連載
【西川善司】PS Vitaリファイン版に欲しい機能〜バーチャルリアリティ対応でどうですか
西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト
(善)後不覚 |
というわけで今度は,「PlayStation Vita」(以下,PS Vita)に追加してほしい機能を挙げてみたいと思います。大幅値下げが2月にありましたし,その流れで行けば,そろそろリニューアルが計画されていてもおかしくないからです。
要望(1)ゲームプレイがしやすい本体形状にしてほしい
うまいか下手かは自分ではよく分かりませんが,アクションゲームで難易度選択ができるときは,「EASY」ではなく「NORMAL」とか「STANDARD」を最初から選びますね。好きなタイトルは2〜3周くらいはプレイしますが,2周目以降は「HARD」以上を選択してもなんとかプレイできているので,腕前は「中くらい」ってところではないでしょうか。
高橋名人は「ゲームは1日1時間」という名言を残していますが,エコノミーシートに拘束された大人はそんなわけにもいかず,数時間プレイすることはザラです。最近ではエコノミーシートでもUSB電源供給があるものも多いので,バッテリー駆動時間を気にせずたっぷりプレイできるのはいいですね。
で,数時間プレイしていると気になってるのが,「PS Vitaが手に馴染みにくいこと」です。具体的に言うと,親指の付け根が痛くなってきます。
PS Vitaはソニープロダクトということもあってか,かっこいいオーバル調のスリークデザインになっています。PSPもそうでしたが,どちらかといえば「ゲームプレイのしやすさ」よりも見た目重視のデザインになっているのでしょう。
ただ,手に接触する圧力を分散するためには本体の厚みを厚くせざるを得ないでしょうから,多少,鞄に忍ばせづらくはなると思います。「プレイしやすさか,薄さか」の二択で薄さを選んだのが,かつてのPSPや現在のPS Vitaにおける外形デザインということなのでしょう。
余談気味に続けると,以前,あるカンファレンスの会期中に任天堂の関係者と雑談したとき,Nintendo 3DS(以下,3DS)の外形デザインなどが話題に上りました。何でも3DSでは,対象ユーザーの年齢層を従来製品よりも高めに想定し,女性が「持ち歩くことに抵抗を感じない」と判断するようなデザインにすることを重視していたのだそうです。ここ最近の携帯ゲーム機では,薄さや見た目のよさがとても重視されてきたということなんでしょうね。
ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia Z SO-02E」 |
Nintendo 3DS用の拡張スライドパッド |
そんな状況下にあって,スマートフォンに加えてもう1台,「ゲーム専用機としての携帯ゲーム機」を持ち運んでいるという人は,相当にゲームが好きで,ゲームプレイを重視するタイプのはずです。
ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)も,PlayStation 4はコアゲーマーに向けたものと位置づけているわけですから,そのPlayStationプラットフォームの一端を担うPS Vitaで新しいデザインに取り組むのであれば,そうしたコアな携帯ゲーマーに配慮してもらえるといいなと思います。
最悪でも,「DUALSHOCK 3」互換の操作系を実現するグリップアタッチメントのようなモノは,純正で欲しいなと。任天堂が3DSの純正周辺機器として出している「拡張スライドパッド」のような感じのものですね。
要望(2)スティックやボタンの仕様をDUALSHOCKに近づけてほしい
操作系として置き換えることができたとしても,肝心の操作感が異なっていては,ユーザー体験は違ったものになってしまいますからね。
SCEは今後,PlayStation 4&3とPS Vitaに同一のタイトルを提供し,「自宅ではPlayStation 4&3と大画面テレビで,外出時はPS Vitaで」というプレイスタイルを積極的にアピールしていくようですが,そのコンセプトをゲーマーに受け入れてもらうためには,DUALSHOCKシリーズとPS Vitaの操作系をほぼ1対1でマッピングすべきでしょう。
もっとも今後は,「PlayStation 4&3とPS Vitaにマルチ展開する場合,PS Vitaにないボタンは,DUALSHOCK側でも使わないようにする」という発想が出てくる可能性もなくはないですが。
要望(3)HDMI出力端子を付けてほしい
GRAVITY DAZEのグラフィックスは,非常に芸術的でした。
GRAVITY DAZEでは,遠景がフォグに沈みこみながらシームレスに線描へ落ち込んでいく表現が印象的でしたが,あれなどはまさに「時間方向のアート表現」といった感じ。ボクがランバ・ラル大尉ならば「本当のゲームグラフィックスとはこういうことだぁーっ!」と言いながらガンダムの手の中で自爆するでしょう。
そんなGRAVITY DAZEだけに惜しいと思ったのは,これを大画面で楽しむ手立てがないことでした。
実際にPS Vitaを持ち歩き,外出先でプレイする分には,5インチの画面サイズで不満はありません。しかし,自宅に帰ってくればリビングにそこそこ大きなテレビがありますから,やはり,この作品のエピックスケールなビジュアルは大画面でプレイしたくなります。ゲームは映像メディアですから,やはり自分の目に見える範囲いっぱいで楽しみたくなるものです。
今後,開発現場でPS Vitaへの理解が深まれば,GRAVITY DAZEを超えるようなビジュアルを実現するタイトルが出てくるかもしれません。なので,それまでにHDMI出力の対応をぜひ。できれば本体画面とHDMI出力への同時出力が欲しいですが,贅沢は言いません(笑)。
要望(4)VRアタッチメントを出しましょう
「これってPS Vitaをうまく改良すれば,同じことができちゃいそうじゃん」
と。
そう,これまでのHMDのような,「高価なマイクロディスプレイパネルを2枚使った複雑な光学経路」がRiftでは不要なのです。
乱暴に言えば,「RiftというHMDは,PS Vitaのような携帯型ゲーム機の画面部に囲いを付けて,さらにそれを半分に分割して中央に仕切りを付けて,シンプルな光学系を接眼箇所に付けただけのもの」ということになります。
Riftの場合,内蔵の加速度センサーによってヘッドトラッキング機能を実現していますが,PS Vitaにはそれ以上に多彩なセンサー類が搭載されています。なのでRiftでできることはPS Vitaでもできます。
つまり,こうです。
リファイン版PS Vitaと合体&脱着可能なHMDアダプタを提供するのです。ちなみに,Rift最初期の試作モデルでは5インチの液晶パネルを採用していましたから,PS Vitaが5インチの有機ELパネルを採用していることは問題になりません。
ふだん,外出先でプレイするときには,PS Vita単体で遊べますが,自宅に帰ってきたときには,HMDアダプタにリファイン版PS Vitaをガチャリとはめ込んでHMD化して,HMDゲームプレイを楽しむことができるようにするわけです。
HMD化してしまうと,手に持つべきゲームパッドがなくなってしまいますが,そこはDUALSHOCKシリーズを使えばいいでしょう。実際,PSPでは「DUALSHOCK 3」が使えましたからね。
これを導入できれば,携帯ゲーム機の「自宅に帰宅してからの大画面プレイ」を,「HDMI出力端子経由の大画面テレビ接続」でなくても実現できるようになります。
ちなみにこのHMD案ですが,原理上,HMDアタッチメント側に電気を使う要素がないため,必要な電源はPS Vitaを駆動するための電源だけです。つまり,PS Vitaがバッテリー駆動で動作する限り,このHMD×PS VitaシステムはAC電源なしでも使えることになります。
さらに,PS Vitaにはカメラが搭載されていますから,外界の映像を映せます。この“PS Vita HMDシステム”は,拡張現実(AR)型のHMDとしても利用できてしまうのです! GPSや電子コンパスを活用してやれば,現実世界の,今そこにいる視界と完全に一体化した,没入型の拡張現実システムを構築することも不可能ではありません。
となれぱ,拡張現実モードにして道を歩きながらとか,電車内などでも,これを頭に付けてゲームプレイをし始める人が出てくる可能性があります。昔は携帯音楽プレイヤーのヘッドフォンを付けて電車に乗るのすら恥ずかしくて抵抗感があったものですが,いまではオーバーヘッド型の大型ヘッドフォンをかけて通勤・通学している人を見ることも珍しくなくなっていますから,近い将来,電車内でHMDを付けて通勤・通学する人を見かけるようになるかもしれませんよ。
ただ,これ,楽しそうではあるんですが,安全性の面で問題を指摘する声が上がる可能性はありますね。HMD付けて歩いていたら交通事故に遭った,なんてことは起こり得るでしょうし。
その場合は,AC電源供給しているときにしかPS VitaのHMDモードを利用できないようにする,といった対策が必要になるかもしれません。
……と,いろいろ書き連ねてきましたが,いかがだったでしょうか。
SCE関係者の皆様,前回の「PS4に付けてほしい機能」ともども,前向きに検討お願いします。
いつでも相談してください!(笑)
■■西川善司■■ テクニカルジャーナリスト。3月半ばからGTC 2013,GDC 2013と,米国西海岸のカンファレンスを4Gamer取材班の1人としてハシゴしてもらった氏ですが,両カンファレンスの間で空いた時間を使って,「トイストーリー」などで有名なPixar Animation Studios(ピクサー)を見学してきたそうです。「写真は,あの有名な電気スタンドと,ピクサー作品で毎回隠れキャラ的に出ているボールが置かれている中央広場でのショットです。背景のビルはピクサーの創始者でもあるスティーブ・ジョブス氏の名が付けられた,ピクサー社屋のメインビルディングですよ」と,今回は聞く前から語ってくれたので,相当興奮しているのでしょう。この枠内に写真が入らないことをまったく踏まえずに写真を送ってきたくらいなので。 ……というわけで冒頭で思わせぶりに示したのが,西川善司氏の言う「写真」です。 |
- 関連タイトル:
PS Vita本体
- この記事のURL: