業界動向
中国のeスポーツ市場規模は約8000億円で,日本のeスポーツ産業に一番期待している国はブラジル……?
すべてがとても興味深い資料なのだが,ここでは,その中でもとくに目を引く1枚を紹介したい。「各国のeスポーツユーザーは,世界の国々のeスポーツ産業の将来をどう考えているのか」の表だ。
世界と中国:2019年 eスポーツ グローバル市場報告(外部サイト)
一番左が国だ。中国や日本,韓国,英国あたりは見れば分かるだろうし,美国(アメリカ),徳国(ドイツ),法国(フランス)あたりも,見て分かる人は多いだろう。その右に並ぶパーセントの数字は,「該当の国(表の左列)に対して,それぞれの国(表の上の青字で書かれた部分)がどれくらいポテンシャルを認めているか」だ。
例えば上から2行目のアメリカ(美国)のeスポーツ産業の将来に関しては,日本の人は60%がポジティブで,ブラジル(巴西)の人も69%がポジティブ。しかし中国のユーザーは38%しかポジティブな評価をしていない……という具合だ。ちなみに一番左の「海外国家总体」とは海外全体のこと。なので海外全体では51%がアメリカのeスポーツ産業にポジティブであるということだ。
……とここまでが前振りで,それを踏まえて見ると,それなりに興味深い数字が見える。日本のeスポーツ産業は,アジア以外の国々にはけっこうポジティブな印象を持たれている。アメリカの60%,ブラジルの62%,ロシアの60%,フランスの57%……の人が,ポジティブな評価を下しているわけだ。
がしかし,日本のeスポーツを間近で見ているであろうアジアのユーザーは,とてもネガティブだ。中国のユーザーのわずか28%,韓国のユーザーのわずか27%しか,日本のeスポーツ産業をポジティブに評価していない。昨年のTGSで中国のTV局の人と会ったときに「なぜ日本のeスポーツはこんなにつまらないのか」と真顔で聞かれて,ちょっと衝撃だったことを思い出した。
一方で,日本から見ると「eスポーツがとても盛り上がっている」ように見える(いや実際に盛り上がっているが)お隣韓国については,ポジティブに評価しているのはわずかにベトナム(越南)と中国の2か国だけだ。欧州諸国にいたっては,ほとんど誰もポジティブには評価していない(これはこれでなぜなんだろう?)。
一番左の列を見れば分かるように,「世界の人達」が「eスポーツ産業においてポテンシャルがある国」だと判断しているのは,上から順番に
中国>アメリカ>日本>韓国>ドイツ>イギリス>ロシア>カナダ>フランス>ブラジル>ベトナム
となっている。日本が3位に入っているのがちょっと意外だが,それにもまして,韓国から下はパーセントが大きく下がって,みなあまりポジティブな評価をしていないということのほうが意外だった。欧州のeスポーツは,そんなに盛り上がってない……わけでもないと思うのだが。
とはいえこれはTencent1社の調査部が出した資料で信憑性に欠けるしな……と思っていたのだが,よく見るとこのデータは,
- 1万784名の中国ユーザー
- そのほか7か国は,各年齢層から抽出した全部で4200人のユーザー
日本でも「eスポーツ」が立ち上がって一定の時間が経つが,官民共にまだまだ問題が山積みだ。「官」も「民」も上層部の理解はまだまだ浅く,物事は遅々として進まない(進んだと思ったら想定外のことが突きつけられて驚いたり)。だからといって中国韓国のようにやるべきだとは思わないし,なんでもかんでもアメリカをマネればいいわけでもないだろう。きっと,日本には日本に適した「eスポーツの形」があるはずだ。
このあと日本のeスポーツがどのように進んでいくのかは分からないが,無理矢理世界に追いつこうとして,足元がグラつくようなことがないことを願うばかりだ。なにしろ世界の人達は,日本のeスポーツに結構期待してくれているのだから。
オマケとして,この資料に書かれている中国eスポーツマーケットの規模を抽出しておこう。なんというか,規模が……。
(PCとモバイルのユーザーはカブっている可能性もあるが数字には表れていない)
- eスポーツユーザー数:PC 2.3億人
- eスポーツユーザー数:モバイル 3.02億人
- eスポーツ市場規模:PC(2017年時点) 50億元(約785億円)
- eスポーツ市場規模:モバイル(2018年時点) 449.3億元(約7054億円)
- eスポーツを新しいスポーツとして認める人:66%
世界と中国:2019年 eスポーツ グローバル市場報告(外部サイト)
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