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[SPIEL\'18]あのParadox Interactiveが,ついにボードゲームに参入。その意図と開発状況を聞いた
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印刷2018/10/26 13:56

インタビュー

[SPIEL'18]あのParadox Interactiveが,ついにボードゲームに参入。その意図と開発状況を聞いた

 世界有数のストラテジーゲームのデベロッパであり,かつパブリッシャでもあるParadox Interactiveが,アナログゲームの世界にも進出するというのは,同社のファンイベントであるPDXCON 2018ですでに発表されている。

 イベントでは「今年のEssen SPIELに出展したい」という意向が語られていたが,その言葉通りSPIEL'18にはParadox Interactiveのブースが出され,「Europe Universalis」「Hearts of Iron」「Crusader Kings」「Cities: Skylines」それぞれを題材にした開発中の作品4つが試遊可能となっていた。
 このようにアナログボードゲームにおいても本格的な活動を開始したParadox Interactiveだが,その意図や目的について,Product Marketing ManagerのLuca Kling氏に話を聞いたので,内容をお届けしよう。

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4Gamer:
 数年前,Paradox Interactiveがファンに対して行ったネットでの調査において,ボードゲーム関係の質問があったように覚えているのですが,あの調査が今回の出展につながっていると考えてよいのでしょうか。

Kling氏:
 その通りです。この調査では「余暇にどんなことをしていますか」という質問を設けたのですが,そこでは全回答のうち40%が「ボードゲームを遊んでいる」でした。しかも16%は「毎週のように遊んでいる」と回答しています。
 ここまでたくさんの弊社ユーザーがボードゲームを楽しんでいる以上,弊社自体がボードゲームを提供すべきだと考え,それが今回のSPIEL出展へとつながっています。

Paradox Interactiveブースは,かなりオシャレに作り込まれている
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4Gamer:
 ボードゲームと一口にいってもさまざまな種類がありますし,ウォーゲームまで視野に入れればParadox Interactiveが制作しているストラテジーゲームとテーマ的にとても近い先行作品がたくさんあります。
 Paradox Interactiveがパブリッシュしていくボードゲームには,全体としてどのような狙いと傾向があるのでしょうか。

Kling氏:
 我々としては何よりもまず「現実的な範囲でちゃんとプレイできるゲーム」を目指しています。
 確かに「Twilight Imperium」のような重たいゲームは素晴らしいプレイ体験を提供してくれますが,ではこの作品はどれくらい遊べるかと言うと,1年に1回遊ぶのが限界ではないでしょうか。

試遊ではファーストターンを体験できる。あと何分くらいで次の試遊が始まるかが表示されているのが大変に嬉しい。他社さんも見習ってほしい
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4Gamer:
 確かに,公式には最長で480分程度とされていますが,フルメンバーでフルゲームを遊ぶとなると,Twilight Imperium合宿が必要になる規模かなと思います。

Kling氏:
 そういうゲームを否定するわけではありませんし,自分は「Twilight Imperium」が大好きなのですが,やはりそれよりはもっと手軽に遊べるゲームであったほうが良いだろう,と考えています。具体的に言えば,週末のひと晩から1日くらいの規模ですね。
 もちろん,カードゲームのようにもっと手軽に楽しめるゲームも視野に入れています。ですが弊社が最初にパブリッシュするゲームとしては,弊社のファンの多くが好む規模のゲームにしたいと考え,今回の4作品となりました。

4Gamer:
 4作品とも,Paradox Interactiveはパブリッシャとして関わっていますが,自社で開発するという計画はなかったのでしょうか。

Kling氏:
 弊社はもう何年もゲームを作ってきていますが,その経験はPCゲームの開発に特化しています。
 もちろん「Europe Universalis」はもともとボードゲームですし,弊社が開発するストラテジーゲームにはボードゲーム的な側面もあります。ですが我々はボードゲーム開発においては「プロではない」と言わざるを得ないのです。
 ですので我々はパブリッシャとして,ボードゲームのデベロッパに弊社IPをライセンスするという形を取ることにしました。

TRPG「Vampire: The Masquerade」のミニセッションも常時動いていた
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4Gamer:
 さきほど「ユーザーの希望に基づいてアナログゲームの世界に参入した」とおっしゃられましたが,ユーザーは気まぐれな側面もあります。いざアナログゲームに参入すると発表したら,「そんなことよりPCゲームの開発にもっと注力しろ」といった意見が出たりはしませんでしたか。

Kling氏:
 新しい試みですから,さまざまな意見が出てくるだろうと思っています。とはいえ現状では,とくに大きな不満の声は頂いていません。

4Gamer:
 もうひとつ,Paradox Interactiveとアナログゲームという関係で言いますと,White Wolf Publishingが開発するTRPG「World of Darkness」シリーズの権利も獲得されていますね。

Kling氏:
 White Wolf Publishingとの協業にあたっては,弊社の前CEOがWhite Wolf Publishingと個人的にも仲が良かった,というのがひとつのきっかけとなっています。
 そのうえで,White Wolf Publishingが展開するIPと弊社のビジネスは高いシナジーがあります。「World of Darkness」シリーズに関してもTRPGとしてだけでなく,ボードゲームやLARP(Live Action Role Playing Game)など,多角的に進めています。

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4Gamer:
 現在開発がアナウンスされているボードゲームは,「Europe Universalis」「Hearts of Iron」「Crusader Kings」「Cities: Skylines」の4作品があります。それぞれについて,開発状況としてはどのようなステータスと考えればよいのでしょうか。

Kling氏:
 「Hearts of Iron」は,αビルドというところです。ゲームの基本的なメカニズムを調整している段階ですね。
 「Europe Universalis」と「Cities: Skylines」はβ版です。ゲームの基本的なメカニズムは仕上がっていますが,まだ作り込みが必要です。
 「Crusader Kings」は細部のバランス調整を進める段階に入りました。リリースまでで言えばこの作品がもっとも近い状況にあります。

見るからに「Crusader Kings」。製品版では,マップ上のキューブはフィギュアになるとのこと。キューブはキューブで見やすくて良いんですがね
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4Gamer:
 ボードゲーム開発においては,Paradox Interactiveはパブリッシャとして関わっていることになりますが,具体的にはどのように関与しているのでしょうか。

Kling氏:
 ゲームメカニズムのデザインについては,我々は事実上ノータッチです。ですがIPを管理する側として「このボードゲームから,原作となるPCゲームのテイストがちゃんと感じられるか」どうかは社内テストプレイを通じてチェックしています。
 例えばボードゲーム版の「Crusader Kings」は,遊んでいると「確かにこれはCrusader Kingsだ」という感覚が得られるかと思います。PCゲーム版を遊んでいるときに体験する「Crusader Kingsらしさ」が,しっかりと実装されているんです。
 一方で「Cities: Skylines」は,PDXCON 2018段階のビルドですと,まだまだ「シティビルダーではあるが,Cities: Skylinesらしくない」状態にありました。ですが現在では「これはCities: Skylinesだ」と感じられるゲームになっています。

4Gamer:
 ボードゲーム版「Cities: Skylines」は自分もPDXCONで見ましたが,確かに「なんだか違う」感を強く感じました。今回のリリースには「協力型シティビルダー」と書かれていますが,協力型でシティビルダーというのは珍しいかと思います。

Kling氏:
 そうですね。細かいところまではお伝えできませんが,ボードゲーム版の「Cities: Skylines」は,都市で発生する問題をプレイヤー全員が協力して解決しながら,都市を建設していくゲームになっています。
 実際,出来上がった都市を見ると「これは確かにCities: Skylinesだな!」と感じると思いますよ。

4Gamer:
 先程「社内でテストプレイしている」とおっしゃいましたが,Paradox Interactiveでは社内でボードゲームをプレイされているのでしょうか? そういったゲームサークルがいくつかある,という噂は耳にしています。

Kling氏:
 はい,かなり熱心にプレイしています。仕事の関係で遅い時間に帰社すると,会社のどこかでなんらかのボードゲームがプレイされていますね。私もよく誘われて,遅くまで社員とボードゲームを楽しんだりしているので,ガールフレンドに怒られたりすることもあります(苦笑)。

こちらは「Vampire: The Masqurade」をベースにしたボードゲーム「Vampire: The Masqurade HERITAGE」。レガシー系のゲームだ
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4Gamer:
 馬鹿げた質問なのですが,これらのボードゲームが成功すると,今度は例えば「このボードゲームをPCのオンラインゲームとして楽しみたい」といった要望も出てくる可能性があるかと思います。こういった要望に対応するような展開はあり得るでしょうか。

Kling氏:
 弊社は常に「ユーザーに新しい楽しみ方を提供する」ことを目指していますので,可能性は否定しません(笑)。
 とはいえ,現状ではまずこれら4作品をしっかり作り込んで,素晴らしいゲームとして世に出したいと思っています。アナログゲーム事業は弊社にとって完全に新しい試みですので,まずは目の前のプロダクトを完全なものにすることが最優先ですね。

4Gamer:
 最後に,今回は4作品ですが,今後「Victoria」のようなParadox Interactiveが開発しているゲームや,あるいは「Mount and Blade」のようなパブリッシュを担当しているゲームが,ボードゲーム化されていくと考えてよいのでしょうか。

Kling氏:
 もちろんです! 「Magicka」のようなファンタジー作品もボードゲーム化していきたいと考えています。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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「Hearts of Iron」はα版。林立するフィギュアがすでにものものしい。Kling氏いわく「第二次世界大戦をテーマとした戦略級のゲームは大量に存在するが,合理的な時間内でゲームが終わるだけでなく,Hearts of Ironらしい政治・外交における自由度も担保している」とのこと
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 PCのストラテジーゲームにおいて傑出した作品を生み出しているParadox Interactiveが,「自分たちはボードゲーム開発においてはアマチュアなので,プロの開発者に委ねたいと思った」と語ったことには,個人的に強い感銘を受けた。

 またインタビューのなかでは「Crusader Kingsらしさ」「Cities: Skylinesらしさ」という,割とふわっとした言葉が出てきたが,のちほど実際にボードゲーム版「Crusader Kings」を試遊してみたところ「これは確かにCrusader Kingsだ」と強く感じる仕上がりになっていたことには,大いに驚かされた。
 このあたり,自分達が作っているものに対する愛情や誇りも強ければ,社外のデザイナーのクリエーションに対しても高い敬意を払うという,デベロッパでありパブリッシャでもあるParadox Interactiveの姿勢を感じさせられるものだと言える。
 ともあれ,Paradox Interactiveの新たな試みは,確実に「面白いゲーム」として実を結ぼうとしている。来年のSPIELでどんなゲームが遊べるのか,楽しみになったインタビューだった。

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