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[CEDEC 2015]「ゼビウス」の父が,企画力と伝える力をアップさせる「ラピッドプランニング演習」を伝授
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印刷2015/08/27 16:13

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[CEDEC 2015]「ゼビウス」の父が,企画力と伝える力をアップさせる「ラピッドプランニング演習」を伝授

 2015年8月26日より,神奈川県のパシフィコ横浜にて行われている開発者向けカンファレンスCEDEC 2015。ここではさまざまな講義だけでなく,受講者自身が参加できるワークショップも開催されている。

 そんな中,毎年ユニークなワークショップを行うのが,東京工芸大学の遠藤雅伸氏だ。「ゼビウス」「ドルアーガの塔」の父である遠藤氏は今回「企画初心者のための『ラピッドプランニング演習』」というテーマで,スピーディな企画の出し方,そして企画をブラッシュアップすることの大切さを教えた。

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東京工芸大学の遠藤雅伸氏
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ワークショップに参加できる席はあっという間に満員に

ワークショップで配付された「ラピッドプランニング演習用紙」の裏面。表面は白紙だ
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 今回の「ラピッドプランニング演習」とは,与えられたお題に従い,即興で企画を作り出し,それをコンセプトシート1枚にまとめるというもの。受講者達に配られた「ラピッドプランニング演習用紙」は表面が白紙で,裏面の「採点欄」には,ラジオ体操の際にハンコを押すような空欄がずらりと並んでいる。表面に自由に企画を書き,6人掛けテーブルを6つ集めた36人のグループメンバーに採点してもらう……というのがワークショップの流れだ。

 遠藤氏から出された最初のお題は「ほる」。これをテーマにして,企画書を見る人に15秒ほどで伝わるコンセプトシートを,12分という制限時間内に仕上げることが受講者達の課題となった。「ほる」は「掘る」「彫る」いずれの意味でも構わないし,エンターテイメントであればビデオゲームに限らず商品やイベント,番組の企画でもOKだ。自由度は高いものの,15秒ほどで伝わるものをたった12分で書き上げなければならないのが難しい。

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 受講者達も四苦八苦し,制限時間はあっという間に過ぎ去った。それでも白紙のままという人はいなかったあたり,さすがはCEDECに参加するプロフェッショナルといえるだろう。

1回めのセッションで書かれたコンセプトシート
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 コンセプトシートが書き上がったら,次は評価フェイズだ。1つのテーブル内でコンセプトシートを回して他人の作品を閲覧。書かれた企画が評価に値すると感じたら,裏面にある採点欄に自分のマークを書き込む。これを全員分繰り返したら,次は別のテーブルのコンセプトシートを評価する。1グループは36人なので,一人当たり35の企画を評価することになる。

書き上がったコンセプトシートをテーブル間で回し,他者が書いたものに評価を付けていく
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 ここで遠藤氏が指摘したのは「コンテンツの評価は好き(良い)か無関心かの二択であり,“まあまあ”は存在しない」という点だ。自分が消費者となった時,“まあまあ”のコンテンツにはお金を払わず,“好き(良い)”なものを選ぶだろう。そして“好き(良い)”の反対は,“嫌い”ではなく“無関心”。“嫌い”と感じられるということはなにがしかのインパクトを与えたと言うことであり,心に何も残らない“無関心”よりはプラスなのだ。

コンセプトシートを良いと感じた場合,用紙の裏側にあるマス目に印を書き込む。やがて自分のコンセプトシートが手元に戻ってくるが,印が多かった場合は多くの人に評価されたと言うことだ
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 こうして一通りの評価が終わると,マークの数はそのままコンセプトシートの得点となる。会場全体で統計を取ったところ,30点を獲得した人はおらず,25点を取ったのはわずか3人。「建物の下を掘って倒す」「自分の周囲の地面を掘り,相対的に立ち位置を上げる」「相手の弱みを掘り起こす」など,いずれもインパクトがあって分かりやすく,一瞬で良さが伝わる企画だったのが興味深い。

 続いて2回めのセッションが行われることになり,遠藤氏からは自分の企画をグレードアップするためのアドバイスが与えられた。
 それは「ありきたりな企画はみんなが似たようなものを考えているので,最初に思いついたものは“スベリ止め”としてキープし,次のアイデアを考える」というプロセスを繰り返すというものだ。
 人の心を動かすためには,誰も考えていないようなアイデアを出すのが一番。かといって,ただ斬新さを追い求めているだけでは思考が煮詰まってしまうし,何より制限時間が尽きてしまう。まずは思いついたアイデアをキープしておけば,安心してグレードアップにかかれるというわけだ。

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 また,「どんなにへたでも,絵はあったほうがいい」「文章量が多いほど,アイデアが伝わりにくい」と遠藤氏。15秒程度で伝わるアイデアを考えるということは,「自分が書いたコンセプトシートを,ほかの参加者は15秒しか見てくれない」ということ。見てもらえる時間が限られているのであれば,絵を使ったほうが分かりやすいし,じっくり読み込んで良さが分かるようなアイデアは不向きだ。このあたりは本ワークショップに限らず,実際の現場で企画を見てもらう時でも事情は変わらないだろう。

 こうしたアドバイスを受け,2回めのセッションがスタートした。今度のお題は「かめ」。制限時間は短くなって10分となったものの,受講者達の筆は先ほどよりも軽い。
 1回めは文字オンリーのコンセプトシートを書いていた参加者も,今度はイラストを大きくあしらい,とにかく見た目を引くことを心がけるように変化。また,わずかな時間の中でアイデアの良さを伝えるべく,タイトルやキャッチコピーの中に面白い部分を集約する参加者が多く見られた。「かめ」というお題は1回めよりも難しそうな印象だが,出てきたコンセプトシートはどれも面白く,先ほどよりも格段に質が上がっていた。

2回めのセッションで書かれたコンセプトシート。1回めのセッションと同一人物の手になるものだが,より見やすく,分かりやすくなっている。劇的と言える変化だ
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 元の企画が面白いことはもちろん大事だが,面白さを伝える「伝達力」と,良さを見抜く「評価力」も共に大事である,と遠藤氏は語る。集団でコンセプトシートを見せ合う協調学習を行うことにより,こうした力が強化されていくのだという。
 遠藤氏は,「最初は制限時間15分からスタートし,徐々に時間を短くしていくこと」「ワークショップを何度も繰り返すこと」を受講者達に勧めた。次第に点数を取りにくくなるかもしれないが,それは企画の良し悪しを見分ける目も養われたためで,繰り返すごとに企画を出す力と伝達力,評価力はアップしていくのだという。

 最後に遠藤氏は「このワークショップに参加したみんなが立派な企画者になってくれれば幸いです。日本のゲーム界を盛り上げてください」と受講者にエールを送り,ワークショップを締めくくった。
 なお,この日の受講者が書いたコンセプトシートは,後日CEDiL(CEDEC Digital Library。CEDECで使われた資料を公開するサイト)にて公開される予定。
 「ラピッドプランニング演習用紙」も特別なものではないため,ゲームクリエイターを目指す学生ならびに企画書を書く職にある社会人は,知り合いと一緒に今回のワークショップを試してみるのも面白いのではないだろうか。

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