企画記事
「PLAIDe」を展開するフォーナインズのトレーニング施設「999.9 VISION LAB.」見学記。eスポーツ選手をいかにしてサポートしているのか
フォーナインズがゲーミンググラス「PLAIDe」(プレイド)を立ち上げた理由とは。アイウェアブランドの本気度を聞いた
アイウェアブランド・999.9(フォーナインズ)のゲーミンググラス「PLAIDe」(プレイド)が2020年1月16日に発売となる。同社がゲーマー向け市場に参入を果たす理由とその背景を尋ねるべく,PLAIDeプロジェクトチームに取材を実施した。
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- ライター:林 佑樹
- カメラマン:林 佑樹
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フォーナインズ「PLAIDe」特設サイト
フォーナインズは,“各分野に情熱を注ぐアスリートの思い”を,メガネやサングラスの提供を通じてサポートする「フォーナインズ スピリットサポート」(関連ページ)という活動を行っている。これまではリアルスポーツ選手を対象に行っていたが,眼を酷使するeスポーツ分野においてもサポートをスタートした。
その取り組みの中で,製品を通じたサポートだけではなく,より選手達のパフォーマンスを向上させる手伝いができないかという思いから,視環境を知り,ビジョントレーニングの提案といったサポートも行えるように,2017年5月に「999.9 VISION LAB.」を設置したという。
「999.9 VISION LAB.」は,都内の成城にあり,かつてフォーナインズ本社があったビルを利用している。
「ビジョントレーニングを取り入れているアイウェアブランドは珍しい」
ラボで測定やトレーニングの指導を行う河合氏によると,ビジョントレーニングは,アメリカで学習障害などの改善を目的に利用されていたという。そこから,スポーツに特化させたものがスポーツビジョンだ。
国内では,まだ一般的な認知度はそう高くない現状にある。
はつめ選手とPLAIDe
「最初に来たときは『メガネ1本でここまでするんだ』っていうのが率直な感想でした。いろんなことを調べてゲーマー向けのメガネを作ってくれていて,すごい嬉しかったですね」
はつめ選手は,2019年の春までは自宅は裸眼,外ではコンタクトレンズでゲームをプレイしていた。つまりコンタクトレンズをして大会に臨んでいたが,緊張して瞬きが多くなり,コンタクトレンズがズレてしまうことが多くあったそうだ。曰く,基本的にゲームをするときは裸眼。格闘ゲームはそんなに視力は必要なく,裸眼でもどうにかなっていた。海外の大会ではコンタクトレンズを持っていくのが面倒でもあり,メガネを掛けて過ごし,試合中はメガネを外すスタイルを取っていたという。
プレイ中にメガネを掛けない理由は,長時間つけていると耳にかかる部分が痛くなったり,眼精疲労がキツいから。良いメガネを作ろうと,考えているとフォーナインズを勧められたという。すでにフォーナインズからサポートを受けていたSIRIUS GAMING ペルシャ選手にフォーナインズを紹介してもらおうとしたところ,逆にフォーナインズからコンタクトがあり,驚いたそうだ。
さらにそのときにゲーミンググラスを開発中だと聞き,完成を心待ちにしていたのだとか。
「PLAIDeを掛けはじめてからはヘッドセットをしても感動するくらい痛くないんですよ。ブルーライトカットの面でも普通のメガネとは眼精疲労の度合いが違うんです。たまに普通のメガネを使っちゃうんですけど,別のメガネを使うと違いがよく分かります」
PLAIDeのブルーライトカットは,よくあるブルーライトカットレンズとは異なる仕様で,色が入っているようには見えないのが特徴だ。医療用として開発されたグレー染料10%とコーティングによるものだが,はつめ選手にとってこれも良好だという。
これはFPSなどの場合だが,色の濃いレンズだと,ゲーム画面の見え方が大きく変わってしまい,普段との違和感をもとにした敵の発見がやりにくくなるそうだ。この違和感とは,FPSで画面をずーっと見ているときに,「このへんにいるじゃろ」でショットするときのアレである。
トレーニングについては,習慣化が難しく,はつめ選手もあまりできていないという。フォーナインズ側も伝え方を工夫しており,気軽に取り組めるものとして,遠くを見ることをオススメしていた。これは遠ければ遠いほどいいのだとか。
eスポーツ選手の場合,画面との距離が近く,眼が近くを見る状態になりっぱなしで,それをほぐすための最もカンタンなアクションが“遠くを見る”だそうだ。また眼と指を使ったトレーニングはいくつかあるそうだが,筋トレと同じく,習慣化はなにかと難しい(実績解除みたいなゲームがあればやれそうなのだが)。なおここでいうトレーニングは,視力の向上ではなく,柔軟性や長時間見続けるためのものだ。
筆者も測定及びトレーニングを一部体験することができた。通常,所要時間は1時間から1時間30分ほどになるという。測定前には眼と舌のストレッチがあり,筋肉が固まっている人は,それに気がつかないことが多く,動かしてみたときに動きの悪さを知ることになる。
測定はよくある視力チェックからスタートする。瞳孔間距離(PD),利目,静止視力,眼位にプラスして,コントラスト感度,深視力が実施されたが,ここの状況によっては追加項目もあるようだ。補足しておくと,コントラスト感度は薄暗い状況での視力,眼位は両眼がでまっすぐ物を見ることができるかを測定している。深視力は物体の距離間の判定で,大型免許取得試験などで実施されているものだ。
トレーニングルームでは,動体視力,眼球運動,瞬間視,眼と手の協調性のチェックを実施している。機器は数字が表示されるボタンが複数用意されたもので,上記テスト項目をまとめて行える。
動体視力の場合は,中央ラインのボタンにいくつかの数字が一瞬だけ横に流れるように表示される。事前にターゲットとする数字が提示されるので,その数字が表示されたところを押していく。
瞬間視は,中央付近のボタンに複数の数字が一瞬だけ表示され,提示された数字と同じボタンを押すもの。またこれは短期記憶力も要求される。
また,はつめ選手が行っていたトレーニングのひとつに,バランスボードに乗りながら,表示された色を答えていくものがあった。ただ答えるのではなく,文字の色と背景の色を日本語と英語で言い分けたり,スピードを変えたりしながら進めるそうだ。
PLAIDeは企画開発レベルからストイックな路線だった。純粋に“道具”を作ろうとする姿勢は,前回の記事で触れた通りだ。今回の「999.9 VISION LAB.」取材でも同様に,ストイックに特殊な環境で目を酷使するeスポーツ選手をサポートする考えを知ることができた。
「999.9 VISION LAB.」はサポート対象のアスリートが訪れる施設で,普通のゲーマーとは無縁なのだが,ゲーミンググラスPLAIDeの出来の良さを知るきっかけになれば幸いだ。
フォーナインズ「PLAIDe」特設サイト
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