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印刷2022/11/02 17:47

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ついに試遊卓が復活した「ゲームマーケット2022秋」。会場で遊べた新作タイトルから,オススメ6作をまとめて紹介

 2022年10月29日と30日に,東京ビッグサイトで開催された国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2022秋」。アナログゲームファンにはもはや恒例の祭典だが,今回はここ数年と大きく違う点が一つある。これまで感染症対策として休止されていた“試遊卓”の復活だ。

 会場で新しいゲームと出会い,その場で遊び,しかも気に入ったら購入して帰れるというのは,ほかならぬゲームマーケットの醍醐味の一つでもある。これを待っていたという人も多いはずで,実際に多くのブースで試遊が行われていた。
 そんなわけでこの記事では,試遊卓復活の嬉しさに任せ,1日目に回れる限りの試遊卓を回ってきた筆者による,とくに面白かった6タイトルをまとめて紹介してみたい。

こちらはJELLY JELLY GAMESブースの様子。販売タイトルを紹介するスペースのほか,ゆったりとした空間に試遊卓が配置されていた。こうした試遊を前提にしたブース配置を見るのは久々だ
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「ゲームマーケット」公式サイト



カワダ「ヨンオクロック」


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 まずはカワダが11月26日に一般販売を予定している新作タイトル「ヨンオクロック」を紹介しよう。こちらは特定のテーマを想起させない,アブストラクトゲーム(抽象的なゲーム)と呼ばれるタイプのタイトルだ。パッと見ではチェッカーや囲碁などに近い印象を受けるが,本作には多少のランダム要素が含まれているため,いわゆる完全情報ゲームではない。


 ゲームの基本ルールは,いわゆる4目並べだ。2人のプレイヤーが“白”と“黒”に分かれ,4×4マスのボード上に白か黒のコマをターンごとに置いていく。それを繰り返して,相手より先に自分の色を4つつながるように並べたら勝利となる。
 ポイントは各プレイヤーがゲーム開始時に持っている8つのコマの中に,相手の色のコマが2つだけ紛れ込んでいることだ。さらにゲーム開始前にコマをシャッフルし,色が分かる面を相手に向けて並べるルールがある。

準備が完了した直後はこんな感じ。相手から出てくる色の順番は見えるが,自分のコマの色は見えない
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 「手元のコマは右側から順番に1個ずつ使う」ことになっているので,引いたコマを場に置かないということはできず,8手番のうち2回は必ず相手をアシストする形になってしまう。そして,各プレイヤーはいつアシストが発生するのかを,相手だけが知っている状態になるわけだ。

 ここまでだと運要素の強いだけの4目並べだが,さらに重要なのがコマを配置した後に実行できるアクションだ。これが“直前に配置したコマ以外”を1つ選び「1マス押す」というもので,これを使って予想外の位置から勝利条件を成立させたり,危険な状況を回避したりできる。
 押した先にコマがある場合は,押したコマが既存のコマの上に重なり,それ以上は押すことも,新しくコマを重ねることもできない“ロック状態”となる。色は最上段のコマだけが意味を持つため,相手のコマに重ねれば色を上書きできるわけだ。

同じ色が4つながってさえいれば,形は問われない
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 実際にプレイしてみると,移動とロックに関するルールと「互いの手駒に相手の色が混ざっている」「いつ相手から自分の色が出てくるかが分かる」という2つの基本ルールが非常によく噛み合っているのが感じられる。
 公開されている情報を活用し,自身の有利になるように立ち回ると,相手はその動きから,自分がいつアシストを出すことになるかが察知できてしまう。このためゲームに慣れて定石が分かってきた辺りから,配置でブラフを掛け合うような戦いが展開される。

ルールは1枚のサマリーだけで十分に理解できる。この手軽さが本作の魅力だ
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 とはいえランダム要素があるので,チェスなどのように数手先まで読み切るようなゲームを期待すると,少々肩透かしをくらうかもしれない。しかし,最大でも8手番で終わる収束性の高さと,思考ゲームとしての手軽さは非常に良質に感じられた。
 小ぶりながらもコンポーネントの質感も良いゲームなので,手軽な2人用のゲームを探している人にはオススメできるタイトルだ。

タイトル ヨンオクロック(4 OQU LOCK)
メーカー カワダ
価格 1760円(税込)
プレイ時間 10〜15分
対応人数 2人

「ヨンオクロック」公式サイト



GOTTA2「Limitation -リミテーション-」


 エリアマジョリティ(陣取り合戦)×心理戦を謳う新作タイトル「Limitation -リミテーション-」は,クラウドファンディングを経て発売が決定したタイトルだ。発売時期は2022年秋とのことで,会場では「DINO DERBY きょうりゅうレース」とともにプレイアブル出展が行われていた。

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 本作のテーマは,新たに建造した宇宙船による宇宙探査だ。プレイヤーは自身が担当する勢力(色)のクルーをロケットに送り込み,各ロケットの探査活動でより多くの功績をあげることを目指す。


 各プレイヤーは,カード1枚とクルータイル1枚(自分の色)を持ってゲームを開始。場には3つの「ロケット先端カード」(以下,先端カード)が置かれているので,手番が来たプレイヤーは手札を「ロケットの船室」(以下,船室)としてロケットに組み込むか,すでに置かれている船室にクルータイルを送り込むかのどちらかを選択していく。

 クルータイルの裏面には0〜3の数字が書かれており,この合計が各ロケットへの自勢力の影響力を意味している。クルータイルの配置時は数字は非公開で,各船室に配置できる数は2枚まで。なので,ロケットの席は常に奪い合いだ。

先端カードにはクルータイルを1枚だけ配置できる。1手番目にクルータイルを使いたい場合は先端カードに送り込もう
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 先端カードに記載された規定数の船室が配置され,かつ「エンジンルーム」がロケットに組み込まれると,ロケットを“完成”させ探査に向かわせられる。完成後は新たな船室を加えたり,クルータイルを送り込んだりできないので,いつ出発するかを見極めるのも大切だ。

カードを置いた場合はクルータイルを1枚補充し,クルータイルを置いた場合はカードを1枚補充できる。そのため手札は常に「カード2枚」「カード1枚とクルータイル1枚」「クルータイル2枚」のいずれかとなる
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 探査に向かう先は,先端カードの前に置かれた2枚の「プラネットカード」のどちらかだ。プラネットカードには得られる勝利点が順位ごとに書かれていて,到着したロケット内に配置されているクルータイルの影響力順で,この点数が得られる仕組みだ。
 素直に1位のプレイヤーが大量得点できる惑星もあるが,2位の方が多く点数を得られるカードもあったりして,カードやクルーを配置するにあたっては,「誰がロケットを飛ばす権利を持つか」も考慮する必要がある。

完成したロケットがどちらの惑星を探査するかは,ロケットの完成を宣言したプレイヤーが決定できる
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 本作の面白いポイントは,高い数字を持つクルータイルを置くのが常に正解とは限らないところだ。というのも,先端カードにはロケットの完成に必要な船室数のほかに,“食料上限”を示す数値が記載されていて,ロケット内部のクルータイルの合計値がこの上限を超えてしまうと,一番影響力のあるプレイヤーのクルーは船を降ろされ,勝利点が獲得できなくなってしまう。

 高い数字のクルータイルを使えばロケット内の影響力争いで優位に立てるが,クルータイルの数字は非公開なので,強気に行き過ぎても勝利から遠ざかってしまう。このジレンマこそが,本作の駆け引きの中核といえる。

数字が0のクルータイルも存在する。これは影響力には関与しないが,配置するだけで相手にプレッシャーをかける効果がある。「もうこれ以上乗れませんって!」などと適当なことを言いながら。無能クルーを船に乗せるといい
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 またカードには,船室以外にもさまざまな効果を持つものがある。配置されたクルーの合計値が3以上でなければロケットが墜落する「エマージェンシー」や,2枚までクルーの数値を確認できる「セキュリティルーム」などの存在が,駆け引きを面白くしてくれる。

「エイリアン」カードは,影響力3の第三勢力「エイリアンタイル」が指定した船室に配置する。うまく使えば即座にエマージェンシーを解決できるが,大飯食らいなので食料のキャパシティを圧迫してしまう
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 実際にプレイしてみると,最初は非公開情報が多くて判断に困るように思えたが,カード効果を駆使することで,場の情報が少しずつ見えてきた。自分しか知らない情報を元に心理戦を仕掛けるのは,こういったゲームの醍醐味だろう。
 手札とクルータイルの枚数制限もよく効いていて,ちょっと不自由さを感じながらも,ちゃんと判断に迷うだけの選択肢は用意されている。同ジャンルの作品としては比較的短い時間で楽しめるので,手軽に心理戦を味わいたい人にオススメしたい一作だった。

ロケットはかなり長く延ばせるので,プレイするときは十分なスペースを確保しておきたい。宇宙(スペース)だけに
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タイトル Limitation -リミテーション-
メーカー GOTTA2
価格 2500円
(ゲームマーケット価格)
プレイ時間 30分
対応人数 2〜4人

「Limitation -リミテーション-」公式サイト



サニーバード「ラインダイス」


 続いては,「もんじろう」「スティックコレクション」といった作品を手掛ける日本人ゲームデザイナー,居椿善久氏の手によるサニーバードの新作「ラインダイス」を紹介する。9月3日と4日に静岡市で開催されたイベント“ボードゲーム大祭”で初お披露目されたタイトルで,ゲームマーケット会場ではごく少数の先行販売が行われた。

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 基本的なシステムは,6つのダイスをコマとして動かす双六だ。各プレイヤーは手番に2つの小さなダイスを振り,その出目を使ってボード上の大きなダイスを動かしていく。最終的に,相手よりも早くすべてのコマをゴールさせたプレイヤーの勝利となる。
 なお本稿ではコマとして動かすダイスと,毎ターン振るダイスの混同を避けるため,コマとなる6つのダイスを「コマダイス」,毎ターン振る2つのダイスを「指示ダイス」と呼称する。どちらも正式名称ではないので,正しくは説明書を参照してほしい。

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 手番で振った2個の指示ダイスは,それぞれの出目を使って「自分のコマダイス1つを指示ダイスと同じ目に変更する」「指示ダイスと同じ目のコマダイスを,目に等しい数だけ進める」のいずれかを実行できる。
 指示ダイスを適用する順番は自由なので,例えば「6」のゾロ目が出た場合は,1つのコマダイスの出目を6に変更し,変更したコマダイスをそのまま6マス動かすことも可能。また,「1」の目は1〜6までのワイルドとして扱われ,そのタイミングでの都合の良い数字とみなせる。

ゴールを超過する移動はできないため,後半では低い出目も必要になってくる。ゴールに至るまで何回移動が必要なのかを計算しつつ,適用する出目を考えよう
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 最も重要なのが,本作の独自ルール「ライン」だ。同じ出目のコマダイスが隣接している状態を“ライン状態”と呼び,ライン状態を形成しているコマダイスは,1つの指示ダイスでまとめて動かせる。
 例えば「6」の出目でラインを形成している3個のコマダイスを対象として,「6」の出目を持った指示ダイスを適用すれば,3個のコマダイスが一気に6マス動かせるのだ。1つ1つのコマダイスを動かすよりも圧倒的に効率が良いので,いかにラインを構築していくかが,攻略の基本といえる。

ラインは「1」(ワイルド)の出目を含んでいても成立する。写真の状況では,「6」の出目で左端の「6,1」を6マス移動させることも,5の出目で「1,5,5」を5マス動かすことも可能
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 2つの出目を使って効率よくラインを成立させるパズル感と,狙った出目で一気にラインを押し上げる爽快感は,ほかのゲームではなかなか味わえない体験といえる。
 ただ本作は1対1の対戦ゲームでありながら,相互に干渉する要素が薄い面がある。ボードには「止まると相手の出目を1つ変更できる」という特殊なマスも存在するが,それ以外の部分はほぼ1人で進めるのと変わらないのだ。そのため能動的に相手の裏をかくような対戦を求めている人には向かないかもしれない。

 一方で,「キャントストップ」「ヤッツィー」のようなランダム性から生まれる爽快感を味わいたい人にはピッタリだ。とくに複雑なルールもなく,高級感のあるアートワークもあって,初心者がプレイするにも適したゲームだろう。

競技性を高めたい人向けに,ゴールしたコマダイスの出目が得点に,ゴールできなかったコマダイスが失点になり,複数回のゲームの合計点を競うルールも用意されているとのこと
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タイトル ラインダイス
メーカー サニーバード
価格 未定
(会場では3900円で販売)
プレイ時間 15〜45分
対応人数 2 or 4人

サニーバード 公式サイト
「ラインダイス」紹介ページ



JELLY JELLY GAMES「ゴールデンアニマル」


 JELLY JELLY GAMESが11月17日に発売する新作タイトル「ゴールデンアニマル」は,ゲームマーケット2022春で新ボードゲーム党が発表した同名タイトルのリメイク版だ。基本的なルールはそのままに,初版にはない新カードが追加されている。

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 本作は,“黄金の動物”を探してその手がかりを追っていく,“競り”をベースにしたボードゲームだ。プレイヤーは草原地帯に訪れた探検家となり,草原の3つの地域にリソースを割り振って,各所の手がかりカードを入手することで得点を稼いでいく。


 ゴールデンアニマルの最大の特徴は,なんといっても“3箇所で行われる同時競り”だ。
 手がかりとなるカードを奪い合う場は,「森エリア」「中央エリア」「川エリア」に分かれており,ラウンドごとに報酬となるカードが2枚,3枚,2枚の形で並べられる。プレイヤーは手札の「金貨カード」を各エリアに割り振り,同時に公開して競りを行う。

初期手札の金貨カードは「1,1,2,3」の4枚構成。「森カード」「川カード」を手札の間に差し込むことで,金貨カードを割り振る場所を決定する
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 勝利したとしてもカードは総取りではなく,1位から順に1枚ずつカードを獲得していく方式だ。出した手札は捨て札にならず,そのまま次のラウンドの手札として再利用できるので,競りに負けてしまったとしても大きな損を被ることは少ない。
 ただし,2枚のエリアに3人以上が入札してしまった場合は,1枚も獲得できないという状況が起こりえる。そのため特定のカードが絶対にほしい場合は,特定のエリアに一切入札せず,狙ったカードのエリアに注力するのも有効な戦略といえる。

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 だが,全員がカードを獲得したうえで“余り”が発生した場合は,1位のプレイヤーが残ったカードを総取りできる。例えば森エリアに1人だけ金貨カードを1枚入札していた場合,そのプレイヤーが森エリアのカードをすべて獲得できてしまう。
 なので誰がどのカードを収集しているのかを確認し,入札をいずれかのエリアに寄せる可能性を感じたら,その逆をいけば大きな利益が得られる,かもしれない。逆に勝負所では,一部エリアを切り捨てる勇気も必要だろう。

獲得できるカードには,単純に勝利点が得られるものと,ゲーム終了時に多く持っていることで勝利点が得られるもの,そして手札の金貨カードをアップグレードするものがある。例えば「4」の金貨カードは非常に強力だが,ゲーム終了時に勝利点が−2されるデメリットも
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 “競り”を中心としたゲームは,どうしてもプレイ時間が長くなりがちだが,本作は同時オープンの競りを3箇所で行うことで,ゲームの“間延び感”を解消している。手札の中身を並べ替えて入札先を決定するシステムも,入札枚数や意思決定の順序といった情報を隠しつつ,ゲームプレイ上の手続きを減らしており,全体的に無駄のないスマートな作品という印象を受けた。複雑なルールがないので,競り系ゲームの入門にぴったりだ。

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 強いて欠点を挙げるとすれば,獲得したカードは公開情報となり,かつ得点計算もシンプルなので,プレイ中に勝敗が見えてしまいがちなところだろうか。ゲームに慣れてきたら,獲得カードを非公開にしてプレイしても面白いかもしれない。

タイトル ゴールデンアニマル
メーカー JELLY JELLY GAMES
価格 1760円(税込)
プレイ時間 15分
対応人数 3〜5人

「ゴールデンアニマル」公式サイト



JELLY JELLY GAMES「ニゴイチ」


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 お次は「ゴールデンアニマル」と同じく,JELLY JELLY GAMESの新作である「ニゴイチ」だ。こちらは10月19日に発売済のタイトルだが,JELLY JELLY GAMESのブースで試遊できるようになっていたので紹介しよう。


 本作は,言葉をテーマにした“ワードゲーム”と呼ばれるジャンルのタイトルだ。
 場にはプレイヤー人数×2+1枚の「単語カード」が並べられ,各プレイヤーは場からランダムに選ばれた2枚の単語カードから連想したキーワードを発表する。このとき各プレイヤーに割り振られる単語カードは被ることはなく,つまり場にある単語カードの中で1枚だけ使われなかった“余り”が生まれる。そして各プレイヤーが発表したキーワードから,余った単語カードを推理するのが,本作のゲームの目的だ。

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 余った単語カードを見事的中させれば20点が獲得できるが,自分が連想に使ったカードをほかのプレイヤーに指定されてしまうと−10点になってしまう。なので自分のキーワードを意図的に難しくするのは悪手となり,対戦ではありながら,半協力ゲームとしてゲームは進行することに。

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 こういったワードゲームの常だが,組み合わせ次第でキーワードを作り出す難度は,かなりムラが出ることになる。たとえばカメとクジラでキーワードを考えるなら,「水生生物」や「肺呼吸」などいくらでも思いつくが,空手とカレーを1つのキーワードで示すのは容易ではないだろう。
 本作が面白いのは,キーワードに使われる単語が被らないため,導くのが容易なキーワードが単語の候補を減らしてくれる点にある。互いのキーワードが意図しない形で互いをフォローしあう形となり,間接的な協力関係が生まれるのだ。うまく各キーワードが参照している単語を切り分け,難しいキーワードの答えを探し当てた瞬間には,えもいわれぬ達成感を味わえることだろう。

「ニンジン」と「日曜日」のつながりがまったく思いつかず,ニンジンを連想できるウサギを使ったおめでたい(休日っぽい)料理として「うさぎの丸焼き」を提出する筆者。ほかのキーワードが比較的分かりやすかったお陰で,うまく切り抜けることができた
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 またゲーム終了時に,ゲーム全体を振り返りやすくなっているのも好印象だ。各プレイヤーはホワイトボード式の個人ボードにキーワードや得点,推理の結果などを書き込んでいくので,これまでに提出したキーワードが自然に記録されていく。このためゲームが終わったあとの感想戦が非常に捗るのだ。
 こういったワードゲームはレクリエーションの役割を期待されることも多いので,そういった意味でも良質なタイトルと言える。対応人数も最大6人と幅広いので,プレイする環境次第では定番の1本になりそうだ。

コンポーネントの見栄えもよく,一目で「場で何が起きているのか」がすぐ分かるのもポイントが高い
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タイトル ニゴイチ
メーカー JELLY JELLY GAMES
価格 2750円
プレイ時間 30分
対応人数 3〜6人

「ニゴイチ」公式サイト



講談社「最強転生 俺TUEEE系二人専用ドラフトカードゲーム」


 講談社によるクリエイター支援プログラム“講談社ゲームクリエイターズラボ”の1期生として,唯一のアナログゲーム「最強転生 俺TUEEE系二人専用ドラフトカードゲーム」(以下,最強転生)がプレイアブル出展されていた。8月5日に発売済みのタイトルだが,こちらも遊んでみて面白かったので紹介したい。


 タイトルにあるとおり,本作は2人対戦専用のドラフトカードゲームだ。なおアナログゲームのジャンルにおける“ドラフトゲーム”とは,共有されたカードやタイルのプールから,各プレイヤーが数枚ずつ手札を選択して取得するメカニクスを示している。

 「最強転生」では,まず各プレイヤーに規定枚数の手札が配られる。その手札から1枚を選択して手元に置き,残った手札を相手プレイヤーに渡す(同時に相手からも渡される)。渡された側はまたその中から1枚を選び,手元に置く。これを繰り返して手札が尽きたら,手元に残ったカードを確認し,条件を満たすとゲーム終了。勝者が決定される仕組みだ。

本作は書籍流通のため,書店での購入が可能だ
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 とはいえ,ここまでの1ラウンドで決着が付くことはまずないはずだ。カードには5つの種類――「信頼」「知識」「戦力」「破滅」「資源」があって,それぞれが独自のリソースを生み出すのだが,このリソースがゲームの終了条件に関わってくる。例えば手元のカードから得られる「知識」の合計が7以上ならばそのプレイヤーが勝利「戦力」が相手よりも7以上多ければ勝利,反対に「破滅」が7以上であれば敗北などなど。ただし何もバフがない状態でこれを満たすのは,なかなかに難しい。

1枚の依頼書カードから得られるリソースは最大3個。カード運次第では簡単に勝利条件を満たせてしまうので,ドラフト時は相手に特定のリソースを独占されないようにしたい
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獲得したリソースはトークンではなく,個人ボードにあるトラックで管理する。なお「信頼」は特殊なリソースで,相手より多いときに“勲章”を1つ獲得。山札が尽きたときは,この勲章の数で勝敗が決せられる
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 さて,ゲームが終了しない場合どうなるかというと,手元に残した手札をすべてひっくり返す。実は本作のカードは上下で別のカードになっており,ドラフト時には「依頼書カード」,そしてひっくり返すと「スキルカード」として扱われる(依頼書カードは冒険の結果として得られたリソースを意味している)。そしてプレイヤーは手元のカードから1枚を選択し,これを次のラウンド以降に適用されるスキル(多くは各リソースへのバフ)として獲得するのだ。

獲得できるスキルカードの枚数は「資源」が7以上あると+1される。勝利条件を満たせない場合は,次のラウンドを見越して「資源」を集めるといい
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 ここまでは,なかなか硬派なドラフトゲームという印象だが,本作が面白いのはここからだ。本作は異世界転生ものらしく,各プレイヤーにはゲーム開始時に3枚の「チートスキル」が配られる。そして,これらのスキルは“チート”の名に相応しいデタラメな能力を持っている。
 最初から特定のリソースを大量に持っているといったシンプルに強力なものはもちろん,依頼書をいきなりスキルカードに変換したりと,相手の計画を破壊するカードが勢ぞろい。中には「このチートを未使用の間,数値を偽ってよい」(相手にバレたらチートカードが使用済みになる)といった,根本的なルールを破壊しにくるものすらある。

チートカードはゲーム開始時に5枚配布され,うち3枚を獲得可能。異世界転生前に神様に呼び出されてスキルを選んでいるシーンのような,なんとも言えないワクワクした気持ちを味わえる
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 とはいえ,あくまでベースは硬派なドラフトゲームなので,チート能力にだけ頼っていても勝利は掴めない。相手が必要としているカードを見極め,必要に応じてカット(妨害)しつつ,自分の勝利条件の達成を目指す基本は揺らがないのだ。

 複数の勝利条件がある2人対戦型のドラフトゲームとしては「世界の七不思議 デュエル」に近いものを感じたが,カードを配るだけでゲームを始められて,かつチートスキルでスピーディに展開する本作には独自の魅力がある。意外と一筋縄ではいかない異世界転生バトルを味わいたい人は,ぜひ触れてほしいタイトルと言える。

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タイトル 最強転生 俺TUEEE系二人専用ドラフトカードゲーム
メーカー 講談社
価格 3300円(税込)
プレイ時間 20〜30分
対応人数 2人

講談社ゲームクリエイターズラボ 公式サイト

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