イベント
[GDC 2011]業界に新たな風を吹き込むインディーズゲーム開発者3氏が語る,独立してゲームを作ることの喜びと試行錯誤
今回のIndependent Games Summitでは,「From AAA to Indie: Three Start-Up Stories」(大作からインディーズゲームへ: 3つのスタートアップの物語)と題された講演が行われた。Hounted Temple Studiosのジェイク・カズダル氏と,Spry Foxのダニエル・クック氏,そしてDejobaan Gamesのイチロー・ランビ氏が,独立系デベロッパならではの苦労や喜びを語り合うという内容だ。
講演のタイトルにもあるように,3氏はいずれも,大きな企業でいわゆる大作を手がけた過去があるという。
このような経歴からも,Skulls of the Shogunに日本的なアートワークが用いられている理由がうかがえる。
カズダル氏は当時,大きな企業であるにもかかわらず,少数精鋭のチームに分かれ,コンセプトデザインからマーケティングまでを担当する手法に大きな影響を受けたと語る。カズダル氏は帰国後,工業デザインから映画ビジネスまでさまざまなテーマについて学習し直したそうだ。
カズダル氏は,Electronic Artsにしばらく在籍したあと,出身地であるシアトルに戻って独立を果たした。Hounted Temple Studiosのメンバーはカリフォルニア州をはじめ,いくつかの州に散らばっており,カズダル氏自身,自宅でゲーム開発を行っている。スタッフはSkypeで連絡を取り合っており,同じ場所に揃っていなくても作業にはまったく支障がないそうだ。
つい,自室にこもって一日中作業してしまったり,会社が小さいため経済的なリスクに対する不安があったりするものの,自分の思いどおりにゲームを作れる喜びは何物にも代えがたいと述べていたのが印象的だった。
実は,クック氏は16年間もMicrosoftに在籍したベテランゲームデザイナーで,同社のXbox LIVE部門のマネージャーを務めた,デイビッド・エデリー氏と共にSpry Foxを興した。
サウンドやプログラミングといったクック氏の得意分野以外については外部に制作を依頼しており,日本にも協力者がいると語っていた。
Microsoftという大企業で働いていたクック氏だが,楽しみよりも苦しみのほうが大きかったと語る。自分がデザインを担当しているプロジェクトであっても,何人ものボスが口を出してきていたそうで,その様子を「何人ものシェフが一つの料理にあれこれ注文をつけているようでした」と表現していた。
そのような状況の中で,クック氏は,「自分に才能がないから助言を受けるのだ」と思い込むようにしていたそうだ。
独立後は,とにかく自分のアイデアを信じ,次々にゲームを開発してきた。その作業をとおして,「やはり自分の考えるゲームは面白い」と気づくことがたびたびあるという。
クック氏は,「小回りが利くため,いつでもゲームに手を加えられるのが独立系デベロッパの良さ。大企業のように,悪い部分にもなかなか手をつけられないでいるのは,高速道路を逆走しているようなものです」と述べていた。
そのランビ氏は,自分の手でマーケティングを行える点が,独立系デベロッパの面白い部分だと述べた。上で紹介したAaaaaAAaaaAAAaaAAAAaAAAAA!!!のタイトルも,話題づくりを狙ったもの。ゲームファンに怒られない範囲で,どこまでAをつなげてゲームのタイトルにできるか実験したのだそうだ。
このゲームが初めて紹介されたアメリカのゲーム情報サイトのフォーラムには,その名称やゲームシステムをめぐってさまざまな意見が寄せられた。これに対し,YouTubeを使ってムービーで回答したところ,そのムービーがさまざまなサイトに転載され,さらに話題を集められただけでなく,ゲームファンの信頼も得られたという。
ところで,ランビ氏は昨年のGDCで「ウッ! ウッ! ウッ! ウッ!!!」(仮称)というリズムゲームについて教えてくれたが,今回のサミットにおいて,このゲームの正式タイトルが「1, 2, 3, Kick It! 〜 Drop It Like an Ugly Baby」に決まったことや,3月11日から開かれるイベント「PAX East」で初披露することを明らかにした。
さまざまな苦労があるなか,自分達の好きなようにゲームを作り出している3人が,今後どのような作品を世に送り出していくか注目したいところだ。
- この記事のURL: