プレイレポート
[プレイレポ]ゴジラの新たな戦いの舞台は“ボードゲームの盤面”。「ゴジラ ボクセルウォーズ」は,試行錯誤が楽しい戦略シム風パズルゲーム
ゴジラ ボクセルウォーズは,3Dボクセルで描かれたゴジラをはじめとする東宝特撮怪獣を指揮し,侵略生物を撃退していく戦略×パズルゲームだ。小さなおもちゃの盤面で,ギミックやオブジェクトを駆使したバトルを楽しめる。本作のプレイレポートを,“ゴジラの日”である本日(11月3日)お届けしよう。
※Epic Games Storeは近日中,Switch版は2024年内にそれぞれリリースが予定されている
「ゴジラ」
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命中率は常時100%! ランダム要素一切なし!
情報を余さず読み解き,最適解を探し出せ
ゴジラの新たな戦いの舞台として用意されたのは,机の上に広げられた小さなボードゲームの盤面だ。ボードの周囲にはおもちゃや文房具が散らかっており,本作における戦いが主人公(プレイヤー)による遊びのようなものであることが示されている。
戦いを指揮する主人公が敵として想定しているのは,キノコのような姿をした侵略生物「マッシュ」だ。プレイヤーは,ゴジラをはじめとする怪獣たちを出撃させ,街を暴れまわるマッシュを倒さなければいけない。
ただの遊びと思うかもしれないが,しかし,ゲーム中に現れるストーリーのテキストには鬼気迫るものがあり,かなりの本気度と現実感がある。果たしてこの机の上の戦いは単なるごっこ遊びなのか,それとも別の何かなのか……。真実はメインコンテンツとなるストーリーモードを攻略することで解き明かすしかない。
マップに配置されたビル群の1つには,赤い屋根の小さな家が混じることがある。隣接マスを怪獣が通ると「ドシン!」とステージ全体が震える演出が。これは一体……? |
一部のステージには「報告書」と呼ばれるストーリーテキストが配置され,これを取得することで世界の状況を断片的に知ることができる |
ストーリーモードは,シンプルなステージクリア型のコンテンツだ。8×8マスのスクエアで構成された小さなマップで,ゴジラや仲間の怪獣たちを指揮し,人間を攻撃する侵略生物たちを撃退していこう。
敵味方のユニットや配置はステージごとに固定されており,敵対ユニットと,敵に侵食された建物をすべて破壊すればステージクリアだ。逆に一定ターンが経過するまで敵を殲滅できなかったり,ゴジラがやられたりした場合は敗北となる。
システム面での大きな特徴は,命中率の概念が存在せず,攻撃が(敵味方問わず)必ずヒットすること。あらゆるアクションが“書かれた通りの効果”を発揮してくれる上に,敵ユニットが実行するアクションは事前に提示されるので,詰将棋的に最適解を探し出せる。
より少ないターン数で敵を殲滅するほどスコアが上昇していくが,マップには民間人が住む建物が存在し,攻略中に一定数以上の住民が被害を受けると即敗北となる。敵を移動させるアクションで攻撃をそらしたり,障害物で射線を切ったりして,民間人を戦いに巻き込まないように立ち回ろう。
押し出した先に建物やユニットが存在した場合,ぶつかって互いに1ダメージが入る。2ダメージの攻撃で押し出しをヒットさせれば合計3ダメージ,押した先が敵ユニットなら合計4ダメージを与えられる |
最後の敵ユニットを撃破する瞬間には,カメラワークが変化する演出も用意されている |
先行作品との差別化要素は“パズル感”の強化
試行錯誤の快適化で,より悩める作品に
ここまでの内容でインディーゲームファンは気付いたかもしれないが,本作の基本システムは名作ローグライクSLG「Into the Breach」(以下,ITB)とほぼ同じだ。キャラクターを育成したり,強化したりする要素はないものの,ITBを意識して作られているであろう部分が多く見られ,比較は避けられないだろう。
しかし,基本システムこそ共通しているものの,実際に遊んでみると手触りはかなり違っていた。ここからは,本作の独自要素について触れていく。
本作に独自のプレイ感覚を与えている要素は,戦闘中に集めたリソースを使って新たなユニットを呼び出せる独自システム「召喚」だ。
これはなかなか強力で,すでに移動と攻撃を終えていても問題なく実行でき,さらに召喚した味方ユニットは即座に1回だけアクション(攻撃)を行える。これによって,パッと見の盤面からは想像もできないほどターン数を圧縮できるのだ。
たとえば,最初に召喚可能になるラドンは,隣接するユニットをオブジェクトにぶつかるまで押し出す能力を持っている。敵を移動させるのはもちろん,行動終了したゴジラを押し出して一気に長距離を移動させることも可能と,召喚を介することで多彩な攻略法が見えてくる。
一見すると2ターンで勝利条件を満たすのは不可能に思えるステージだが…… |
召喚したラドンの押し出し効果を使えば,遠く離れた位置への移動が可能になり,一気に2ターンでの攻略が現実的になる |
ただし,召喚を行うには「Gパワー」と呼ばれるリソースが必要だ。基本的にすっからかんの状態でバトルが始まり,「侵食された建物」を破壊してGパワーを集める必要があるが,敵を放置すれば民間人が攻撃されてしまう。こうしたジレンマを,うまく解決できる手順を見つけ出した瞬間の爽快感はなかなかのものだ。
言葉で聞くと難しそうにも感じられるシステムだが,召喚による戦略の柔軟性がある一方で,ユニットの成長要素は存在せず,召喚できるユニット自体もステージごとに規定されているため,「どこから考えればいいか分からない」といった状況には陥りにくい。
加えて,状況を再現すれば必ず同じ行動を取り,ランダムな要素が徹底的に排除されているので,どんなステージにも必ず“最適解”が存在する。手触りとしては,戦略シミュレーションの形式上でパズルゲームをしているような感覚に近い。もちろん,東宝特撮怪獣好きであれば,「あの怪獣はどのような特徴を持っているのだろう?」という楽しみも生まれる。
パズル的な試行錯誤も快適に行えるよう調整されており,アンドゥ(一手戻る)機能はターンをまたいで使用できるほか,演出の高速化も可能だ。もちろん,アンドゥを使ったからといって攻略時の評価が変わることもないので,どんどん動かしながら攻略法を考えよう。
ヒント機能もあるので,完全に行き詰まってしまうことはないだろう。ただ,本作のヒントは「ヒントチケット」を消費して1枚につき1ターンの最適手順を参照できるというもので,ヒントと言うにはやや直接的に過ぎる部分があるのは否めない。
序盤よりも終盤の“詰め”の部分のほうが難しいことが多いので,どうしても難しいステージを攻略するには,大量のチケットを消費して「答え」をそのまま見てしまうような形になる。必ずしも最適手順を通る必要はないので,チケットの利用は慎重に行おう。
なお,本作の各ステージは,最適解を意識せず遊べば難度が大幅に下がった“お手軽SLG”っぽく遊べるように作られている。ターン制限はかなり緩いので,ただクリアを目指すだけなら厳密な計算などは不要だ。結果が以降のステージに影響を与える要素も無いので,自分のペースで遊べるのは本作の魅力の1つと言えるだろう。
ストーリーモードをある程度進めると,自分でステージを作成できる「つくるモード」を遊べるようになる。作成したステージはオンラインでの共有が可能で,人気ランキングも用意されているなど,かなり力が入っているようだ。
つくるモードのパーツとして使用できるユニットやオブジェクトはストーリーモードの攻略状況に応じて解禁されていくので,遊べば遊ぶほど多彩なステージを作れるようになる。
手触りは良好で,ステージ作製中はいつでもテストプレイを行えるため,作りながら考えられるのが嬉しいところ。こういったパズルは「最終的にやってほしい動き」から逆算していくと作りやすいので,柔軟なテストプレイ機能があるだけで一気にやりやすくなる。
ちょっと気になったのは,ユニットやオブジェクトの配置は必ず1つずつ行う必要があり,コピー&ペースト機能がないことだろうか。単なる障害物や広範囲に広がる溶岩などを1マスずつ配置するのはわりと面倒なので,このあたりはアップデートでの改善を期待したい。
パッと見ではかなりITBに近い本作だが,前述の通りそのプレイ感はかなり異なる。一定のランダム要素を含むITBが「パズル的な要素のある戦略シム」だったのに対し,必ず完璧な攻略手順が存在する本作には「戦略シム風のパズルゲーム」といった印象を受けた。
単にシステムをパズル寄りに変更しただけでなく,そうしたゲームデザインの変化に合わせたシステム作りも丁寧に行われているのも好印象だ。独特なビジュアルを生かしたストーリーにも引き込まれるものがあり,想像以上に熱中して遊んでしまった。
ハードモードも含めれば,ストーリーモードのボリュームとパズルゲームとしての手応えはともに十分。つくるモードで有志によるステージがが公開されれば,より長く遊べる作品になっていくことだろう。
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