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ゴリラのパワーとロック様の筋肉を感じろ。Midwayの名作「Rampage」が原作のハリウッド映画「ランペイジ 巨獣大乱闘」とは
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印刷2018/04/26 11:00

レビュー

ゴリラのパワーとロック様の筋肉を感じろ。Midwayの名作「Rampage」が原作のハリウッド映画「ランペイジ 巨獣大乱闘」とは

 読者の皆さんは,ゲームの実写映画は好きだろうか? 最近だと,「Papers, Please」の実写ショートフィルムは大きな話題となった(関連記事)。そして「トゥームレイダー ファースト・ミッション」関連記事)も好評上映中だ。さらに先日は,ジョーダン・ボート=ロバーツ監督が小島秀夫監督とscheming(悪だくみ)したということで映画版「METAL GEAR SOLID」が巷の話題になった。

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 それらはもちろん注目作だが,ゲームマニア&映画マニアという二足の草鞋を履く人には,とくに押さえておいて欲しいタイトルがある。国内では5月18日から公開される「ランペイジ 巨獣大乱闘(原題:Rampage)」だ。本作の試写会に参加してきたので,それを踏まえて本作を紹介したい。

 本作は,Midway Gamesから1986年にリリースされたアーケードゲーム「Rampage」を映画化したもの。同作は,日本だとそれほど知名度の高いタイトルではないが,北米を中心にセガ・マスターシステムやNES(北米版ファミリーコンピュータ),Atari 2600,Commodore 64,ZX Spectrumなど,さまざまなゲーム機やコンピュータに移植され大ヒットを記録した。

原作となったゲームのタイトル画面
※以下,ゲームのスクリーンショットはiOS「Midway Arcade」より
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 オリジナルのゲームは,巨大な生物……映画の邦訳では“巨獣”とされているモンスターを操作して,軍隊と戦いながら市街のビルを破壊していくという内容だ。怪獣や巨大兵器などで街を破壊するというコンセプトのタイトルはゲーム史に散見されるが,Rampageは「市民や兵士を食べて体力を回復する」というシステムがユニークだ。

 ゲームにおける巨獣の設定は,オリジナル版や1990年代の「Rampage World Tour」,2000年代の「Rampage: Total Destruction」などで微妙な差異こそあるが,基本的には「人間が変異したもの」となっていた。ただ映画版に登場する巨獣は,「既存の生物が変異したもの」だ。さすがに「人間の変異した巨獣が人を食べる」というのは倫理的に危うかったのだろう。アメリカ映画協会による本作のレーティングはPG-13とされているが,もしカニバリズム的な設定のままだったらR指定以上になっていて,日本での配給も難しくなっていたかもしれない。

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 巨獣達を生み出した元凶は,バイオ兵器を研究しているエナジン社という企業だ。「Rampage World Tour」以降のゲームシリーズではScumlabという企業が諸悪の根源となっていたが,日本語的に言えば“クソ研究所”となる企業名は,実写のビジュアルにはマッチしないと判断されたのだろう。

「Midway Arcade」で再現された筐体
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 エナジン社のトップに経つのは,横暴で傲岸不遜なクレアと,その腰巾着的なブレットのワイデン姉弟。国民的な猫型ロボットの漫画/アニメに登場するガキ大将&お供にも似た,いかにもな敵役だ。エナジンの社長室にはブレットの趣味が反映されているらしく,アーケード版Rampageのアップライト筐体や,さまざまなフィギュアが置かれている。社長室のシーンでは背景や小物に注目してみよう。

 巨獣達はジョージこそ「巨大なゴリラ」というビジュアルが踏襲されている(アルビノという新たな設定は付与されている)が,リジーは「トゲまみれのワニ」,ラルフは「翼膜や針のような体毛を持ったオオカミ」という,いかにもモンスター然とした姿になっている。ゲームのプレイシーンではコミカルな三頭身だったが,本作ではガチの怪獣だ。

オリジナル版はこんな顔
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映画版はこんな顔
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 なお,巨獣はこのほかにもネズミの変異体が登場する(元が小さいので体長1mくらい)。ゲームシリーズでのネズミのキャラクターは「Rampage 2: Universal Tour」のCurtisや「Rampage: Total Destruction」のRhettが存在するものの,ジョージ/リジー/ラルフに並んで出てくるネズミということは,恐らくAtari Lynx版「Rampage」のみに登場したLarryをオマージュしたのだろう。こんなマイナーキャラまで拾ってくる姿勢には感動すら覚える。
 そのほかにもゲームにおける難敵のヘリコプターがやたらとフィーチャーされていたり,Dave & Buster's(アメリカでチェーン展開されているゲームセンターとレストランの複合店)のシカゴ店が破壊されるなど,ゲーマーなら笑えるシーンがいくつか盛り込まれているので,細かい部分もチェックしてほしい。

 そんな巨獣達や悪の企業に立ち向かうのは,デイビス・オコイエという霊長類学者。演じるのは,日本では“ロック様”の異名で知られるWWEのスター選手,ドウェイン・ジョンソン氏だ。

人類としては最強クラスのロック様だが,巨獣達の前では……。
ジョンソン氏は現在公開中の映画「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」でも主演を務めていて,こちらは逆に“映画がゲームに”なったりもしている(関連記事)。ついでに言えば10年以上前に実写映画版「DOOM」の主演も務めていた
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 デイビスはかつて特殊部隊の兵士だったが,任務を重ねていくなかで人間を信じられなくなり,人付き合いを避けつつ自然保護区のレンジャーをしている。しかし,最愛の親友であるゴリラのジョージが,事故で漏出した遺伝子改造物質(原語では「serum/血清」,邦訳版では「病原体」)のひとつに触れてしまい,巨大化&理性を失って大暴走。果たしてデイビスはジョージとの友情を取り戻せるのか,暴れまわる巨獣達を倒せるのか,軍が事態収拾のため実行する核攻撃を阻止できるのか……というところがストーリーの軸になる。「モンスターと人間のバディもの」「モンスターハンティングもの」とも言えるテーマは,刺さるゲーマーが多いのではないだろうか。

 ちなみに,本作自体を原作としたゲームも作られており,巨獣の視点を体験できる「Project Rampage VR」がSteamで無料配信されている。また,「Rampage:AR解放」iOS/Android)というアプリも提供されている。

 この映画に関して,成長著しい中国市場で無国籍的なアクション映画がヒットを重ねていること,それに絡んで「キングコング: 髑髏島の巨神」「トランスフォーマー/最後の騎士王」「レディ・プレイヤー・ワン」「パシフィック・リム: アップライジング」など“ビッグなキャラクターが派手に戦う映画”の需要が高まっていること,そのほか近年のハリウッド映画界における人種とキャスティングに関する問題など,小難しい話は色々とできる。しかし,サメの成長特性やシロナガスクジラの成長率,カブトムシの強靭さ,チーターのスピード,トゲネズミの再生能力,コウモリのバイオソナーなどを組み込まれたゴリラが大暴れするような痛快さ特化のジェットコースター的娯楽映画に,そういった考証を挟むのは野暮というものだろう。
 細かいことは考えず,「ゴリラがドーン! ムササビオオカミがバーン! トゲトゲワニがズドーン! そしてロック様の筋肉! 迫る核攻撃! ゴリラとヒトの熱い友情! 破壊! 爆発! ゴリラ! 筋肉! ドカーン!!」くらいのノリで楽しんでほしい。

 なお,こういった映画なので動物が死んだり人が食べられたりするシーンは頻繁に出てくる。過激な描写が苦手な人は要注意だ。

「ランペイジ 巨獣大乱闘」公式サイト

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