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[TGS2023]和傘にプロジェクションして遊ぶゲームと将棋のコマを叩きつけて相手のコマを吹っ飛ばすゲーム。学生チームのユニークな作品が展示された愛知工業大学ブースレポート
学生を支援するプロジェクトから,ユニークなゲームが生まれる
「東京ゲームショウ2023」にはゲームメーカーだけでなく,大学や専門学校も出展しており,愛知工業大学ブースもその1つだ。学生が開発したユニークなゲームを日替わりで展示するという取り組みが行われており,開催初日となる9月21日には「和傘之陣」と「ミリ知ら将棋」が展示されて,来場者の注目を集めていた。
●和傘にプロジェクションする「和傘之陣」
「和傘之陣」のコントローラは,白い傘だ。プレイヤーが傘を開いてプロジェクターにかざすと,ゲームの画面が傘に透けて映し出される。つまり,傘は専用ディスプレイなのだ。
傘を動かすことで白ウサギを移動させ,花びらや金魚を避けつつ,蝶々や鯛焼きを取ってポイントを稼いでいく。和風のアートが動く様子は美しく,「プレイすると,どんどん柄が変わっていく傘」に見えてくる。
ゲームの世界で和風アートが注目されてしばらく経つが,本作は傘でありつつゲーム,ゲームでありつつも傘であるという点がユニークだ。傘の絵柄が変化するところは反対側からも見えるので,ギャラリーも楽しめる。
ステージを選択する際は傘の中央に選択ボタンが収まるように動かし,くるくると回して決定するのだから風情がある。なお,傘自体にはセンサーをはじめとした電気的な仕掛けはされておらず,黒い半球状のパーツで画像認識を行い,移動や回転を検知しているという。
本作は,今年4月からゲーム制作を学び始めたチームによるもので,まずは東京ゲームショウへの出展を目指したという。会場には海外からも多くの人が来るため「和傘なら注目を集められるのではないか」ということでゲームに和傘を用いることが決まったのだという。
夏祭りやイベントに出展すると,プレイヤーと観客の両方が楽しめそうだ。ここからいろいろな工夫やアレンジができそうな作品だと感じられた。
PCとプロジェクターを組み合わせ,傘に画面を投影する |
何も投影されていない状態。PCが黒い部分を画像認識するが,傘にはセンサーなど電気的な仕掛けは施されていない |
●コマを盤面に叩きつける「ミリ知ら将棋」
「ミリ知ら将棋」はタイトルのとおり,将棋を1ミリも知らなくても遊べるゲームだ。
画面には将棋盤が表示されており,そこには相手のコマが山ほど並んでいる。手元にあるのは王将1つのみ。普通の将棋なら完敗だが,本作では王将を画面にバンバン叩きつけることで,相手のコマを将棋盤の外へ吹き飛ばしていく。
王将を叩きつける勢いが強いほど,相手のコマは大きく吹き飛ぶので気分は爽快だ。すべてのコマを将棋盤の外へ追い出したら,“おかわり”とばかりに新たなコマが出現するので,さらに吹き飛ばしていこう。最終的には吹き飛ばしたコマの数を競うことになる。
手元の王将は上部が取り外せるようになっており,中にはマイコンが仕込まれている。マイコンの加速度センサーで王将の勢いを検知し,画面のコマが吹き飛ぶ勢いを決めているのだ。
また,画面上にもセンサーが設置されており,手にした王将の動きに合わせて画面内の王将も動く。
将棋に負けたので腹いせに相手のコマを吹き飛ばす……なんてのはマナー以前の問題だが,タブーだからこそ気持ち良い。将棋盤はかなり大きく,そこに並ぶコマも多い。あちらこちらと腕を動かしつつ,派手にバンバン叩きつけるのはストレス解消にもなりそうだ。
これらのゲームは,授業で作られものではない。愛知工業大学には,もの作りに挑戦する生徒を支援する「学生チャレンジプロジェクト」制度があり,希望した生徒は材料費などのバックアップが受けられる。
具体的には,学生チームがマシンを設計する「学生フォーミュラ日本大会」への参戦や,お菓子メニューの考案,そして東京ゲームショウへの参加といったプロジェクトへの支援が行われているという。
愛知工業大学 情報科学部 情報科学科講師の小栗真弥氏によれば,今年は17チームによる17本のゲームが完成したので,日替わりでゲームを展示することになったのだそうだ。単位をもらえるわけではなく,授業の合間をぬって行われるゲーム制作は,すべて熱意のなせる技,というわけで,ゲーム作りの原点があるようにも感じられた。
東京ゲームショウ2023公式サイト
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