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[TGS 2018]eスポーツの発展に向けて業界が取り組むべき課題とは? パネルディスカッションで議論が交わされた基調講演レポート
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印刷2018/09/21 00:00

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[TGS 2018]eスポーツの発展に向けて業界が取り組むべき課題とは? パネルディスカッションで議論が交わされた基調講演レポート

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 東京ゲームショウ2018の初日である2018年9月20日,幕張メッセのイベントステージにて,「eスポーツが“スポーツ”として広がるためのロードマップ 〜クリエイティブからファンづくりまで,ゲーム業界が取り組むべき課題と今後の展望」と題する基調講演が行われた。

 本講演は,世界的なムーブメントを巻き起こし,日本においても認知度が高まりつつあるeスポーツが“スポーツ”として広がるために,業界として取り組むべきことについて,5名の登壇者とモデレータが,その可能性と課題についてパネルディスカッション形式で意見を交わすというものだ。
 登壇者とモデレータは,以下の6名である。

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日本eスポーツ連合(JeSU)会長 岡村秀樹
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カプコン 常務執行役員 eSports統括本部長 荒木重則
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コナミデジタルエンタテインメント「ウイニングイレブン」シリーズ 制作部長 森田直樹

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Asian Electronic Sports Federation(AESF)会長 Kenneth K.K. FOK(ケネス・フォック)氏
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日本サッカー協会 副会長 岩上和道
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日経クロステック 副編集長 玉置亮太氏(モデレーター)

 パネルディスカッションに入る前には,各登壇者の所属団体や企業が,どのようにeスポーツに取り組んでいるかの紹介がなされたので,簡単に触れておこう。
 まず岡村氏は,JeSUのこれまでの活動実績を紹介した。

岡村氏が説明したJeSUの活動実績
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 荒木氏は,カプコンが30年前からストリートファイターシリーズの大会を開催していたことを紹介。また近年では,プロゲーマーを招聘した大会を世界的に展開していることや,個人戦だけでなく団体戦による大会を実施していること,さらに,日本各地で「ルーキーズキャラバン」というアマチュア向けイベントを開催していることをアピールしていた。

ストリートファイターシリーズを軸にしたカプコンの活動
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 森田氏は,ウイニングイレブンシリーズを用いた世界大会やアジア大会を展開していることを紹介。とりわけ,2018年8月にインドネシアのジャカルタで行われた第18回アジア競技大会で,デモンストレーション競技として採用されたeスポーツタイトルに,「ウイニングイレブン 2018」が選ばれたことは,同社にとって大きな実績となったようだ。

コナミの森田氏は,ウイニングイレブンシリーズの世界大会や,アジア競技大会での採用を実績としてアピール
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 フォック氏は,第18回アジア競技大会でeスポーツがデモンストレーション競技として採用された経緯などを紹介。AESFも,eスポーツの採用に向けて尽力したとのこと。

フォック氏は,第18回アジア競技大会におけるAESFの取り組みを説明
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 一方,岩上氏は,日本サッカー協会が2016年11月にeスポーツのサッカー(eサッカー)事業を創設したことを紹介した。リアルスポーツの協会がeスポーツに取り組んでいるのは,「サッカーが好きな人を増やす」という目的があるためであるという。
 2018年には,PlayStation 4版「FIFA 18」を使った大会「明治安田生命eJ.LEAGUE」を開催(関連記事)。リアルなサッカーと同様に,eサッカーも“普及”“育成””強化”にも取り組んでいくとのことだ。

岩上氏は,日本サッカー協会がeサッカーに取り組む理由と,その実績を照会した
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育成環境の整備を重要視する意見が多い


 本題であるパネルディスカッションでは,最初に「プレイヤーの質と量の拡大」「視聴者やファンの拡大」「eスポーツ向けタイトルの充実」「興行としての魅力向上」「日本のeスポーツ業界の国際競争力の向上」という,日本のeスポーツが抱える5つの課題が提示された。
 いずれも重要な課題ではあるものの,時間が限られていることもあり,登壇者達の選択によって会場で論じられたのは前の2つだ。

 プレイヤーの質と量の拡大については,まず岡村氏が「eスポーツをめざす人,あるいはアスリートが育っていく環境を整備することと不可分」と述べる。eスポーツに興味を持つ人が増えることによってプレイヤーの数も増え,またそうしたプレイヤーが切磋琢磨し,トライアンドエラーができる環境を用意することによって,日本のプレイヤーが国際大会などで活躍できるようになるだろうということだ。

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 カプコンの荒井氏は,ストリートファイターシリーズは歴史が長いこともあり,プロゲーマーを含めて,認知度の高い強豪プレイヤー(=質の高いプレイヤー)が多いことをアピール。
 一方,量を増やすという点では,岡村氏が指摘したように,いかにして興味を持ってくれる人を増やすか,すなわち“草の根”を育てていくかが重要であると述べる。そして,カプコンが全国各地で行っているストリートファイターシリーズのアマチュア向けイベント「ルーキーズキャラバン」には,夫婦や親子で参加するケースもあることや,女性だけのコミュニティが存在することなどを紹介した。

 またフォック氏も,岡村氏や荒井氏が言及したように,アジア全体でeスポーツが普及して行く過程で,草の根レベルでの広がりが重要な役割を果たしたことに触れ,そこからプレイヤーの育成や,強豪プレイヤーの輩出といったエコシステム(生態系)ができ上がっていったことを強調していた。

 一方,森田氏は,今後eスポーツを一層拡大していくためには,現在主流のPCや据え置き型ゲーム機を対象とした展開だけでなく,スマートフォンを代表とするモバイルデバイス向けの展開が必須であると指摘。しかし,モバイルデバイスの性質上,アクションゲームでプレイヤー個人の技術の巧みさを表現するのはなかなか難しいのも事実であり,「それが実現できれば,eスポーツの裾野はもっと広がるのではないか」との展望を示した。
 また「何のためにeスポーツをやるのか」と考えたときに,必ずしも世界のトップを目指すのではなく,「まずは年齢別の大会に参加する」というような,モチベーションを保ちやすいところから始められる環境を作ることによって裾野を広げ,それを選手の育成につなげられる環境を作るのがいいのではないかとも述べている。

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 岩上氏は,リアルとeスポーツの双方でサッカーを楽しめるのが理想としたうえで,サッカーゲームが得意なプレイヤーを選手として育成できるシステムを作ること,さらには,そうしたプレイヤーがリアルのサッカーにも興味を持ってくれると嬉しいと語った。

 パネルディスカッションの話題は,一般の人達がeスポーツに興味を持つ入り口のひとつとして,「スタープレイヤーの存在」も重要ではないかという話に及ぶ。
 岡村氏は,「それもまた環境の整備の一環」として,再びプレイヤーが切磋琢磨できる環境作り,たとえば練習場のようなものを作ったり,地方自治体や義務教育のクラブ活動として,eスポーツが認められたりする環境を作っていくことの重要性を説いた。
 また,スタープレイヤーに必要となる高度な技術を磨くには,国際大会などに出場して海外の優れたプレイヤーと接することも重要であることもつけ加えている。


eスポーツを日本のスポーツとして展開する必要性も


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 2つめのテーマである「視聴者やファンの拡大」では,まず,岩上氏が,「日本サッカー協会としては,“サッカーが好き”という人を増やしたい」「それがリアルであろうが,ゲームであろうが構わない。ゲームから入ってリアルに行ってもいいし,もともとリアルサッカーをやっていたけれども,体力的に厳しくなったのでゲームでやってみようというのもアリ。その意味ではeスポーツが盛んになるのはありがたい」と述べる。
 さらに岩上氏は,サッカーゲームの大会に,いかにもなスポーツ少年ばかりでなく,女の子が参加しているのを見て「かなりサッカーの裾野を広げられそうだ」と感じたというエピソードも披露した。

 そのほかにも,リアルスポーツにおけるステークホルダーの協力を得ることで,eスポーツを同じ日本の“スポーツ”として展開していけるような環境作りの必要性も取り上げられている。また,実況配信においても,単にゲームのプレイ画面を映し出し,そこに実況解説を加えるだけではなく,プレイヤーの個性が伝わるような演出を施すことで,誰もが親しめるエンターテイメントにしていくことなどが提案された。

JeSUは,2020年に向けてさらなるeスポーツの環境整備に取り組む
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 パネルディスカッションの最後には,登壇者が所属する団体や企業におけるeスポーツに対する今後の取り組みなどを改めて紹介。モデレータを務めた玉置氏が「日本でeスポーツを展開するにあたってはまだまだ課題があるとは思うが,こうして皆さんが解決しようとしています」とし,今後への期待を語って締めくくった。

カプコンの荒井氏は,同社の目標は「ストリートファイターを“日本の国技”にすること」であるという
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