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[CEDEC 2015]ディスプレイを着る? 「ゲーミング・スーツ」がもたらす新たなゲーム体験とは
そんな東京工芸大学で作成されたのが今回のテーマとなる「ゲーミング・スーツ」だ。これは何かというと,簡単に表現するなら「ディスプレイ付きのスーツ」ということになる。LEDパネルをあちこちに取り付けたスーツを着て,Kinectで制御するというもので,「プレイヤーとコントローラとディスプレイを三位一体化する」デバイスなのだそうだ。全身を入力装置と出力装置にしたときにどんなゲーム体験が生まれるか,という実験だ。
これはもともと2013年の日本ゲーム学会で発表するために考案したとのこと。今までになかったゲームの表現方法に挑戦しようと,2つのテーマに沿って出てきたアイデアだという。そのテーマとは,「スマートフォンのようなフレームのある狭い画面から解放された遊びはないだろうか」「ゲームすること自体をアートにできないだろうか」という2点だ。
そのときはアイデアだけだったので,イメージ映像での発表だった。
このスーツを実体化させたのが第1号機だが,これは1024個(胸部)のLEDを手配線で接続し,ダイナミック制御回路で点灯をコントロールするもので,非常に重く,断線も多かったという。それでもちゃんと運用してゲームを動作させることは可能で,プレイヤーの身体と同期して動く映像を出すことができたようだ。
この1号機から発展させるにあたり,2つの方向性があったという。まずは複数化で,2着のゲーミング・スーツを使えばより多彩なアプリケーションが展開できる。次に全身化で,全身にLEDを取り付けることでアプリケーションの動作の幅を広げることが可能になる。
結果からいえば後者が採用されたのだが,そこには全身にLEDを取り付ける方向のほうが,三位一体の意味を出しやすいといった理由もあった。全身の動きを入力とし,全身に表示を行うというゲームデバイスとプレイヤーの一体化がより進められる方向である(ただし,複数化のほうも別に進められているようだが)。
そうして作られたのが2号機だ。LEDモジュールを,胸に4枚,右腕に2枚,左腕に2枚,右足に3枚,左足に3枚取り付けたものとなっている。全身をディスプレイにするコンセプトが実現されつつあるようだ
実際に作成してみると,こういったデバイスが持つ可能性も明らかになってきた。身体を使った新しい遊びができるのではないか,プレイ自体を演舞のようなアートにできないかといったもので,現状ではあまり激しい動きはできないとのことだが,有機ELなどでもっと柔軟なディスプレイシートが出てくれば,さらに可能性が広がると岩谷氏は語る。
手だけを使うコントローラではないので,リハビリに応用できるのではないかといった話も出ているようだ。
今後は,各部に振動装置を付けて,視線を誘導するようなことも計画されている。手足にたくさんの見るべきところがあると注意が行き渡らないので,そういった措置も必要になってくるだろう。
さて,デバイスとして見ると,Kinectを必要とするという点で,スーツ単体で入力が完結しないのがちょっと惜しい。モーションセンサーを各部に付けて,単体で完結するようになると,走り回って遊ぶようなことも可能になるので,今後の展開に期待したい。ゲームへの応用は置いておいても,衣服が表示デバイスになるというのは可能性に満ちている。3号機が楽しみなプロジェクトといえるだろう。
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