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[NDC18]韓国モバイルゲーム市場の現在と未来。Nexon Koreaモバイルゲーム事業部副室長に聞いた
オンラインゲーム大国として知られる韓国のモバイルゲーム市場はどうなっているのか,ソ・ヨンソク氏のプレゼンテーションの内容をお届けしよう。
韓国のモバイルゲーム市場は1990年代半ばに始まり,最初は無料で遊べる白黒のゲームが主流だった。しばらくすると,カラー画面を搭載した携帯電話が登場し,急速に普及する。そのタイミングで,ゲームが有料化されることとなったのだという。
その後の2000年代初め,PCオンラインゲームがかつてそうであったように,モバイルゲームにもFree-to-Playの波が押し寄せ,急速な市場の拡大が起こった。
「Nexon Developers Conference 18」公式サイト
モバイルゲームのジャンルは比較的カジュアルなゲームから歴史が始まっており,次第にスポーツ,ストラテジー,タイクーン,そしてアクションRPGなど,よりコアな方向へ進化していったという。中でもアクションRPGは,韓国のモバイルゲーム市場でトップの売上をあげている。
しかし,アクションRPGはフィーチャーフォンからスマートフォンに切り替わるタイミングで1つ失敗した。多くのモバイルゲーム事業者は,フィーチャーフォンで人気のあったアクションRPGタイトルを,そのままスマートフォンに移植するだけで済むと思っていたのだが,ユーザーはそれで満足しなかったのだ。
その結果,海外で開発されたクオリティの高い低価格なゲームが韓国内で流行し,韓国産のモバイルゲームは劣勢に陥る。
この流れを変えたのが,App StoreやGoogle Playなどのプラットフォームで,韓国内でモバイルゲームカテゴリが認知される1つの足がかりになった。そして,フィーチャーフォン時代と同様に,まずはカジュアルゲームが流行したという。
カジュアルゲームで広がったユーザーの裾野は,コアゲームでさらに発展していき,韓国のモバイルゲーム市場は非常に大きくなっていった。中でもやはり,アクションRPGが売上を牽引している。
フィーチャーフォンでは3年間で300億ウォン(約30億円)の収益を挙げたが,スマートフォンのアクションRPGは,わずか1か月で300億ウォンを稼いだという。
同社もスマートフォン向けのアクションRPG「HIT 〜Heroes of Incredible Tales〜」をリリースしており,ソ・ヨンソク氏によれば,この作品を超えるボリュームのタイトルは出てこないと考えていた(しかし,「リネージュ2 レボリューション」と「リネージュM」がその考えを打ち壊したという)。
2016年まではアクションRPGが一世を風靡していた韓国のモバイルゲーム市場だったが,2017年と2018年にはMMORPGが台頭しており,すでにPCオンラインゲームの売上を超えているとのこと。
ここまでが,韓国のモバイルゲーム市場の現状となる。
ここからはソ・ヨンソク氏による,韓国のモバイルゲーム市場の予測だ。
今後数年は,よほどの大きな変動がない限り,「SEVEN KINGHTS」のようなキャラクター収集型RPGと,「リネージュ2 レボリューション」のようなMMORPGが大勢を占めると考えている。その中で,PCオンラインゲームのモバイルへの移行が進んでいく。まだ発表されていないが,いくつかのMMORPGでモバイル化の話が進んでいるという。
また,インディーズゲームも流行の兆しを見せている。韓国には,中学生が設立したインディーズゲームデベロッパさえも存在しており,今後,モバイルゲーム市場でインディーズゲームの占める割合は大きくなりそうだ。
一方で,モバイルゲームにおけるFPSジャンルには少し懐疑的だとソ・ヨンソク氏は言う。現時点で大きな成果をあげておらず,この先,盛り上がるかどうかは未知数だ。ただし,中国で開発されている,モバイル版「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」が韓国に上陸すれば,大きな人気を獲得する可能性がある。
モバイルeスポーツも同様で,現状では盛り上がりの兆しは見えないという。しかし,モバイルeスポーツはプロプレイヤーだけでなく,一般層に普及する可能性があるため,Nexon Koreaとしては,引き続きモバイルeスポーツに対する施策を行っていくと語る。
ソ・ヨンソク氏は,個人的な意見だと断ったうえで,モバイル版PUBGが登場するときが,韓国のモバイルeスポーツの1つのマイルストーンになると考えているという。
PCオンラインゲーム大国である韓国が,どのようなモバイルゲーム市場を構築し,どのようなゲームを作り出していくのか,楽しみな部分である。日本でも韓国でも,モバイルゲーム市場はまだ発展途上。より面白いゲームが登場することに期待したい。
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