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【4Gamer的自由研究】ゲームで「上達曲線」の真偽を確かめてみる
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印刷2018/08/28 12:00

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【4Gamer的自由研究】ゲームで「上達曲線」の真偽を確かめてみる

 東京ではほとんど雨が降らないまま梅雨が明けたなぁ,などと思っていたころ,4Gamer編集部の荒井陽介から,「そろそろ夏休みですが,ゲームを使った自由研究の企画とかどうですかね。『MONSTER HUNTER: WORLD』のネルギガンテ観察日記とか」という脳天気な連絡があった。

 ネルギガンテの観察日記は子供も喜んでやりそうだが,学校に提出したら,さすがに怒られるに決まっている。それでは可哀想なので,ゲームを使いながらもギリギリ自由研究として認められそうなものはないだろうか……と考えて思いついたテーマが,「上達曲線」だ。

 勉強やスポーツでは,練習や努力の量に比例して能力が直線的に上昇していくのが理想だ。だが,「ある時から突然うまくなった(テストの点が上がった)」という話をよく耳にするように,実際はいくら練習や努力を重ねてもほとんど上達しない停滞期と,急激に上達する成長期を繰り返すとされている。それをグラフにしたのが「上達曲線」(成長曲線)だ。

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 ただ,個人的には「上達曲線って本当にあるのか?」という根本的な疑問がある。あくまで「成長と停滞が繰り返される」という一般的な話をイメージ化したもので,実際に取ったデータを基にした上達曲線を見た覚えはないからだ。

 というわけで,ゲームを使って確かめることにしたい。うまくいけばゲーム上達の近道になるし,たとえ明確な上達曲線らしい動きが見られなくても,何らかの指標にはなってくれるだろう。

 なんだか偉そうに書いているが,「ゲームを題材に自由研究ができないかな」「ゲームを別の角度から楽しめないかな」という,非常に軽い気持ちでザックリと分析しているので,見識がある方が読むと間違いがあるかもしれない。そのときは大目に見てもらえれば幸いだ。


データをグラフ化……の前に,タイトルとテスターの選考


 テストに使用するタイトルの候補としては,レースやパズル,FPSなど,さまざまなジャンルのものが挙がったが,「毎回ほぼ同じ条件でプレイできる」「結果が数値で分かりやすい」「1プレイの時間が比較的短い」といった点を重視して,リズムアクションゲームの「初音ミク Project DIVA Future Tone Prelude」を選んだ。

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 総合的な評価の「SCORE」だけでなく,ボタンを押すごとに判定される「COOL」や「FINE」といった評価の割合,コンボ数,「同時押し/ホールド」「スライド」といった,単純にボタンを押すだけではない操作ごとのスコアまで細かく表示してくれるので,単純なスコアの上下だけではわからない,各項目別の分析ができそうなのも,大きな理由の1つだ。そして無料という点も嬉しい。

初音ミクにフィーチャーしたリズムアクション。流れてくるノートに合わせてタイミングよくボタンを押してスコアを稼いでいく。背景では初音ミクが驚くほど滑らかに動きまくるのだが,これを鑑賞できるようになるのは,上達してある程度余裕ができてからだ
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達成率も含め,11もの数値がデータとして表示される。ただし,達成率とSCOREは比例しているようなので,今回のようなケースでは“かぶり”になる
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 データを取るためにプレイする曲は「Weekender Girl」。難度は「NORMAL」に固定し,1日3〜5プレイを約1か月続ける。それ以外は基本的に自由だ。週に1〜2回のお休みは許容範囲で,ほかの楽曲や難度をプレイしてもかまわないということにした。あくまで日常に近い遊び方で,上達曲線を確かめるのが目的だ。

 そして,1人でデータを取ると「たまたま上達曲線に近いものが出た/出ない」ということも考えられるため,テスターは2人用意した。

 1人は筆者の宮里圭介。普段プレイしているゲームは「艦これ」くらいというゲーム素人だ。
 もう1人は4Gamerの編集者,荒井陽介。最近は「ARMS」のランクマッチを1日に数戦やりつつ,自宅では「Detroit: Become Human」,通勤電車で「OCTOPATH TRAVELER」を楽しんでいるとか。Project DIVAシリーズは未プレイだが,リズムアクションでは「リズム天国」が好きというゲーマーだ。

 対照的なサンプル2人がどのような上達を果たすのか,それをグラフから読み取れるのかが見どころとなるだろう。


取ったデータはそのまま使えない


 ということで,2人が1か月ほど頑張って取った50回前後のプレイデータを確認してみよう。SCOREの値をそのままグラフにしたのが,これだ。

最初に大きく上がった後,ペースは下がるものの上昇を続ける……くらいしかわからないグラフ。上達曲線とかそういうレベルの話ではない
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 スコアはプレイごとに大きく上下するので,当然ながらグラフはガタガタになる。右肩上がりなのはかろうじて分かるか,細かな変化までは把握しづらい。グラフが上に偏りすぎているのも気になるところだ。

 そこで,「移動平均」を使ってみる。これは対象となるデータと直近データの平均をグラフにするもので,こういった安定しない数値の変化を見るのによく使われる。

 平均するデータの範囲は任意で構わないが,狭すぎるとガタガタのままだし,広げすぎると細かな変化がつぶれてしまう。いろいろと試してみた結果,今回は対象となるプレイ回とその前2回(合計3回)の平均を求めることにした。

 見やすくするため,移動平均を赤色で追加し,縦軸の表示範囲を調整したのが次のグラフだ。

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 移動平均は素の値と比べて変化が緩やかなうえ,縦軸の表示範囲をより重要な部分にフォーカスしたことで,変動が把握しやすくなっているのが分かるだろう。

 見やすいグラフを作ったところで,2人のデータを細かく分析していこう。最終的な目標は「SCORE」を伸ばすことなので,この「SCORE」の変化を中心に,ときおりほかのデータも参照する,という感じで進めていく。


ゲーム素人の宮里には,わずかながら上達曲線っぽいものが


 まずはゲームに慣れていない宮里のSCOREから見ていこう。

先ほどのグラフと同じものだが再掲
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 おおまかな流れとしては回を追うごとに値が伸びるが,伸び幅は小さくなっていくという,ありがちなパターンとなっている。移動平均に注目して少し細かく見てみると,だいたい4段階に分けられそうだ。

微妙な変化だが,停滞期と成長期がある……ように見える
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●第1段階
 やればやるほどSCOREが伸びている。どんなゲームなのかよく分かっていないうえ,そもそも[○][×][△][□]ボタンの位置すら覚えていないという,なんとも情けない状況で始めたので,当然と言えば当然だ。ちなみに,最初の3回はクリアできていない。

初回プレイの結果。チュートリアルは一通りプレイしたのだが,いざ本番になるとボタンの位置や操作方法が頭から飛んでしまって,あたふたしているうちに終わっていた。まじめにやって,達成率4.76%だ
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●第2段階
 引き続き伸びてはいるが,そのペースは第1段階に比べて鈍化した。また,上下の変動幅も大きい。
 この時期は「COOL」判定の数が順調に伸びているものの,「同時押し/ホールド」や「COMBO」は停滞していた。

 理由はいくつかあるが,この時期は,これ以上ないほどの最適なタイミングでボタンを押しているつもりでも,ずれているように感じていた頃のようだ。頻繁にタイミング調整を変えては,あーでもない,こーでもないと試行錯誤しているメモが残っている。最終的に調整はしないほうがマシという結論になっているのだが,その試行錯誤が「COMBO」の停滞につながっていたようだ。

テレビの遅延が大きいときなどに使用するタイミング調整機能。いろいろといじったが,結局0のままにした
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●第3段階

 調整で試行錯誤するうちに,丁寧なプレーを心がけるようになった結果か,SCOREが安定した。ただ,伸びもごくわずかになったので,停滞期と言えるだろう。

 ただ,「COMBO」と「同時押し/ホールド」のグラフを見ると,どちらにも上昇が見られる。SCOREには大きく現れていないが,少しずつ上達している要素もあったようで,これが第3段階でのSCOREアップにつながったようだ。

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●第4段階
 急にSCOREの平均がアップ。これには「COOL」率が右肩上がりになって,さらに最高値を更新したことが影響しているのだが,そのきっかけに「環境の変化」があった。スピーカーを変えたのだ。

 第3段階のあたりまでは,液晶ディスプレイ内蔵のスピーカーから音を出していたのだが,ボタンのタイミングを合わせるべき音がよく分からない部分があった。そこで外付けのスピーカーに変えてみたところ,それまで聞こえなかった音がしっかりと聞こえ,タイミングを取りやすくなったのだ。

 ということで,宮里のテスト結果は,変化としては大きくないものの,上達曲線っぽい動きをしていると言ってもよさそうだ。そして,停滞しているように見えても,実は上達している要素があったり,ちょっとしたこと(今回はスピーカーの切り替え)で一気に上達したりする場合がある,ということも分かった。


より上達曲線らしさが大きく出た荒井のグラフ


 続いて,2人目のテスター,荒井のデータを見てみよう。宮里と同じように,こちらのSCOREも,大きく4つの段階に分けられそうだ。

荒井の方が宮里よりも変化が分かりやすい
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 成長著しい第1段階と第2段階,停滞どころかやや下落気味となり不調が続く第3段階,そして急に一段上のスコアとなっている第4段階といった感じだ。同じように,それぞれの段階でどのような変化があったのかを探ってみよう。

●第1段階
 値が急激に伸びているが,これはゲームに慣れる過程ということだろう。ゲーマーということで,SCORE自体は宮里より高い。

●第2段階
 第1段階より伸び率は下がるもの,上昇を続けて,最後はパーフェクト(すべてのノートを「COOL」または「FINE」判定でクリアする)を達成した。
 伸び率が鈍化した原因としては,「COOL」と「COMBO」が第1段階に引き続いて順調に上昇しているのに対し,「同時押し/ホールド」が横這いで推移していたことが挙げられる。

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 荒井がプレイ中に書いたメモを見ると,「4ボタン同時押しは,ボタンのノートが画面の四隅から出てくるので,把握できない」と書かれている。この時点では譜面を覚え切れていなかったようだが,第3段階ではこれを覚えたことで一気にグラフが跳ね上がる。

問題となっていた4ボタン同時押しのシーン。一度覚えてしまえば簡単なのだが……
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●第3段階
 停滞どころかSCOREが下落してしまっている。
 パーフェクトを達成した後に何があったのか……と思ってメモを確認したところ「このままNORMALでプレイしてもあまり伸びないと思って,HARDのプレイを始めたら,かえって混乱した」とのこと。
 グラフを見ても「COOL」と「COMBO」のいずれも下落傾向にあるので,この段階では逆効果だったようだ。前述したように同時押し/ホールドのスコアは上がっているのだが,下落を打ち消すまでには至っていない。

●第4段階
 下落が続いていたところでいきなりその時点での最高SCOREが出て,その後も安定して高い数値を記録するなど,“ワンランク上”に成長した印象を受ける。目覚ましいのは「COMBO」の上昇で,「意図したタイミングでボタンを押す」ということが安定してできるようになったようだ。

 何かきっかけがあったのかとメモを確認してみたのだが,「風邪気味でツライ」としか書かれていなかったので,HARDを並行してプレイした効果がここで現れた,ということだろうか。当初こそ混乱の元になっていたが,結果的には正しい努力だった……ということにしておこう。


グラフを描けばゲームの新しい楽しさが見えてくる


 ということで,都合よく解釈している部分は多々あるものの,ゲームにおいても上達曲線らしきものはある,と言えそうな結果がでた。「うまくならないからやめた」と早々に諦めず,もう少しプレイを続けてみると,見違えるようにうまくなることがあるかもしれない。

 そして,プレイデータを取っておくと,停滞期なのか成長期なのかが分かり,当面の課題の洗い出しができるかもしれない,ということも言えそうだ。「初音ミク Project DIVA Future Tone」のように,単純なスコアだけでなく,多くのデータが表示されるゲームであれば,その分析もしやすくなる。

 そうやって,「もう一歩踏み込んだ楽しみ方」をしてみると,ゲームが何倍にも面白くなるのは間違いない。気になるゲームがあるのなら,少し手間にはなるが,プレイのデータを表計算ソフトなどに入力してみてはいかがだろうか。きっと,面白い結果が得られるはずだ。
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