インタビュー
「ライザのアトリエ2〜失われた伝承と秘密の妖精〜」では,夏の青春を再び描く。細井プロデューサーに初の主人公続投で目指すところを聞いた
「ライザ2」は前作の3年後を舞台に,ライザが引き続き主人公を務める。これは「アトリエ」シリーズとしては初の試みだ。
本作がどのようなタイトルになるのか,プロデューサーの細井順三氏に話を聞いた。
キャラクターデザインで注目を集め,ゲームシステムも評価。「ライザのアトリエ」は歴代最高の売上に
4Gamer:
よろしくお願いします。「ライザ2」が発表となりましたが,まずは前作について聞かせてください。発売後の評判はいかがでしたか?
おかげさまで発売直後だけではなく,継続して売上が伸び,「アトリエ」シリーズ最高記録を達成できました。
これまでの「アトリエ」シリーズでは,新しいハードウェアで初めて発売したシリーズの販売数が伸びる傾向がありましたが,そうではなく,「ライザのアトリエ」は異例の伸びでした。ユーザーさんをはじめとする皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。
4Gamer:
「ライザのアトリエ」が注目された大きな要因の一つは,間違いなくトリダモノさんのイラストだと思うんです。しかし,キャラクター推しのタイトルは,販売傾向として初動型になりがちですよね。発売後に伸びていった要因はどこにあったと考えていますか?
細井氏:
キャラクターデザインの力もあり,そこから多くの新しいユーザーさんが手に取ってくださったのは確かです。コスプレイヤーさんやイラストレーターさんにもライザを取り上げていただくなど,早い段階から注目していただけました。
一方でキャラクターだけでなく,ゲーム部分も受け入れてもらえたことが,発売後にも遊んでいただけた要因だと考えています。戦闘や調合システムの見直しなど,さまざまな取り組みをしましたが,そうした部分で新しいユーザーさんに「アトリエって絵だけじゃないんだ」と伝わった結果ではないかなと。
4Gamer:
なるほど,システム面でも好評だったんですね。
細井氏:
ただプロデューサーの立場としては,「ライザのアトリエ」が発表される前も,発表されてからも正直なところずっと怖かったです。
ファンタジーを題材としたゲームは多いですが,日本的な夏の雰囲気をフィーチャーしたものはあまり存在しません。言い換えれば,日本的な夏の感覚で世界に勝負をかけるわけですから,これはチャレンジでしたね。
再び描かれる「夏の思い出」
4Gamer:
これまでの「アトリエ」シリーズは,続編などでは前作の主人公が師匠やサブキャラクターのポジションになるのが定番でしたが,「ライザ2」はライザが主人公を続投するのには驚きました。
細井氏:
「アトリエ」シリーズのひとつの魅力は「キャラクターたちが歳を重ね成長していくこと」にあると思っています。ですから,従来の方向性ももちろん考えましたが,1人の主人公でこの「ひと夏の思い出」というテーマを描いてみたいという想いもあったんです。
4Gamer:
以前インタビューしたときも,主人公続投の考えについてはお話しされていましたね(関連記事)。
細井氏:
主人公続投に関しては,1作目の企画当初からそういう考えでした。ただ,皆さんから「売上が良かったから続投したのか?」といったご質問もよくいただきますが,それも事実です。私達がいくら望んでも,皆さんに支持される主人公でなければ,続投という決断はできません。
4Gamer:
それはそうですよね。
細井氏:
また,「ライザのアトリエ」開発時点からの構想なのですが,「夏の思い出」をテーマにした青春劇を続編でも作りたかったのです。
個人的な見解ですが,青春というのは,年齢にかかわらずいつでも誰にでもあるものだと思っています。人間,のめり込めるものがあるなら,それはいつでも青春。例えばゲーム開発は部活動に近いところがあって,チームで一丸になって目標に挑むというところは青春に近いのかなと思っています。
「ライザ2」では,少し成長したライザ達による新しい青春の物語を描きます。
4Gamer:
とはいえ,前作のエンディングが綺麗にまとまっているだけに,続編を作るのもなかなかハードルが高いのでは?
細井氏:
「前作の何年後にするか」を決めるだけでも非常に悩みました。1年後などの近い時期にするか,それとも大きく時間を経過させるか,いろいろな議論をしました。最終的には3年後にしましたが,「3作目で同じだけ時間を空けると23歳になりますけど,大丈夫ですか?」といった意見も出ました。まあ,3作目があるのか,あっても3年後になるのか,主人公が誰になるのか,とかが決まっているわけではないですけどね。それも,ユーザーの皆さんのご意見次第ですね!
4Gamer:
主人公の続投で一番気になっているのが,成長した姿をどうデザインしたのかということです。イラストレーターのトリダモノさんには,あれだけ話題になったライザというキャラクターの3年後を描くというミッションが与えられたわけで,果たして胃は無事なのかと。前作でも,ものすごく悩まれてライザを生み出されていましたから……。
細井氏:
大変でした。毎日オンラインで7時間ほどミーティングをしてデザインを固めていきましたが,「3年後はどこまで描いたらいいのか」がなかなか見えてこなかったようでして……。いろいろ描くうちに感覚が麻痺してしまったのか,太ももが太くなったり細くなったり(笑)。
4Gamer:
(笑)。
トリダモノさんには,ぜひまた直接お話を聞いてみたいです。
「アトリエ」シリーズの新作として正統進化
4Gamer:
前作と比べて,どのようなゲームになるのでしょうか。
細井氏:
「アトリエシリーズの新作であること」「ライザが主人公のキャラクターゲームであること」という2つの軸を追及し,グラフィックスやシステムなどが正統進化したゲームを目指しています。ユーザーさんのご期待に応えることが最優先で,奇をてらったようなシステムはありません。とくに戦闘については,よりスピード感と爽快感を強調したものになっています。
4Gamer:
前作の反響から変更した点があれば教えてください。
細井氏:
前作では「せっかくアイテムを調合したのに,使わない方が手っ取り早く戦闘に勝てる」というお声もいただいていました。そこで「ライザ2」ではアイテムの価値を向上させ,戦闘がより「アトリエ」シリーズらしいものになっています。
また,フィールド上のジャンプについても,「ただ跳べるだけで,ゲーム的には役に立たないじゃないか」というご意見をいただきました。
4Gamer:
“揺らしたい”だけではないか疑惑のあったやつですね(笑)。
細井氏:
はい(笑)。今回はそうした部分も改良し,段差を飛び越えるなどきちんと意味があるジャンプになっています。
また,ロープでターザンのように移動したり,泳いだり,水に潜ったりといったフィールド上でのアクションも増やしました。ライザの新しい動きが見られますので,愛着も増すと思います。
4Gamer:
となると,マップはこれまでより立体感のあるものになるんですか?
細井氏:
そうですね。高低差がありますし,水中に潜って素材を採取することもできます。
4Gamer:
アクションが増えるとなると,前作では無料アップデートで追加されたフォトモードが最初から入っていると嬉しいのですが。
細井氏:
もちろん最初から使えます。
4Gamer:
今回の舞台は王都とのことですが,どのような場所なのでしょうか。
細井氏:
王都はさまざまな土地の文化が混ざり合った発展途上の都市です。場所によって,発展していたりそうでなかったりといった雰囲気の違いもあり,バリエーション豊かな建物や風景を楽しんでいただけます。
王都を歩いていると,陽炎(かげろう)が揺らめいているのを見られると思いますが,これは王都の地面が石で舗装されているからです。土の地面ばかりだったクーケン島にはなかった表現ですが,こうした新しい夏の描写にも注目してもらえると嬉しいです。
4Gamer:
お話としては,「ライザ,田舎から都会へ!」という感じですか?
細井氏:
はい。クーケン島から王都に出てきて,ライザはさまざまなギャップを感じることになります。そうした部分も見どころのひとつになると思います。
4Gamer:
前作のラストの時点で,王都に行ったキャラクターもいましたよね。どのように成長しているのか楽しみです。
冒険の舞台も,島と比べるとだいぶ広がりそうですね。
細井氏:
本作では,いろいろな遺跡を巡って,伝承を紐解いて古代の謎に迫っていきます。その冒険の中で、ライザはさまざまな出会いと発見をしていくというストーリーになります。具体的にどのようなシステムで伝承を紐解いていくのかは,続報にご注目ください。
最後に,「ライザ2」が発表されて楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
細井氏:
「アトリエ」シリーズでは初の,同一主人公が登場する続編となりますが,成長したライザたちや新キャラクターたち,そしてさまざまなロケーションを持つ王都で展開する新たな冒険にご期待ください。ゲームとしても,前作からの正統進化をキーワードにした面白いものをお届けするべく開発を進めています。
また,興味を持っていただけた方は,ぜひ今から「ライザのアトリエ」も手に取っていただけたらと思います。「VERY EASY」の難度が追加されてサクサク遊べるアップデートも7月31日に配信予定ですので,ストーリーを楽しむのにピッタリです。8月4日(Steamは8月3日)までは,前作やシーズンパスが最大で39%引きとなる「ライザのアトリエ サンキューセール」も開催されています。まだ遊んだことのない方もこの機会にぜひプレイしてみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「ライザのアトリエ2 〜失われた伝承と秘密の妖精〜」公式サイト
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