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[TGS 2017]DMM GAMESの“いま”から,日本の「PCゲーム市場のいま」が垣間見える? その売上から海外戦略が語られた講演をレポート
昨年度の事業面での振り返りと,これからの取組みが簡潔に示されたこの講演は,DMM GAMES カンファレンス 2017での発表と内容的に被る部分も多いが,「日本におけるPCゲーム」の現状を測る1つの指標ともなり得るものだ。以下,簡単にレポートしよう。
登壇したのはDMM GAMES 企画営業本部 本部長の林 研一氏である。
月商1億円を超えるタイトルが17本
DMM GAMESはその立ち上げから今年で6期目,TGSへの出展は4回目となる。そんなDMM GAMESは2017年も順調に成長を続けており,今年8月の段階で会員数は1924万人に到達した。林氏は「年内には2000万人を突破する見込み」と,まだ会員数は安定した増大傾向にあることを示した。
そんなDMM GAMESのユーザープロファイルを見てみよう。
登録会員のデバイス内訳はPCが58.1%に対しモバイル41.9%と,ややPCユーザーが多い状況だ。2014年からPCユーザーは安定して増大する傾向にあるという。
男女比は男:女=8:2と男性ユーザーがかなり多いが,「刀剣乱舞」「文豪とアルケミスト」以来,女性ユーザーも確実に増加している。この状況に対して林氏は「今後も女性向けタイトルは増やしていきたい」と意気込みを語った。
年齢構成としては男女とも20〜30代が大多数を占めているが,とくに女性の場合は20代が51%と過半数に達している。林氏はこれも「刀剣乱舞および文豪とアルケミストの影響が大きい」と指摘する。
さて,デバイス別の消費内訳を見ると,PCが72.5%に対しモバイルが27.5%と,この大きな売上のほとんどがPCユーザーによるものであることが分かる。林氏はこの数字を「DMM GAMESにおけるPCの強さを示すもの」と評価した。
またDMM GAMESは成人向けコンテンツと全年齢向けコンテンツがあるが,消費内訳を見ると成人向け:全年齢=65.4%:34.6%と,成人向けコンテンツの強さが目立つ。これについて林氏は「一般向けの売上も拡大を目指している。2017年度は一般向けコンテンツが大きな注目を集めているため,実際に一般向けの売上が伸びると考えられる」と補足した。
またPCのブラウザでDMM GAMESを利用するユーザーのARPPU(Average Revenue Per Paid User。課金ユーザー1人あたりの平均収益)は8745円,課金率は19.8%と高い水準を示している。ARPPU・課金率がともに右肩上がりで成長しているというのも,注目すべきポイントだろう。
タイトルごとの月商規模を見ると,月商1億円以上のアプリが17本。5000万〜1億円のアプリが10本となっている。
マルチデバイス対応によりユーザーへの接触面を増やす
とくに林氏が強調したのは,マルチデバイス展開が月商に及ぼす影響である。
マルチデバイス展開とは,簡単に言えば「PCとスマートフォンで配信し,データ連携を行うことでユーザーの接触機会や露出を増やして,トータルで売上を上昇させる」という方針だ。「艦これ」や「刀剣乱舞-ONLINE-」がブラウザでもスマホアプリでも遊べるというのが,もっとも有名なパターンだろう。
月商5000万円を超えているタイトル27本のうち,マルチデバイス展開を行っているタイトルは18本と,過半数を超えている。
また,「神姫プロジェクト」のDAUの推移がサンプルとして示された。本作は,DMM GAMESプラットフォームでのマルチデバイス展開を行ったあとに,DMMの外であるアプリ市場(App Store,Google Play)でサービスを開始したが,App Store,Google PlayのDAUが上積みされ,DMMプラットフォームのDAUを圧迫していないことが分かる。
つまり,「アプリ市場とDMM GAMES プラットフォームでユーザーを食いあうことはなく,売上は純増する」「アプリ市場とDMM GAMES プラットフォームは,ユーザーが被っていない」「マルチデバイス対応により,より幅広いユーザーに接触面が持てる」(林氏)のである。
これを踏まえ,DMM GAMESでは「スマートフォンアプリをPCで展開する」という方向も強化していくという。具体的には「陰陽師」や「テラバトル2」「デスティニーチャイルド for DMM」のPC展開が挙げられるだろう。
実のところ,「スマートフォンアプリのPC版を展開する」というプラットフォームは,DMM GAMESだけではない。だが林氏は「DMM GAMESが持つPCのゲームユーザーベースは非常に大きい」と指摘。またDMM GAMESでサービスされる作品は,そのプロモーションもDMMがしっかり協力すると語った。
技術的な側面においても,DMMはBlueStacksと協業を開始。エミュレータによりAndroidアプリをPCでプレイできる体制を構築しようとしている(年内にサービス開始見込み)。
またこれ以外にもDMM GAME PLAYERのバージョンアップ(UP済み),チート対策サービスなどのセキュリティ診断(現在調整中),ゲームの導入支援(例えばUnityで作られたゲームをブラウザで実行するためWebGLで出力しようとすると,専門的なノウハウや知見が必要になるが,このような状況に対応できるパートナー会社を紹介する,など)といった形で,パブリッシャを支援する動きはさらに強化されていく見込みだ。
加えて,DMM GAMESではグローバル展開へのサポートも始まっている。すでに日本在住の外国人プレイヤー向けプラットフォームの他言語化対応を進行中で,こちらは年内に対応が完了する見込みだ(ちなみにBtoBの問い合わせフォームはすでに多言語化が完了している)。またいわゆる「国際展開」については,DMM GAMESでは3つの方向性が示された。
1つ目はライセンス・イン。つまりDMM GAMESプラットフォームに,海外のゲームを誘致するという方向性だ。これについては現状,「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」などがもっとも有名だろう。
2つ目はライセンス・アウト。海外市場に対して日本の作品を売り込んでいくという方向性だ。
そして3つ目が,協業(共同開発)。例えばDMMがIPやゲームを企画し,海外のパートナーが開発や運営をする,といったパターンだ。そこからグローバル同時リリースを目指す。DMMにはアニメ部門もあるので,アニメ化などのマルチメディア展開も視野に入ってくる。
最後に林氏は「DMM GAMESでは,ゲームタイトルも,運営ノウハウも,進化し続けている。だが我々は進化を止めることは許されない。なので今後とも進化し続けていこうと考えている」と抱負を語り,講演を終えた。
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