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[CEDEC 2021]PS5におけるインディーズデベロッパ支援が語られた,「PlayStation INDIESの取り組み」聴講レポート
インディーズゲーム好きとして知られる吉田氏が代表を務めるインディーズ イニシアチブとは,SIEがインディーズゲーム開発者をサポートする取り組みを指す。2020年7月に正式発表され,目的として「PlayStationを,素晴らしいインディーズゲームを開発し,見つけ,プレイするための最高の場所にすること」を掲げている。そんな吉田氏が,インディーズゲームの意義といった基本的な部分や,PlayStation 5におけるインディーズゲームデベロッパへの支援策などについて語った。
「CEDEC 2021」公式サイト
吉田氏が考えるインディーズゲームの意義とは,「自分の作りたいものを作れる」「IPをデベロッパ自身が所有できる」「デベロッパがダイレクトにユーザーコミュニティへアクセスできる」「新しいゲームジャンルが発明される」「ダイバーシティや地域文化を世界に広げる」「新たなゲームクリエイターを育成する」の6点だ。
開発資金を提供するパブリッシャ(ゲームの販売を担当する会社)や投資家の意見に左右されることなく,開発者自身が「これはいいものだ」と信じるゲームを作ることができ,IP(ここではゲームタイトル)をどう展開するかの権利もパブリッシャではなくデベロッパが保有し,パブリッシャを通すことなく直接ユーザーコミュニティと語らうことが可能。こうした自由な環境から「Minecraft」のような新しいジャンルのゲームが生まれ,ゲーム界にイノベーションを起こすことがあるというわけだ。
また,インディーズデベロッパは総じて小規模だが,それがプラスに働くこともある。大きな予算がかけられるAAAタイトルでは分業化が進み,それぞれの開発者はゲームの一部分だけを担当するということになるが,小規模なデベロッパのインディーズゲームは,コンセプト作りから開発,発売までの,通常なら多くの人々が分担する一連の流れを1人で体験できる。視野が広がり,それがゲームクリエイターとしての財産になるという。また,広範なユーザー層を対象とする規模の大きな作品に比べ,自分達が根ざす地域の文化をゲームに取り入れ,ニッチながらもユニークな視点の作品を世界に発信することができると吉田氏は述べる。
そのうえで吉田氏は,PS5では,これまで以上に開発がやりやすくなったと話した。開発機(通常販売される製品とは異なる,開発現場で使う特別仕様のハード)とPCの連携が取りやすくなったうえに,「Unreal Engine」や「Unity」など,個人開発者でも使えるゲームエンジンとの親和性も高い。「Gaikai」の技術を使ったリモート開発環境も整っており,こうしたことから吉田氏は,「まずPS5で開発をスタートさせてほしい」と語る。
加えて,PS5にはユーザーとの関係をより密接なものにする機能が用意されている。「ゲームハブ」ではデベロッパからユーザーへ直接情報を発信でき,「ゲームヘルプ」機能は,ユーザーが行き詰まりそうなところに動画でヒントを出すといった使い方が可能だ。そして「アクティビティ」では,進捗率やクリア想定時間など,ユーザーの状況に応じた情報をカードのような形で提供でき,これらすべての機能に,ゲームからシームレスでアクセスできる。
さまざまプレイスタイルを提示したり,ランキングを表示するなどでユーザーのモチベーションを上げることも可能であり,吉田氏は,ゲームをより深く,幅広く遊ぶための方法として,アクティビティの活用を推奨した。
インディーズ イニシアチブでは,デベロッパに対するさまざまなサポートを行っている。開発ツールの貸し出しはもちろんのこと,完成したタイトルを公式ブログや配信番組などで紹介することに加え,新型コロナウイルス感染拡大で被害を受けたデベロッパを対象とした基金に対し,1000万ドル(約10億8千万円)を拠出する(リンク)といった取り組みも行っている。吉田氏は「新規デベロッパはまずパートナー登録をしてほしい」と呼びかけた。
日本のインディーズゲームはここ1〜2年で大きく盛り上がっている,と吉田氏は指摘した。
「天穂のサクナヒメ」のようなヒット作が生まれ,「BitSummit」を始めとするさまざまなイベントが開催され,さらに「集英社ゲームクリエイターズCAMP」のような支援プロジェクトが発表されている。プレイヤー数も増えており,ますますの盛り上がりが期待できる。吉田氏は「こうした動きに歩調を合わせ,日本のインディーズゲームデベロッパが世界へ羽ばたけるようにサポートを続けていきたい」と意気込みを語り,講演を締めくくった。
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