プレイレポート
PS5「The Last of Us Part I」プレイレポート。ジョエルとエリーの旅がリメイクされて甦る
2014年にはPlayStation 4向けのリマスターバージョンとなる「The Last of Us Remastered」(以下,リマスター版)が,そして2020年には正当な続編となる「The Last of Us Part II」(以下,パート2)も発売された“ラスアス”シリーズだが,ついに最新ハードでその原点が戻ってくることになった。今回は発売に先駆け製品版相当のバージョンをプレイしたので,そのプレイレポートをお届けしよう。
骨太な物語はそのままに,ビジュアル面を大幅に強化
オリジナル版が発売されて10年近くが経つ本作なので,概要を軽く振り返っておこう。
The Last of Usは,ポストアポカリプスの世界を舞台にした三人称視点のサバイバルアクションだ。ゾンビパンデミックによりかつての文明がほぼ壊滅し,市民は,強権的な軍が徹底管理する隔離地域や,一般人や犯罪者がより集まった小さな集落でしか生活できなくなっている。プレイヤーは,過去に娘を失い心に大きな心の傷を負った中年の運び屋ジョエルを操作し,世界を救うカギを握った14歳の少女エリーをある組織に届けるべく,荒廃しきったアメリカの地を旅していく。
物語は章立てで進み,フィールドも基本的には一本道だが,進むための複数のルートがあり,見つけにくい部屋なども用意されていて,探索するべき場所は多い。道中は菌類に冒された感染者,あるいは敵対的な生存者と多勢に無勢の戦いになることがほとんどなので,ステルス活動がメインだ。各所に落ちている素材や武器,サプリメントを利用することでジョエルを強化しつつ,何とか西へ西へと進んでいくのが目標となる。
そんな世界で生き抜くうえで,非常に役立つのがクラフトだ。特にナイフや火炎瓶は,多くのプレイヤーがお世話になることだろう。廃墟から使える物を探しつつ,限られたリソースを活用して困難に立ち向かっていく……というのはサバイバルアクションとしては定番ではあるが,だからこそ自然と没入できるはずだ。
なおリメイク版でも,こういったゲームシステム面での変更はほぼない。UIの調整こそ行われているものの,操作方法についてもほぼ同じなので,プレイ済みなら迷うことなく進められるだろう。
また本作の見どころは,映画顔負けの巧みな演出や緊張感があるステルスアクションだけでなく,最初はぎこちなかったジョエルとエリーの絆が強くなっていく物語を,ゲームという媒体を通じてプレイヤーが追体験できる点にある。山あり谷ありではとても言い尽くせない命がけの冒険を経て,ジョエルとエリーは本当の親子以上と言ってもいい絆を深め,衝撃的なラストに収束していく。その巧みなストーリー展開が世界中でゲーマーの心を揺り動かし,名作と呼ばれるに相応しい立場に押し上げる一因となったのは間違いない。
リメイク版となる本作でも,このポイントはオリジナル版とまったく変わらない。今回リマスター版を触ったうえでプレイしてみたのだが,セリフを含めて変更点はほとんどないように見受けられた。後述するようにビジュアル面での変化こそあるものの,あえて物語に手を加えるようなことはしなかったようだ。したがってオリジナルやリマスター版をプレイ済みなら懐かしい,未プレイならどんどん先が気になる骨太のストーリーを楽しめるだろう。
常に敵と対峙するだけではなく,仲間との会話や,探索とクラフトに集中できるパートが随時挟まる緩急の効いた展開も健在で,プレイしていて単調に感じることはほとんどない。
その一方で,ビジュアル面では最新ハードに対応したことで,大幅な進化を遂げている。具体的にはメインとなるキャラクターはもちろん,フィールドそのものや設置されているオブジェクトも,見違えるようなクオリティに仕上がっており,リマスター版と比べるとその差に驚いてしまう。
具体的には,まず4Kの解像度にネイティブに対応しているのはもちろん,モデリングやテクスチャが高品質なものに差し替えられている。さらにPS5のパワーを生かしたライティングやエフェクトによって,物体の質感や全体の空気感が劇的に向上している。これによって感染者がうろつく暗い廃墟はより恐ろしく陰鬱に,逆に日中の屋外や自然の中は文明崩壊後ながら(敵がいなければ)美しく平穏な世界として描写され,よりメリハリが感じられるようなった。
個人的には,懐中電灯の光や水の表現がさらに向上したのも印象的で,前半の大雨の降る中で逃走するシークエンスや,明かりがほとんどない暗闇でライトを頼りに探索しなければいけない場面では,そのリアリティに結構感動してしまった。もともとPS4に移植されたリマスター版の時点で,本作のグラフィックスは元がPS3のソフトとは思えないレベルのクオリティに達していたが,Naughty DogがPS5向けに開発したエンジンの力によって,まさにPS5時代のゲームに相応しいデキになっている。
グラフィックスの強化に比べると若干地味ではあるが,プラットフォームがPS5になり,読み込み時間が大幅に短くなってゲーム開始時のテンポが良くなったほか,DualSenseに対応したことにより,天候や発電機といった環境とオブジェクトの振動が自然と手元で感じられるようになったのも,没入感の向上につながっている。パート1をプレイした後にリマスター版をプレイすると,ハッキリ言って“物足りない”と感じてしまうのだが,これはビジュアル面の違いだけではなく,細やかなアップグレード要素が積み重なった結果と言えるのではないだろうか。
システム面ではパート2の良いところを継承し,より親切かつユーザーフレンドリーに
本作でグラフィックスと同じぐらい強化されたのが,プレイヤーが調節できるオプションの項目だ。アクションゲームはプレイヤーの経験や技術がプレイ結果として如実に出てしまうジャンルだ。物語を楽しみたいのに先に進めないといった状態は,どうしてもストレスの元になってしまう。また逆に,簡単すぎるのもプレイの単調さを招く。
その点,本作は難度調整の幅が極めて大きい。難度調整そのものはオリジナル版やリメイク版にも存在する機能だが,それがパート2にほぼ準ずる形で,調節できる項目が大幅に増加しているのだ。
具体的には,リマスター版までは初級やサバイバルといった段階に応じて,敵の強さや取得できる資源の量などが自動的に決められ,それに応じて難度が決まるという設定になっていた。だがパート1では,プレイヤーの強さやステルスのしやすさなど計5項目を個別に設定し,カスタマイズできるようになったのだ。これにより「強い敵に豊富な資源で対処していく」とか「ステルスが苦手なので,その部分だけ大幅に難度を下げる」といったプレイも可能になった。
さらに最高難度のGROUNDを除き,難度とゲームコントロールの設定も切り離され,どの難しさでも自動照準(敵のロックオン)をオンにしたり,敵の居場所を壁越しに見られる聞き耳を使用したりもできる。「アクセシビリティ」ではさらに細やかな調節も可能で,3D酔いを防ぐために画面揺れを停止したり,聞き耳を拡張してアイテムを探せるようにしたり,敵を自分の背後に回り込まないようにすることができたり……と至れり尽くせりと言ってもいいカスタマイズが可能だ。もちろん,不要ならこれらの機能は使わなければ良いだけなので,純粋にプレイヤーの選択の幅が増えている。
ちなみに新しくゲームを始めたときにだけ選択できる機能だが,「死亡時のセーブデータ消去」も任意でオンにできるようになった。これは文字通り,プレイヤーの死亡時にゲーム全体,あるいは章やチャプターごとのセーブデータが自動で消される機能だ。ある種の縛りプレイ用のオプションであるので初心者には関係ないが,やり込んだプレイヤーは緊張感があるプレイが楽しめるだろう。これもまた,ゲーム自体の難度調節とは関係なく設定できる。
ゲームプレイ全体としてはNPCのAIがアップデートされたようで,さまざまな行動のモーションがより自然になっただけでなく,動き自体にも変化が感じられた。例えばリマスター版までは,エリーやテスのような行動を共にする味方がジョエルの行く手を遮ったり,謎解き用のオブジェクト(ゴミ箱など)の移動を邪魔したりとプレイの妨げになることもままあったのだが,パート1ではそういった行動はかなり減ったように見受けられる。
また敵の挙動にも変化が感じられ,例えば感染者は音に反応して周囲から集まってくる習性があるのだが,この反応範囲がリメイク版より広くなっており,より“集まりやすい”印象を受けた。これは不意に敵に見つかって戦闘になったときは,ピンチになりやすいということだが,逆に意図的に物音を立てて敵を釣るときは,有利に働くこともある。一概に難しくなったとは言えないので,調整の範囲ということなのかもしれない。
細かいところでは,マップの構成は以前とほぼ同じだが,オブジェクトの追加や変更が行われた結果,アイテムの場所や数が微妙に変わっているところもあるようだ。ゲーム内のフレーバーテキスト(各地に落ちている遺物など)も一部は加筆や修正が行われているようで,プレイ環境があるならオリジナル版と比べてみるのも面白いかもしれない。
さらに前述のようにパート2をベースにしている関係か,聞き耳のエフェクトが変わって(音波のような表示が消えた)クリッカーを見分けづらくなったり,ステルスかつナイフを持っていればジョエルでも直接[△]ボタン1発でクリッカーを始末できたり,フォトモードが充実してさらにいろいろな設定ができるようになっていたりと,比べてみると思った以上にシステム面での変更点が部分が多かった。初代ラスアスは,リマスター版の発売から数えても約8年の時間が経過しているので,時代にあわせたアップデートが行われた,ということになるだろう。
本作を一言でまとめれば,「世界中を虜にした物語はそのままに,ビジュアルとシステムを最新技術で生まれ変わらせた初代ラスアス」といった感じだ。
リマスター版と同じく,PS3版では別売りのDLCだった「Left Behind -残されたもの-」こそコンテンツに含まれているものの,それ以外のシナリオ面でのボリュームアップはないので,そこを期待すると少し肩すかしに感じるかもしれない。とはいえ本作の物語の完成度の高さは折り紙付きであり,前述のようにあえて何も足さなかったと思われる。
一方で,PS5という新ハードを使って構築された終末世界は見違えるクオリティとなっており,ここだけでもプレイする価値があると感じる。美しいビジュアルとコントローラなどのフィードバックは間違いなくゲームの没入感を高めているし,非常に細やかに設定できるオプションを活用することによって,プレイヤーは自分に合った環境で快適にゲームをプレイできるのだ。
難度を一番簡単なVery Easyに設定し,ロックオン機能やアクセシビリティの設定も活用すれば,「作品に興味はあったけど,アクションが苦手で手が出せなかった」という人でも,(多少のコンティニューは必要かもしれないが)恐らくゲームを問題なく進められるはず。それぐらい,間口は広くなっていると思う。
結論としては,PS5を所有していて今から初代ラスアスを新たに楽しみたいと考えるなら,このパート1を選ばない理由はない。PS5はPS4と互換性があるのでリマスター版も問題なく動作するが,格段に進化したグラフィックスによる没入感の高さや,かゆいところに手が届きすぎるほどのオプション機能の差は思ったよりも大きい。繰り返しになるが,パート1をプレイした後にリマスター版をプレイすると,物足りなく感じてしまうほどだ。
未プレイの人に諸手を挙げてオススメできるのはもちろんのこと,すでにオリジナル版などをプレイ済みでも,8〜9年分の進化は間違いなく感じられるので,「久々にエリーと旅を楽しんだり,クリッカーと戯れたりしたい」という向きでも十分に楽しめるだろう。興味があればぜひ,手に取ってみてほしい。
「The Last of Us Part I」公式サイト
- 関連タイトル:
The Last of Us Part I
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The Last of Us Part I
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(C)2022 Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog LLC. The Last of Us is a registered trademark of Sony Interactive Entertainment LLC and related companies in the U.S. and other countries.
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