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印刷2022/09/18 12:39

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[TGS2022]百合のWizがないから作る。「ウィッチ・アンド・リリィズ」のブースを訪ねてみたら嗜好の争い中だった

 東京ゲームショウ2022の開催前日となる2022年9月14日,ストロマトソフトという会社が,PC(Steam)向けダンジョンRPG「ウィッチ・アンド・リリィズ」を発表すると同時に,CAMPFIREでクラウドファンディングを開始して話題になった。

 それはなぜかって,これが“百合のWiz”だからだ。

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 ストロマトソフトは,百合をテーマとしたSteam向け新作ダンジョンRPG「ウィッチ・アンド・リリィズ」を発表した。これにあわせて,CAMPFIREにてクラウドファンディングが始まっている。さらにTGS 2022への出展も明らかになった。

[2022/09/14 14:57]

 4Gamerに掲載した記事はリツイート数といいねの数が合計で1800を超えており(@4GamerNewsのツイート),多くの読者の興味を惹いたようだ。並み居る話題作をかき分けて飛び入りしてきた本作はどんなゲームなのか,TGS 2022のインディーゲームコーナーにブースを構えるストロマトソフトを取材してきた。

 そこで分かったのは,ストロマトソフトは,ただしく“百合趣味が集まるサークルのようなインディーゲーム会社”であり,「俺的にはこうなんだよっ!」と解釈を巡って目下戦争中だった。

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ウィッチ・アンド・リリィズってどんなゲーム?


 ウィッチ・アンド・リリィズは,女の子同士の絆(百合)をテーマとする3DダンジョンRPGだ。リリース時期は2024年初頭を予定しているという。

 プレイヤーはアバターや人格がない神の視点となって,女の子だらけの冒険者パーティを操り,広大な迷宮を探索しながら,世界を創ったとされる魔女の謎を解き明かしにいく。
 奥深いターンバトルに広大なダンジョン探索,特徴的なジョブ8種とキャラクターメイク。さらには,女の子同士の絆を深めてカップルにするもよし,三角関係にするもよしと,百合の設計図は思うがまま。

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 先述したとおり,クラウドファンディングはCAMPFIREでスタートしており,支援額に応じてさまざまな特典が用意される。当初の目標額は100万円だったが,取材を決めた時点で支援総額は300万円,取材時には約500万円とグングン伸びている。現在は,複数用意されたストレッチゴールに挑戦している段階だ。

 資金調達の理由については,クラウドファンディングページで以下のように述べられている。(一部を抜粋して引用)


■なぜクラウドファンディングをするのか(抜粋)

 私たちストロマトソフトは既に本作にかなりの投資をしています。これまで約2年間、自分たちの私費を(そして借金を!)開発に投じてきました。ウィッチ・アンド・リリィズをより良いものにするため皆様のご支援をお願いしたいのです。

集まった資金は、

・ゲーム開発資金
・パートナーへの開発費用支払い
・アートワークの拡充
・プロモーション費用
・リターングッズの製造費・送料
・CAMPFIREの手数料


に充てさせていただきます。さらに皆さまの支援が集まることで、この「百合×ダンジョンRPG」というコンセプトがファンに受け入れられたことの証明となり、パブリッシャーや投資家を巻き込んだ更なる資金調達が可能となります。皆様のご支援以上にゲームを拡充させていける可能性が出てくるのです。

(中略)

 ぜひ、私たちと一緒に、百合ゲームにあふれる素晴らしい未来をつくりましょう!



実際にブースで話を聞いてみた


 ストロマトソフトのブースを取材したのは,TGS 2022の会期3日目で一般公開日初日にあたる9月17日のこと。訪問を迎えてくれた担当者は,ストロマトソフトの代表者ではなかったものの,口が達者で場慣れしており,プロの空気が感じられた。
 そこで名刺交換をしたところ,現状を確認していないため名は伏せるが,多くの人が知っているであろう,とある有名な会社の方だった。氏曰く,ストロマトソフトのメンバーは各方面の百合好きであり,在籍者の大半が業界プロフェッショナルの副業者で構成されているのだとか。

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 手始めにゲームシステムから尋ねると,「Wizardry」「世界樹の迷宮」など,クラシカルなダンジョンRPGをベースに設計しつつ,香る百合の花を添えたものだという。

 古来より,ダンジョンRPGでは「人格なきキャラクターたちに,自分なりの妄想設定を加える」といった遊び方が主流だと考えているが,ウィッチ・アンド・リリィズはそこに一滴のエッセンスを加えたと言える。

 なぜこうしたのかについては,「百合風味のWizがなかった」「百合が好きですから当然,百合ゲーにしますよね」とのことだった。

 ゲーム内の百合要素は,「女の子たちは好感度を持つ」「ダンジョンから戻ると好感度が変化」「値に応じてパートナーになるなど,関係も変化」といったもの。
 プレイヤーも神の視点であるが,それとなく人格のない選択肢などで,そよ風で舞った花びらに目を取られていたらそこには……といった,そういう感じの流れや思惑で関係性に手を加えられるのだとか。

 それを正義と呼ぶのか邪悪と呼ぶのかは天に任せるが,鉄の掟として「百合に挟まる間男の匂いは断じて許さない」といった姿勢が厳守で,世界を邪魔するフレーバーは開発陣自らの手で撲滅が約束されている。

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 界隈の熱量を一気に集めたクラウドファンディングの状況については,やはり驚いているという。しかし,プロモーションのイロハをよく分かっていそうなプロが在籍しているだけあって,PRプランを立てて,初動でどの程度の成果が見込めるかなどは算段をつけていたらしい。ところが……。

 事のはじまりは,本クラウドファンディングの支援でもっとも高額な50万円のリターン「百合の街の支配者コース」だった。同コースには,支援者が「ゲーム内に街の領主として登場できる権利」が含まれているのだが,ここに縁があったというVTuber由持もにさんが速攻で乗ってきたことで,由持さん側のファンが沸騰したという。

 先述したとおり,取材時点で支援総額は約500万円に達しており,その数字は本稿を執筆している段階で,さらに伸びている。

本稿を執筆している2022年9月17日21:00時点でこの状態だ(上記の画像はクラウドファンディングページをキャプチャしたもの)
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 一方で,クラウドファンディングで莫大な資金を集めることに成功したものの,かえって過剰な資金と無謀な計画によってプロジェクトが肥大化し,挙げ句の果てには……的な失敗談も聞くだけに,その点は尋ねた。

 ただ,熱心なファンは初動の段階で気付いたのだろうが,先述したように業界のプロフェッショナルで構成され,PRプランも練っていたチームだけに,目標金額以上のストレッチゴールに関しては夢や希望を語るのとはまた違い,すぐに提示できるような体制が取られていた。
 そういった動きを聞いていると,今後はどうか分からないが,現状だけ見れば計画が複雑になってもどうにかしてもらえそうな雰囲気が感じられる。

 ただし,肝心のゲーム内容に関してはマズいようだ。本作の開発スタッフは下記のとおり実績のある有名なクリエイターが名を連ねているが,各々が“百合をどんな温度感で,どこまで表現するのか”を巡り,討論を重ねているのだという。


■製作・企画:ストロマトソフト
代表作:「百合乱慕」「ヤバ百合会の妹たち」

■キャラクターデザイン:magodesu
代表作:「宇宙パトロールルル子」

■シナリオ:祁答院慎
代表作:「コープスパーティー」/「Death end re;Quest」シリーズ

■企画:山岸功典
代表作:「スターオーシャン」シリーズ/「ヴァルキリープロファイル」シリーズ


 最低限,本作はあくまで全年齢対象を厳守すべく,ソフトからハードまで愛の形はいろいろあれど,その範囲は保たれる。そのうえで,本格的にゲーム開発が始まった現在,表現の如何はイベントのバリエーションでカバーするも,やはりというか趣味嗜好でひたすらに揉めていると担当者は笑った。

 本作の開発体制についても尋ねてみた。メインのゲーム制作は現在2名で,サポートなども検討しているが,安易な外注に関しては想定していないそうだ。
 というのも「どんなに技術や経験があっても,それこそ百合に挟まる間男みたいなゲーム作りをされると,たまったものではないですから」と,理解なき者の歩みを拒む,古い温室の扉のように,門戸を開かせて仲間入りするにはそれなりに説得力のある合い言葉が求められそうだ。

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 といったところが,ウィッチ・アンド・リリィズの現状である。

 リリース予定も最低1年半から2年は先のため,待ちの期間は予想もできないほどに気長な未来であるが。静かにひっそりと咲くことが美学な秘密の庭だけに,彼らの熱量は消えることなく燃焼するだろう。

 私としては,乙 ひより先生のような,つぼみが咲ききる直前に淡く散ってしまうような,ほろ苦い感じを所望します。

4Gamer「東京ゲームショウ2022」記事一覧


「ウィッチ・アンド・リリィズ」公式サイト

「ウィッチ・アンド・リリィズ」クラウドファンディングページ(CAMPFIRE)

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