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ドット絵作りの秘技から,あやしい美術解剖図まで。原画展とは一味違った展覧会を目指す「大カプコン展」は2025年3月20日より大阪で開催
「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」公式サイト
カプコンファンなら1日で回りきれないほど濃厚な展示会に
発表会には,大阪中之島美術館 学芸課長の植木啓子氏とカプコンの牧野泰之氏が登壇。大カプコン展の理念や展示内容について語った。
大カプコン展は,大阪中之島美術館と読売新聞社からのラブコールに,カプコンが応えた形で始まったとのこと。2020年に開館した大阪中之島美術館は2025年に向けて「大阪の何を世界に発信すべきか。世界の何を大阪に紹介すべきか」の検討を重ねてきたと植木氏は語る。
良質で挑戦的,総合的な創作活動を展覧会という形で披露してきた同館としては,2025年・大阪・世界というキーワードがカプコンにつながるものであると確信したという。そこで同様の思いを抱く読売新聞社とともにカプコンに働きかけて,今回の展覧会が実現したそうだ。
監修にかかわっている牧野氏は,「大カプコン展はアナログ原画や手描き資料が主軸の展覧会とは少々趣が違うものになる」と話す。通常のゲーム系イベントでは原画を展示することがセオリーで,この展覧会でもそうした資料を出しはするが,それ以上にゲーム開発の裏側や,ゲームクリエイターの情熱の見せ方に注力しているという。キービジュアル上部のリオレウスにCGの開発中に見られるメッシュがかかっていたり,下部がドット絵風になっているのは,こうしたコンセプトの表れなのだそうだ。
大カプコン展は,大阪中之島美術館の5階を「ROUND1」〜「ROUND3」+「BONUS STAGE」というゲーム風ネーミングの4エリアに分けて展示を行っていく。この日は展示の一部について情報が明かされた。
ROUND1「カプコンが見たゲームクロニクル」
ROUND1では,カプコンの歴史を主軸に,ゲーム界全体の歴史も振り返っていく。来場者を迎えるのは「カプコンキャラクター大行進アニメーション」。これは高さ4m×長さ16mの巨大スクリーンを用いた「映像のトンネル」で,カプコンの歴代キャラクターたちが行進していく。「カプコン年表」ではファミコンのカートリッジをはじめとした現物の展示も行われ,歴史を振り返ることができる。
ROUND2「テクノロジー×アート×アイデア」
ROUND2では,「総合芸術としてのゲーム」をキーワードに,クリエイションにおける創意工夫についての展示が行われる。このコンセプトを体現するのが,牧野氏が注力したという展示「ドット絵の流儀」だ。当時はさまざまな制約があるなか,工夫を凝らしてドット絵が作られていた。関係者への取材を行ったうえで,これらの技法について解説していくという。
一例として挙げられたのが初代「ロックマン」だ。ファミコンは52色を扱うことができ,その中から選んだ3色+透明の集まり「パレット」を,それぞれのキャラクターに割り当てていた。
1画面に出せるパレットは4つまで。そのうち,主人公のロックマンは「リッチな表現をしたい」というコンセプトのもと,身体を塗る青色系のパレットと顔に用いる肌色系のパレット,合計2つを占有している。つまり,敵キャラクターに使えるパレットは2つまでということになる。ひとつのステージ内で似た色調の敵が多くなってしまうのは,こうした事情によるものなのだという。
制限が多いなかで,主人公に2つものパレットを使うのは異例なことであり,こうした部分がカプコンらしさであると牧野氏は話す。この「ドット絵の流儀」はカプコンのファンであるほどじっくりと見入ってしまう内容であるため,ほかの部分も含めると1日では会場を回りきれないのではないかとのことだ。
「ゲーム作りの古文書たち」のコーナーでは,先人たちが「意地とプライドで保存していた」仕様書や企画書といった資料が展示される。「初公開のものが8割以上」であり,カプコンファンでも見たことがない資料が多く展示されるというから楽しみだ。
「楽しい効果音づくりの世界」は,カプコンにおけるSE作りにフォーカス。収録風景と実際のゲーム画面を見比べて楽しめるという。表題に「楽しい」と付いているのは,収録現場におけるさまざまな工夫を確認できるからで,「ロックマン11」に搭乗するタイヤ型の敵「マワルシー」のSEに実際のバイクが用いられたり,「モンスターハンターライズ」で鎧の金具が鳴るSEにランドセルの留め金が使われていたりと,こちらも楽しいコーナーになりそうだ。
ROUND3「カプコンが生み出す比類なきファンタジー」
ROUND3は,いかにして架空の世界やキャラクターに実在感を持たせるか,カプコンの取り組みが明かされるセクションだ。「キャラクター造形の教典」コーナーでは,人体構造の考え方や描き方の教典が展示される。
カプコンのキャラクターといえば,こだわった筋肉描写や正しいデッサンで知られている。その高いクオリティは,同社内部で制作された資料「あやしい美術解剖図」が支えたのは有名な話だ。本コーナーではこの「あやしい美術解剖図」をとおし,クリエイターたちに解剖学レベルの理解を促してきた歴史が語られるという。
「石膏像×プロジェクションマッピング」コーナーでは,「春麗」と「ダンテ」の石膏像にプロジェクションマッピングを行い,3DCGをモデリングする過程が表現されるという。
会場では「ストリートファイター6」の春麗石膏像(試作版)を使ったデモンストレーションが行われたが,真っ白な立体に彩りが加わってお馴染みの春麗になるさまはまさに3DCGの制作過程だった。なお,春麗石膏像は実際にゲームで使われているデータをアレンジしたもので,プロジェクションマッピングされたテクスチャはゲーム内と同じものが使われている。
BONUS STAGE
BONUS STAGEのコーナーでは,「体験するゲームクリエイション」をテーマに,さまざまな参加型展示でゲーム製作の一部を味わえる。「モーションキャプチャーミラー」は,特別なスーツやマーカーを身に着けることなくモーションキャプチャを疑似体験できるもの。「ストリートファイター6」のリュウや「逆転裁判」の成歩堂龍一などのモーションアクター気分を楽しめるという。
「ドット打ち体験」コーナーでは,タブレットを使ってドット絵を描く体験ができる。絵心や特別な知識がなくても,ガイダンス通りにすれば「ロックマン」「ストリートファイターII」「モンスターハンター」「バイオハザード」などのドット絵を描けるという。「真っ赤なロックマン」などカラーバリエーションが用意されるほか,描いたドット絵はQRコードで出力でき,自分のスマートフォンにダウンロードして壁紙にもできるそうだ。
本展覧会について牧野氏は,「3世代を絶対に楽しませたい。自分たちアラフォー世代は間違いなく楽しめるが,それだけでは意味がなく,父母世代に『子どもたちがハマっていたゲームはこういうものだったのか』と知ってもらいつつ,「子世代にもゲーム作りについて発見してもらいたい。いまだにゲームは社会悪といわれることもあるが,ゲーム=悪でないことを証明したい」と意気込みを語った。
大カプコン展については,今後も情報発信が行われていくとのことなので,カプコンファンは要注目だろう。
●開催概要
「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」
会期:2025年3月20日(木・祝)〜6月22日(日)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」公式サイト
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