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印刷2024/07/08 17:19

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「誰もがアニメクリエイターに」Puri Princeが描く新たなアニメ制作の未来とは? 戦略紹介イベントレポート

 2024年7月5日,Puri Princeは「IVS Crypto 2024 KYOTO」で,同社代表取締役の中山雅弘氏による事業説明会を実施した。

 Puri Princeは“IP宝庫日本のキャラクターを全世界へ”をスローガンとする,アニメ投稿サービス「Prince」の開発・運営会社だ。

 現地ではまず,中山氏がアニメ市場の現状に触れ,「2030年までに市場は600億ドル以上に達する」という予測が説明された。この成長の背景には,Netflixなどの配信サービスの世界的普及とモバイル端末の浸透,また世界中でアニメを楽しむユーザーの増加傾向が関わっている。

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 しかし,この成長の陰で日本のアニメ業界は深刻な課題を抱えている。それらの現状については中山氏は,「変革なくして存続できない」と厳しい表現をもって語り始めた。

 最大の問題は,高騰する制作費だ。2020年代のアニメ1本あたりの制作費は2500万円に達し,大手スタジオのトレンド作品なら5000万円を超えることも珍しくなくなった。この状況下では,新しいクリエイターが台頭する機会も限られている。「資金が集まるのは有名スタジオ,有名監督」と中山氏が指摘するとおりにだ。

 さらに有名クリエイターはフリーランスも多く,有名人同士で仕事を回しあう傾向もあり,若手が育ちづらい状況にあるという。

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 こうした閉塞感のある業界に,一筋の光明をもたらす可能性があるのが「生成AI」だ。2022年後半から高品質な画像生成が一般の人でも可能となり,2023年には脚本や音楽も生成できるようになった。そして2024年,ついに「誰でも動画を生成できる時代に突入した」と中山氏は語る。

 そこで同社が提案するのが,生成AI技術を活用したアニメ投稿プラットフォームである。このプラットフォームは,「誰でもアニメクリエイターになれる」ことを目指しているとした。

 同プラットフォームの特徴は,レジェンドクリエイターのアセット,生成AI,そしてアニメビジネスのナレッジを組み合わせた点にある。ユーザーは,プロのクリエイターが制作したキャラクターデザインや背景,音楽などのアセットを利用し,自分のアイデアを形にできるという。

 プラットフォームが提供する主な機能は,「アセット投稿」「動画と漫画の投稿」「イベントとクリエイター支援」の3点だ。

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 アセット投稿機能では,音楽,ボイス,キャラクターデザイン,設定,シナリオ,世界観などを投稿できる。これらのアセットは,ブロックチェーン技術によって著作権が保護されるという。

 動画と漫画の投稿機能では,アセットライブラリを活用しながら,ショートムービーや漫画を創作できる。生成AIや制作支援ツールも用意され,アニメ制作の未経験者でも作品を生み出せるとしている。

 イベントとクリエイター支援機能では,ファンがクリエイターを直接支援できる。例えば,コンテスト形式のユーザーバトルや,NFTやグッズの購入,サブスクリプション加入などがそれにあたる。

 中山氏は,このプラットフォームがアニメ業界にもたらす価値について「大量の高品質なアニメが生まれる土壌を作ること」だと説明する。見る人を増やし,作る人を増やし,そして新たなクリエイターを育てていく。そうしたサイクルの達成こそが目標にあるようだ。

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 さらに,プラットフォーム上で人気を博した作品は,Puri Prince発のIPとして多角的に展開するとのこと。具台的な手段としては,世界観の醸成,レジェンドクリエイターとのマッチング,フルサイズアニメ化,ゲーム化,ライブイベント実施,劇場版制作などが構想されている。

 ビジネスモデルも多角的で,一般クリエイターからはツール利用料を,プロクリエイターからはIP権利料とNFT取引手数料を,レジェンドクリエイターからはNFT取引手数料を,オーディエンスからは投げ銭やサブスクリプション収益,イベント収益を得る計画だとしている。

 加えて,AIを活用したアニメ制作のコスト削減効果についても言及された。AIを最大活用すると,制作費は従来比で約40%の削減が可能となり,制作期間も24か月から12か月に短縮できる可能性があるという。

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 しかし,この新たな取り組みにも課題はある。既存のアニメスタジオや制作会社との軋轢の発生,AI生成コンテンツの著作権や品質の問題,クリエイター収入の安定性などが懸念対象とされる。

 これらに対して中山氏は,「我々は既存の制作会社と対立するのではなく,協力関係を築きたいと考えています」と述べた。
 次いで「AIはクリエイターの創造性を奪うものではなく,それを拡張するツールです。クリエイターの皆さんには,AIを使いこなすことで,より多くの作品を,より効率的に制作できるようになってほしい」と語り,現代のクリエイターと生成AIが共存できる道を模索するという。

 同社の強みに関しては,業界経験豊富なチーム編成にもある。中山氏自身,セガやブシロードでの従業経験を持ち,「サクラ大戦」や「D4DJ」などに携わってきた。同社アンバサダーにも「サクラ大戦」や「天外魔境」の原作を手かけたことで知られる,広井王子氏が参加している。

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 発表会の最後に,中山氏は「アニメは日本が世界に誇れるコンテンツです。しかし,その制作現場は多くの課題を抱えています。我々は,AIとブロックチェーン技術を活用することで課題を解決し,より多くの人がアニメ制作に参加できる環境を作りたい。そして,日本のアニメ業界がさらなる発展を遂げることを願っています」と語って締めくくった。

 AIの活用が進むことで,クリエイターの役割がどう変化していくのか。これもまた新たな問題として噴出するのだろう。技術の進歩と人間の創造性のバランスをどう取るのかは,Puri Princeだけでなく,アニメ業界全体が向き合っていかなければならない課題と言える。

Puri Prince代表取締役 中山雅弘氏
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 また,コンテンツが大量生産される時代のなかで,質の高い作品をどのように見いだし,作り手をどう育てていくのかも並行する課題となる。同社が提案する「レジェンドクリエイターとのマッチング」や「IPの継続的な支援」は,それらに対する一つの解答になるのかもしれない。

 Puri Princeの取り組みは,アニメ業界にとどまらず,エンターテインメント産業全体に大きな影響を与える可能性を秘めている。AIとブロックチェーン技術を組み合わせたコンテンツ制作プラットフォームは,音楽や小説,さらにはゲーム分野にも応用される可能性がある。まだ始まったばかりの同社の挑戦がどうなるのか,注目していきたい。

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