テストレポート
PS4 Proの4K解像度や高フレームレートは,“パッと見”で分かるものなのか? ブラインドテスト(のようなもの)をやってみた
技術的な解説は西川善司氏の記事(関連記事1)(関連記事2)などを読んでほしいが,多くの人が知りたいのは「“パッと見”で分かるほどの違いが出るのか?」というところではないだろうか。4K解像度でのプレイを楽しむためには,PS4 Proに加えて対応するテレビまたはディスプレイが必要となるだけに,支払う金額に見合う効果があるかどうかは気になるところだろう。
そこで,PS4 Proで生まれる違いをわずかなプレイ時間で感じられるのか,ブラインドテストのようなものを行って確かめてみることにした。
“のようなもの”と書いたのは,事前に解像度やフレームレートといったテストの目的を伝えているため。正真正銘のブラインドテストならそういったことは何も知らせずに行うのだろうが,PS4 Proを買おうとする人のほとんどは「4K解像度でプレイできる」「高いフレームレートでプレイできる」といった予備知識を持っているはずなので,基準をそこに合わせてみたということだ。もちろん,どちらがPS4 Proの映像かということまでは知らせていない。
また,今回は解像度とフレームレートに加えて,標準のPlayStation 4(以下,PS4)とPS4 Proどちらにも搭載されているHDR機能のテストも行った。HDRも,楽しむためには対応テレビまたはディスプレイが必要になるため、気になっている人は多いはず。
「PS4 Proや4K/HDR対応製品は欲しいけど,購入に見合うだけの効果があるの?」などと思っている人は参考にしてほしい。
テストの被験者となったのは,4Gamerの編集者やデザイナー,営業部社員の計10人。ただし,細かい違いを仕組みから判断してしまいそうなハードウェアチームの編集者にはご遠慮いただいた。
ソフトは「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」(以下,アンチャーテッド)と「inFAMOUS First Light」(以下,inFAMOUS)を使用し,「解像度」「フレームレート」「HDR」の3項目で違いを見分けてもらう。プレイ時間は1項目につき3分程度とした。
解像度とHDRのテストでは,シャープのHDR対応4Kテレビ「AQUOS LC-45US40」(画面サイズ45インチ)を使用。フレームレートのテストでは三菱電機が2011年に発売した「RDT233WX」を使い,現在フルHDディスプレイを使用している人がPS4 Proのみの購入で恩恵を受けられるかどうかを確認してみることにした。
テストの結果を紹介する前に,今回HDRの設定に少々手間取ったので,これから対応製品を購入する人のために,注意点をお知らせしておこう。
HDRの設定は,ゲーム内とPS4の設定メニュー双方にオン/オフの項目があるので,そのどちらもオン(正確に言えば,PS4本体の設定は「自動」)にする必要がある。また,今回使用した「AQUOS LC-45US40」はHDRに対応するHDMI端子が1つだけで,さらにHDRの設定がデフォルトでオフになっていた。実際に設定を行うときは,ディスプレイ側についても確認してほしい。
ちなみに今回,2つのSony Entertainment Networkアカウントを使用し,初期型PS4とPS4 Proにそれぞれソフトをインストールしたのだが,ダウンロードはPS4 Proのほうが明らかに速かった。これはPS4 Proの無線LANがIEEE 802.11acに対応しているためだと思われるが,初期型PS4のユーザーには,ここも地味ながらPS4 Proの魅力となるかもしれない(2016年9月15日発売の新型PS4はIEEE 802.11acに対応している)。
解像度
それではテストのレポートに移ろう。まずは解像度だ。
PS4とPS4 Proの2台をテレビに接続し,被験者にゲームをプレイしてもらいながら,被験者の求めに応じて,担当者(筆者)が画面を切り替えるという感じで4K解像度が分かるかどうか,試してもらった。前述した通り,どちらがPS4か,PS4 Proかは伝えず,見せる順もランダムで,時間はアンチャーテッドとinFAMOUSそれぞれ3分程度だ。
inFAMOUSをPS4 Proでプレイすると,オプションに「解像度優先」「フレームレート優先」のどちらかを選ぶ設定項目が表示されるので,「解像度優先」を選択。できるだけ条件を同一にするため,フレームレートはどちらも30fpsで固定した。
その結果は,アンチャーテッドでは10人中6人,inFAMOUSでは10人中5人が正しく見分けられたという,ほぼ半々の数字に。アンチャーテッドでは,植物が密集している部分や主人公ネイトが着ている服の描写がよりハッキリしていること(PS4では少々ぼやけた感じがする),inFAMOUSでは主人公フェッチの顔や髪,画面右下に表示されているテキストにジャギーが見えない(PS4では見える)が判断の理由として多く挙がった。
プレイ時間が短いこともあって,“分かりやすい場所”を見つけられるかどうかが結果につながった模様だ。PS4 ProのSHARE機能では,3840×2160ドットのスクリーンショットが撮影できるので,PS4のものと合わせて掲載しよう。ぜひ自分の目でも違いを確認してほしい。
フレームレート
続いてフレームレートだ。inFAMOUSでは双方のフレームレートを「無制限」にしつつPS4 Proは「フレームレート優先」でプレイしてもらった結果,10人中7人がフレームレートの上昇を見分けた。動き出したり,試しに攻撃アクションを出してみたりした段階ですぐ気づく人がほとんどで,解像度よりは違いが分かりやすかったようだ。
一方アンチャーテッドにはフレームレートの設定項目がなく,これまで4Gamerが体験会などで得た情報でも,4K解像度対応は確認できたものの,フレームレートの上昇に関しては確認できていなかった。そのため,“一応”という感じでテストしてみたのだが,10人中3人がPS4 Proでのプレイ時にフレームレートが高いと指摘した。
この3人はinFAMOUSでも違いを正しく見分けているので,あてずっぽうとは決めつけづらい。微妙にフレームレートが上がっている可能性もありそうだ。
HDR
これまで白飛びや黒つぶれしていたような部分まで,自然な階調表現で描くHDR。そのオンオフの違いを“正しく”見分けられた人は,アンチャーテッドで10人中3人,inFAMOUSで4人だけだった。
ただし,HDRのオンオフで「映像が変わった」と認識した人になると,アンチャーテッドで10人中9人,inFAMOUSでは10人全員となる。つまり,HDRオフの状態をHDRオンだと思った人が多かったのだ。
HDRをオンにすると,パッと見では画面が暗くなったように感じられるので,オンとオフを取り違えた人は,それを「見づらくなった」と感じたようだ。なお,テストに参加したデザイナー2人はいずれもHDRオンを「自然な描写」だと正しく見分けていた。さすが。
ただ,そのデザイナーの1人は「明るくてプレイしやすいのはHDRオフだから,自分が遊ぶときはオフにするかも」と話していたので,これはもう好みの問題になるのかもしれない。
テストの結果から一応の結論を出すとするなら,PS4 ProやHDRの導入によって生まれる違いは“確かにあるが,誰もがひと目見て分かるようなものではない”ということになるだろう。
グラフィックスにこだわる人にとって価値があることは間違いないが,実際に見たうえで,PS4やHDR非対応ディスプレイで十分だと感じる人もそれなりの数いるのではないかと思う。
この先,Pro対応での新しい描写や表現がどんどん進歩していったときには大きな差になることは十分に期待できるし,そうであってほしいと思うが,現時点ではその真価を十分味わえる……というわけではなさそうだ。
個人的には,inFAMOUSの「解像度優先」「フレームレート優先」のような設定項目がPS4 Pro対応タイトルのすべてで採用されることに期待したい。PC向けタイトルのような細かいグラフィックス設定とまではいかなくても,自分好みのセッティングができれば,PS4 Proの魅力は増すのではないだろうか。
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