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[TGS2023]FPGAでセガサターン&PS2を再現した技術デモや,3DS互換のコンセプトモデルが出展されている達成電器ブース
裏通りに展示されているもののうち,ダイヤル型やトグル型など多彩な形を取れるタッチ操作デバイスや,Raspberry Piを内蔵できる小型ディスプレイなどは普通に感心させられる。Nintendo Switchをワイヤレス給電可能にするモジュールは,取り付けた場合は任天堂のサポート範囲外になるかもしれないが便利そうだ。ただ,Hyperkinが製品化を検討中だというFPGA(Field Programmable Gate Array。プログラミング可能な論理回路)形式のマルチ互換機から,ちょっと怪しい雰囲気が出てくる。
「あらゆる形状の表面全体を入力デバイスにできる」と謳う技術のサンプル |
HDMIやスマートフォンからのストリーミングを映せて,Raspberry Piも組み込めるモニタ |
Nintendo Switchにワイヤレス給電を追加するモジュールの実装例 |
HyperkinがRetroNシリーズとしての発売を目指している,FPGAによるマルチ互換機。かつてのRetroN 5とは異なり,カートリッジスロットはモジュール式のようだ |
さらにはFPGAで開発されたセガサターン互換機や,「プレイステーション クラシック」筐体に組み込むFPGAのPS2互換機となると,ちょっと「ここに置いておいて大丈夫か?」と思わなくもない。あくまで技術デモ的な参考出展であり,何かの法に触れているわけでもないが,それにつけても“アンオフィシャル”であることは間違いない。
まして,裏通りでもなくブース正面に堂々と展示されている「Project Nadeshiko」には度肝を抜かれる。これもまた参考出展で,<BLUE>モデルは普通のUMPCだが,<RED>モデルはニンテンドー3DS互換機だ。
「こういった物を作れる」というデモンストレーション機。非常に興味深い |
左側面にソフトのスロットがある |
任天堂ハードの互換環境に関する話としては,半年前にニンテンドー ゲームキューブ&Wiiエミュレータである「Dolphin Emulator」のSteamストアページが公開されるも,キャンセルとなった件(関連記事)が記憶に新しい。このキャンセルは,任天堂が「DolphinはDMCA(デジタルミレニアム著作権法)の反回避条項に抵触する」との見解を示したことによるものだ(なおDolphin側は抵触していないことを主張しているが,任天堂の指摘に従うというValveの判断に準じてSteamでの配信を断念した)。
「Project Nadeshiko」は吸い出したイメージでなく実機用ソフトを用いるという点で,Dolphin以上にホワイト寄りだ。また,ニンテンドー3DSは本体の生産もソフトの新規発売もとっくに終了しているので,「Project Nadeshiko」が製品化されたとしても任天堂の利益を侵害することは恐らくない。ニンテンドー3DSが発売されたのは10年以上前なので,今日においては「Windows XP時代のスーパーファミコン」みたいなものだ。
しかしDolphinに対する任天堂の動きを見るに,レガシープラットフォームにしてもオフィシャルにとって「歓迎されざる者」であることは確かだろう。ゲームメディアの立場からすると,ニンテンドー3DS用ソフトの画面を簡単にキャプチャできそうなので実に欲しいが,なかなか見方が難しいデバイスだ。こういった互換環境がミニ系ハードやEvercadeなどのような形に昇華されて,オフィシャルのライセンスでリリースされたらメディア的にも万々歳なのだが,果たして今後の動きはあるだろうか。
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