カワイイ魔女が魔法をぶっ放す爽快感……最高。 ソウルライク3DアクションSTG「リトルウィッチノベタ」，待望の正式版インプレッション

　JUSTDAN INTERNATIONALは2022年9月29日，台湾に拠点を置くインディーズゲームスタジオPupuya Gamesが手掛ける「Little Witch Nobeta -リトルウィッチノベタ-」（PC / PS4 / Nintendo Switch）を正式にリリースする。


　本作は，可愛らしい魔女ノベタを操作し，古城の奥に眠る玉座を目指して迷宮を探索する3Dアクションシューティングゲーム。何度も死を経験しながら攻略の糸口を探っていくソウルライクゲームの要素があり，難度によっては相当な手応えが楽しめる。PC版は2020年6月24日にSteamで早期アクセスを開始し，多くのユーザーからポジティブな評価を受けている。掲載時におけるSteamレビューの評価は「非常に好評」である。



　今回，キャラクターボイスの追加や詠唱魔法の拡張，ゲームバランスの調整など，さまざまな面でブラッシュアップを施したNintendo Switch版（製品版相当）をプレイする機会を得たので，そのインプレッションをお届けしよう。

「Little Witch Nobeta -リトルウィッチノベタ-」公式サイト

「ノベタが可愛い！」がプレイスタイルに影響を及ぼす

　主人公である魔女ノベタは，自身の出自を解き明かす玉座に到達するために，迷宮と化している古城に足を踏み入れる。道中では謎の黒猫と出会い，行動を共にしながら生魂（クラフトソウル）と呼ばれる存在と戦っていく。


　本作のストーリーは，会話シーンですべてを語るのではなく，アイテムの解説テキストやYouTubeで配信されているボイスコミックなどで世界設定やキャラクターの背景を考察できるようになっている。
　とくにボイスコミックは，ノベタの内面を繊細に描いており，読了後はノベタだけではなく，他のキャラクターの印象も変わってくるはずだ。


　本作最大の特徴は，何をおいてもノベタが可愛いことに尽きる。ツボを押さえたキャラクターデザインや小原好美さんの熱演はもちろんのこと，ダッシュ中にスタミナゲージがゼロになるとドジっ子のように転んでしまうといった，一つ一つの行動やしぐさが可愛らしく演出されているのだ。

小柄なノベタが身長より高い位置にあるレバーを引く仕草が本当に可愛い。

　そんなノベタに愛着を抱けば抱くほど，「ノベタちゃんにケガをさせてはいけない！」という心理が働き，リスクを避ける行動を取るようになる。これが従来のソウルライクゲームと大きく違うところではないか……と筆者は思っている。


　前述のとおり，製品版にはキャラクターボイスが追加されている。小原好美さんは可愛らしいノベタだけではなく，けだるい声質の黒猫のボイスも担当しているのだが，“一人二役”を演じていることを知らなかった筆者はスタッフロールでその事実を知り，高い演技力に驚かされた。
　また，ホロライブ所属の尾丸ポルカさん（ターニア役），白上フブキさん（モニカ役），白銀ノエルさん（ヴァネッサ役）が声優として参加していることも話題を呼んだ。その演技は初々しさを感じられるものだが，ゲームの雰囲気には馴染んでいる。

アクションRPGというより“魔法をぶっ放すTPS”

　Steamで早期アクセスを開始した当初は，公式Twitterが「ロリダークソウル」のハッシュタグを使ったこともあり，ソウルライクのアクションRPGであることを前面に押し出していたが，実際のプレイフィールはTPSに近い。戦闘は魔法による中〜遠距離攻撃がメインとなり，近接攻撃はサブの位置づけだ。

　とはいえ，カバーアクションをしながら銃撃戦を繰り広げるわけではない。ノベタに近づいて近接攻撃を繰り出す敵がいるため，従来のソウルライクゲームのように回避やジャンプといったアクションを使いこなすことが重要だ。


　本作には「スタンダード」と「アドバンス」という2種類の難度が用意されている。初心者向けのスタンダードはノベタのステータスが大幅に向上し，体力が自動回復する仕様だ。一方のアドバンスは，スタンダードにあった恩恵がなくなり，敵の攻撃力が上昇するなど，アクションゲームに慣れたプレイヤー向けの調整になっている。

ファイアはショットガン，アイスはサブマシンガン，サンダーはスナイパーライフル

　ノベタが繰り出す魔法は4種類。序盤はアーケインと呼ばれる無属性魔法しか使えないが，ステージを進めると氷属性のアイス，炎属性のファイア，雷属性のサンダーを習得できる。
　各魔法の操作感をTPSにたとえると，アーケインは近〜中距離の使い勝手がいいハンドガン，アイスは連続して弾丸を発射するサブマシンガン，ファイアは複数の弾丸を同時に発射するショットガン，サンダーはスコープ付きのスナイパーライフルといったところだ。


　各ステージで魔法を獲得すると，強化されて機能を拡張できる。ジャンプアクションもウインドという魔法の一種で，強化によって多段ジャンプが可能になる。なお，製品版では各魔法を5段階まで強化できるようになり，新たな効果やエフェクトが追加されている。

　さらに，各魔法は詠唱することで溜め攻撃に該当する「詠唱魔法」を発動できる。また，詠唱魔法を発動する前の「詠唱後状態」では，防御力が高くなる，移動スピードが向上するといった特殊効果が得られる。詠唱魔法と詠唱後状態のうまく使いこなせば，戦闘での立ち回りが大きく変わるはずだ。

アイスは詠唱魔法と通常攻撃を併用すると，敵を徹底的にボコボコにできる。詠唱魔法はどれも破壊力と爽快感があって気持ちいい

　魔法主体の戦闘において重要になるのが，意外にも近接攻撃だ。近接攻撃には，魔力を回復する効果があり，魔力切れを起こした時の有効な回復手段となる。また，倒された敵はしばらく消滅しないので，近接攻撃でオーバーキルをして魔力を回復できれば，魔力切れを起こすことなくスピーディに戦えるだろう。

ミミックは魔法攻撃が効かないので物理攻撃で倒しかない。筋力のレベルアップをしておきたい

　魔力の回復は，敵の攻撃に対してタイミングよく近接攻撃を当てて魔力吸収陣を発動したり，回避行動をしたりすることでも行われる。このように魔力の回復方法が多岐にわたって用意されており，プレイヤーは魔力のマネジメントを行うことで，多くの魔力を消費する強力な詠唱魔法が撃ちまくれるのだ。

難度スタンダードでもステージ探索は要注意

　ノベタは敵がどこに潜んでいるか分からない薄暗いステージや，マグマが煮えたぎるステージ，足場を踏み外すと死んでしまう高所のステージなど，環境も地形も異なる6つのステージを探索していく。
　各ステージには，魔法を利用して発動するギミックが設置されているが，あまり難しいものではないので苦戦することはなさそうだ。また，ゲームの後半になるとステージの地形が複雑になっていくが，落ち着いて探索をすれば進むべき道が分かるものだ。


　全体的にステージ自体の難度は低めに設定されているが，筆者は戦闘中に足場を踏み外し，高所から落ちて死んでしまうことが多く，探索の際には慎重さが求められる。

　ステージの最奥にはボスが待ち構えており，多彩な攻撃を繰り出してノベタを翻弄してくる。難度が低めに設定されているスタンダードであれば，絶望的な相手というわけではない。もちろん，何度かは力尽きるかもしれないが，冷静な立ち回りを心がければ倒すことができるだろう。


　一方，雑魚敵との戦闘では苦戦することが多々あった。敵に囲まれると反撃の機会を与えられず，あっという間に倒されてしまうので，まずは敵と一定の距離を保ち，適切な魔法を繰り出していこう。
　そんな雑魚敵だが，1対1の戦闘は単調になりやすい。敵の種類や攻撃パターンのバリエーションは，もう少し欲しかったところだ。


　また，ステージには収集要素として，「調査アイテム」（103種類）が置かれている。これにはノベタやターニア，モニカ，ヴァネッサによるボイス付きの解説テキストが用意されており，それを読むと世界設定を理解できるのだ。


　なお，ステージや戦闘などのBGMは，早期アクセス版のユーザーから高い評価を受けており，本作の世界を彩る重要な要素だ。製品版には，ハンガリー・ブダペスト交響楽団による追加楽曲も収録されているので，ぜひ注目してみよう。

死亡しても経験値（お金）はロストしない。優しい世界

　ステージ探索の中継地点として活躍するのが「女神像」だ。ここでは，復活地点の設定や体力・魔力の回復，能力値のレベルアップ，アイテムの購入，コスチュームの変更などが行える。

　能力値のレベルアップには，敵を倒して獲得できる魂素（ソウルエッセンス）が必要だ。従来のソウルライクゲームでは，獲得した経験値やお金は死亡するとロストするものだが，本作ではロストしないまま女神像で復活することになる。
　ただし，呪いの効果が付与される体力・魔力回復アイテムを使用した状態で死亡すると，魂素の一部をロストしてしまう。


　前述のコスチュームにはメイドやセーラー服といったものが用意されている。特定のボスを倒したり，本編をクリアしたり，自身の魔法でわざと自爆したりといった条件をクリアすることで獲得でき，いずれも可愛らしいものばかりだ。
　なお，PS4版はネクロマンサー，Nintendo Switch版はヴァンパイアの限定コスチュームが購入特典として用意されている。

コスチュームのメイド服は非常にキュート。他のコスチュームもアンロックしたくなる

痒い所に手が届くカメラの設定項目

　本作はTPSに近いプレイフィールということもあり，カメラ設定の項目が充実している。とくにカメラ距離の設定はプレイヤーの視点を大きく変えるため，自分のプレイスタイルに合わせて調整したい。そのほか，キーコンフィグで自分に合ったボタン設定を見つけておくといいだろう。

カメラ距離を1に設定した場合，TPSのような視点になる

カメラ距離を5に設定した場合は3Dアクションゲームのようだ

狙撃はエイムアシストが効かないので繊細な操作が必要。照準回転速度の設定を調整すると狙撃しやすいだろう

本編クリア後，さまざまな要素がアンロックできる

　本編をクリアすると，強くてニューゲームや，ボイス付きのおまけ動画などの要素がアンロックされる。おまけ動画は，本編のシリアスな雰囲気と打って変わってコミカルに描かれており，“あの女神像”がしゃべり出すものも。積極的に“キャラ変”が行われている。
　思わず笑ってしまうだけではなく，キャラクターへの愛着が深まるので，2周目に突入する前に視聴しておこう。


　“ロリダークソウル”と打ち出されていた本作だが，やりごたえのある難度アドバンスに加え，アクションゲーム初心者向けのスタンダードがあることで，ソウルライク経験がない人も十分に楽しめる内容になっている。
　ノベタの可愛さにキュンキュンした人は，ぜひプレイしてほしい。ただし，どちらの難度にしてもソウルライクはソウルライク。ノベタが痛い目に遭うことは避けられないだろう。そうならないように慎重な行動を心掛けるべきだ。


　とはいえ，前述のとおり，特定のコスチュームのアンロックには自身の魔法で自爆しなくてはならない。ノベタの可愛らしいコスチュームをすべて見るには，痛い目に遭ってもらわなくては……いやいや，それはちょっと……本当に悩ましい問題だ。

「Little Witch Nobeta -リトルウィッチノベタ-」公式サイト