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[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る
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印刷2013/08/21 16:28

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[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る

 gamescom 2013の前日である8月20日(現地時間)に開催されたSony Computer Entertainment Europe(以下,SCEE)のメディアイベントでは,PlayStation 4(以下,PS4)の欧米での発売日や,PlayStation 3(以下,PS3),PlayStation Vitaの値下げなどが発表されたのは既報のとおり。ゲームの新作に関する情報はなかったものの,「Minecraft」がPlayStationプラットフォームで先行発売されることや,エクスクルーシブリリース(独占提供)されるインディーズタイトルが発表されるなど,1時間半に及ぶ長い発表で会場を沸かせていた。

 メディアイベントが終了した後には,同じ会場で「Narrative and Storytelling through Gaming」(ゲームを通した物語やストーリーテリング)と題する,1時間ほどのパネルディスカッションが開催され,ストリーミング中継もされていた。本稿ではこの興味深いセッションをレポートしよう。

画像集#002のサムネイル/[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る


業界では一目置かれるメンバーが揃ったディスカッション


 さすがにPS4に関するメディアイベントの後だけに,パネラーとして登場した業界人たちの面子はそうそうたるものだ。まず,Quantic Dreamのデイヴィッド・ケイジ(David Cage)氏。「Assassin’s Creed」シリーズのリードライターであるダービー・マクデヴィット(Darby McDevitt)氏。SCEEのLondon Studioでクリエイティブ・ディレクターとしてPS3用周辺機器「Wonderbook」対応ゲームを手がけるラッセル・ハーディング(Russell Harding)氏。インディーズメーカー「The Chinese Room」のディレクターとして,PS4専用の「Everybody's Gone to the Rapture」を発表したばかりのダン・ピンチベック(Dan Pinchbeck)氏。そして,Sony Computer Entertainment Worldwide Studios社長である吉田修平氏だ。いずれもPlayStationプラットフォームに近い立場におり,ゲーム業界では一目置かれている人々だ。
 なお,吉田氏は経営者側であり,厳密にはゲーム制作現場との関わりは薄いのだが,日本のゲーム業界を代弁するような立場で参加していた。

吉田修平氏(President,Sony Computer Entertainment Worldwide Studios)
画像集#003のサムネイル/[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る
 そんなディスカッションで,まずジャブを繰り出したのは吉田氏だ。「僕はアクションゲームが大好きで,昔から飛ばすこともできないようなカットシーンは大っ嫌いだった」と語りつつも,「ここ最近のストーリーテリングの技術向上には,本当に頭が下がる。去年で言えば,『The Journey』と『The Walking Dead』は,プレイしていて涙が出そうになった」と切り出した。
 The Journeyといえば,台詞がまったく存在せず,プレイヤーが自分でストーリーを生み出していくという,今回集まったメンバーが手がけるゲームとは対極にあるゲームだが,この後も何度かリファレンスとして挙げられていたように,多くの開発者に強い印象を残したタイトルであったのは間違いないだろう。

デイヴィッド・ケイジ氏(Founder&President,Quantic Dream)
画像集#004のサムネイル/[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る
 「映画的なストーリーテリングから学ぶことは多い」と語るのは,年内に「BEYOND: Two Souls」のリリースを予定しているケイジ氏だ。彼は,gamescomに先駆けて開催されたゲーム開発者向けイベント「Game Developers Conference Europe」のセッションで,新作テクノロジーデモに関連してこれに似た話を披露していたのだが,「映画産業は,他のメディアを真似ながら100年ほど進化し,今も進化している。我々はまだ30年ほどのメディアであり,映画から学びつつも,我々の特性であるインタラクティブ性を突き詰めていくのがいいだろう」と述べる。

 こうした“映画的な手法”と“ゲームならではの表現”に関しては,吉田氏も「ゲームは難しい選択を迫られたときに面白く感じるもの」と話していたように,多くの人が賛成する方向性であるようだ。
 たとえばAssassin's Creedシリーズで,史実を絡めることでゲーマーの興味を惹くのに成功しているマクデヴィット氏は,ピンチベック氏が以前手かけていたアドベンチャーゲーム「Amnesia」を引き合いに出し,「ボクはAmnesiaをオフィスで休憩中に遊んでいたのだけど,回りに人が歩いているような状況でも恐怖感が持続していたのは印象的だった。プレイヤーに与える感情というのは,悲しみにフォーカスされがちだけど,恐怖やユーモアだって感情の一部なんだから」と続けた。

 一方で,ゲームらしいストーリーテリングの手法としては,ハーディング氏は「Wonderbook: Book of Spells」のような作品を念頭に,「1人だけじゃなくて,家族で共有できるような表現は,まだまだ改良の余地がある」と話す。

画像集#005のサムネイル/[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る
ダービー・マクデヴィット(Darby McDevitt)氏(Ubisoft Montreal)
画像集#007のサムネイル/[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る
ラッセル・ハーディング(Russell Harding)氏(Creative director,Sony WWS London Studio)

ダン・ピンチベック(Dan Pinchbeck)氏(Creative Director,The Chinese Room)
画像集#006のサムネイル/[gamescom]PlayStation発表会後のパネルセッションで,業界の“語り部”たちが「次世代のストーリーテリング」について語る
 また,ピンチベック氏は,PS4がインディーズ開発者のサポートを重視したことにより,数多くの開発者が参入している状況を取り上げて,「より多くのゲーム作家たちが,自分のストーリーを語れる場所が作り出されている」と,PS4プラットフォームを好意的に評価する。
 PS4に関してはマクデヴィット氏も,「PS4プラットフォームはゲームだけでなく,映画や音楽のサービスにも対応することで,メディアセンターとして確立しつつある」と,ポジティブに評価していた。


ゲームを豊かにする「ストーリーテリング」の多様性


 最後にケイジ氏は,「思考ルーチンがゲーム作家の立場に取って代わる未来」という将来像について言及し,「有名な音楽家の創作パターンをデータ化して,クラシック音楽を作ったというプロジェクトのことを聞いたことがある。ゲームでも,そんな時代は来るかもね」と述べて,ディスカッションを締めくくった。

 もちろん,ゲームにおけるストーリーテリングは,アドベンチャーゲームのようなジャンルの特性でもあり,すべてのゲームが持つ方向性ではないのは明らかだ。しかし,開発技術面におけるゲームの向上とともに,リアリティ溢れる世界を表現したうえで,映画とは異なる“プレイヤーの選択”というインタラクティブ性を交えたゲーム独特のストーリーテリングは,日々進化しつつある。
 The Journeyのように台詞を使うことなく,ゲーマーが自分なりのストーリーを築き上げていくゲームもあれば,BEYOND: Two Soulsのように,台詞なしではストーリーテリングが考えられない作風のゲームもある。また一方で,「JRPG」と呼ばれるゲームに多い日本的なストーリーテリングは,欧米的な感覚では時に理解されないような文化性を持っていると吉田氏が指摘したように,文化的な側面によって効果的なストーリーテリング手法に違いがあることも確かだ。
 いずれにしても,こうした多様性がゲームを豊かなエンターテイメントにしているのは,間違いないだろう。

gamescom 2013公式サイト

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