プレイレポート
ボードゲーム「ウェンディゴのこわい話」「適当なカンケイ」の体験イベントをレポート。記憶力と感性を試すボードゲームならではの面白さ
「ウェンディゴのこわい話」は,少年少女に取り憑く魔物をプレイヤー同士が相談して特定していく。「適当なカンケイ」は,11枚の写真から同じペアを作った人が多いほど高得点になる。どちらもカナダ・スコーピオンマスク社のゲームで,すごろくや版には日本語のマニュアルが含まれる。
本稿では,ボードゲームならではの楽しさを味わえる両作品について,実際に遊んでみての感想をお伝えしよう。
すごろくやは東京都・高円寺にあるボードゲームショップ。6月17日に放映されたTV番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」では,同店とHABA社が制作した「キャプテン・リノ」の特製巨大バージョンが取り上げられた。
「ウェンディゴのこわい話」は,ボーイスカウトを連れ去る魔物を,記憶力で暴き出す
「ウェンディゴのこわい話」は,少年少女を連れ去る魔物・ウェンディゴと,人間が知恵比べをするゲームである。キャンプ場に来たボーイスカウトたちに紛れ込み,1人ずつ連れ去る恐怖のウェンディゴを特定するのだ。
ゲームは2〜6人でプレイでき,1人がウェンディゴ役,残りがボーイスカウト役を担当する。ウェンディゴはボーイスカウトたちに取り憑いて合計5人を連れ去るのが目的。ボーイスカウトは,ウェンディゴが誰に取り憑いているのかを暴ければ勝ちとなる。
使用するのは,ボーイスカウトが描かれた32枚の隊員タイルと,裏面にウェンディゴが描かれた32枚のウェンディゴタイルだ。隊員タイルには,それぞれ別のボーイスカウトが描かれている。「ボーイスカウト隊員は32人いる」「32枚のタイルはすべて別の絵柄になっていて,同じボーイスカウト隊員はいない」と言い換えてもいいが,同じ制服を着ているので見分けが付きづらい。
一方,ウェンディゴタイルは表面こそ隊員タイルと同じだが,裏面にはウェンディゴが描かれている。表向きにして隊員タイルに紛れ込ませれば,見た目に区別が付かないわけだ。
ゲームは,ウェンディゴがボーイスカウトに取り憑く「夜」,そして,ボーイスカウトが取り憑かれた隊員を推理する「昼」の2ターンで構成されている。
まずウェンディゴは,隊員カードの1枚を抜き取り,同じ絵柄のウェンディゴタイルを置いて準備する。これが終わるとゲーム開始となり,夜と昼のターンが繰り返されるのである。
夜のターンはウェンディゴが暗躍する。ボーイスカウト役が後ろを向いている間に,隊員タイルのうち1枚を連れ去り,その場所にウェンディゴタイルを移動させる。つまり,盤面では「隊員が1人いなくなり,その場所にしれっとウェンディゴが鎮座している」状態になるわけだ。
昼のターンでは,ボーイスカウトは砂時計の砂が落ちるまでの45秒間だけ相談でき,1枚だけタイルをめくってウェンディゴか否かを確かめられる。上述したとおり,ウェンディゴタイルは表から見ても分からない。したがって,盤面に起こった変化,つまり「どの隊員タイルが減ったのか」「移動した隊員タイル=ウェンディゴはどれか」を見分ける必要があるのだが,隊員は32人もいるうえ,全員同じ制服を着ているため,顔立ちや体型,スカーフの色で見分けるしかない。
こうして夜と昼を繰り返し,ウェンディゴは5日間を凌げば勝ち。ボーイスカウトたちはこれを阻止すべく知恵を巡らせる。ボーイスカウトは,紛れ込んだウェンディゴを探す推理を。そして,ウェンディゴはいつ見つかるか分からないというスリルを楽しめるのだ。文章にすると少しややこしいが,動画を見るなり実際に遊ぶなりすればすぐに理解できる。
筆者はボーイスカウト役とウェンディゴ役の両方を実際に体験してみたのだが,ルールはシンプルながらもプレイはなかなかに奥深いと感じた。
ボーイスカウト役では,テーブル上に並んだ隊員タイルを見てウェンディゴを探し出さなければならない。ここにある隊員タイルがウェンディゴにすり替わっているような気がするものの,確信は持てない……となかなかもどかしい。
例えるなら「なじみの薄い商店街の店が1軒無くなり,そこに新しい店が建った状態で,前の店が何だったかを思い出す」ような感じだろうか。しかも考える時間が45秒しかないため,よほど注意していないと「ここが違う!」と確信に満ちた答えは出せない。しかもほかのボーイスカウト役もそれぞれに意見を持っているのだから,それをうまくまとめなければならないのだ。
ひと味違ったプレイ感を楽しめるのがウェンディゴ役だ。ボーイスカウト役が後ろを向いているなか,隊員タイルを連れ去ってウェンディゴタイルに置き換えるのはちょっとドキドキする。ボーイスカウトたちが推理している最中,ウェンディゴ役が何をするかはとくに決められていない。
ただ,ウェンディゴタイルの位置がバレないよう,できるだけポーカーフェイスを保つのが重要と思われる。筆者は心配になってウェンディゴタイルをじっと見つめてしまったりもしたが,熟練したプレイヤーが相手ならすぐに見つかってしまうだろう。
とくにボーイスカウト側の推理が当たりそうになった時は結構なプレッシャーがあった。場の雰囲気によっては,ミスリードを誘ったり,残り時間をカウントするのも面白いだろう。ゲームが盛り上がるかどうかは,ウェンディゴ役のアドリブ力にかかっているのではないかと感じられた。
特別なスキルは必要ないので,年齢・性別を問わず楽しめる。また,制限時間が短いことに加えて多人数プレイなので,例え外れても感情的な負担は小さい。加えて,1プレイにかかる時間も長くない……と,初心者から熟練者まで幅広く遊べる作品といえるだろう。「ドイツ 2018年 キッズゲーム大賞」の「準候補」に選ばれたのも納得だ。
感性の違いを楽しむ「適当なカンケイ」
「適当なカンケイ」はとても不思議なゲームだ。プレイヤー達の感性の違いを楽しむゲームとでもいえばいいだろうか。一応の勝ち負けはあるが,楽しいのはゲームを進める過程であると感じられたのだ。
まずは11枚の写真カードを場に並べる。そして,それぞれのプレイヤーは砂時計の砂が落ちきるまでの間に,「これとこれは関係があるだろう」というものをペアにしていく。この時,互いに相談したり,どれをペアにしたかを発言してはいけない。そうすると,5組のペアと1枚の余りができる。
次は1人1人が「どの写真カードをペアにしたか」を「ペアにした理由」とともに発表していく。この時,同じペアを作っていた人がいたら,その数だけ点数が入る。また,余りが一致した場合は高得点となる。こうして点数を計算していき,合計が多い人の勝ちだ。
11枚の写真を見て「ほかの人はこんな風にペアを作るだろう」と推理すると高得点が取れるのだが,これがなかなか難しい。ペアにする理由は何だっていいし,制限時間が結構短いので,やっつけでペアを作らなければならないこともしばしば起こる。とくに大きな影響を与えるのが,参加者それぞれの感性が異なるというところだ。
例えば,「カタツムリ」「錆びた錨」「ハサミ」「木造の家」という写真が並んだとしよう。筆者だと“金属繋がり”で「錆びた錨」と「ハサミ」をペアにするのだが,ほかの人だと“色が茶色い”という理由で「木造の家」と「錆びた錨」をペアにする……といった具合だ。推理しようとしても分かるものでなし,それだけにほかの人とペアが一致したときはとても嬉しい気分になる。
個人的に一番楽しかったのが,ほかの人がペアにした理由を聞いているときだ。色,材質,用途,写真の雰囲気など,その理由は実にさまざま。男女の違いも大きく,とくに女性から理由を聞いていると「そんな組み合わせ方もあったのか!」と目から鱗が落ちた気分になる。感性に違いがあることが楽しく感じられたのだ。写真は300枚もあるうえ,参加者の顔ぶれが変わると展開も変化していく。老若男女でともに楽しめるゲームであると言えるだろう。
「ウェンディゴのこわい話」は2700円(税込),「適当なカンケイ」は3888円(税込)でそれぞれ発売中だ。どちらも手軽に遊べるゲームなので,ボードゲーム好きはもちろん,ボードゲーム初心者の人にもおすすめしたい。
「すごろくや」公式サイト
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