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ASRock,Intel 9シリーズ搭載のゲーマー向けマザーボード5製品を発表。耐久性重視路線を強化しつつ,Killer E2200の採用モデルを拡充
2013年5月に発表されたIntel 8シリーズ搭載ゲーマー向けマザーボードでは,製品名にFatal1ty氏の名前が付いていなかった(関連記事)。いったんはなくなった氏の名前が復活した理由は分からないが,Fatal1tyブランドのゲーマーに対する訴求力が再評価されたということだろうか。
さて,そんなゲーマー向けマザーボードのラインナップは表のとおり。全機種がATXフォームファクタを採用している。ただし,最上位モデルとなる「Fatal1ty Z97 Professional」の登場はもう少し先になるようで,日本における発売時期や価格は明らかになっていない。
製品名 | チップセット | 想定売価(税込) | 発売時期 |
---|---|---|---|
Fatal1ty Z97 Professional | Z97 | 未定 | 未定 |
Fatal1ty Z97X Killer | Z97 | 2万520円 | 5月11日 |
Fatal1ty Z97 Killer | Z97 | 1万8900円 | 5月16日 |
Fatal1ty H97 Killer | H97 | 1万5552円 | 5月16日 |
Fatal1ty H97 Performance | H97 | 1万2420円 | 5月11日 |
今回発表された5製品のうち,「Intel Z97 Express」(以下,Z97)を採用したFatal1ty Z97 ProfessionalとFatal1ty Z97X Killer(以下,製品名のFatal1tyは省略)は,4-wayのSLIと3-wayのCrossFireをサポートするハイエンド製品となっている。
一方,ほかの3製品はSLIをサポートしておらず,4-way CrossFireサポート対応のみになるとのことだ。
高耐久性が第1の特徴に掲げられた
ASRockのゲーマー向けマザーボード
ASRockでは,ゲーマー向けマザーボードの特徴として,6つの「高耐久性機能」(Super Alloy)を以下のとおり掲げている。
- XXL Aluminum Alloy Heat Sink(大型のアルミ合金製ヒートシンク)
- Dual-Stack MOSFET
- NexFET MOSFET
- Premium Alloy Choke(動作温度が低い高品質チョークコイル)
- 12K Platinum Capacitors
- Sapphire Black PCB(黒い素材を使ったプリント基板)
そのなかでも,Z97 ProfessionalおよびZ97X KillerのCPU用電源回路に用いられる「Dual-Stack MOSFET」と,メモリ用の電源回路に使われる「NexFET MOSFET」,そして「12K Platinum Capacitors」は,説明しておく価値があるだろう。
まずDual-Stack MOSFETだが,これは,1つのMOSFETトランジスタの中に2つのダイを積層しているというものだ。この構造により,電力の損失が少ない低オン抵抗(低RDS)での動作が可能になり,CPUに供給する電圧(Vcore)が効率化されるという。NexFET MOSFETも,基本的には同じようなメリットを持たせるために用意しているとのことだ。
Super Alloyに挙げられた以外にも,「フルスパイクプロテクション」と称するサージや雷,静電気に対する保護機能を備えており,有線LAN端子とUSB端子,マザーボード上のMOSFETなどを保護する点も,耐久性に関わる特徴に挙げられていた。
ほとんどの製品にM.2スロットを装備。ただし,より高性能な「Ultra M.2」スロットは採用せず
Intel 9シリーズ搭載マザーボードの目玉機能とされているのが,新しいストレージインタフェースである「M.2」スロットと「SATA Express」ポートの対応だ。ASRockのゲーマー向けマザーボードでは,5モデル中,最廉価なH97 Performanceを除く4モデルでこれらをサポートしている。
一般的なM.2スロットは,チップセットのPCH(Platform Controller Hub)経由のPCI Express(以下PCIe) 2.0 x2接続となっているのに対し,Ultra M.2ではCPUから出ているPCIe 3.0を使ったx4接続となり,最大転送速度もM.2の10GbpsからUltra M.2では32Gbpsまで高速化できているという。Z97 PCHを介さないため,遅延が少ないという副次的なメリットもあるとのことだ。
CPU直結のUltra M.2スロットを一部のハイエンド製品に搭載。PCIe 3.0 x4接続による高速転送と低レイテンシをアピールしていた |
ではなぜ,ゲーマー向けマザーボードにはUltra M.2が採用されていないのか。鋭い人はすぐに気づいたかもしれないが,答えは簡単で,CPU側のPCIe 3.0レーンを消費してしまうからだ。
Ultra M.2を利用する場合,Haswellマイクロアーキテクチャの制限により,グラフィックスカード用PCIe 3.0スロットは8レーン動作になってしまう。ASRockは「8レーン動作でも性能にそれほどの影響はない」としていたが,グラフィックス性能こそが最も重要なゲーマー向けモデルだと,確かにそのまま採用するのは難しいかもしれない。
ストレージの機能では,「HDD Saver」なる新機能も披露された。これは,マザーボード上のピンヘッダから専用ケーブルで2系統のSATA電源コネクタを取り出し,ここに接続したストレージの電源を,Windows上からユーザーの操作でオン/オフできるというものだ。
必要のないときにHDDの電源をオフにすることで,省電力化とHDDの寿命を伸ばす面で効果があるという。ゲームにおいて,これがメリットになるかというと難しいところだが,1台のPCに2台3台とHDDを搭載する人なら,場合によっては役立つことがあるかもしれない。
HDD Saverの仕組みを説明したスライド(左)と,マザーボード上のHDD Saver用電源コネクタ(右) |
LANコントローラにはKiller E2200を採用
ASRockは,ゲーマー向けマザーボードにおける“らしい”機能として,有線LAN機能とサウンド機能も挙げていた。
ちなみに,Killer E2200に対する評価は,マザーボードメーカーによって異なっているようだ。たとえば,4月28日にIntel 9シリーズ搭載ゲーマー向けマザーボードを発表したASUSTeK Computerでは(関連記事),「Intel製のLANコントローラは十分に速くて信頼性も高い」として,Killer E2200は採用しなかった。
ASRockも,2013年5月に発表したIntel 8シリーズ搭載ゲーマー向けマザーボードでは,Intel製LANコントローラを採用していたが,今回は考えを変えたようだ。説明会では,「UDPベースのアプリケーションにおけるネットワーク性能(レイテンシ)は,Killerのほうが良い」と説明していた。
そのほかに,今回のゲーマー向けマザーボードでは,自宅のPCをクラウドストレージやリモートデスクトップサーバとして使えるWebサービス「Orbweb.ME」の有料サブスクリプション約50ドル分を,1年分無料で使える特典も付いてくるそうだ。
このサウンドチップ自体は,2013年のIntel 8シリーズ搭載モデルから変わっていない。しかし,サウンド回路にリーク電流とノイズが少ないニチコン製のオーディオ用高品質コンデンサ「Fine Gold」を採用したことや,サウンドチップをノイズ対策用カバーで覆うといった改良を施したことにより,サウンド機能全体が「Purity Sound 2」へとバージョンアップされたとのことだ。
ゲーマー向けマザーボードに導入される機能は,各社ともある意味横並びといった感があり,それはASRockの製品でも例外ではない。他社製品では採用されていない特徴といえるUltra M.2を採用していれば個性的な特徴となったかもしれないが,仕様を考えるに,不採用となったのはやむを得ないだろう。
いずれにしても,信頼性や耐久性を重視するコンセプトは今回も継承されているので,「ゲーマー向けマザーボードではまず信頼性を重視」という場合に,ASRockのゲーマー向けZ97&H97マザーボードは選択肢となりそうな気配だ。
ASRock 公式Webサイト
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