業界動向
NetEaseが2020年度の決算報告を公開。年間売り上げ約1.2兆円,海外パブリッシングをより積極的に
「荒野行動-Knives Out-」(iOS / Android / PC / PS4 / Nintendo Switch)「IdentityV 第五人格」(iOS / Android / PC)などの作品で,日本でもよく知られる中国のゲーム会社NetEase。自社開発力を強みに,最近ではオリジナルIPだけでなく「EVE Echoes」(iOS / Android)「ディアブロ イモータル」(iOS / Android)といった巨大IPに加え,「はたらく細胞」のゲーム開発など,他社IPのゲーム化へも視野を広げていることがうかがえる。そんな,かねてより日本市場進出も強く意識しているNetEaseの,2020年第4四半期(10月〜12月)業績報告及び年度決算報告が2月26日に公開された。
年間1兆円以上というその売り上げの内訳を,少しのぞいてみよう。
NetEase Reports Fourth Quarter and Fiscal Year 2020 Unaudited Financial Results(PDF)
※以下はすべて,2021年3月1日のレート,1元=16.49円,1ドル=106.58円で計算している
2020年第4四半期
今回は,2020年第4四半期(10月〜12月)の業績報告と2020年度決算報告が合わせて公開されているので,まずは四半期分の数字から見てみよう。
COVID-19の影響による巣ごもりで2020年初頭から好調な数字だが,四半期の数字の成長はここへきてやや落ち着いた様子。第4四半期の総売り上げは197.62億元(約3258.75億円)で,YoY+25.6%,QoQ−3.3%となり,年度ベースで見れば相変わらず25%以上の成長率だが,四半期ベースで見ると少し減少している。
そのうちオンラインゲームによる売り上げは134億元(約2209.66億円)で,YoY+15.5%となる。オンラインゲーム事業のうち,約72.4%はスマホゲームによる売り上げだ。
日本では,ゲーム会社としてのイメージが強いNetEaseだが,そのほかの事業の成長が目覚ましい。
・YouDao売上 11.07億元(1.696億ドル,約182.54億円),YoY+169.7%
・新規事業及びその他事業売上 52.55億元(8.053億ドル,約866.55億円),YoY+41.3%
ゲームに,これらYouDao(オンライン教育)や新規及びその他事業(音楽アプリなど)を合わせ,今四半期の総利益は99.28億元(約1637.13億円)を叩き出している。
NetEase 4Q 2020 Investor Presentation
2020年度決算
2020年度(1月〜12月)の年度決算の数字を見てみると,総売り上げは736.67億元(約1.21兆円)のYoY+25.4%,売上総利益は389.83億元(約6428.3億円)という成長ぶりだ。事業別内訳を見てみると,
・オンラインゲームサービス 売上546.09億元(約9005.02億円),内71.9%はスマホゲームによる売り上げ
・YouDao売り上げ 31.68億元(約522.4億円)
・新規事業及びその他事業売上 158.91億元(約2620.43億円)
となっている。
業績ハイライトとして,自社開発のPC版MMORPG「天谕」のスマホ版「Revelation mobile」,乙女ゲーム「For All Time(时空中的绘旅人)」をリリースし,IP作品「遊戯王 デュエルリンクス」を中国でパブリッシングしたことが挙げられている。今後の予定では「Elysium of Legends(忘川风华录)」,「Infinite Lagrange」,「ハリー・ポッター: 魔法の覚醒」,「The Lord of the Rings: Rise to War」,「Nightmare breaker(超激斗梦境)」,「Ghost World Chronicle(隐世录)」,「ディアブロ イモータル」,「ポケモンクエスト」(Nintendo Switch/iOS/Android)などが控えている。
決算説明会の質疑応答では,中国国内におけるプラットフォームの手数料について言及された。CEOコメントを,翻訳して掲載しておこう。
また,マーケット全体について触れている箇所もあり,PCゲーム市場については「重要視」しているという。2021年Q2にはPCゲーム「Nightmare breaker(超激斗梦境)」を,そして2021年中旬に「NARAKA」をリリース予定だ。
海外市場については「NetEaseは海外でいつも二本足で歩いている※」と表現。自社開発ゲームだけでなく海外IPによるゲーム化など,NetEaseは海外でも投資を重ねていると強調。「我々は海外での投資が止まったことはなく,パートナーを作り,海外市場を開拓しています」
※「一大二公」(毛沢東が人民公社政策で採択したスローガン)。工業と農業,中央と地方,大企業と中小企業など,相対する要素を並存させ,ともに発展させるという考え方。この場合は「自社IPと海外IPの共存」や「自社開発と他社開発」といった対比を指していると思われる。
そして2021年について,「2021年は重要な一年になり,海外パブリッシングの一年になります。今年はハリーポッターやInfinite Lagrangeのリリースが予定されているので,収穫の一年になれることを期待しています」と結んだ。
NetEase Fourth Quarter and Full Year 2020 Earnings Conference Call(webcast)
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