プレイレポート
“攻殻”の電脳空間で光学迷彩を駆使してハッキング。VR ZONE「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」はVR版サバゲーだ
攻殻機動隊SHは,アニメ「攻殻機動隊 ARISE」を原作とする最新アクティビティだ。プレイヤーはVRゴーグルを装着し,“あの電脳空間”を舞台に最大8人によるチーム対戦が楽しめる。体験料金は2800円(税込)で,VR ZONE SHINJUKUの入場券が別途必要となる。
フィールドは20メートル×11メートル。「国内VR施設では最大級の広さ」と謳われており,テニスコート程度の広さと考えれば想像しやすいだろう。この中でVRゴーグルを付けて銃撃戦を行うのだが,今回は取材者2人に施設スタッフを加えた1チーム3人の編成となった。稼働後も当面は同様の仕様で運営を行い,運用上の問題点を確認しつつ,徐々にプレイヤー数を増やしていく予定だという。
プレイヤーはVRゴーグルのほか,マイク付きヘッドホンとバックパック型PCを装着。さらにトラッキングマーカー付きのギアを両足,腰,利き腕ではないほうの腕に固定する。これにハンドガン(反動あり)を加えると計10キロほどの重量となるが,数字ほどの重量は感じなかった。
ゲームを始める前には,チーム編成やブリーフィングが行われる。プレイヤーはα(アルファ)チーム,またはΩ(オメガ)チームに所属し,お互いに相手はサイボーグ風のテロリストとして映る。味方のプレイヤーは人間に近い義体なので,敵味方を判別しやすい。
最初はαチームがフィールド上の爆弾で壁を破壊し,施設への突入を図る。一方,Ωチームはこれを迎え撃つ形だ。「ハンドガンを撃って敵を倒す」「情報端末をハッキングする」といった成果を上げるとスコアが加算されていく。
プレイヤーの武器はハンドガンのみ。弾は12発装填されており(画面右下に残弾数が表示される),グリップの底にあるボタンを押すとリロードとなる。
攻殻ファン注目の“光学迷彩”は,ハンドガンのハンマー付近にあるボタンを押すと発動する。もちろん,その効果は一定時間,姿が消えて相手から完全に見えなくなるというものだ。
ただし,効果が切れるとチャージが必要となり,しばらく使えない。「ここぞ!」という勝負どころを見極めて使いたい。ちなみにアニメにおける光学迷彩は,光の屈折の具合でぼんやりと姿が分かる表現だったが,攻殻機動隊SHでは完全に消えてしまうようだ。
プレイヤーは身体に3発,または頭に1発の弾を受けると戦闘不能状態に陥る。身体が半透明になってしまったら,フィールド上のリスタートポイントまで移動すれば何回でも復帰できる仕組みだ。
ブリーフィングにおいて,繰り返し注意を受けたことは「絶対に走らない」。
現実のフィールドは障害物のない広い空間だが,ゲームが始まるとVR空間には部屋が出現し,その周囲に通路がある。部屋の四方すべてに入口があり,部屋の中にも壁があるため,プレイヤーは狭い通路を歩くことがほとんど。相手の姿が見えないときに,走ってしまうと出会い頭にぶつかってしまう恐れがあるのだ。
また,ゲーム中はたとえ敵が目の前に現れても,ゆっくり歩いて行動したほうがいい。急にしゃがんだり,小走りになったりすると,画面にアラートが表示され,物音を立てたことになってしまうからだ。こうなると,壁越しでも相手に位置がバレるだけでなく,戦闘不能状態からのリスタートに必要な時間が長くなってしまう。
安全面はもちろん,ルール的にも走っていいことは何もないのだ。
ゲームがスタートすると,装着したセンサーが正しく反応しているのか,個人認証は正しいかといった確認が行われる。このシークエンスは,義体に意識を入れる展開になっており,「ついに攻殻の世界に来てしまった……」と雰囲気が一気に盛り上がる。
フィールドは通路や壁によって視界が遮られているので,曲がり角や壁の裏に隠れながら,チラチラと敵の存在を確認しながら進むことになる。自分の姿を晒していたら,格好の的になるだけだ。
ハンドガンからはレッドドットサイトが出ているので,ヘッドショットが狙いやすい。調子よく相手を倒したところで,味方の施設スタッフから「情報端末が出ました! ハッキングしましょう!」という報告が入った。アタッシュケース状の情報端末を見つけたら,しばらく(10秒くらい)手をかざすことでハッキングが可能だ。
しかし,当然ながら敵もハッキングを狙ってくる。ハッキング中は足が止まるので,仲間にサポートしてもらうのが賢明だろう。ゲーム中は仲間同士のみマイクによって会話が可能で,相手チームに聞かれることはない。積極的に情報を共有したほうがいい。
今回のゲームは,相手に2回続けてハッキングを許したところで終了。展開に多少左右されると思うが,今回のプレイ時間は20分程度だった。フィールド走ることはないので疲労困憊ということにはならず,心地よい疲れを感じながらHMDを外すと,一気に現実へと引き戻される。そして,あることに気が付いた。
現実のフィールドには部屋も壁も存在しない。だが,プレイ中はそのことに考えが及ばなかった。それくらいVR空間には“実在感”があり,完全に没頭していたようだ。自分の手や足の動きも正確にシンクロしているため,いとも簡単に騙されてしまった。
なお,ゲーム中は壁を通り抜けようとすると,警告が表示されるとのことだ。
プレイ後,VR ZONEの公式サイトで戦績をチェックできる。各プレイヤーのスコアやランキング,キル/デス数などがあり,「今度こそ!」という気持ちにさせてくれる。
体験後には「Project i Can」の小山順一朗氏(コヤ所長),田宮幸春氏(タミヤ室長),そして攻殻機動隊SHのプロデューサーを務めるローム・チャールズ氏(CJ)に話を伺った。
攻殻機動隊SHが誕生したきっかけは,「VR ZONEとしては,歩き回れるVRコンテンツを作りたかった」(小山氏),「歩き回れるフィールドタイプのVRで,“対戦できる”というコンテンツが国内にはなく,ぜひやってみたかった」(ローム氏)というものだったそうだ。いいタイミングで「『攻殻機動隊』で何か作れないか」という話があり,ローム氏はさっそく開発に取りかかったという。
田宮氏によると,ローム氏は「アメリカ西海岸生まれですが,日本のゲームやアニメが好きすぎてバンダイナムコに入社した」というほど,日本のカルチャーを愛しており,そのなかでも「攻殻機動隊」は特別な存在とのこと。
開発当初には「ロジコマ(多脚戦車)をハッキングして敵に攻め入る」「施設のシステムをハッキングして監視カメラから敵の動きを見る」といったアイデアがあったそうだ。さらに,「ハッキングするときは,ココ(後頭部)にケーブルを差す動作をしたかった」(ローム氏)と語り,溢れんばかりの“攻殻愛”が伝わってきた。これらのアイデアが実現する日を楽しみにしたい。
技術的なポイントを挙げるなら,プレイヤー8人の全身をトラッキングするという試みだろう。いわば8人同時にモーションキャプチャを行うようなものだが,田宮氏によると,「天井に60個のカメラを設置し,最低3個のカメラが各センサー光部位置を認識して3D座標を割り出しています」とのこと。
「ハンドガンで頭を狙って撃つ」という動作も,VR空間では正確に再現されているが,この調整にも時間をかけたそうだ。当初は画面内のハンドガンがぷるぷる震えたり,狙った場所が撃てなかったりして試行錯誤の連続だったという。
結局のところ,解決策はトラッキング精度をひたすら上げていくしかなく,デバイスメーカーと相談しながらプログラムをひたすら調整したそうだ。
攻殻機動隊SHは,運用面でも挑戦している。プレイヤーが自由に動けるがゆえに,お互いがぶつかるかもしれないという可能性がある。そのあたりはブリーフィングやゲームシステムによって,非常に気を使っている印象だ。
トラッキングの正確性はもちろんだが,誰かとぶつかりそうになったり,速く動いたりするとアラートが表示されることや,狭い通路が多いフィールドデザインを採用していることによって安全性を高めている。ほかのプレイヤーの対戦を眺めてみても,みんな不思議なくらいゆっくり歩き,ぶつからないですれ違っていく。自分ではキビキビ動いていたつもりだが,端から見るとそうでもなかったようだ。
最後に,これからの意気込みをコメントしてもらった。VR ZONEでしか体験できない“VR版サバイバルゲーム”に興味を持った人は,ぜひ週末や冬休みを利用して足を運んでほしい。
「今までのVR ZONEはアトラクション的なものが中心でしたが,攻殻機動隊SHは『VRでやり込み系ゲームを作ったらどうなるか』という方向性です。攻殻機動隊SHを通じて,『今後,VRエンターテイメントがどういう楽しまれ方をするのか』といったことを確認したいという裏テーマもありますので,ぜひ注目してください」(田宮氏)
「VR ZONE SHINJUKUはもちろんですが,小型店舗でもVRアクティビティを体験できる『VR ZONE Portal』の展開も頑張っています」(小山氏)
「友達と一緒に攻殻機動隊の制圧戦を楽しめヨー!(絶叫)」(ローム氏)
VR ZONE SHINJUKU「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」
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