連載
吸って,壊して,また吸い込む。自我を持った掃除機を操る「ACUVAC: A Suck and Blow Adventure」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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自我を持つ彼は,ただの家電ではない。部屋を綺麗にするという使命を帯びながら,その吸引力で平穏な日常を吸い込み,吐き出し,混沌へと変えていく。
散らかった部屋こそが彼のステージであり,破壊音こそが労働の開始合図なのだ。
本日は,Curdle Gamesが手掛ける「ACUVAC: A Suck and Blow Adventure」を紹介しよう。本作は掃除をテーマにした物理ベースのアクションゲームだ。プレイヤーは自我を持ったキャニスター型掃除機ACUVAC(アキュバック)となり,ロボットたちが運営する施設や住居の清掃を目指す。
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本作の特徴は,とことん自由なホースの挙動と,清掃という目的がいつの間にか破壊へとすり替わるプレイフィールにある。一般的な掃除ゲームのように,散らばったゴミを丁寧に吸い込むだけでは終わらない。なぜなら,多くの場合,ノルマを達成するためのゴミが足りなくなるからだ。
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そこでプレイヤーは,部屋にある家具や小物を吹き飛ばし,破壊して「新たなゴミ」を生成することになる。物理演算で動くオブジェクトは,ぶつかり合い,砕け散り,吸い込み可能な破片へと変わる。掃除をするために部屋を荒らすという,一見矛盾した行動こそが正解となるのだ。また,吸い込んだユニークなアイテムはコレクションとして記録されるが,細かいことは気にせず,目の前の惨状を楽しむのが本作の流儀である。
象の鼻のようにうねるホース
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ホースの挙動は驚くほど手になじむ。単に吸い込み口を向けるだけでなく,象の鼻のようにしなやかに,かつ意のままに動かせるのだ。不自由さを楽しむのではなく,練習すればするほど自分の手足のように扱えるようになる。この操作への信頼感が,次なる破壊への足掛かりとなる。
ゴミは現地で生産せよ
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丁寧に床を掃除していても,クリア評価に必要なゴミの量は往々にして不足する。ならばどうするか。答えは簡単だ,目の前の綺麗な皿や窓ガラスを割ればいい。破壊によって生まれた瓦礫を吸い込み,ゲージを伸ばす。掃除のために汚れを増やすという倒錯したマッチポンプが,奇妙な背徳感と笑いを生み出していく。
叱られない優しい世界
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誰かの家で暴れ回り,大切な家具を粉々にしても,誰にも怒られることはない。失敗へのペナルティや厳しい説教は存在しない。「ええやろ」精神で許されるゆるい空気が,プレイヤーの悪戯心を肯定してくれる。細かなルールに縛られず,ただ物理演算の挙動と破壊音に身を委ねられる,ゆとりある設計がここにある。
吸引の快感と破壊の衝撃が同居する本作。緻密な計算や高尚な物語はいらない。ただ無心に吸い,壊し,散らかしたい人にはうってつけだ。日々のストレスを掃除機に詰め込み,吹き飛ばしたいなら,ACUVACのスイッチを入れるといいだろう。
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