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[CEDEC 2015]「ゼビウス」の父が,企画力と伝える力をアップさせる「ラピッドプランニング演習」を伝授
そんな中,毎年ユニークなワークショップを行うのが,東京工芸大学の遠藤雅伸氏だ。「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」の父である遠藤氏は今回「企画初心者のための『ラピッドプランニング演習』」というテーマで,スピーディな企画の出し方,そして企画をブラッシュアップすることの大切さを教えた。
東京工芸大学の遠藤雅伸氏 |
ワークショップに参加できる席はあっという間に満員に |
遠藤氏から出された最初のお題は「ほる」。これをテーマにして,企画書を見る人に15秒ほどで伝わるコンセプトシートを,12分という制限時間内に仕上げることが受講者達の課題となった。「ほる」は「掘る」「彫る」いずれの意味でも構わないし,エンターテイメントであればビデオゲームに限らず商品やイベント,番組の企画でもOKだ。自由度は高いものの,15秒ほどで伝わるものをたった12分で書き上げなければならないのが難しい。
受講者達も四苦八苦し,制限時間はあっという間に過ぎ去った。それでも白紙のままという人はいなかったあたり,さすがはCEDECに参加するプロフェッショナルといえるだろう。
コンセプトシートが書き上がったら,次は評価フェイズだ。1つのテーブル内でコンセプトシートを回して他人の作品を閲覧。書かれた企画が評価に値すると感じたら,裏面にある採点欄に自分のマークを書き込む。これを全員分繰り返したら,次は別のテーブルのコンセプトシートを評価する。1グループは36人なので,一人当たり35の企画を評価することになる。
続いて2回めのセッションが行われることになり,遠藤氏からは自分の企画をグレードアップするためのアドバイスが与えられた。
それは「ありきたりな企画はみんなが似たようなものを考えているので,最初に思いついたものは“スベリ止め”としてキープし,次のアイデアを考える」というプロセスを繰り返すというものだ。
人の心を動かすためには,誰も考えていないようなアイデアを出すのが一番。かといって,ただ斬新さを追い求めているだけでは思考が煮詰まってしまうし,何より制限時間が尽きてしまう。まずは思いついたアイデアをキープしておけば,安心してグレードアップにかかれるというわけだ。
また,「どんなにへたでも,絵はあったほうがいい」「文章量が多いほど,アイデアが伝わりにくい」と遠藤氏。15秒程度で伝わるアイデアを考えるということは,「自分が書いたコンセプトシートを,ほかの参加者は15秒しか見てくれない」ということ。見てもらえる時間が限られているのであれば,絵を使ったほうが分かりやすいし,じっくり読み込んで良さが分かるようなアイデアは不向きだ。このあたりは本ワークショップに限らず,実際の現場で企画を見てもらう時でも事情は変わらないだろう。
こうしたアドバイスを受け,2回めのセッションがスタートした。今度のお題は「かめ」。制限時間は短くなって10分となったものの,受講者達の筆は先ほどよりも軽い。
1回めは文字オンリーのコンセプトシートを書いていた参加者も,今度はイラストを大きくあしらい,とにかく見た目を引くことを心がけるように変化。また,わずかな時間の中でアイデアの良さを伝えるべく,タイトルやキャッチコピーの中に面白い部分を集約する参加者が多く見られた。「かめ」というお題は1回めよりも難しそうな印象だが,出てきたコンセプトシートはどれも面白く,先ほどよりも格段に質が上がっていた。
元の企画が面白いことはもちろん大事だが,面白さを伝える「伝達力」と,良さを見抜く「評価力」も共に大事である,と遠藤氏は語る。集団でコンセプトシートを見せ合う協調学習を行うことにより,こうした力が強化されていくのだという。
遠藤氏は,「最初は制限時間15分からスタートし,徐々に時間を短くしていくこと」「ワークショップを何度も繰り返すこと」を受講者達に勧めた。次第に点数を取りにくくなるかもしれないが,それは企画の良し悪しを見分ける目も養われたためで,繰り返すごとに企画を出す力と伝達力,評価力はアップしていくのだという。
最後に遠藤氏は「このワークショップに参加したみんなが立派な企画者になってくれれば幸いです。日本のゲーム界を盛り上げてください」と受講者にエールを送り,ワークショップを締めくくった。
なお,この日の受講者が書いたコンセプトシートは,後日CEDiL(CEDEC Digital Library。CEDECで使われた資料を公開するサイト)にて公開される予定。
「ラピッドプランニング演習用紙」も特別なものではないため,ゲームクリエイターを目指す学生ならびに企画書を書く職にある社会人は,知り合いと一緒に今回のワークショップを試してみるのも面白いのではないだろうか。
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