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[SPIEL’16]電気回路やプログラミングの基礎をゲームで学ぶ。理系シリアスボードゲームをプレイしてみた
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印刷2016/10/18 00:00

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[SPIEL’16]電気回路やプログラミングの基礎をゲームで学ぶ。理系シリアスボードゲームをプレイしてみた

 PCゲームの世界には「シリアスゲーム」というジャンルが存在する。簡単に言えば,遊ぶことによってさまざまな知識を得たり,理解を深めたりするといった教育(場合によっては広報)志向のゲームのことである。
 そして当然ながら,アナログゲームの世界にも「シリアスゲーム」は存在する。本稿では,SPIEL’16会場で見つけた理系シリアスボードゲームを紹介したい。

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電子ブロックファン必見の電気回路パズル


 さて,シリアスボードゲームと言うには言ったが,今回紹介するのはいずれもパズルゲームであり,ソロプレイが基本。とはいえ,2人で協力しても楽しいし,親が子供と一緒にプレイするのも良い遊び方だ(実際,会場でも親子で一緒に遊んでいる様子が見られた)。

 最初に紹介するのは「Circuit Maze」だ。
 この作品は,いわゆる「電子ブロック」を想像してもらえると話が早い。想像できない世代であれば,プラスチックのコマに金属部品やスイッチ,ランプなどが付属しており,それらをボード上で組み合わせることで電気回路が作れるもの,と思ってほしい。

 ルールはいたって簡単だ。カードの形で設問が大量に用意されているので,それに従ってボードとパーツをセットアップし,カードに示されているとおりの結果を出す回路を組んでいく。
 論より証拠,まずは下の写真を見てほしい。

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 カードに従ってボードにパーツをはめ込み,また使うパーツをより分けたところである。このグレーのパーツ4つを適切に使う(使い切る)ことで,緑のランプは明るく,赤と黄のランプは薄暗く点灯する回路を作るというのが課題である。

 ……さあ,解けただろうか。
 正解は,こうだ。

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 ちなみに正解はカードの裏に書いてあるので,とりあえず正しい回路を見て感嘆するだけという遊び方もできる。
 では,次の問題に進もう。

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 これらのパーツを使って,黄と緑のランプを明るく点灯させよう(つまり,並列回路を組む必要がある)。

 パーツは少なくなったが,普通の回路図なら「電源」と表示されるパーツが2つに分かれているので,そこに慣れるのにちょっと時間がかかるかもしれない。
 正解は,下の写真のとおりである。

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 パーツにはスイッチなども用意されており,「スイッチの切替によって,異なる結果を出せ」という難問もある。下の写真は,スイッチを使う問題とその答えだ。

これが問題。スイッチが左のときはすべて消灯,真ん中のときは黄と緑が点灯,右のときは赤と黄が点灯するようにしたいが……
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解答。電池ボックスの陰に隠れて回路が見にくくなるため,ボードの上下を逆にしてある
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 なお,最高難度の問題としてはこのような問題がある。

問題。3色とも明るく点灯させよ
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解答。左上に電池ボックスが入れば完成だ
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 大きな弱点としては,ランプパーツにはプラスとマイナスの方向がある(これが当然)のだが,それらの記号が非常に見にくいという点が挙げられる。油性マジックを用意して,プラスとマイナスの記号を強調するのが良いだろう。

これでプラマイを見分けるのはかなり厳しい
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ThinkFun「Circuit Maze」商品ページ



プログラミングの基礎を遊びながら学ぶ


 続いて,プログラミングの基礎を学ぶ「Code Master」である。なんだかどこかで見たことがあるグラフィックスだ。

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 本作は大きく分けて,次の3つで構成される。

  • 課題
  • マップ
  • アルゴリズム

 課題には,使うマップとさまざまな配置(プレイヤーのスタート地点,ゴール地点,必ず通らねばならない地点=青いクリスタルの配置場所)が示されている。また,アルゴリズム設計に使えるパーツとアルゴリズム設計シートも指定がある。

 この説明では理解するのがちょっと難しいだろうが,まずは実例を見てほしい。

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 プレイヤーはマップの右下隅にいて,ゴールはマップの左下隅だ。
 アルゴリズム設計パーツは赤が2つ,緑が2つ与えられており,アルゴリズム設計シートは丸が4つ連続したシート(写真右側)を用いる。
 さて,課題をしっかりと見てみよう。

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 プレイヤーのコマは,例えば「赤」が指定されていれば,その場から赤いルートを選択して移動する。この課題の場合,最初に「赤」を指定すれば,プレイヤーは「2」のマスに移動するというわけだ。
 逆に,もし「緑」を指定すれば,最初の一歩は「4」のマスになる。
 この法則に従って,シートに赤や緑のコマを並べていく。

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 この課題の場合,赤・緑・赤・緑の順に並べるのが正解だ。

 当然ながら,本作にもさまざまな課題と発展的内容が入っている。
 それでは,レベルを1つだけ上げてみよう。

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 上の写真では「青いクリスタル」が導入された。プレイヤーは左上にあるゴールマスにたどり着く前に,このクリスタルをすべて回収しなくてはならない。
 とはいえ,さすがにレベル2。まだまだ簡単な課題であり,正解は青・緑・青・赤となる。

 マップは豊富で,アルゴリズム設計シートも種類が多い。マップには一方通行があり,設計シートには条件分岐や繰り返しも登場する。
 最初はなんでもないパズルだったものが,徐々にプログラミングへと変わっていくという難度設計は,素直に感心せざるを得ない。

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ThinkFun「Code Master」商品ページ



受け手から作り手へ


 どちらのゲームも言うなれば「所詮パズル」ではある。だが,どちらのパズルも解いていてとても楽しく,かつ非常に教育的でもある。
 もちろん,「コンピュータで提供すればいいんじゃないか?」という向きは,当然あるだろう。実際,「Code Master」に類似したPCゲームなら存在する。

 だが,アナログゲームの強みが発揮されるのは,いずれも誰もが問題を創作できる点にある。PCではエディタを作らねばならないのに対し,これらアナログゲームは紙とペンさえあれば新しい問題を提示できる。「Code Master」に至っては,新しいマップやアルゴリズム設計シートを作ることだって容易だ。

 そして,この強みは想像以上に大きな可能性につながる。最初は「プレイヤー」として遊んでいた子供が,やがて「出題者」として問題を自作するところまで,完全にルートがひらかれているのである。
 生徒が単に遊ぶだけでなく,いずれは作るようになる。この可能性を極めて低いコストで実現してみせた両作品は,シリアスゲームを研究するのであれば避けて通れないサンプルのように思える。

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