レビュー
「iPhone 12 Pro」レビュー。4モデルからどれを選ぶ? 決め手はディスプレイサイズとメインメモリの容量だ
4ラインナップのiPhone 12シリーズ。どれを選ぶ?
4製品もあると迷ってしまうが,各製品の違いを簡単に紹介すると,まずディスプレイの大きさが異なる。それぞれのディスプレイサイズと解像度は以下のとおり。
- iPhone 12:約6.1インチ,1170×2532ドット
- iPhone 12 Mini:約5.4インチ,1080×2340ドット
- iPhone 12 Pro:約6.1インチ,1170×2532ドット
- iPhone 12 Pro Max:約6.7インチ,1284×2778ドット
見てのとおり,iPhone 12シリーズは4製品あるものの,ディスプレイサイズは約5.4インチと約6.1インチ,約6.7インチの3サイズ展開となる。iPhone 12とiPhone 12 Proは,ディスプレイサイズだけでなく,公称本体サイズも同じ71.5(W)×146.7(D)×7.4(H)mmで共通だ。
同じサイズのiPhone 12とiPhone 12 Proでは,何が違うのかというと,外観では筐体側面の素材が異なり,iPhone 12はアルミを,iPhone 12 Proではステンレススチールを採用している。
これ以外の違いとして,メインメモリの容量も挙げられる。Apple公式Webサイトの製品情報には記載されていないのだが,海外の通信事業者や,中国の情報通信行政を管轄する工業和信息化部が公開したスペックによると,iPhone 12 miniとiPhone 12は容量4GB,iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxは容量6GBのメインメモリを備えるという。
メインメモリに余裕があれば,ゲームプレイ中にほかのアプリへ動作を切り替えたときの強制終了も起こりにくい。メインメモリ容量の余裕はゲーマーにも恩恵をもたらすだろう。
共通する特徴として,iPhone 12シリーズは,全モデルで5G(Sub6のみ)に対応するのが大きな見どころではある。ただし,国内における5G対応エリアは,まだまだ狭い。エリアは順次拡大していく見込みだが,当分は4Gで通信することがほとんどなので,いまの時点ではそれほど重視しなくてもいいのかもしれない。
なお,キャリア各社の料金プランを見ると,5Gプランの中には,データ通信量の上限がないものがあるので,外でもモリモリとゲームをプレイしたり,実況動画を見たりするというのであれば検討してもいいだろう。
これまで紹介したポイントを踏まえると,iPhone 12シリーズから1台を選ぶときは,まずはディスプレイサイズを考慮したうえで,スペックや機能で機種を絞るのがいいだろう。ゲーマーとしては,メインメモリ容量が大きいiPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxを選ぶべきではある。
ただし,各モデルの直販価格を比べると,iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxには各々のモデルで1万1000円の価格差があり,ここが導入のネックとなるかもしれない。
●iPhone 12 mini
- ストレージ容量64GBモデル:7万4800円(税込8万2280円)
- ストレージ容量128GBモデル:7万9800円(税込8万7780円)
- ストレージ容量256GBモデル:9万800円(税込9万9880円)
- ストレージ容量64GBモデル:8万5800円(税込9万4380円)
- ストレージ容量128GBモデル:9万800円(税込9万9880円)
- ストレージ容量256GBモデル:10万1800円(税込11万1980円)
- ストレージ容量128GBモデル:10万6800円(税込11万7480円)
- ストレージ容量256GBモデル:11万7800円(税込12万9580円)
- ストレージ容量512GBモデル:13万9800円(税込15万3780円)
- ストレージ容量128GBモデル:11万7800円(税込12万9580円)
- ストレージ容量256GBモデル:12万8800円(税込14万1680円)
- ストレージ容量512GBモデル:15万800円(税込16万5880円)
COVID-19で,家にいることが増えている情勢では,なおさらスマートフォンに予算をかけにくいという人もいよう。このあたりは変容したライフスタイルと相談することになりそうだ。
iPhone 11 Pro Maxから一回り小さいiPhone 12 Proに変更
前置きが長くなったが,筆者は約6.1インチのiPhone 12 Proを選び,約6.5インチの「iPhone 11 Pro Max」から機種変更した。iPhone 11 Pro Maxのレビュー(関連記事)において,「ハイエンドスマートフォンを毎年更新する必然性は,あまりなくなっている」と書いたものの,気がついたらiPhone 12 Proを手にとっていたのだ。
当初は約6.7インチのiPhone 12 Pro Maxを検討していたが,新型iPhoneの発表前から販売を開始しているスマートフォン用ケースを購入してみたところ,手に余る大きさだとジャッジしたためだ。iPhone 11 Pro Maxにケースを付けて使っている現状でも,筆者の手にはギリギリで,たまに端末を落としてしまうこともあったため,今回は一回り小さなサイズであるiPhone 12かiPhone 12 Proに絞った。
さらに,iPhone 12は望遠カメラを搭載していないため,iPhone 12 Proのカメラのほうが楽しめそうとも考え,最終的にiPhone 12 Proを選んだわけだ。なお,本体カラーをゴールドとしたのは,「ゴールド・スモー」っぽいという理由のみだ。
まずはiPhone 12 Proの外観からチェックしたい。前述のとおり,iPhone 12 Proの公称本体サイズは,71.5
手にしていると,ほどよいひっかかりを感じて,落としにくい印象だ。ただ,ケースに入れて利用するユーザーも多いであろうから,筐体の持ち心地はあまり気にしなくてもいいかもしれない。
搭載ディスプレイは,約6.1インチサイズで,解像度が1170×2532ドットの有機ELパネルだ。HDR表示や表示品質自動調整機能「True Tone」にも対応している。iPhone 11と比べて,ベゼル幅はほぼ同じなのだが,角張ったデザインにしたことでベゼルがより細く見える。インカメラやセンサー類をまとめたノッチは,iPhone 12でも健在だ。
背面のデザインは,iPhone 11からそれほど変化がない。左上には,カメラモジュール群とLiDERスキャナ,LEDライト,サブマイクを備える。
周辺機器用インタフェースは,引き続きLightning端子を採用する。iPad Pro 11(2020)やiPad Pro 12.9(2020),iPad Air(2020)では,LightningからUSB Type-Cポートに移行したため,iPhone 12でも脱Lightningかと期待していたのだが,この点は変わらなかった。解せぬ。
頂部にはアンテナラインがある |
底部はスピーカーとLightningポート,マイクというお約束レイアウトとなっている |
ホワイトバランスの精度が向上したアウトカメラ
カメラはゲームと直接関係はないが,日常的に利用する機能であり,気になるゲーマーもいるはずので,簡単に紹介したい。iPhoneにおける写真の味付けは,基本的にすっぴんに近く,写真編集アプリで調整しやすい。
撮影時に注意が必要なのは,点光源が多いときだ。直進性の高いLED光を拡散させるディフューサーがなかったり,重視していなかったりする光源があると,フレアやゴーストが生じやすい。とはいえ,高い確率で生じるわけではないので,重要なシーンの撮影時には,周辺の光源とプレビュー画面をよく見て,手持ちの角度をちょっと変えるといった簡単な対策で解消できることがほとんどだ。
周辺の深度情報をスピーディーに取得できるLiDARスキャナ
また平面検出が素早く行えるので,「Minecraft Earth」のようなアプリで効果的だ。世界的に高いシェアを持つiPhoneにLiDERが実装されたことで,ゲームにおけるAR機能の活用が進むだろうと期待できる。
iOSデバイスにおけるLiDERスキャナの採用は,2020年3月に発表となった第4世代「iPad Pro 12.9」と第2世代「iPad Pro 11」(関連記事)が先鞭をつけたものだが,どこにでも持ち歩いて使えるiPhoneなら,さらに利用範囲が広がる。PCケース内のような狭い空間でも使えるので,なかなかに楽しい。
取り込んだデータ |
日中でもLiDARによるスキャンは可能で,測定範囲は5mほどのようだ |
A14 Bionicの性能をベンチマークテストでチェック
ベンチマークソフト「Geekbench5 v5.2.5」で確認した情報によると,パフォーマンスコアの動作クロックは2.99GHzであった。高効率コアの動作クロックは不明なのだが,前世代の「A13 Bionic」における高効率コアが1.8GHz駆動だったことを考えると,おそらく2〜2.1GHz程度まで引き上げているのではと考えている。
ちなみに,CPUコア内部のL1 Instruction CacheとL1 Date Cacheも増量されているそうで,その効果もあるのか,体感レベルでは,A13 Bionicから1年経過しただけとは思えないほどA14 Bionicは高速だ。
今回は,iPhone 12 Proの比較対象として,SoCにA13 Bionicを搭載したiPhone 11 Pro Maxと,「A12Z Bionic」を搭載した第2世代iPad Pro 11(以下,iPad Pro 11)を用意した。iPad Pro 11を加えたのは,COVID-19の影響で自宅にいる時間が増えているのであれば,iPhoneではなくiPad Proを選ぶのもアリと考えたからだ。
またiPadは,iPhoneよりも買い換えサイクルが長いこともあってか,性能が高めに設計されている。スマホ全体の高価格化が進む中,より長く使えてコスト的に優しいiPad Proを比較の対象に加えるのもアリと判断したわけだ。
各製品に搭載するSoCのスペックをまとめると表のようになる。
テストに用いたベンチマークアプリは,Geekbench5 v5.2.5,「3DMark Wild Life Benchmark」(v1.0.214,
まずは,Geekbench 5(グラフ1)でCPU性能を確認してみたところ,A13 BionicからSingleコア性能が約21%,Multiコア性能が約26%向上していた。また,CPUが8コアのA12Z Bionicと比べると,さすがマルチコア性能は及ばないものの,Singleコア性能は約44%増と大幅に向上している。
アプリの快適さにおける指標となる「Compute」における傾向も同じで,A14 Bionicは,A13 Bionicより約26%も高く,体感速度の向上にも納得できる。一方で,やはりA12Z Bionicには及ばない。この点からも,iPhone 12シリーズの比較対象として,iPad Pro 11とiPad Pro 12.9を挙げる理由が分かるだろう。
続いては,3DMarkのWild LifeとWild Life Unlimitedを見てみよう。いずれのテストも,総合スコアとフレームレートを計測するものとなるため,結果のグラフも総合スコア(Overall)とフレームレートの2つに分けてまとめた。結果はグラフ2〜5となる。
ここでもA12Z Bionicのスコアが群を抜いているが,これは純粋にGPU性能――具体的にはGPUコア数――の差が現れていると考えられる。A14 Bionicのスコアは思ったほど伸びなかったが,まだ最適化が進んでいない可能性が高い。ただ,Wild Life Unlimitedの結果を見ると,A13 Bionicからの順当な性能向上を確認できる。
Antutu Benchmarkでは,A14 BionicのCPUスコアがA13 Bionicを下回ってしまった。GPUやUXスコアは順当に向上しているので,CPU性能の計測に問題がある可能性が高い。また,メモリの性能を示すMEMスコアが,A13 Bionicと比べて約76%と大幅に向上しているのだが,メモリに関する情報が少なすぎるため,なんとも言えない結果になっている。体感速度をもとに考えると,そのくらいの性能向上はあり得るかもしれないという程度ではあるのだが。
Webブラウザで実行できるHTML5版テストAntutu HTML5 Testでは,アプリ版のAntutu Benchmarkとは異なり,iPhone 12 Proが最も高いスコアを示している。
ゲームは快適にプレイ可能だが,FPSでは発熱が少し気になる
ゲームにおけるプレイフィールも見ていこう。平素であればデレステでテストをしたいところなのだが,プレイしていると左手親指に痛みが走るようになってしまい,医者からリズムゲームでの検証をしばらく控えるよう言われている。
痛みのない右手でSMARTモードと難易度TRICKをプレイしてみたが,フリックやドラッグ操作での取得漏れは確認できていない。また,3Dリッチで連続プレイをしてみてももたつきなどもなく,背面の温度上昇も軽微だった。
「Call of Duty Mobile」や「PUBG Mobile」はどうだろう。
PUBG Mobileは,高いグラフィック設定にすることは可能だが,画質設定の「クオリティ」を「FHD」に,「フレーム設定」で40fps表示の「ウルトラ」に設定すると,動作がやや不安定になり,カメラを大きく動かすと露骨にフレームレートが低下するのを確認した。
逆にCall of Duty Mobileは,「グラフィックス品質」と「フレームレート」を最高に設定しても,とくに問題なくスムーズにゲームを楽しめた。いずれにしても,どちらのタイトルもiPhone 12シリーズへの最適化を徐々に進めていくであろうから,動作に不安定なところがあっても,現時点ではそれほど気にしなくてもいいだろう。
なお,上述した2タイトルは,1セット遊んだ時点で,背面の温度上昇がはっきりと分かった。連続でプレイしていても性能低下を感じることはないのだが,気になるという人は,放熱性能のいいケースを選ぶか,ケースから外してプレイするといいだろう。
筆者は,iPhone用ケースとして,Razerの「Razer Arctech Pro」を愛用している。このケースは多くのスマートフォンに対応したバージョンがあり,熱伝導レイヤーと通気孔で効率良くスマートフォンの熱を逃がしてくれる。熱起因の性能低下らしき事象と遭遇することがほとんどなかったため,iPhone 11 Pro Max版に続き,iPhone 12 Pro版を購入した。
Razer Arctech Pro for iPhone 12 Pro。ケース下部に通気孔を備える |
ケース内側にある緑色の部分が熱伝導レイヤーだ |
なお,iPhone 12 Proの性能面は,ゲームを楽しむうえで問題ないものの,約6.1インチという画面サイズは,やや狭いと感じる人が多いかもしれない。海外のスマートフォン向けゲームは,フォントサイズが小さく,ボタン数の多いタイトルが目立つ。UIのサイズ調整機能があるタイトルなら調整すればいいのだが,物理的に指で隠れる部分はどうにもならない。FPSやTPSをよくプレイするなら,画面サイズが大きいiPhone 12 Pro Maxの方がいい。
2〜3世代前の端末を使っているなら,iPhone 12 Proへの機種変更をオススメ
iPhone 12 Proは,これまでのiPhoneシリーズと同様に,安定したゲーム環境が得られる端末になっている。ベンチマークテストの結果を見ると,iPhone 11やiPhone 11 Proといった前世代モデルを使っている場合は機種変更すべきとは言い切れないものの,メインメモリの容量を考慮すると一考の余地はあろう。
ゲーム中に別のアプリを起動すると,頻繁にゲームがタイトル画面に戻ってしまうようなことが頻繁に起こるようなら,機種変更を検討してみるといい。筆者のケースで言えば,iPhone 11 Pro Maxでは,カメラを起動させると,ほとんどのゲームでタイトル画面に戻ってしまっていた。筆者の場合,「ロマンシング サガ リ・ユニバース」プレイ時に,iPhone 12 Proに変えた効果を強く感じている。
他方で,iPhone XS以前の端末を使っているのであれば,機種変更をオススメしたい。iPhone 12シリーズのSoCは共通なので,ディスプレイサイズとメインメモリ容量を目安として,自分にあったモデルを選択してほしい。なお,昨今はゲームアプリだけでなく,動画をはじめとしたビジュアルコンテンツで,ファイルサイズが巨大化しているため,ストレージ容量は256GBか512GBを選んだほうがいいだろう。
AppleのiPhone 12 Pro製品情報ページ
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iPhone本体
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