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印刷2021/10/04 12:07

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[TGS 2021]「教育番組『世界のOKABE』」をレポート。「NieR」シリーズの岡部啓一氏とヨコオタロウ氏による即興作品の制作過程を追う

 東京ゲームショウ2021 オンラインの配信番組「SQUARE ENIX PRESENTS at TGS 2021 Online」にて,スペシャル番組「教育番組『世界のOKABE』」が放映された。

画像集#001のサムネイル/[TGS 2021]「教育番組『世界のOKABE』」をレポート。「NieR」シリーズの岡部啓一氏とヨコオタロウ氏による即興作品の制作過程を追う

 この番組は,「NieR」シリーズのコンポーザーを務めるMONACAの岡部啓一氏を主役とする,「未来のゲーム業界を担うアナタへ贈る教育番組」と事前告知されていたが,冒頭で「決まっているのはタイトルだけ」と本人が告白。同席した「NieR」シリーズクリエイティブ・ディレクターのヨコオタロウ氏と一緒に何か企画をやるという趣旨で番組はスタートした。ラストの意外なオチに,番組終了後にTwitterのトレンドにも入ったこの番組の模様をレポートする。

 企画の内容は冒頭の2人の会話から,番組は「2人で美しいクリエイティブを作る」というものに決定。ヨコオ氏が世界観のあるショートストーリーを即興で作り,それに岡部氏がヒアリングして曲を作って載せ,一つの作品を完成させることで,普段2人が作品の製作にどのようなやりとりをしているかを視聴者に見せようというのだ。

左から,MCの齊藤陽介氏,ヨコオタロウ氏,岡部啓一氏。番組は,事前収録した岡部氏とヨコオ氏の制作の様子を3人で視聴するスタイルで進行した
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番組冒頭での企画会議(?)中のヨコオ氏と岡部氏
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 ヨコオ氏はテキストエディタを使って,岡部氏の目の前で「NieR」シリーズの「ウェポンストーリー」のような,4段落で構成されるショートストーリーを作っていく。岡部氏は「貧乏な画家」が主人公の「悲しい話」というテーマを決め,4段落めの「貧乏な画家は,大切な家族を失う」というオチをゴールに,ボケを交えながら起承転結を付けていくヨコオ氏。ヨコオ氏は学校の講師として,授業でこのような即興のプロットを書いて講義をしているが,今回のようにその様子を客観的に見るのは初めてで,凄く新鮮だと語っていた。

最初に衝撃的な結末が決まり,そこに向かうまでのプロットがLV1〜LV4の段階で作られていく
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LV2の段階から,結末につながる布石が少しずつちりばめられている
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 岡部氏とともに添削をし,ついに完成したプロットのタイトルは「成功の理由」。ここまでの作業にかかった時間は1時間程度で,30分で執筆,30分でブラッシュアップしたそうだ。

 その世界観は欧州を思わせる場所で,ほの暗いテイストも感じられる。主人公の貧乏な画家には家族が存在。その画家が,画を売って家族を幸せにするために狂気にとりつかれていく様子をLV1からLV4までの段階のある文章で描き,最初に決めた恐ろしい結末へとたどり着く。1時間で作られたものとは思えない内容であるとともに,ヨコオ氏の作風が見事に反映されたものとなった。

完成したプロット。全編が披露された段階から,配信のコメントはざわついていた
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 ヨコオ氏は「普段はLV1からLV4まで文章量は同じにするが,今回はLV4の文章量がちょっと多いので,岡部さんがそれをどう処理するかのをなんとなく頭に浮かべて書いていた」とのこと。
 それを踏まえた岡部氏は,まだ具体的な楽器構成は決めきれていないものの,演奏一つぐらいは収録できるだろうと宣言し,楽曲の製作に入った。ちなみに岡部氏の作曲は,譜面は作らず,頭に浮かんだメロディをそのまま打ち込むという手法で作られるそうだ。

MONACAのスタジオで楽曲を製作する岡部氏
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 完成した楽曲は,プロットに合わせたもの悲しいメロディで,打ち込みデータが完成するまで2日程度かかったという。イントロから続くシンプルなピアノによるモチーフに,アコースティックギターのメロディで情感を出して表現。そのギター演奏は,「NieR」シリーズでもおなじみの後藤貴徳氏に依頼している。

後藤貴徳氏のアコースティックギターのメロディが奏でられる
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 さらに今回,「NieR」シリーズのアートワークを手がけている幸田和磨氏がこの物語のアートを描くという,非常に贅沢な企画も実現した。しかも1枚のコンセプトアートではなく,LV1からLV4までにそれぞれ違うアートを描いたというから驚きだ。

 幸田氏は「LV2以降に描かれた絵は,彼が本当に描きたかったものなのか,ずっと気になっています。重い結末ですが,それ次第で彼への印象が変わると思いました」とコメントを寄せ,それに対しヨコオ氏は,「(巻き込んでしまって)本当に申し訳ない。僕らは大道芸のようなつもりで始めたのに,幸田さんが入ったことで訳のわからないクオリティが出てしまった(笑)」と恐縮しながら讃えた。

幸田和磨氏による「成功の理由」のアート。上記のプロットと順番に照らしあわせてみよう
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 最後に,製作中の映像や幸田氏のアートとともに,岡部氏が製作した楽曲が流された。LV2までは制作段階で流れていた内容だったが,LV3からはLV4にかけて構成がどんどん厚くなり,その結末を印象づける静かなラストで締めくくる。それを見ていた視聴者からは,「凄すぎる」「鳥肌」「これでゲームやりたい」といったコメントが相次いでいた。

 完成した楽曲について岡部氏は,最初に後藤氏のギターが流れるところと,最後の盛り上がりの部分は同じメロディなのだが,最初は主人公のもの悲しさが反映され,最後はサスペンス寄りになっているところを意図したと解説。物語でも同じようなことを繰り返しているのに,後半に行くにつれて主人公の心がどんどん壊れていく様子を音楽で表現したという。

完成したプロットと音楽,アートを映像としてまとめたものが番組最後に流された
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 こうした構成やメロディは,何もしないところから降ってくるものではなく,なけなしのところから絞り出していると岡部氏。今回も手を動かしていたのは4〜5日だが,それがある程度形に固まるまで考える時間が必要で,それを別の仕事の休憩中などに考えていて,普段からこのような作業を並行して進めていることが多いそうだ。

 今回のようなやりとりを踏まえて,ゲームやその楽曲が作られているということが,見ていた人には分かったのではないかと思う。

 番組の最後に,そのすべての完成版が流されたのだが,そこにはヨコオ氏によるさらなる別のプロットが付け加えられていた……。この番組はアーカイブを視聴できるので,ぜひ岡部氏のサウンドとともに,最後のプロットを読んでみてほしい。

ヨコオ氏のメッセージとともに,結末の後に続きが……。これはぜひ自分で読んで確かめていただきたい
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