリーを楽しめる初代「マフィア」のリメイクが最大の目玉だと思います。「マフィア トリロジーパック」の後のことは,まだあまり考えていないですね。この世界で描ける物語はまだまだありますので,私としてはいつか続編も作りたいと思っています。
4Gamer:
そもそも初代作品ではなぜ「マフィア」という題材が選ばれたのでしょう。
コックス氏:
これは私よりも,初代「マフィア」のライター兼ディレクターを務めたダン・ヴァーヴラ向けの質問だと思います。彼はもうずいぶん前にスタジオを離れましたが,私たちが2020年になってもシリーズ作品を開発できるのは,初代「マフィア」が確立したフォーマットで,今も印象深いゲーム体験を作り出せるからこそでしょう。
「マフィア」シリーズの主人公たちはギャングの中でもいわゆる負け犬で,自分たちを抑え込もうとする既存の体制に対抗する存在です。また,犯罪の世界は,多くのゲーマーにとって非日常を安全に体験できる魅力的な舞台です。さらに時をさかのぼり,各年代に流行した音楽,車,ファッションや,歴史的なテーマを楽しめるのも,このシリーズの魅力と言えるでしょう。「マフィア」シリーズは,いつかこういった要素がゲーマーを惹き付けられなくなった時に終わると思いますが,まだまだその気配はありませんね!
4Gamer:
日本のファンへのメッセージをお願いします。
コックス氏:
「マフィア」クライム・サーガの名作を,新たな世代のプレイヤーに手に取っていただけることをとても嬉しく思います。日本の「マフィア」ファンの皆さん,いつも応援ありがとうございます!この機会に,ぜひ本シリーズの原点である1作目をお楽しみください!
「マフィア コンプリート・エディション」公式サイト
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