連載
リアル志向すぎて罪悪感さえ覚えるハッキングシミュレーター「HackHub」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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ここは高度な監視網が敷かれた管理社会。キーボードを叩く乾いた音が,静寂を切り裂く。
画面の向こうには,誰かの秘密や企業の嘘が眠っている。私はデジタル空間の幽霊となり,堅牢な扉をこじ開け,秩序を書き換える。
本日は,HotBunnyが手掛ける「HackHub - Ultimate Hacker Simulator」を紹介しよう。本作は高度な監視社会を舞台にしたハッキングシミュレーターだ。プレイヤーは名もなきハッカーとして,依頼された標的のサーバーへ侵入し,データを盗み,あるいは改ざんしていく。
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本作の特徴は,ボタン一つでハッキングが完了するような安易な作りではない点にある。画面に表示されるのは無機質なターミナルウィンドウ。プレイヤーはキーボードを叩き,実在するツールを模したコマンドを打ち込むことで初めて,閉ざされたネットワークへの道を切り開く。
まずは「nmap」などのコマンドで侵入経路を探り,脆弱性を見つけたらパスワードを解析する。こうした一連の手順は,実際のハッキング工程をなぞるように設計されている。
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だが,ただ侵入すればいいわけではない。行動には常にリスクが伴う。「疑われ度」が高まれば逆探知され,制限時間内に文字列を正確に打ち込む防衛戦を強いられる。
失敗すれば自身の口座から容赦なく資金が奪われるため,ログの消去といった後始末こそが重要になる。
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依頼の内容も多岐にわたる。企業の機密情報を暴く重大な任務もあれば,学校の成績を書き換えたり,うるさい隣人を黙らせたりといった些細な悪事も請け負う。
メインストーリーとして巨大な陰謀を追うこともできるが,市井のハッカーとして日銭を稼ぐ生き方も許されている。
現実と変わらないデスクトップ体験
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ゲーム内のPC画面は,驚くほど精巧に作られている。ブラウザの挙動やフォルダ操作の手触り,さらには音楽アプリでBGMを流す環境まで再現されており,実在のOSを触っている錯覚に陥る。
ふと席を外して戻ってきたとき,目の前の画面がゲームなのか自分のデスクトップなのか一瞬わからなくなるほどだ。「Scoutify」や「Kisscord」,「Firebear」といった実在サービスのパロディアプリも,この世界の実在感を底上げしている。
知識こそが唯一の武器
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レベルを上げてスキルを覚えるといった,システムによる救済措置は現時点でない。序盤は「HackHub」という親切なガイド付きの依頼で手順を覚えるが,慣れてくれば「HackTheCube」というノーヒントの依頼にも挑戦できるようになる。
そこで頼れるのは,プレイヤー自身が蓄えた知識だけだ。マニュアルを読み,コマンドを覚え,自力で解法を導き出したとき,ハッカーとしての確かな実感が湧いてくる。
悪意の代行者となる背徳
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単にコマンドを打つだけではない。コマンドを駆使してターゲットのメールアドレスを特定し,銀行員になりすましたフィッシングメールを送りつけてパスワードを盗む。普段なら不快に感じる手口を,今度は自分が使う側になるのだ。
隣人のPCを強制終了させるといった地味な嫌がらせも含め,モニター越しに他人の生活を脅かす「加害者」の奇妙な後ろめたさと快感を味わえる。
派手な演出や爽快なアクションを排し,地味な作業の積み重ねにこそハッキングの本質を見出した一作だ。
コマンドラインという無骨なインターフェースと,細部まで作り込まれたOS環境が組み合わさることで,プレイヤーはかつてない没入感を得るだろう。
学ぶことを苦にせず,モニターの向こう側に息づく他人の生活を覗き見たい好奇心旺盛な人に,ぜひ触れてほしい。
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