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[GDC 2009#26]ピーター・モリニュー氏,ウィル・ライト氏など業界有名人5人が揃った豪華なパネルディスカッション
Ed Fries氏 |
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Lorne Lanning氏 |
Bing Gordon氏 |
Will Write氏 |
Peter Molyneux氏 |
名前を見て分かる人もいると思うが,パネラーの5人はいずれも有名人。業界人なら知らない人はいないということで,今回のパネルディスカッションでは自己紹介すら行われなかったほどだ。
とはいえ,それほど表舞台には出てきていないメンバーもいるので,各参加者の簡単なプロフィールを紹介しよう。
モリニュー氏は,最近だと「Fabel II」の開発者としてメディアに登場する機会が多いが,古くは「ポピュラス」などで知られる人物。いわゆるゴッドゲームを確立したゲーム開発者である。
ライト氏は,シムシティシリーズ,シムズシリーズなどで知られるゲームクリエイターであり,日本での知名度も高い。2008年には生命の歴史を描いたシミュレーションゲーム「SPORE」を発売した。
ゴードン氏は,Electronic Artsの取締役副社長であり,チーフ・クリエイティブ・オフィサーという立場で,「The Lord of the Rings: Conquest」「Command & Conquer 3: Kane's Wrath」「Spore Creature Creator」「Command & Conquer 3: Tiberium Wars」など,同社から発売された数々のゲームに携わっている。
ラニング氏は,Oddworld Inhabitantsの設立者の一人であり,ゲームデザイナー,ライター,声優といった業務をこなすなど,マルチな才能を発揮している人物。もちろん代表作は「Oddworld」(邦題 エイブアゴーゴー)だ。
フリーズ氏は,Microsoftのゲーム開発部門の陣頭指揮を執っていた時期があり,Xboxの発売や,Bungie Studios,Ensemble Studios,Rareといった有名デベロッパの買収に携わった経験がある。
といったように,かいつまんで説明したが,あえて自己紹介が行われなかったということもうなずける面子だろう。
ディスカッションのテーマは「Stretching Beyond Entertainment: The Role of Games in Personal and Social Change」となっており,ゲームが社会や個人に与える影響についてあれこれ語り合おうという会合だ。知ってのとおり,ゲーム産業が成長するにつれ,その影響力が年々大きくなってきている。そんななか,実際にゲームビジネスに携わっている人達は,いったいどんなことを考えているのかを探ろうというわけである。もっとも,ゲームが社会や個人になんらかの影響を与えていないと考えていると,このテーマでのパネルディスカッションは成り立たない。というわけで,まず始めに司会者からそのことが問われた。結果はもちろん全員「Yes」だったが,フリーズ氏のみ条件つき。フリーズ氏はゲームによっては影響と呼べるほどのものを与えないものもあると考えていた。
続いてその影響とは,良い影響なのか悪い影響なのかという話に移ると,モリニュー氏は「そもそも悪影響とはなにか」と切り出した。つまり悪影響の定義をはっきりさせないと議論ができないということだ。「例えば,性的な描写だけでなく,その存在をゲームでほのめかすだけでも,いろいろと騒がれることがあります。だが,Fable IIでは主人公が結婚し,子供を作ることもできる。これは悪影響を及ぼすといわれるものなのだろうか。14歳の子供がFable IIをプレイしてゲーム内で子供を作ったが,彼は現実では子供が欲しくないので,ちゃんとコンドームを付けると言っていたとすると,見方によってはいい影響を与えたといえるのではないでしょうか」と付け加えた。ほかの参加者達もモリニュー氏に同意し,「結局はプレイした人の受け取りかた一つで善にも悪にもなる」という意見で落ち着いた。
「ゲーム内容うんぬんではなく,ゲームが存在することで子供が勉強をしなくなるといったことがあるのではないか」と司会者に振られると,これまた全員一致で否定。「ゲームで多くのことを学んだ」といった意見がほとんで,議論の余地すらなかったといったところだ。さらにフリーズ氏は「宿題をやったらゲームを遊ばせてあげる」と自分の子供に言っており,「親の教育次第でどうとでもなる」とコメント。これまた全員が肯定し,「娯楽のない世の中なんて,みんな嫌でしょう」とまとまったのである。
ゲームを開発している人達からゲームの存在を否定するような答えが出てくるわけもなく,このあとも司会者が投げかける質問に対して,全員がほぼ同じ意見を述べるという光景が繰り返された。その様子は,ディスカッションと呼べるものになっていなかったというのが本当のところである。もっともGDCの最終日に,有名人の顔見せ的なノリで開催された節が強いので,それは突っ込むべきことではない。
とはいえ,所属する会社がまったく異なる業界有名人が集まって,ゲームについてあれこれ語るというのもGDCならではである。テーマの選び方は難しいと思うが,今後も続けていってもらいたい。
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