インタビュー
真島ヒロ氏に聞く「EDENS ZERO Pocket Galaxy」インタビュー。開発裏話から“ちちびんたリカ”へのKONAMI愛まで盛りだくさん
主題のポケギャラは,「RAVE」や「FAIRY TAIL」で魔法ファンタジーを手がけてきた真島氏が,新たに惑星冒険ものスペースファンタジーとして送り出したマンガ「EDENS ZERO」を題材にした見下ろし型アクションRPGだ。
この記事と同時に,ガチャなしのハクスラ味あふれるゲーム体験をつづったプレイレポートも4Gamerで掲載中だ。
エデンズゼロで宇宙ハクスラ! 原作再現&100種以上のコスチュームがすばらしい「EDENS ZERO Pocket Galaxy」を先行プレイ
KONAMIは,真島ヒロ氏のマンガ「EDENS ZERO(エデンズゼロ)」を原作とした,新作スマホアプリ「EDENS ZERO Pocket Galaxy」のメディア試遊会を実施した。本稿では,オリジナルストーリーも楽しめるアクションRPGの所感をお伝えする。
今回の合同インタビューでは,真島氏と開発とでどのようなやり取りがあったかの裏話からはじまり,ゲームのオススメポイントや,KONAMI作品はかなり通ってきたという氏ならではの,若い人には通じない“ちちびんたリカ”への悲しみまで,さまざまな話を聞くことができた。
エデンズゼロのファンのみならず,KONAMIゲームファンにも刺さること請け合い。気になる人はぜひ最後まで目をとおしてほしい。
「EDENS ZERO Pocket Galaxy」事前登録ページ
「EDENS ZERO Pocket Galaxy」ダウンロードページ
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※本稿で使用している画面は開発中のものです。
フルボイスや着せ替え要素は,真島氏の要望
――「EDENS ZERO」がスマホゲーム化されるにあたって,真島さんなりのゲーマー目線でオススメしたいポイントはどこでしょう。
真島ヒロ氏(以下,真島氏):
ポケギャラはIPものではあるんですが,ゲーム好きの人がとても楽しめる作品になっていると思います。ポイントはやっぱり“本格的なハクスラ要素やキャラクターのカスタマイズ性”ですね。
「EDENS ZERO」を知らない人が遊ぶかどうかは分からないんですけど,ゲーム好きならぜひとも触ってみてほしいです。
――3Dグラフィックスで描かれる物語を見て,率直なご感想は?
真島氏:
すごく細かなところまで3Dで作っていただけて,「労力をかけすぎじゃないかな」って思いました(笑)。
本来なら「ここスチル(静止画)でよくない?」みたいなところまできっちりと3Dで制作されていまして,開発陣の方々がものすごく力を注いで作ってくださっていることに大変感謝しています。
――映像以外の部分ではいかがでしょう。
真島氏:
実はこのゲーム,開発段階で僕のほうから「キャラクターボイスを多めにしてほしい」と要望を出させてもらったんです。けっこう無茶なお願いだったんですけど,しっかりと対応してくださいました。
しかも,マンガ的なト書きとかもセリフに起こして喋らせてくれていて,本当に細かなシーンまでフルボイスで演技してくれているんです。見るだけじゃなくて,聞いていても楽しいゲームでした。
――公式のキャラクター紹介動画で,ホムラ役の青木志貴さんがアクションに注目していましたが,ゲーム部分も監修されたのでしょうか?
真島氏:
実際はあまり監修していないです。KONAMIさんに仮のイメージで作っていただいたものを見せてもらい,OKかどうか判断したくらいで。
それに,見せていただいたキャラクターモーションがどれもすばらしいものばかりだったので,ほとんどNGは出してませんね。僕も驚いていますし。ああ,この技ってこんな動きだったんだって(笑)。
――ゲーム化のオファーをもらったときはいかがでしたか。
真島氏:
当初いただいた企画は,今の完成形とはちょっと違う内容ではあったんですが,その時点で面白そうだと感じていました。KONAMIさんのやりたいことと僕のやりたいことが最初から合致していたので,そこから方向性を整えていくようなお話しをしたのを覚えています。
具体的な要望としては「キャラクターがマップを移動する,見下ろし型のアクションにしてほしい」とお願いしました。僕自身,そういうゲーム体験が好きだったりするので,モバイルで出すんだったらそういうのもどうでしょう,みたいな話をしつつ。
――間口を広げるためのRPG,という手段を取るモバイルゲームは少なくないかと思いますが。そのうえでアクションをと?
真島氏:
たしかに,普通のRPGにしたほうが間口が広くなる可能性はあったかと思いますが,ポケギャラは“海外も意識”しているんです。
ですから,世界中のゲームプレイヤーがなにを求めているのかを考えたときに,「モバイルでもアクションゲームのほうがいいんじゃないか」と思ったのと,やっぱり僕自身がアクションゲームをやりたいなと思っていた時期だったのもありまして(笑)。
――描き下ろしした衣装のデザインについてはどうでしょう。
真島氏:
僕が手がけた衣装デザインはあくまで一部ですが,こだわったポイントは,やっぱり“ゲームで映える衣装にする”ことです。
普段ゲームを遊んでいるときに感じた,キャラクターにこんな衣装を着せてみたい,みたいな。ちょっとした願望を反映して描きました。
――ちなみに,どんな衣装がありますか?
真島氏:
コスプレ性の高いものだと,女性キャラクターなら「カウガール」や「メイドさん」,あとは「SFチックなボディスーツ」とかです。
それと「EDENS ZERO」は宇宙を舞台にした作品なんですが,若干ファンタジーっぽい鎧みたいなデザインとかも描いたりしました。
――衣装は着せ替えもできますが,それは作品的にOKでしたか。
真島氏:
ゲームを遊んでいる人ならやっぱり,キャラクターの衣装を変えられるほうが好きなんじゃないかと思いましたし,それとこの点も,僕自身が衣装を変えられるゲームが大好きだからです(笑)。
最初の打ち合わせのときも,KONAMIさんに「衣装変えはできるようにしてほしい」と僕からお願いした記憶がありますし。
――これから先のオリジナル衣装などは考案していますか。
真島氏:
まだKONAMIさんにOKをもらっていませんが,また思いついたら「こういう衣装も出したいんですけど……」って相談してみます。
ポケギャラは女性キャラの比率が多いので,衣装もたぶん女性用が多くなっていく気がしていますが,男性キャラのほうも,もうちょっとネタに走ったような衣装などを描いてあげたいですね。
――逆に,真島さんがKONAMIにNGを出したことはありますか?
真島氏:
言いづらいなあ(笑)。でも,あんまりなかったです。僕は基本的にゲーム好きな原作者ということで,仮にほかの人ならNGって言いそうなこともOKにしているケースが多いんです。むしろ「ゲームなんだから!」っていう理由でなんでもとおしている節があります。
当然,作品やキャラクターのイメージなどが著しく崩れてしまうような描写についてはやめてほしいとお願いしたいのですが,そもそもKONAMIさんの方々は絶対そんなことしてこないんで。なので,とくに衝突もなかったですね。ほとんどのアイデアにOKを出してきました。
キャラクターものにしては,本格ハクスラ仕様
――アニメ化やゲーム化されるにあたり,それまで見えてこなかったキャラクターの新たな一面を発見したことはありますか。
真島氏:
僕は作中のキャラクターで「EMピーノ」が好きなんですが,アニメ化のとき,どんな声になるのかを想像してたんです。そしたら,キャストの井澤詩織さんがとてもすばらしい演技をしてくださったんですよね。それがイメージ通りだったので,とても大満足でした。
もちろん,それ以外のキャストの皆さんもイメージにピッタリで,マンガの執筆中にふと,シキの声,レベッカの声,ワイズの声が自然と聞こえてくるようになって,描くのが心地よくなっています。
――真島さんは過去作でもマルチメディア展開がありましたが,自身の創作物が他者に再構築されるとき,思うことはなんでしょう。
真島氏:
これは本当に,「うれしい」のひと言です。自分が作り上げたものを,ほかの方々がまた別な形にしてくれるというのは,非常に喜ばしいことだと思っています。僕以外の人が作ることで,まったく同じ作品にはなりませんし,そこに関わってくれた方々のアーティスト性みたいなものが反映されてくるところも,とても刺激になります。
とくにゲームなんかは僕自身が大好きというのもあって,毎回毎回どんな風にゲーム化してくれるのかをいつも楽しみにしています。ですから,ゲームはとてもうれしいマルチメディア展開の一つです。
――そもそも,「EDENS ZERO」はなぜ宇宙が舞台なのでしょう。
真島氏:
僕はこれまで,剣と魔法のいわゆる中世ファンタジーな作品を長らく描いてきたので,「次は宇宙だったら読者も驚くかな?」くらいの理由で決めたんです。それと,これも自分の口から何度も言ってきましたが,「EDENS ZERO」は宇宙が舞台なものの,SF(サイエンス・フィクション)では全然なく,スペース・ファンタジーとして描いています。
宇宙を舞台にしたファンタジーものだと考えているので,やっていること自体はこれまでの作品とそんなに変わらないです。
――ポケギャラでは,メインストーリー以外にもキャラクター別ストーリーが用意されていますが,どの程度あるのでしょう。
真島氏:
僕も具体的には把握していないんですが,各キャラクターに用意された長いシナリオと,イベントやサブクエストとしてオリジナルストーリーが登場するので,たくさん楽しんでいただけるかなと。
――オリジナルストーリーやオリジナルキャラクターが出てきたとき,原作にも登場させるようなことは考えていますか。
真島氏:
原作は今,新しい要素を入れる隙があまりない状態で描いているんですけど,そういう試み自体はけっこう好きなので,もし気に入ったキャラクターが出てきたら,逆輸入させてもいいかなと考えています。
――現状,ゲームへの満足度は何点ですか?
真島氏:
まだ全部をプレイしたわけではないんですが,遊べる範囲だけ触らせてもらった感じ,100点満点ですね! とても楽しいゲームに仕上がっているので,リリースされたら僕もプレイしたいです。
――配信後,ポケギャラにどんなことを望みますか。
真島氏:
運営が長く続くと,そのぶん衣装もどんどんと増えていくはずなので,いずれは「ユーザー募集型の衣装コンテスト」などをやったりして,優秀賞をゲームに反映する,みたいなことをしたいです。
そういう,実際に遊んでくださっている方々とのつながりを持てるようなイベントができたらうれしいなと思えます。
――原作を知らない人には,どんなポイントを推しますか。
真島氏:
ゲーム好きなら“ハクスラ(ハックアンドスラッシュ)”という言葉に反応してしまうんじゃないですかね。あとはさっき言った衣装チェンジも含めて,ポケギャラはいわば「僕のようなゲーム好きの願望が詰め込まれたモバイルゲーム」になっていて,原作ものとは思えないくらい,ゲームとして本格的なハクスラを体験できます。
だからこそ原作を知らない人でも,ゲームとしてハクスラアクションを手軽にやってみたい人にぜひとも触ってみてほしいです。そこから原作マンガなりアニメなりを見てくれたら,もっとうれしいです(笑)。
ちちびんたリカに,「SNATCHER」の思い出話も
――真島さんの大のゲーム好きな逸話はよく耳にしますが,マンガ連載の忙しさのなかで,ゲームの時間はどのように確保されているのでしょう。とくに睡眠時間が気になりますが,寝られてますか?
真島氏:
睡眠時間は取れてます(笑)。毎日7時間くらいちゃんと寝ますね。
だいたい,寝る前の2〜3時間を毎日ゲームに当てているんですが,忙しいときは全然プレイする時間がない日もあります。逆に仕事が早く終わってしまったときはもっと時間が取れてしまうので,1日中ゲームをやっているような日もありますね。
――好きなKONAMIのゲーム作品はなんでしょう?
真島氏:
KONAMIさんで言ったら「METAL GEAR(メタルギア)」シリーズ一択なんですけども,ほかにもいくらだって挙げられます。
僕は「パロディウス」が大好きで,ステージ2の“ちちびんたリカ”(※)というキャラがいるんですが,あれを初めてゲーセンで見たときに度肝を抜かれましてね。あれがずっと頭から離れないんです(笑)。
※シューティングゲーム「パロディウス」シリーズに登場する,サンバ衣装に身を包んだ,巨大な女性の姿をした敵キャラクター。画面全体にまたがる巨体,妙な色気と露出度の高さ,ガニ股で迫って来る恐怖,しかも倒せない(さけてやり過ごすしかない)など,知らない人はなにを言っているのか分からないかもしれないが,一目見たら忘れられないインパクトを持つ。正式名称は“Miss神戸廃止記念 ちちびんたリカ”
――まさかの,ちちびんたリカ(笑)。
真島氏:
だから,ポケギャラを作ってくださっているKONAMIさんの方々にもその話をしたんですが,若い人から「ちちびんたリカってなんです?」って言われて(笑)。やっぱり社内でも若い人には知られていないんだなあ……って悲しくなったりもしました。
あとは「ウイイレ」も「パワプロ」シリーズもやってます。「悪魔城ドラキュラ」シリーズも好きだし,「がんばれゴエモン」も好きだし……本当に,挙げたらキリがないですね。
――それらを遊んだときの思い出話などはありますか。
真島氏:
ありすぎてパッと出てこないんですが,KONAMIさん関連の思い出話なら「SNATCHER(スナッチャー)」(※)というゲームです。
※1988年に発売されたアドベンチャーゲーム
――SNATCHER,さすがですね(笑)。
真島氏:
大好きな作品なんですよ。ただ,作中では今となってはできないような問題の仕掛けが一か所ありましてですね(笑)。実家で遊んでいたころ,当のシーンで母親にすごく怒られた記憶があります。よく分からない人は調べてほしいんですが,そういう遊びがあって大好きでした。
ちなみに,僕のマンガ「RAVE」にエリーというヒロインがいるんですけど,その元ネタがこのゲームだったりします。本当に話したらキリがないのと,他社さんの名前も出そうなので今日はこのへんで(笑)。
――2022年1月24日収録
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(C)真島ヒロ/講談社・NTV (C)Konami Digital Entertainment
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