インタビュー
[インタビュー]あの“ウメハラ”はなぜ135万円のベースを買ったのか。仕掛け人のミートたけしこと川村 竜さんと,そのあたりのいきさつや仕事論などを語り合ってもらった
“格ゲー”という共通項はあるにせよ,フィールドの違う舞台で世界を相手に活躍してきたこの二人が,なぜそこまで親交を深めるに至ったのか。4Gamerではその謎を探るべく,年の瀬迫る都内のリハーサルスタジオにお二人を呼び出し,そのあたりのいきさつを聞いてみた。すると話題は仕事論や音楽と格ゲーの共通点,さらには最近の悩みごとにまで展開。ほぼほぼ雑談ベースではあるが,何かしら生きていくうえでのヒントみたいなものもちりばめられていたような気がしなくもないので,その模様をまとめてお届けする。
梅原氏と会うのは二度目だったはずなのに
初対面のような対応をされた川村氏
4Gamer:
今日はお時間をいただき,ありがとうございます。
いきなりですが,お二人が仲良くなったのって,どういうきっかけだったんでしょう?
川村 竜さん(以下,川村さん):
何がきっかけでしたっけ? 話すようになってすぐの頃,「なんでこの界隈にいるのかが分からない」と言われたことは覚えているんですけど(笑)。
梅原大吾氏(以下,ウメハラ氏):
あ,それは言いましたね。
川村さん:
最初にちゃんと会話をしたのは,2020年2月のふ〜どの結婚披露宴だったんですよ。
ウメハラ氏:
でも,そのとき俺は泥酔していたからまったく記憶にないんですよね。
川村さん:
で,その翌々週ぐらいにウメさんが配信しながらうちの近所を歩いていたんです。結婚式であれだけしゃべったんだし! って思って,追いかけようとしたら,まず「やべえ,でけえのが来る」って走って逃げられて。
ウメハラ氏:
まあ,配信の中のおふざけではあるんですけど,どうせ追いつけねえだろって。
川村さん:
こっちは土地勘があるんで,ショートカットして追いついたんですよ。でも明らかに初対面みたいな対応をされたんです。あんなに話したのに。
ウメハラ氏:
覚えてなかったから。
川村さん:
それで,あれ? これちょっと空気を読めない人になってるなって,そこではすぐ帰ったんですよ。
で,帰りながら配信を見たらウメさんが「ミートさん,直に見たの初めてだわ」って言っていたもんだから,「あれ? あんなに話したのがなかったことになってる?」って気付いて(笑)。
4Gamer:
悲しい(笑)。
川村さん:
別れ際に「うち寄っていきません?」って声をかけたんですけど,完全に寄る気のない返事だったんですよね。
でも配信を見ていた人が,「ミートさんが家に寄るように誘ってましたよ」みたいにコメントしてくれて,「え? マジで? 行こうかな」ってなったので,そこから俺がナビをして家に来てもらって,あらためていろいろと話をしたんです。俺にとっては2度目なんだけど,ウメさんにとってはそれが最初みたいな(笑)。
4Gamer:
それまで梅原さんは,川村さんの存在自体は認識されていたんですか?
ウメハラ氏:
マゴとかの知り合いっていう感じで,存在は知ってたんです。ただ,音楽の世界の有名人っていうのを聞いていたので,何が目的なんだろう? って勘ぐっていたんですよ。音楽の人が趣味でゲームをやることがあっても不思議じゃないですけど,ここまでがっつり絡んでくるのって,なんでなんだ? って。
4Gamer:
要は,何かしら利用するために近付いてきているんじゃないか,と。
ウメハラ氏:
そうそう。別にゲームがそんなに好きなわけじゃないけど,ゲームの世界がちょっと盛り上がってるから絡んでみようとか,名前を売るためにゲームをやろうとか,これまでそういうパターンがあまりにも多かったから,まず疑うという悲しい習性がついてしまって。
でもミートさんに関しては,音楽ですでに有名だからゲームで名を売る必要もないし,なんかよく分からない人だなって。
川村さん:
そこからなんで俺は許されたんですか?
ウメハラ氏:
なんだったかな?
一緒にやった配信って,「味覚王」だっけな?
川村さん:
ウメさんが最初に呼んでくれたのはそれでしたね。
ウメハラ氏:
それから「俺を獲れ」とか,「人狼」「狂気山脈」「コードネーム」あたりも一緒に配信でやって。でもどれが仲良くなったきっかけかっていうと……。
川村さん:
いつの間にか,みたいな。
ウメハラ氏:
徐々に,この格ゲー界隈を楽しんでるんだなっていうのが伝わってきて,楽しんでるんだったらそこにいるのも当たり前だなって思うようになった気がしますね。配信のときもそうなんですけど,盛り上げ上手なところがありがたいっていうのもあります。
あと,純粋なプレイヤー同士だとちょっとしたことで誘いにくかったりもするんですよ。今度大会で当たるから,とか。でもミートさんは軸が違うから付き合いやすいっていうのはありますね。
川村さん:
俺は元々,ゲーマーのウメさんという存在すら知らなかったんですよ。
でもアシスタントがウメさんの大ファンで,2016年ぐらいに,えいた君をプロにする企画の動画をオススメされて。そこでウメさんが「格ゲーマーとして必要なものは最終的に人間力」という話をしているのを見たときに,「あ,俺と同じ考え方の人がいるんだ」と思ったのが,最初にウメさんの存在を認識したきっかけなんです。その後,慶応大学での講演の動画を見て,話の面白い人だなって。
4Gamer:
ああ,なるほど。
川村さん:
格ゲーの強い人というより,話の面白い人という入り口。これが何十年も格ゲーをやっていて,「ウメハラすごい!」って思い続けていたら,こんなに自然に接することはできなかったかもしれないですね。
今年の3月ぐらいからは,一緒に飯を食いに行くようにもなり,夏には「EVO 2023」に付いていっていろいろ見せてもらったり。
4Gamer:
川村さんはEVOに出たわけではなく。
川村さん:
選手登録が間に合わなかったんで,本当に遊びに行っただけ(笑)。まあお世話になってますね。俺に光を与えてくれてありがとうぐらいの気持ちでいます。
ウメハラ氏:
ミートさんってきっと,本業である程度の成果を出している人で,それでも人生は続いていくから,その中でもっと楽しいことが別枠で欲しいんだろうなっていうのは伝わってくるんですよね。そういうのも分かるから,付き合いやすいのかもしれないです。
川村さん:
EVOのときも一緒に中華そば屋みたいなところで,「お互い刺激を求めてしまうよね」なんて話をしましたね。
40歳を超えると変化をするのが難しいと思うんですけど,それでもやっぱり変化を求めることを諦めたくないんですよ。ウメさんもそういう活動をずっとやっているから,無条件で協力したくなるんです。……でも,単純に企画なんかに呼んでもらえると楽しくて,マジありがとうございますっていうのが本当のところです。
4Gamer:
どこか奥底の部分で共鳴するものがあるんでしょうか。
川村さん:
そうですね。この間の収録の準備のときなんかも,やたら楽しかったんですよね。中学高校時代はちょっと斜に構えていて,クラスメートとつるむのも格好悪いと思って,学校行事なんかは全然出なかったんですよ。でもこの年齢になって収録の準備をやってるときに,「あ,これが文化祭の楽しさなのかな」みたいな発見もあって。
ウメハラ氏:
俺も学校行事なんかは,いっさい頑張らない……っていうか,サボってました。
とにかく,やらされるのが好きじゃないんですよ。文化祭とかも,先生とかクラスの中心人物とかから「やれ」って圧が来るじゃないですか。やりたくもないことをやるのがすごくイヤで。
でも,今やっている企画とかだと,みんなでどうすればもっと面白くできるかって感じで,やらされてる感がないんですよね。
川村さん:
もしかしたら,当時,文化祭もそういう気持ちで参加していれば楽しかったのかもしれないですけどね(笑)。
ウメハラ氏:
でも,理由がないですからね。
4Gamer:
そもそも学校のクラスなんかは,別に仲がいいわけでもない人間が集められてるだけであって,今の交友関係は自分で選択できているというのも大きいかもしれないですね。
川村さん:
確かに。学生時代から音楽の仕事をしていたんですけど,同級生より仕事関係のおじさん達と付き合うほうが居心地が良かったんですよね。ウメさんも,「昔のゲーセンはおじさんばっかりだった」って言ってましたし,原体験に似通ったものがあるのかもしれないです。
ウメハラ氏:
ゲーセンもまさに,人間関係を選べる場所だったんですよね。合わないと思ったら,同じ空間にいても話さなきゃいいので。そういう意味で,ゲーセンという場が自分の性格に合ってたんですよね。
川村さん:
俺は17歳のときにデビューして,学校の外に自分の世界があったから,孤独を感じることもなかったんですよ。
……ただ,20年以上同じことをやってきたら,環境が固まってしまうような感覚もあって,なぜかそこで孤独を感じることもあって。ウメさんと話すようになったときに,そういう孤独というか,孤高の人だなって印象を受けました。そういう話を二人でしたこともありましたね。
ウメハラ氏:
みんなそれぞれ,生きていくためにやんなきゃいけないことはあるし,だからこそ損得抜きで付き合うっていうのも難しいと思うんですけど,今周囲にいる人達ってそこがかなり薄いんですよ。
上下関係とか対抗意識とかもなく,楽しいことができそうだから,そこにいるっていう感じ。「俺を獲れ」で関わった人はとくにそうなんです。
川村さん:
俺も,損得で付き合う人を変えたりするのが,すげえイヤだったんですよ。でも最近,一緒に何かをして楽しいっていうのは,その時点で得だよな,と思うようになって。
ウメハラ氏:
あー,確かに。
川村さん:
そう考えると,お金なんかも大事かもしれないけど,楽しい人達と楽しいことをやるっていうのが,一番価値があることなんだなって。それを教えてくれたのが,ウメさん達。面白い人の周りには面白い人が集まるんだなって。
ウメハラ氏:
気持ちいい連中だなと思っています。みんな,楽しいこと以外はあんまり入れないようにしようっていうか,変にそれを利用して何かしようとか言い出さないから。
川村さん:
40歳超えて,俺,今が生きていて一番楽しいです。
ウメハラ氏:
そんなことあるんだ(笑)。そう思ってもらえているなら,すごく良かったです。
川村さん:
後輩のミュージシャンなんかが「俺を獲れ」を見ると,ぎょっとするらしいですからね。「川村さん,笑うんですね」みたいに。俺,そんなに感じが悪い人なのか……。でも,一緒にいて楽しい人達の,中心にいるのがウメさんという感じですね。
楽器経験もなく,音楽をやりたいと思ったこともないが
今夏,135万円のベースを購入した梅原氏
4Gamer:
ちょっと話題を変えます。
梅原さんは今年,135万円のベースを購入したことで話題になりましたが……そもそもとくに音楽経験はないんですよね?
ウメハラ氏:
まったくないですね。
小学校の音楽の授業で,リコーダーと鍵盤ハーモニカを触ったことぐらいはあるんですけど,ちゃんと楽器に触れるのは初めてです。
4Gamer:
音楽をやってみたい,と思ったこともなく?
ウメハラ氏:
ないですね。ただ,以前はゲームがうまくたって仕事にもならないし,どちらかというと暗い趣味みたいな時代だったから,俺の情熱がゲームじゃなくて音楽に向いていたら,どんなに良かっただろう……ぐらいのことは思ったことがあります。
でも,実際にやってみようとまでは思わなかったですね。
4Gamer:
そこから,なぜベースに興味を持つに至ったんでしょう。
ウメハラ氏:
単純な話で,今,Hit Boxを使ってゲームをやってるんですね。レバー操作は子供の頃からずっとやってきたので,十分な技術があるんですけど,左手の指を動かして操作する経験はなかったんですよ。右手の指は動くけど,左手の指が動かない。もっと左手を自由自在に動かせたらいいなと思っていて。
で,レバーレスの操作がやたらうまい人達って,みんな楽器経験者だったんです。それで,楽器をやれば指が鍛えられるんじゃないかと思って興味を持ったんです。
4Gamer:
なるほど……?
ウメハラ氏:
で,ちょうど「ストリートファイター6」が出て,使えるボタンが増えたんで,Hit Boxのボタンを左下と右上に増設したんですよ。でも左がうまく使えなくて。これはちょっと訓練しなきゃいけないな,と。
でもただ指だけを訓練するより,面白そうなことをやりたい。楽器をやりながらだったら,楽しく訓練できるんじゃないかなと思って。そういえばミートさんがベーシストだし,ベースにしようかなって。そんな感じです。
川村さん:
パスタを食いながらそんな話をしましたね。
実は俺,ベースを誰かに教えるのがあんまり得意じゃなかったんですけど,そのときに理由を考えたんですよ。結局,相手が俺に教えを請うときの目的が漠然としていると,何を教えていいのか分からなくなっちゃうから苦手なんだなって気付いて。
だけどウメさんの場合,小指を今よりも動かしたいという,明確なゴールが決まっているから,これは教えられるなって思ったんですよね。
4Gamer:
それも興味深いお話ですね。
川村さん:
何より,音楽的な憧れを持って始めるわけじゃないっていうのが,すごく貴重だと思っていて。
俺がベースを始めたときは,さすがに憧れているミュージシャンはいたんですけど,ある時期から憧れというものがノイズになることに気付いたんです。その道でやっていこうというときに,誰かに憧れていると結局はそのコピーにしかならないというか。だからウメさんは誰にも憧れず,ただ指を動かすためにベースを弾きこなせるようになって,オリジナルであり続けてほしいんですよね。
……ところでウメさん,ゲームに関して憧れのプレイヤーっていました?
ウメハラ氏:
子供のときはいました。当時の一番有名な人だったんですけど,すごいなって思って意識していた気がします。
川村さん:
そういう思いがいつか邪魔になったりはしませんでした?
ウメハラ氏:
どうだろう……。たぶん俺が「ストリートファイターII」でリュウを使ったのは,その人の影響なんです。最初にリュウを使って,それからいろんなキャラを使って最終的にリュウに戻ったっていう形なんですけど。それは別に,その人のプレイを意識したというより,スタンダードなキャラで勝つという王道っぽさみたいなものが,その人のカリスマ性を生んでいたんだと思っていて。それが今の自分のキャリアに大きく影響している気はしますね。
みんなが憧れるようなプレイは,こういうものなんだっていう,いい教材でした。
4Gamer:
プレイ自体に憧れたというより,存在のありように憧れたような感じなんですね。
川村さんはなぜ,憧れは邪魔になると考えているんでしょう?
川村さん:
音楽の話になっちゃいますけど,誰かの演奏スタイルに憧れて,ああいう風になりたいって思っているうちは,その人を超えることができないんですよ。
4Gamer:
ああ,分かります。憧れて真似をしていうるちはコピーにしかなれない,ということですよね。
川村さん:
そうそう。それにスタープレイヤーって,自分でいろいろと試行錯誤した末に自分に合うスタイルを見つけているはずなんです。でも憧れのあまり,その完成形だけを真似してしまうと,どういう経緯でそのスタイルに行き着いたのかを想像できないんです。すると結果,自分なりのスタイルを生み出すうえでは遠回りになってしまう。
ウメハラ氏:
あ,それはゲームでも当てはまりますね。憧れの人が特徴的な連係を得意としている場合,深く考えずにそれだけを真似しちゃうと思うんです。俺もたぶん子供の頃はそうでした。あの人がやっていることだから,とてもいいものに違いない,みたいな。
でもなぜその連係が生まれたのかを考えず,ゴールだけを真似して過程を知らない状態だと,それへの対策が出てきたときに変えられなくなっちゃうんですよね。
川村さん:
ああ,俺が言いたいのも,まさにそういうことです。
ウメハラ氏:
ただゲームのいいところ……というか,良くも悪くもなんですけど,タイトルが変わるとそれまでの経験もリセットされるんで,そうなるとまた一から自分の理論でやっていけるんですよね。
最初は誰かの真似でも,新作に移るタイミングでいずれ独り立ちしなきゃいけない瞬間があるんです。それがなかったら,俺もずっと憧れを引きずったまま,真似をし続けていたかもしれない。
川村さん:
実はゲーマーって気の毒だなって思ったのは,そこなんですよ。タイトルが変わると,共通項もあるとはいえ,やっぱり一からやり直しじゃないですか。だからプロゲーマーになれたとしても,プロゲーマーであり続けるのは本当に難しいことだろうなって。
ただ結局,知識と経験の違いなんですよね。いくら知識があっても,何をもって失敗なのかを経験して理解しないと次につなげられないですから。
強い格ゲーマーって,たぶん捨てるのが上手なんですよ。執着しないことに慣れているというか。
俺自身,人生で何度も「もったいなくない?」言われてきたんです。それこそ最近だと,慣れたレバーをやめてHit Boxを使うようにしたことなんかも。あと,麻雀も一時期本気で取り組んでいたけど,いろいろと理由があってスパッとその道を辞めたとき,「あんなに熱心に取り組んだのにもったいなくない?」とか。
ただ,やっぱり基本の思考が格ゲーマーだから,「新しいタイトルが出たら,前のタイトルを引きずっちゃダメ」って思うんです。そう思えないと,次のタイトルで勝てなくなるから。
川村さん:
捨てる能力が高いんだ。
ウメハラ氏:
あれだけ時間を使ったのに,っていう気持ちにならないのが格ゲーマーの特徴な気がしますね。だからたぶん,新しいものへもすんなり移行できる。そういう意味で,執着しないっていうのはトータルで見たらいいことなんじゃないかなって。
川村さん:
ウメさんが楽器というものに興味を持ってすぐに飛びつけたのも,そういう気質があるからなのかもしれないですね。
楽器のレッスンって,先生から言われたことを,これが何のための練習なのかを理解しないまま,とりあえずやって,来週また見てもらうというのの繰り返しになりがちなんですけど,俺はそういうのが本当に苦手なんですよ。
でもウメさんは,まず楽器の成り立ちみたいなところに興味を持つんです。これはどういう構造で,どういう風に弾くとどんな鳴り方をするのかとか。配信のときは大げさに振る舞いましたけど,かなり本心から褒めていました。まっさらな状態から,こういうふうに興味を持つ人がいるんだっていう驚きもあって。
4Gamer:
川村さんご自身が,梅原さんの反応に新鮮さを感じている様子が伝わってきました。
ウメハラ氏:
楽器に限らず,なんで? って気になることが理解できないと,そこから進みたくないんです。逆に言うと,無意味な作法とかが嫌いなんですよ。あれをやれこれをやれって言われても,その中に無意味なことがあるんじゃないかと思うので,一つ一つ理解しながら進みたい。
だから,ミートさんから楽器のここはこういう風に押さえなきゃダメなんですよって言われると,「それ,意味のない慣習だったりしませんか?」ってまず思って,「なんでですか?」って聞くんです。でもミートさんからは明確な答えが返ってくるから,そういう理由があるんだなって納得できて気持ち良くやれます。そういう性格なんですよね。
川村さん:
俺は俺でそういう質問をされたことがなかったから,すごく新鮮で。ウメさんはやっぱり普通じゃないんですよ。楽器についてこういう風に考えてくれる人がいたってことがうれしいし,ショックも受けたんです。
実はこれをきっかけに,今まで断ってきた人に教える仕事をやり始めました。吹奏楽の子供達相手なんですけど,教えることでこういう体験もできるのかもしれないな,と思って。
ウメハラ氏:
もし子供達が俺みたいに疑問を持たなかったら,毎回「なんでか分かる?」って聞けばいいんじゃないですか? それをやっていくことで,なんでなんだろう? って考える癖がつくと思うんですよ。
川村さん:
あ,やっぱりウメさんは考えるのが好きなんですね。
ウメハラ氏:
好きっていうか,どうしても考えちゃうんですよね。考えないことは徹底して考えないけど(笑)。
だから人から無駄なことをしているように思われても,興味を持つとやっぱり考えちゃうんですよ。
川村さん:
俺も楽器に関しては,最短でプロになるには,最短で稼げるようになるには,みたいなことを始めたときから考えたんです。それで楽器を始めて1年でプロ活動を始めたんです。
ウメハラ氏:
1年ってすごいっすよ。今まで格ゲーをやったことがないのに,「ストリートファイター6」を始めて1年でプロになれる人なんて,絶対にいないですから。
川村さん:
音楽に関しては相当最短距離で突っ走ってきた自信はあります。だから初めての趣味である格ゲーに関しては,同じように取り組みたくないって思っちゃうんですよね。格ゲーでは無駄な時間を過ごしたいっていうか。うまくなるためにどうするかを考えるんじゃなくて,ただがむしゃらにやっていたくて。うまくなれない負け惜しみかもしれないですけど(笑)。
ウメハラ氏:
いや分かりますよ。俺も格ゲー以外はうまくなりたくないって,よく配信でも言っていて。凝り性だから,うまくなろうとするとのめり込み過ぎちゃうし,ヘタはヘタなりに遊ぶ楽しさってあるから。格ゲー以外は,ただ体験する,体感するっていうことを重視してるんです。ちょっとメリハリを付けないと疲れちゃうし。
川村さん:
俺の中で“本気”っていうのは,プロフェッショナルになることなんですよ。その道で稼ごうとなると,ロードマップを組んで毎日のルーチンワークを作って,それに縛られた毎日を過ごすしかない。実際,楽器でもそれをやってきました。
でも40過ぎて,もう人生のほぼ半分が終わったところで,ゲームでそれはやりたくないんですよね。単純に楽しみたい。
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