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進化を続けるマダミス界隈。 「ゲームマーケット2023秋」で見かけたタイトルをまとめて紹介
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印刷2023/12/15 15:00

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進化を続けるマダミス界隈。 「ゲームマーケット2023秋」で見かけたタイトルをまとめて紹介

 2023年12月9日と10日に開催された,アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2023秋」。すっかり定番となったマーダミステリー(以下,マダミス)ジャンルにおいても,数多くの新作が発表され会場を賑わしていた。新旧の関連作品まで含めれば,その数は200点近くにもおよんだほどで,ジャンルとしての円熟が感じられる。

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 本稿では,会場を実際に歩いて見つけたタイトルを,写真と共に紹介していく。また現在のマダミス界隈のトレンドについても少し紹介しているので,合わせて一読いただけたら幸いだ。

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「ゲームマーケット」公式サイト



マダミスから生まれた新ジャンル「ストーリープレイング」


 企業,個人レーベル問わず,多くのマダミス作品を取り揃えた「マーダーミステリーブース」では,今回もゲームマーケット会場で販売されている,約半数のタイトルが集結していた。故に同ブースを見て回るだけでも,現在のマダミスシーンを一望できたと言えるだろう。

会場してすぐにかなりの賑わいを見せていたマーダーミステリーブース。あっという間に,レジまで数十分の待機列を形成していた
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 なお,これまではStudio OZONが単独で運営していた同ブースだが,今回はゲームマーケット主催のアークライトの申し出により,共同運営の形が取られていた。このためWebサイトの設置や情報収集,出展作品の選定なども,共同で行われたそうだ。
 Studio OZONでは,同社の主催により夏に開催する「マーダーミステリーフェス」に集中するため,ゲームマーケットへの出展は年に一度にするプランもあったそうだが,今後は春と秋のゲームマーケット双方に参加する予定とのことである。

 ちなみに次回「ゲームマーケット2024春」では,今回の2〜3倍の広さのブースを予定しているという。扱う作品数も広さに応じて増えることが予想され,主催者側との連携により,マダミス関連の出展は,同時にマーダーミステリーブースでも作品を販売できるプランを用意する方向で,検討しているとのことだった。

早くも定番になった感のある,JOLDEENOの「ミステリージャム」シリーズ。第3弾「Aquaphobia/羊たちの虚言」は,会場特価3500円(税込)で販売されていた。なお通常価格は3850円(税込)とのことだ
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謎解き団体Tumbleweedのマダミスレーベル・REDRUMからは,第2弾「虚像のF」がリリースされた。マーダーミステリーブースでの販売分は,開場10分程で完売したという
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オンライン作品「あの夏のアンタレス」「サイキック免許更新センターへようこそ」で知られるユウグレノートの九尾まどか氏は,新作プレイアブルミステリー「黒革の手帳はもう語らない」(税込1000円)を発売。作り込まれたコンポーネントやWebサイトを参照しながら,じっくり推理を楽しめる
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 そんな中,このところ勢いを感じるのが,日本のマダミスシーンから生まれた新ジャンル「ストーリープレイング」だ。その勢いを証明するように,マーダーミステリーブースでの売り上げ上位5作品のうち,3作をストーリープレイングが占めており,「裸足のサンドリヨン」「銀の瞳の君を求めて」「魔法使いと眠りの森」が,それぞれ人気を博していた。

マーダーミステリーブースで参加可能だった,周遊型ミステリーゲーム「君と僕の妖怪試験」。脱出ゲームに近いものではあったが,可能性を感じる試みと言える
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 うち「銀の瞳の君を求めて」は,2021年にリリースされストーリープレイングという呼称を定着させた名作として知られるタイトルだ。キャラクターになりきって世界に飛び込むところはマダミスと同じだが,推理よりも物語体験を重視しているところが異なっており,作品の人気と共に,新たなファンを獲得していった。マダミス専門店である「Rabbithole」でも,“トークアトラクション”の名称でこうしたタイトルを扱っているので,この流れは確かなものだろう。

 また公演型のタイトルでは,ドラマ「アオイウソ〜告白の放課後〜」の原案で知られるとんとん氏によるストーリープレイング「天使は花明かりの下で」が現在話題を集めており,このタイトルを担当するゲームマスターごとに,ファンが付いている状況もある。
 ストーリープレイングの命名者としても知られるStudio OZON代表の久保よしや氏は,こうしたゲームマスターにファンが付く状況に,新たな可能性を見出しているとのことである。

久保氏「マダミスやストーリープレイングでは,ゲームマスターは司会進行役でありながら,体験の価値を増幅させる役割をも担っています。自分としては,スター性のあるゲームマスターがタレント化することで,新たなマネタイズモデルが生まれる余地があると思っていて。ここから2〜3年は作品そのものだけでなく,こうした“人”を軸としたビジネスにも,リソースを投じていきたいですね」

新作ストーリープレイング「裸足のサンドリヨン」の制作者であるすな氏と,「魔法使いと眠りの森」のAGATA氏。どちらも人気作だけに,ファンからカリスマ的な支持を受けるクリエイターだ
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お酒を飲みながら感想戦が楽しめる「呑みマダミ酒」


 公演型のマダミス企画「呑みマダミ酒(しゅ)」で知られる2Uプロジェクトのブースでは,同企画のパッケージ化プロジェクト第1弾「相席タクシー」がリリースされていた。

 「呑みマダミ酒」は,目黒にある競馬バー「馬なり」で行われている公演型のマダミス企画だ。1時間程ゲームを遊んだ後に(あるいは遊びながら),同店のこだわり料理とお酒を楽しみながら感想戦ができるとのことで,人気を博している。
 実際に遊んだことのある人なら言わずもがなだが,シナリオの仕掛けを紐解きながら,同じ卓を囲んだプレイヤーと互いの健闘を称えあう感想戦は,マダミスの大きな醍醐味の一つだ。むしろ感想戦こそが本番と感じる人も多いくらいで,2022年12月にスタートした「呑みマダミ酒」は連日予約枠がいっぱいになる盛況ぶりとなっている。

 今ではマダミスブーム初期の名作「ゲノムの塔」「ヤノハのフタリ」などで知られるしゃみずい氏,シンジュクジンチなどでオリジナル作品を発表しているぺよん潤氏なども「呑みマダミ酒」に作品を提供し,その数は17作品にも及んでいる。また2024年内にも,20作品のリリースを予定しているとのことである。

 人気の秘訣を,ブースに居合わせた2U代表のさわだ氏に聞いてみると,「お店の料理人は,美味しい料理とお酒に面白いマダミスがついてくるお店だと思ってますし,我々制作陣は,楽しいマダミスに加えて飲食まで楽しめるお店だと思っています(笑)。お互い自分が主役だと思っているのが,良い方向に作用しているじゃないでしょうか」と話していたので,本稿で興味が湧いた人は,ぜひ機会を見つけてお店を訪れてみるといい。
 なお同店では,物件さえあれば多店舗展開も視野に入れて考えているそうだ。よい物件に心当たりのある人,またシナリオを執筆してみたい人は,気軽に連絡してほしいとのことである。

「呑みマダミ酒」のパッケージ化第1弾「相席タクシー」。GMレスでプレイできるよう,丁寧なマニュアルが付属するとのこと。それでいて,読んでクスりと笑えるものに仕上がっているそうだ
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固定観念を打ち砕く意欲作「ミッシングファイター」


 ボードゲームやテーブルトークRPGの老舗であるグループSNEのブースでは,「第2回 新作マーダーミステリー大賞」で奨励賞を受賞した「ミッシングファイター」が,少人数向けの「Murder Mystery Mini」シリーズから発売されていた。

 グループSNEのマーダーミステリーでは,クオリティの高さに定評のある「MYSTERY PARTY IN THE BOX」シリーズが人気だが,制作陣としてはマンネリを招きかねない危機感を持っていたという。「ミッシングファイター」は,最新戦闘機のパイロットという設定や,飛行経路を推理に使用するという構造など,斬新な要素を多数含んでおり,グループSNEが感じていた閉塞感を打ち砕くカウンターとして,同社では高く評価しているとのことだった。

 今後,どんな作品に期待していますか,という問いに代表の安田 均氏は,「日本では,大喜利などのコミュニケーションゲームに人気が集まっています。マダミスの枠からいい意味ではみ出した,そういったジャンルとの化学反応が起きると嬉しいですね」と話していた。

ボードゲームからテーブルトークRPG,そしてマダミまで,アナログゲームのすべてが揃っていると言って過言ではないグループSNEブース。最新作の「卓上探偵団」シリーズ第5弾「顔のないアリス」は,早々に完売したそうだ
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映画のセットのように作り込まれた店舗「夜のくろうさぎ」


 新店舗「あそびばくろうさぎ」を西早稲田にオープンしたばかりの「夜のくろうさぎ」ブースでは,新作パッケージ作品「不思議の国のバベル」(税込2500円)が発売されていた。

 「夜のくろうさぎ」は,広島を拠点にゲーム制作やイベント運営,またLARPやマーダーミステリーの出張公演などを行っている団体で,10月にオープンした西早稲田のほか広島でも店舗を運営している。西早稲田の新店舗は,既存のものとは一風変わったお店を目指したとのことで,オリジナルカクテルを飲みながら,リッチな内装でマダミスやテーブルトークRPGが楽しめるとのことだった。

 “リアルマーダーミステリー”を謳う同店舗のマダミスは,プレイヤー自身が見聞きした内容で推理する,没入感を重視した演出が特徴だ。西早稲田店でも公演が行われており,すでに土日はすぐに埋まってしまうほどの人気ぶりだとか。
 なお,遊べるシナリオは4か月ごとにリニューアルされ,それに合わせて内装も変更されるとのこと。これは映画の大道具や美術を担当しているスタッフが手がけているそうで,そのクオリティにも注目だ。
 次回の新シナリオ「闇に彷徨いて嗤う」は2024年2月17日にスタートし,すでに予約の受付が始まっているので,ファンはお見逃しなく。

 さらに「夜のくろうさぎ」では,パッケージの新作「マンガマダミス」を準備中とのこと。ハンドアウトがすべて漫画仕立てになっていて,こちらは次回「ゲームマーケット2024春」で販売予定とのことだった。期待しておこう。

パッケージ作品「不思議の国のバベル」は,なんと会話禁止というルールを採用したマダミスだ。誰がバベルの塔を壊したのか,絵を描いたり,ジェスチャーしたりで推理を進めていく
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 認知度の向上と共に,広がり続けるマダミスジャンル。ゲームマーケット会場の外に目を向けても,人気シナリオ「京都炎上」から派生した時代劇体験イベントが東映太秦映画村で開催されたり,「マーダー☆ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」劇団ひとりさんの主演で映画化されたりと,話題には事欠かない。

 また「夜のくろうさぎ」の項でも紹介したように,専門店の形態も変化し続けている。同店のように内装に凝ったマダミス専門店には,ほかにも新宿の「ギョエンジンチ」や上野の「花花世界」などがあり,それぞれ特徴的な公演を行っている一方で,東銀座の「探偵キャンプ」ように,予約なしでフラっと来店しても楽しめる,カラオケボックスのような気軽さの店舗も登場してきている。

 来たる2024年には,一体どんなトレンドが生み出されるか。今から楽しみだ。

NAZOSTOREからは,今回も非常にリッチなコンポーネントのシリーズ第3作「殺意はカクテルに映る」が発売された。パッケージデザイン的にも,第1作「猟奇はカクテルに滲む」との関連性が気になるところ
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ボードゲームなども手がけているanagumaの新作マダミス「赤ずきん、舞踏会で死体と出会う。」は,実写化もされた青柳碧人氏の小説「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」の第1章をベースに作成された作品だ
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目を惹くパッケージデザインのMISTERY KNIVESからは,新作「PAANNIIICCC!!!」が登場。パズルを解きながら推理するマーダーミステリーとのこと
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ゲームデザイナー中村 誠氏のブースには,「マダミス666」企画から誕生した「キミと談りたい」のリパッケージ版が。入手できなかったファンも,これで手に取りやすくなったはず
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