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日本のWeb3政策を決めるメンバーが登壇。「web3国家戦略の現在と未来〜『web3ホワイトペーパー』ドラフトメンバーを迎えて」聴講レポート
本講演には,元弁護士で衆議院議員の塩崎彰久氏のほか,河合 健氏,殿村桂司氏,増田雅史氏,松倉 怜氏ら4名の弁護士が登壇した。自民党が4月に発表した「web3ホワイトペーパー 〜誰もがデジタル資産を利活用する時代へ〜」を手掛けた彼らは,塩崎氏によると日本のWeb3政策を決めるメンバーであるとのことだ。
ブロックチェーンゲームは税金や法律と密接に関わっているため,ゲーマーにとっても国家戦略は無視できない。本稿では,講演のなかでゲームと関連しそうな内容を抜粋してお伝えしよう。
松倉 怜氏(モデレーター) |
塩崎彰久氏(自由民主党) |
最初にモデレーターの松倉氏が,web3ホワイトペーパーは日本政府のWeb3戦略の骨格であり,2022年に自民党が作成したNFTホワイトペーパーに続くものだと説明した。具体的な内容は,塩崎氏のnote(外部リンク)などを参照してほしい。
続いて塩崎氏が,世界から取り残されている焦りから,この2年で日本政府は急速に整備を進めてきたと語った。その結果,香港が先週発表したWeb3に関する研究報告では,先進的な地域として日本,シンガポール,韓国,アラブ首長国連邦が調査の対象となり,なかでも日本は環境整備でリードしていると評価されている。
河合氏は,パーミッションレス型ステーブルコインが国内でも可能となったこと,NFTの金融における論点が明確になったことを最近の主な成果として挙げた。ステーブルコインは価格が安定した暗号資産で,ドルと連動するUSDTなどが海外では存在している。これにより,ボラティリティ(価格変動)が大きく使いづらいという暗号資産の課題を解決することが期待されている。
最近のブロックチェーン業界はグローバルで低迷しており,アメリカでは暗号資産取引所FTXの破綻などもあった。クリプトウィンターと呼ばれる時代の,日本における事業環境が次のテーマだ。
増田氏は,アメリカの金融規制が不透明化していることに触れ,事業環境を妨げているのは「厳しい規制」ではなく「不透明な規制」であると語った。日本の規制は緩くはないが,透明化を進めてきたことに意味があるという。また,金融規制をクリアした後は,各国の消費者保護に関連する規制と直面することになり,大変さは続いていくとのことだ。
事業者が注意すべきポイントとしては,トークンの発行や取引に関する規制,消費者に対する説明が挙げられ,ゲーム分野においては賭博関連も課題になっているという。ランダム性の絡んだものは各国の規制がバラバラなので,気をつけなければならないそうだ。
殿村氏はそれに補足する形で,海外の法律が日本の事業者に適用される域外適用を挙げ,これも国によって異なるとした。また,リスクを考えるうえでは刑事罰があるのか,民事上の責任だけなのかも重要だという。
ルールは守らなければならないが,ルール化されていない部分もたくさんあり,日本人は外国人と比べて石橋を叩いて渡り過ぎな傾向があると述べた河合氏。いざとなったら守れる仕組みを作るので,全力で走ってほしいと日本の事業者にエールを送った。
こうした政府や専門家の取り組みによって,事業者にとってサービスしやすい国となれば,国内ゲーム会社はもちろん,海外パブリッシャの参入も期待できそうだ。
また,ブロックチェーンゲームは税金の知識が求められて怖いというゲーマーも多いと思う。そのあたりの仕組みが簡素化されることで,安心してプレイできるようになる時代が来ることを期待したい。
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