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toio「大魔王の美術館と怪盗団」クリエイターインタビュー。AIのキューブロボットが美術館を徘徊するスリル満点のボードゲーム
作曲もできる音楽ゲームやボードゲームがお披露目され,スマホアプリの配信も明らかに。ロボットトイ「toio」新タイトル発表会レポート
SIEは2019年11月12日,ロボットトイ「toio」の新タイトル発表会を開催した。音楽ゲーム「おんがくであそぼう ピコトンズ」やボードゲーム「大魔王の美術館と怪盗団」といった新作に加え,スマホアプリの配信も明らかになったステージの模様をレポートしよう。
2人目は,SIEの斎藤渓太郎氏だ。PlayStation 3/ PlayStation Vita用の「みんなのGOLF 6」,PlayStation 4の映像アプリ「Preimium Musical Notes」などを担当したのち,現在はtoio専用タイトルプロデューサーとして,「大魔王の美術館と怪盗団」に関わっているという。
そして3人目は,YouTubeのtoio公式チャンネルで配信している「toio LAB」で,toio博士として活躍しているアンドレ・アレクシー氏だ。ソニーコンピュータサイエンス研究所に所属し,今作では開発も担当している。アレクシー氏もロマン氏と同じくフランス人で,日本在住のフランス人コミュニティが縁で二人は知り合ったという。
「toio」公式サイト
各界のプロフェッショナルが集った「大魔王の美術館と怪盗団」チーム
4Gamer:
皆さんの「大魔王の美術館と怪盗団」での担当について教えてください。
齊藤渓太郎氏(以下,齊藤氏):
私はプロデューサーとして,制作進行などを担当しています。また,このゲームの魅力を日本のボードゲーム市場だけでなく,toioユーザー達にどう伝えるかを考える立場にでもあります。海外と比べ,日本ではボードゲームはハードルが高いと思われがちなので,toioとボードゲームの組み合わせによって,気軽に遊べることを伝えていく方法を考えています。
アンドレ・アレクシー氏(以下,アレクシー氏):
私は開発を担当しています。
ロマン・トマ氏(以下,ロマン氏):
アートディレクター,プロダクトディレクターとして,メカニックや全体を見ています。ゲームデザインはSTUDIO NO BORDERのメンバーであり,フランスで活躍していたボードゲームデザイナーの佐藤ニコラが担当しています。小さいチームですので,私自身もボードデザインなどを担当しました。
4Gamer:
ロマンさんのイラストが使われているのですか?
ロマン氏:
はい。とくに背景を描くのが好きで,今作でもイラストを担当しています。また,発表会で流したPVも,すべて社内で作っています。私はコンテを描きましたが,とても楽しい作業でした(笑)。映像や絵はすべて社内でまかなえますが,プログラミングだけはできないので,そこはアレクシーさんにお願いしたわけです。
齊藤氏:
このチームでは,それぞれの適材適所が担当する体制が整っていると思います。「大魔王の美術館と怪盗団」のようなカートゥーンは,日本ではあまり見ないものですので,STUDIO NO BORDERさんならではの魅力として,もっとアピールしていきたいと思っています。
4Gamer:
ロマンさんが初めてtoioを遊んだときのエピソードを教えてください。
ロマン氏:
アレクシーさんからtoioのことを聞いて,その日にすぐtoio本体と全タイトルを購入しました。toioを使ったゲームの企画を提案したいと思い,まずはどんなタイトルが出ていて,どんな遊び方ができるかを知りたかったので,翌日スタジオの皆で遊んでみたんです。
とくに興味があったタイトルは「GoGo ロボットプログラミング 〜ロジーボのひみつ〜」(以下,GOプロ)です。toioがキャラクターになっていて,動くだけでなくセリフもある。スタジオの皆もワクワクして,「これ,すごい」と盛り上がったのを覚えています。佐藤ニコラも,toioを見てすごく興奮していましたね。
4Gamer:
そこから本作の開発に至ったきっかけは何だったのでしょうか。
ロマン氏:
STUDIO NO BORDERは世界観とデザインに長けた会社ですので,アレクシーさんからtoioで面白いゲームを作ってほしいという依頼があったとき,それらは絶対マッチすると考えました。ただその時点では,まだどんなゲームになるかは決まっていなかったんです
ただクリアしたら終わりではなく,何度も繰り返して無限に遊べるコンテンツを出したいと考え……佐藤ニコラがボードゲームデザインの経験を持っていたことから,その方向で企画を進めていきました。
アレクシー氏:
日本にいるフランス人コミュニティの中で,アニメ業界で大活躍しているロマンさんはとても有名な有名な存在でした。toioでやろうとしていることを絶対理解していただける確信があったんです。
実際,お会いしたときにtoioのことを説明したら,とても乗り気になってくれましたね。STUDIO NO BORDERにお願いすれば,きっと面白いことをやってくれると期待していましたが,まさにそのとおりの企画があがってきたんです。
ロマン氏:
タイミングもとても良かったと思います。私は長い間アニメの制作に関わってきましたが,色々なことにチャレンジしたくて独立し,1年半前に現在のスタジオを起ち上げました。ゲームの企画もやろうと思っていた矢先だったので,本当にタイミングが良かった。ですから,これがスタジオとして初のゲームタイトルになります。
4Gamer:
ある意味,運命的ですね。
アレクシー氏:
そうです,ロマンさんとtoioが出会えたことは,本当に運命的だったと思います。
怪盗団がお宝を取り戻すストーリー
4Gamer:
発表会の映像や製品の雰囲気を拝見して,独特の世界観がとても魅力的だったのですが,あれらはどのように生み出されたのでしょうか。
ロマン氏:
実は……あまり覚えていないんです(笑)。最初は「神殿や屋敷に入って宝を拾っていく」という世界観を考えました。でも泥棒で「盗む」というのは,あまりイメージがよくありません。
アレクシー氏:
それでルパンのようなイメージの,心がピュアな泥棒が,悪い敵から宝を奪い返すというストーリーになったんです。
ロマン氏:
それから,日本で受け入れられやすいイメージを考えました。私は小学生と中学生の2人の息子がいますが,彼らが見たり遊んだりしている日本のアニメやゲームのような要素を混ぜ,キャラクターは日本人のクリエイターにお願いすることにしました。
実は,これも運命的な出会いだったんです。キャラクターデザインを担当した筧あゆみはとても才能のあるクリエイターです。彼女の描くキャラクターは非常に魅力的で,それがこの作品の見どころの一つになったと思っています。
4Gamer:
おじゃまキャラである「番人」をAIで動かすというアイデアがとても面白いと思いました。あのアイデアは,どのように生まれてきたのでしょうか。
ロマン氏:
ボードゲームということで,2人だけでなく,4人で遊べるゲームにしたいと思いました。しかし,toioの基本パッケージにはキューブが2個しか入っていないので,キューブを動かすようなゲームデザインだと,2人以上に対応させることは難しい。そこで,逆にプレイヤーがタイルを動かして,敵役をtoioに任せることにしました。
アレクシー氏:
そこがとても斬新でしたね。「ああ,考えたことがなかった」と。ほかのゲームはキューブが主人公のアバターであることがほとんどでしたが,今回は逆。そこが面白いところだと思います。
4Gamer:
ゲームを設計するうえで,一番気をつけたのはどんな点でしょうか。
ロマン氏:
一番難しかったのは,やはり技術的な部分になります。ボードにタイルを置き,その上をキューブが通ったときに,タイルが動かないよう固定しなくてはならない。それで,各ボードのマスに少しくぼみをつけているのですが,この調整がとても難しい。
アレクシー氏:
最初は色々と悩みましたし,すごい失敗作もありました。でも今日試遊できたプロトタイプは,うまく動くようになっているはずです。
自分のタイルの上を番人が通るときに,とてもドキドキ感があるんですよね。「大丈夫かな……バレるかな……」っていう。普通のボードゲームなら,自分の手番にダイスを振って結果を決めるのでしょうが,このゲームはそうじゃない。そこが一番の魅力だと思っています。
ロマン氏:
普通のアナログゲームにはない,toioでなければ生まれなかったコンテンツだと思います。
ゲームデザイナー気分でマップ作成できる
4Gamer:
ほかにも本作のおすすめのポイントがあれば教えてください。
ロマン氏:
個人的にとても期待しているのが,美術館のマップをプレイヤーが自由に作成できるというところです。この機能はまだ開発中なんですが,パズルのように部屋を並べて,ほかの人に遊んでもらうことができます。
アレクシー氏:
自分がゲームデザイナーになった気分になれるんですよ。すごく簡単なマップから,難しいマップまで,好みのままに作れます。
ロマン氏:
レベルデザイナーの気分が味わえると思いますよ。今回のプロトタイプでは,マップは表だけでしたが,製品版では裏にも違うデザインが印刷される予定です。
4Gamer:
とても素晴らしいシステムですが,制作側のハードルも高そうですね。
アレクシー氏:
実装する側は大変ですけど,十分に実現できると思っています。
ロマン氏:
それから音楽のこともぜひ皆さんに伝えたいです。ゲームの作曲を担当した西木康智さんの楽曲は素晴らしいですし,力が入っています。それから番人は,追いかけながら喋るセリフがありますので,ここも良い声優さんにお願いできたらと考えています。
2人でも3人でも楽しめるゲームバランスを目指す
4Gamer:
聞いていて発売がすごく楽しみなんですが,発売は2020年秋とのこと。まだまだ時間がありますね。
齊藤氏:
ものすごくこだわって作り込んでいるので,どうしても時間はかかってしまうんです。
ロマン氏:
デジタルゲームもそうですが,テストプレイが非常に重要です。例えばプレイヤーが何歩歩けるかをちょっと変えるだけで,ゲームがすごく難しくなったり,逆に簡単になりすぎたりしてしまいます。このバランスが非常に大切なので,何度も何度もプレイして,一番面白いポイントを見つけ出す必要があります。
それから実装の難しさもあります。せっかくtoioを使うのですから,動きで表現できるものはできるだけ盛り込みたいと思っているんです。番人の歩き方でも緊張感は変わってきますので,その作り込みにも時間がかかります。
齊藤氏:
あと,本作は最大4人プレイですが,2人や3人でも遊べる仕組みも用意する予定です。これにはやはりテストプレイを重ねて,いい落とし所を見出す必要があります。
4Gamer:
なるほど……一日もはやく遊びたいところですが,完成を待ちたいと思います。ところでゲームの対象年齢は何歳ぐらいを想定されているのでしょうか。
アレクシー氏:
今話しているのは8歳以上ですね。しかし,ルールを教えてあげれば6歳ぐらいでも遊べると思います。
ロマン氏:
小さすぎると自分のターンを待てなかったりするので,そこは子供の性格にもよりますね。
アレクシー氏:
テストプレイのときに,ロマンさんの10歳の息子さんが参加してましたが,お父さんよりうまかったですね(笑)。
4Gamer:
息子さんの感想はいかがでしたか。
ロマン氏:
「もっとやりたい」と言っていました。家庭でもボードゲームを遊びますが,息子がよく勝ちます。妻はビデオゲームを一切やりませんが,家族でボードゲームをするときだけは参加します。なので,本作はアナログのボードゲームファンにもぜひプレイしてほしいです。
4Gamer:
最後に,4Gamerの読者に向けたメッセージをお願いします。
齊藤氏:
本作は,大人と子供が入り混じって遊べるゲームだと思っています。大人も子供の目線になって,白熱した駆け引きが楽しめるところが魅力ですので,ぜひ続報をお待ちください。
ロマン氏:
ボードゲームなので,ゲームが苦手なお母さんとも一緒に遊べますよね。私自身はゲームが大好きで,子供の頃からたくさんのビデオゲームを遊んできましたが,ボードゲームの魅力を知ったのは数年前でした。どちらもそれぞれの良さがあるので,ビデオゲームのファンにもオススメですよ。
アレクシー氏:
ビデオゲームにはない,toioならではの体験ができますので,ぜひ期待していてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「toio」公式サイト
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