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遠隔ゴミ分別ゲーム「Eco Catcher Battle」がもたらす社会貢献。eスポーツイベントの狙い,そして今後の展開を示した発表会レポート
DEAは,同社のプラットフォーム・PlayMiningを通じて,東京電力パワーグリッドとともに展開しているブロックチェーンゲーム「ピクトレ〜ぼくとわたしの電柱合戦〜」など,複数の社会課題解決プロジェクトに取り組んでいる。
一方,Rita Technologyは環境リサイクル機器を製造するウエノテックスの関連会社で,廃棄物処理業界向けのITソリューションを開発している企業だ。「Eco Catcher Battle」は,同社が開発したAI搭載廃棄物自動選別ロボット「URANOS」と連動したゲームである。
Rita Technology 代表取締役 上野光陽氏によると,廃棄物選別作業の現場は極めて過酷であり,人員を募集してもなかなか応募がないうえ,離職率も高い。しかし,この作業は今後需要が高まるため,こうした課題を解決できないかと考え,URANOSを開発したという。
URANOSに搭載された各種センサーにより,ベルトコンベア上を流れてくる廃棄物の情報を得て,それをAIが解析し種類を特定し,ロボットが分別していく。
ただ上野氏によると,廃棄物が多岐におよんだり,顧客によって扱う廃棄物の種類が異なっていたりするなど,まだまだAIの解析だけでは追いつかないケースも多く,分別の精度を高めるためには人間のオペレーターが必要とのこと。それでも,たとえば人員が10人必要だった現場にURANOSを導入したところ,4人まで削減できるといった成果を得られているそうだ。
「Eco Catcher Battle」はそうしたURANOSの仕組みを応用し,AIが解析した廃棄物の情報をスマートデバイスにインストールされたゲームアプリに送信。その情報をもとにプレイヤーが,ゲームアプリを使った遠隔操作で正しく廃棄物を分別すると得点になるというルールになっている。
「Eco Catcher Battle」は日本貿易振興機構(JETRO)の「対内直接投資促進事業費補助金」製造分野で採択されており,11月23日には「廃棄物処理分野における労働力不足解消と一般市民啓蒙,地域創生を目的とした遠隔ゴミ分別ゲームのeスポーツ事業化の実証」の一環として,同タイトルを用いたeスポーツイベントが行われた。新潟,長野,そしてフィリピン・ケソンから廃棄物処理を手がける3社のチームが参戦している。
今回行われたeスポーツイベントの狙いとルールは以下のスライドを参照してほしい。子どもや高齢者,障がい者を含めたチーム構成となっているのは,誰でもプレイできることを意識した結果である。
また,分別する廃棄物にリチウムイオン電池が含まれているのは,ここ最近,廃棄物処理現場では頻繁にリチウムイオン電池による火災が起きていることを鑑みたからだ。
eスポーツイベントの運営に協力したOGIXの代表取締役 小木曾裕介氏は,新潟と長野,フィリピンを通信回線でつなぐにあたり,オンラインゲームなどで使われる技術を応用したとコメント。eスポーツということで公平性を担保する必要もあり,緊張感を持って臨んだと話していた。
また,今回使用したURANOSは新潟に設置されていたが,上野氏にはロボットがプレイヤーの指示どおりに動くか,途中で止まらないかといった懸念があったという。実際,当日は廃棄物がスムーズに流れないトラブルがあり,手動で廃棄物を動かすようなこともあったそうだ。
今後の「Eco Catcher Battle」の展開と,その狙いも以下のように示された。
「実際の工場での就労ツールとしての活用」に関しては,URANOSを導入している国内3か所の廃棄物処理工場にて,「Eco Catcher Battle」の機能を応用した別のアプリを,主に障がい者就労用のツールとして活用していくことが示された。
上野氏は「障がい者の皆さんに働く場を提供したい」「危険を伴う廃棄物処理作業を,安全な自宅から可能にすることで喜んでいただけている。この取り組みを,順次広げていきたい」と意気込みを語っていた。
「全国の自治体,商業施設等で実施されるイベント展開」では,体験型イベント・研修を支援するIKUSAと提携し,「Eco Catcher Battle」を誰もが楽しめるイベントコンテンツとして,国内の自治体や商業施設で展開していくことが示された。
IKUSA 代表取締役 赤坂大樹氏によると,今回のようなサステナビリティを扱うイベントは,興味のある人が少し立ち寄っていくだけのものになりがちとのこと。それを同社ではワークショップなど体験型のイベントにすることで,家族連れなどにもアピールできるものにしており,「Eco Catcher Battle」もまた有力なコンテンツになり得ると期待を寄せる。
「社会貢献型eスポーツカテゴリの立ち上げ」については,「Eco Catcher Battle」のほかにも運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)の「e建設チャレンジ」など,社会貢献につながる可能性のあるゲームが紹介された。「e建設チャレンジ」を用いたeスポーツイベントは,これまで約3年にわたって開催されているとのこと。こうしたゲームをまとめて,1つのカテゴリとして確立する構想があるそうだ。
最後の「AI自動分別を実現するアノテーションプラットフォームとしての活用」では,上野氏の発言にあったとおり,AIによる廃棄物の自動分別に必要な教師データが不足していることが示された。これは廃棄物の分別に限った話ではなく,たとえば水産業における魚の選別,古着の分別など,さまざまな分野でも課題になっているとのこと。
DEA Founder & Co-CEO 山田耕三氏は「Eco Catcher Battle」や応用アプリなどを通じて,そうした選別・分別の自動化にあたって必要となるAIの教師データを収集できるようにしたいと展望を語った。
「Eco Catcher Battle」公式サイト
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