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[GDC 2018]SIEのPlayStationブースで,次世代型e-Sports観戦システム「EDS」を体験してみた
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印刷2018/03/24 21:25

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[GDC 2018]SIEのPlayStationブースで,次世代型e-Sports観戦システム「EDS」を体験してみた

 GDC 2018の企業展示ブース,いわゆる「Expo」は,毎年微妙に様子が変わっていて,業界の動向を微妙に反映しているのが面白い。2018年におけるExpo全体を概観して,気になったところをまとめてみよう。

Epic GamesのUnreal Engineブース
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 まずゲームエンジン系では,絶好調の「Unreal Engine」を有するEpic Gamesが,巨大なブースを2か所も設置していた。ブースの一方は,いつもどおりの新技術や関連デモを提示するものだったが,もう一方は,Unreal Engineユーザーのために開放されたリラックスできるコーナーとなっていたのには驚いた。
 そこでは,Unreal Engine 4(以下,UE4)ベースのゲームを遊びなから,ハンバーガーやポップコーン,ビールやソーダ類などの飲食物を無料で飲み食いできるうえ,Tシャツや水筒などのUE4関連グッズが,1人いくつでも取り放題である。まさに大盤振る舞いだ。

UnityはExpoにこそ出展しなかったが,GDC会場のロビーにUnity採用タイトルの紹介コーナーを設けていた
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 Unreal EngineのライバルであるUnityは,Expo会場でのブース出展を取りやめる一方で,GDC 2018会場から程なく近いプライベート会場で,Unity開発者向けのサテライトイベントを開催していた。また,GDC会場のロビーエリアには,Unity採用タイトル群を出展して存在感をアピール。こちらも順調ぶりを間接的に示していたことになる。

 一方で,「CryENGINE」を有するCrytekは,2017年に引き続いてブースを出展していなかった。Crytekは,経済的に苦しい状況が続いているという噂であるが,それを裏付けるといったところか。

大きいことは大きいが,見どころに欠けたAmazonブース
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 CryENGINEに変わる新興ゲームエンジンとして,注目を集めるAmazon.comの「Lumberyard」は,今年も大きなブースを構えていた。ただ,2017年までに比べると,Lumberyardのプレゼンスは下がり,Amazonが提供するネットワーク関連サービスを広く紹介する総合ブースとなってしまった印象だ。とくに目を惹く展示もなく,ブースツアーに参加しても,「ざっとこれくらいね」と一瞬で終了してしまったほどで,いささか拍子抜けである。

勢いのあるNVIDIAブースは,来場者も多い
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 プロセッサベンダーのブースで,一番勢いを感じたのはNVIDIAだ。GDC 2018におけるゲームグラフィックスの話題で,最も注目を集めた「DirectX Raytracing」実現の立役者となったのが「NVIDIA RTX」というだけに,NVIDIAブース内は,ほぼRTX一色。Volta世代GPUを4基搭載し,約15万ドルもするワークステーション「DGX Station」の実動機を5台以上もブースに並べて,そのすべてで,RTX関連のデモを披露していた。

 一方,Qualcommブースは,新型のVR HMD開発キットを展示して盛り上がっていたが(関連記事),AMDはブース出展なし。ARMや,PowerVRを有するImagination Technologies(以下,Imagination)も,既存製品の展示を行うのみであった。

悲しみのImaginationブース。ゲームグラフィックスにおけるレイトレーシング技術が花開いたにもかかわらず,Imaginationのレイトレーシングエンジンは,夢に終わった
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 ちなみにImaginationは,2017年4月に起きたAppleとの決別をきっかけにして,業績が急落。2017年9月には,中国系の投資会社に買収されてしまった。買収により,同社が地道に続けてきた現行世代GPUとレイトレーシングエンジンを統合する試み「ハイブリッドレンダリングアーキテクチャ」構想も中止となっている。
 今回,Imaginationブースに立ち寄ったとき,顔見知りの担当者に「今年のGDCにおけるゲームグラフィックスは,レイトレーシングが話題の中心だね」と話しかけたところ,「我々の取り組みは,時代を先取りしすぎた」と笑っていた。


SIEの先端技術チームが手がける,VR時代のe-Sports観戦システム「EDS」


 Expoの概況はこれくらいにして,本題に入ろう。
 Sony Interactive Entertainment(以下,SIE)のブースは,昨年同様,展示会場の南ホール入口ほぼ正面あたりという一等地にあり,多くの来場者で賑わっていた。
 今回のSIEブースにおける展示で,最も注目すべきものは,PlayStation関連の先端技術を開発するチーム「Magic Lab」が開発した「Exploring Dynamic Spectating」(EDS)という技術だ。

SIEブース。写真中央でPlayStation VRを被っている人の周囲が,EDSのデモコーナーである
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中央に見える筆者の左にいるのが,EDSの解説をしてくれたMagic Labメンバーの横川 裕氏。同氏は「GRAVITY DAZE」や「THE PLAYROOM VR」のプログラマを務めた人物だ
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 EDSとは何かを端的に述べると,「e-Sports観戦のための技術」になる。
 現在のe-Sports観戦は,ゲームをプレイしているプレイヤーが見ている画面を,そのままストリーミング出力したものを観戦用とするものが多い。これはこれで楽しい体験ではあるが,3Dグラフィックスで構築されたゲーム世界なら,プロセッサの演算パワーとクラウド技術などを組み合わせて,もっと新しい体験が提供できるはずだ。ということで,研究開発中なのがEDSなのである。

 とくに,「他人がプレイしているゲーム」の観戦において,最も難しいのがVRゲームだ。プレイヤーが見ている視界をディスプレイ出力して見せる事例は多いが,一人称視点の映像となることもあり,いまいちVRの楽しさが伝わりづらい。「それならば,観戦者もVR HMDを被って,プレイヤーの見ているものと同じ視界を見せるのはどうか」と思う人がいるかもしれないが,どうしても観戦者が予期しない動きが発生するので,それがVR酔いを引き起こしやすいのだ。
 そこで,プレイヤーがプレイしているVRゲームの中に,ゲームには一切干渉できない「ゴースト」として,観戦者が入り込んで自由に観戦できるようにしようというのが,EDSなのである。

 SIEブースでは,フリスビーのような円盤を投げてキャッチするミニゲームのプレイを,来場者が3Dテレビや裸眼立体視ディスプレイ,あるいは別のPlayStation VR(以下,PS VR)を通して,自由に観戦できるようになっていた。

3D立体視テレビで他人のVRゲームプレイを観戦中
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 VRの場合,周囲の人からは,VR HMDを被った人が,両手に持ったコントローラを振り回して何かをやっている様子が見えるだけなので,滑稽さがもたらす面白さはあるものの,何をやっているのかは伝わりづらい。
 そこでEDSを利用すると,観戦者は,ゲーム世界の中でプレイヤーの動きを反映したキャラクターが動き回っている様子を見られるので,プレイヤーが何をしているのか,その状況を容易に理解できるのだ。

 そのうえ,観戦者側もゲームパッドを操作したり,VR HMDを被っているなら,自分の体で動いたりして,ゲーム世界を自由に動き回って観戦できる。プレイヤーのすぐそばにまで接近して見ることもできるし,敵キャラクター側の視点から見ることだってできるのだ。

他人のVRゲームプレイを,PS VRを被って観戦中の筆者。プレイヤーの視点をそのまま見るのではなく,バーチャル観客席で見たり,俯瞰視点で見たりできる。他人のVRゲームを,これまたVR HMDで観戦するという「技術的贅沢さ」が面白い
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EDSは,出力する映像をいかようにもレンダリングできるので,写真のような空中結像タイプの裸眼立体視ディスプレイでも観戦できる。このディスプレイなら,見る角度によって異なる視点の観戦が楽しめるのがポイントだ
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 あくまでも技術デモであったため,今回のEDSによるデモに使われたゲーム自体は極めてシンプルだったが,これがサッカーゲームなどであれば,ボールをドリブルする選手の後ろをついて回ったり,ゴールポスト真横に立ってみたりもできるだろう。あるいは,両者が向かい合った状態を真横から見る格闘ゲームの観戦なら,背景で腕を振り上げているモブキャラの視点で楽しむことだって,EDSなら可能となるかもしれない。

 現在のソリューションは,視聴する側のハードウェアとして,高性能なゲーム機やPCが必要となるそうだが,サーバー側でゲーム世界を管理しているタイプのオンラインゲームであれば,観戦者が見る映像をサーバー側で描画して,ストリーミング配信することも可能であるという。そうなれば,スマートフォン程度の性能でも,EDSでの観戦は実現できそうだ。

スマートフォンでVRゲームの観戦を楽しむことも。ゲーム世界をサーバー側で管理しているようなシステムなら,実現可能である
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 EDSの技術が実用化して普及すると,いわゆる「ゲーム実況」も,これまでとは違った実況や楽しみかたができそうで,夢は広がる。今後の発展と実用化に期待したい。

SIEのMagic Lab公式Webページ

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