プレイレポート
「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」プレイレポート。吸血鬼が人と共存する世界で起こる,謎に満ちた事件を追うサスペンスADV
「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」は,Big Bad Wolfが開発を担当し,海外ではNaconより販売されている「Vampire: The Masquerade - Swansong」のコンシューマ向け日本語版だ。「会話」をメインとしたシステムとゲーム進行になっており,立場の異なる3人のヴァンパイアの視点で“とある事件”を追うことになる。
本作の世界設定のベースとなるのは,テーブルトークRPG「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」(Vampire: The Masquerade)シリーズである。近年はビジュアルノベルゲーム「ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟」(PC / PS4 / Switch。原題「Vampire: The Masquerade - Coteries of New York」)や,バトルロイヤルゲーム「Vampire: The Masquerade - Bloodhunt」,開発中のアクションRPG「Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2」(PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)など,PC/コンシューマゲームの展開が活発だ。果たして,“オープンシナリオ・アドベンチャー”を謳う本作は,どのようなゲームになっているのか。
「ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング」公式サイト
吸血鬼たちの“掟”が破られて始まるストーリー
特殊能力を使って嘘と真実を見極める会話バトル
ヴァンパイア:ザ・マスカレードの世界では,人間とヴァンパイア(吸血鬼)が共存しており,八重歯が尖っていることを除けば,人間と見分けがつかない容姿であることが多い。基本的にヴァンパイアも何らかの職に就き,人間と変わらぬ生活を送っている。
ただ,ヴァンパイアたちも一枚岩ではなく,複数の氏族に分かれ,派閥のようなものを形成している。あるとき,氏族間で協定を結ぶ意味合いのパーティーを開くことになったのだが,そのパーティーで,あろうことか,「コード・レッド」が発令される。
コード・レッドとは,ヴァンパイアたちの間での最上級の警戒信号であり,ヴァンパイアに何らかの危機が迫ったとき,それを察知した者が一族に向けて発するものだ。「家なんか放っぽりだして,今すぐ安全な場所に避難して!」といった感じだろうか。
パーティー会場とは連絡がとれず,コード・レッドを発した者も行方不明。現場で複数の殺人があったのは確かなようだが,事態の把握がまったくできていない状態にあるというわけだ。
このパーティーを主催したのはヴァンパイアの一族であり,自分たちの存在を人間から隠す「マスカレード」という掟を施行しているヘーゼル・アイヴァーセン公子。今回の事件はその掟が破られたものであり,それが自身の主催するパーティーで行われたわけで,アイヴァーセン公子にしてみれば2つの意味で面目を潰された格好になる。
掟を破った者には“滅び”を──この事件を引き起こした者には,ヴァンパイアにとっての“死”が処されることになった。
前置きが長くなったが,この事件の真相を,公子の臣下とも言える3人のヴァンパイアたちの視点で追っていくのが本作の物語となる。
最初に操作することになるのはエメム。物語の冒頭で,コード・レッドの発令を聞いた女性のヴァンパイアだ。
知人のジャーニー・アトキンスがパーティー会場のセッティングを担当していたようで,彼女と話をすると「パーティー会場でもし何かあれば,飛ぶのは私の首だ」と焦っている様子。2人は親しい間柄らしく,エメムは「ジャーニーに非はない」と信じているのだが,アイヴァーセン公子はそうではない。エメムは板挟みになる形で,ジャーニーに最も近いヴァンパイアとしての立場から事件を追う形になる。
エメムのパートは,スキルを使った会話や,残り香からその人物を追う特殊能力の使い方,人間から「吸血」するといったゲームの基本的な進め方や,ヴァンパイアとしての立ち回りの基礎を学ぶチュートリアルのようなスタートとなっている。
重要な会話では,スキルを使った“戦い”になる。スキルの使用には「意志」を消費し,その消費量は自身で調節できる。多く消費することで成功率を高められるが,「意志」ゲージが尽きるとスキルが使えなくなるため,その後の会話で不利になるといった状況が発生する。
スキルによる会話は本作の肝となる要素だが,さらに「対決」という会話もある。通常の会話バトルとは異なり,この結果はその後のストーリー展開に関係してくるのだ。
選択肢で話が分岐するというゲームは珍しいものではないが,本作の場合,選択したうえで,その選択が成功するかどうかの会話で勝利しなくてはいけない。つまり,勝負に負けてしまうと,選択した結果へ導くことができなくなるというわけだ。
こうした基本操作を学びつつ,エメムのパートをクリアすると,2人目の主人公,,レイシャのパートに入る。レイシャは姿を消す特殊能力が使えるヴァンパイアで,他者に見つかるとマズい場所へもガンガン侵入していけるのが特徴だ。
また,予知能力も持っており,その能力ゆえに公子に目をかけられている。……のだが,その能力は不安定で,予知の内容も意味不明すぎて本人ですらよく分かっていない。もちろん,プレイヤーにもよく分からない。
レイシャのパートが終わると,3人目のガレブのパートに。ほかの2人とは異なり,落ち着きのあるダンディな男性ヴァンパイアとなる。ときにFBI捜査官に成りすまし,事件現場に堂々と立ち入るなど大胆な動きを見せるが,かつて自分が噛んだことでヴァンパイア一族となったベレル・アンダーウッドという男との仲が良くないようで,今回の事件に彼が関わっていないことを祈りながらの捜査となる。
こうして3人のパートが一巡すると,その章(ゲーム中では,章の区切りは「レベル」と表現される)のクリアとなり,次の章へと進む。各パートのクリア時には「概要」と呼ばれるリザルト画面のようなものが表示され,プレイヤーの行動によって経験値が入る。この経験値をスキルに割り振っていくというわけだ。毎章,こんな感じで3人のパートを順に進めていくことになる。
TRPGシリーズがベースで,さらに“続きモノ”というところで,「本作から始めても楽しめるのか?」が気になる人は少なくないだろう。
正直なところ,本作の世界設定や登場人物たちの関係性などにはかなり説明不足なところがあり,ゲーム開始直後から,見たことのない海外ドラマを途中から観させられているかのような置いてけぼり感があったことは否めない。とくに本作は会話シーンが長時間を占めるため,序盤はとくに「分からない話を延々と見せられている」という感覚が強かった。
メニュー画面から文書ファイルを読んでいくことである程度は補完できるのだが,固有名詞が非常に多く,完全な理解は困難を極めるだろう。大元のTRPGシリーズのプレイヤーや前作(ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟)をプレイした人であればまた印象は異なるのだろうが,シリーズ未経験者だと,メニュー画面から読める解説を熟読しないと理解できないという取っ付きにくさがあった。「今やるべきこと」をいつでも確認できるのだが,その内容が漠然としすぎており,どこへ向かって何をすればいいのか分かりにくい。このあたりも昨今のゲームに比べるとやや不親切に感じる。
気になる翻訳の精度だが,脱字や男性/女性の言い回しの間違いといった細かいミスが見受けられた。プレイしたのは発売前のものであり,今後のアップデートで修正されるとは思うが,会話がメインなゲームなだけに気になる点だ。
このように,入りにくさを感じる部分や気になる点があるゲームではあるが,世界観を理解し,登場人物たちの関係性が把握できるようになると,だいぶ印象が変わる。
ネタバレを避けるため詳しくは伝えられないが,ヴァンパイアたちの社会で発生した事件の謎に迫っていく過程がなんとも言えない牽引力のある展開で,見たことのない海外ドラマのようだった物語が,いつしかどんどん進めたくなるようなものへと変わるのである。
物語が進むと会話以外の要素も増えていくので,ゲームとしてもプレイ感覚が変わっていくところも好印象だ。
また,アクション性はない分「操作が難しくて行き詰まる」という心配はない。会話バトルの結果が振るわなかったり,各パートでの調査が不完全だったりしても物語が進んでいくことが多いため,世界観にどっぷりと浸りつつ,謎解きを楽しみながら物語を進められるのも大きな特徴だ。
最初は思ったように話を進められないと感じるかもしれないが,ミスなく進めることを頑張るよりも,その結果でどう物語が展開するかを見届けることが面白い。このあたりが,本作が「オープンシナリオ・アドベンチャー」と称される所以だろう。
基本的に「会話」と「移動」に終始するため派手さはないが,「ヴァンパイア世界の政治劇」という珍しいタイプのストーリーと,テーブルトークRPGのような成否判定による会話バトルは新鮮なものがある。スロースターターではあるが,奇妙な魅力を持ったゲームなので,本稿を読んで興味を持った人は,ぜひ触れてみてほしい。
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