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あなたは,“手”でできている。目も,鼻も,口も,全部“手”。危険すぎるビジュアルの「萬手一体」は,見た目以外も期待通りのヤバいゲームだった
萬手一体は,TapTapが開催したインディーゲームコンテストに出展されたタイトルの製品版にあたる作品だ。さまざまなものを“実写の手”で表現するという衝撃的なビジュアルで,斬新なインディーゲームを探すファンの間で話題になっていた(関連記事)。
そんな作品の日本語対応バージョンのデモ版がBitSummit Driftに出展されたということで,早速遊んでみた。なお,本作の映像には集合体恐怖症を招きうる表現が多数含まれているので,観覧の際には注意してほしい。
3つの狂った「思考」に導かれ
主人公はひとり,悪夢をゆく
「目覚めると,私は萬手一体になった。」
この意味不明な一言から,本作の物語は始まる。その後に表示される主人公の顔はミイラのように包帯で巻かれ,本来は目や口があるべき場所には“手”がうごめいている。どうやら主人公は悪夢の中に囚われており,このグロテスクな風貌は過去の記憶が作り出したものらしい。
萬手一体となった主人公に語りかけるのは「論理思考」「神秘思考」「行動思考」という,おそらくは主人公の脳内の住人たちだ。いわく,過去の記憶と戦い,悪夢の元凶を探し出さなければ,ここからは脱出できないという。そうして,主人公は自らの記憶と向き合い,悪夢からの脱出を目指すことになる。
記憶との戦闘は,カードバトル形式で進行する。画面右側にはデッキ内のカードが3枚表示され,これを使うことで記憶にダメージを与えられる。中央に表示された大きな記憶(ボスにあたる記憶)を撃破すればバトルクリアだ。
ただし,並んでいるカードはそのまま使用できない。プレイヤーには「左手」「右手」があり,カードに描かれた物品を「掴む」アクションを行うことで,はじめて効果を発揮させられる。掴むアクションが行えるのは1ターンに両手合計で3回までだが,カードは減るごとに補充されるので,最適な行動をするにはカードを掴む順番を工夫する必要がある。
それだけなら簡単なのだが,記憶は「感情」という“壁”を場に出してくる。感情は記憶と同じように体力を持ち,ターン終了時に残り体力に応じた攻撃を放ってくる。記憶は感情と紐づいており,感情をすべて撃破しなければ近接攻撃が記憶に届かない。
感情は,記憶1つに対して平気で3つくらい同時に出てくるので,範囲攻撃などを使って効率よく処理していかなければ,記憶の体力を減らせないのだ。わずか3回の掴みアクションをどう割り振るかは,ゲーム序盤からかなり悩ましい。
遊んでみて驚いたのは,記憶を撃破したあとの報酬や,悪夢を探索している間に発生する選択肢の処理方法だ。
例えば,新たにデッキに加えられるカード報酬は3択で提示されるのだが,それぞれのカードは「3つの思考(論理,神秘,行動)が提案する新しい武器」という形で表現される。そこで選んだカードによって,主人公の思考系統が変化していく。
また,物語の中で情報を推測する場面でも,3つの思考がその読み解き方を提案してくれる。まったく同じ出来事でも,論理思考は冷淡で悲観的な結論を導き出し,神秘思考は飛躍した妄想を織り交ぜ,行動思考は情熱的で怒りを煽る。つまり,プレイヤーの選択によって物語の“理解”がまったく変化する仕組みになっているのだ。
今回のプレイでは,思考が特定の方向へと偏ることでゲームプレイにどんな影響が及ぼされるかは分からなかったが,作品独自の要素をうまく使った物語へのアプローチには挑戦的なものが感じられた。単にビジュアルが奇抜なだけでなく,それを“悪夢”というテーマに落とし込み,記憶や思考といったキーワードで彩る本作の物語は,なかなかに興味深いものになっていると思う。
翻訳の品質も良好で,とくに思考たちの狂気じみた言葉回しは雰囲気抜群。絶妙な空気感が大事な作品だけに,翻訳が悪いと一気に評価が下がりかねないと思っていたので,期待してた立場としてはとても安心できた。
本作のデモ版は現在公開されていないが,過去にはSteamのイベント合わせで公開されていたこともあり,今後も体験できる機会があるかもしれない。自分で触れてみたい人は,今のうちに本作をウィッシュリストに加えておこう。
「BitSummit Drift」公式サイト
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- 関連タイトル:
Out of Hands: 萬手一体
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