インタビュー
「ラグナロクオンライン」インタビュー。MMORPGへの原点回帰を狙う2017年のロードマップと,その先で目指すものについて聞いてきた
その次に予定されている「業績・称号システム」というのは,これまでなかったものですよね?
長澤氏:
新システムです。業績は,簡単に言うとトロフィーのようなシステムです。NPCの依頼を達成するというものではなくて,ゲームを開始してキャラクターのウィンドウを開くと「ポリンを10匹倒せ」などの目標が提示されます。それをクリアすると,報酬を得られるというシステムです。称号システムは,それらの目標を達成するとキャラクター名の隣に称号が「ポリンキラー」のような感じで表示されるシステムで,こちらはもう韓国で実装されています。
中村氏:
デイリークエストなどとは違い,ゲームを開始したときからあらゆる業績,目標が提示され,どれからでも達成できます。達成するとリワードとして,アイテムやゼニーがもらえたり,称号がもらえたりします。初心者が最初に何をするかへの導線であったり,トロフィーとかを集める,やり込みが好きなプレイヤーさん向けだったりのコンテンツですね。
4Gamer:
称号をもらうとバフが付くとか,なにか特典のようなものはあるのでしょうか。
中村氏:
完全に名誉的なものだけです。
4Gamer:
分かりました。夏前の実装予定の最後に,レベルキャップ開放があります。上限がBaseLv175まで上がるんですね。
長澤氏:
BaseLv165のキャラを持っているプレイヤーさんが増えており,その割合は以前のBaseLv150からBaseLv165に開放した頃に近くなっています。ただ,前回のBaseLv165に開放したタイミングでは新スキルがあったのですが,今回は新スキルの実装が予定されていません。
4Gamer:
新スキルがないのは,ちょっと残念ですね。
長澤氏:
ええ。ですから,レベルキャップを開放するからには,同時にレベル上げを楽しめるコンテンツを一緒に提供しないといけません。実はそちらの調整に時間がかかってしまっています。いちおう夏以降に予定としていますが,年内には実施したいといった感じですね。
4Gamer:
となると,BaseLv175対応の新ダンジョン,新メモリアルダンジョンが同時に実装されると考えればいいのでしょうか?
山本氏:
どちらかと言えば,レベルアップによるメリットを,という感じですね。例えば,現在,装備品にステータス制限をかけているものがあるのですが,BaseLv165だと1つしかステータスを達成できないけど,BaseLv175になれば2つ以上達成できるというメリットがあります。もうひとつのメリットとして,装備レベル175の装備品が手に入り,より高みが目指せるようになります。こういったものの用意に時間がかかっているんです。
4Gamer:
それらが同時実装されると。
長澤氏:
理想は同時なんですが……。可能な限り近いタイミングで実装したいと考えています。狩り場も多ければ多いほど良いとは思いますが,どれぐらいがプレイヤーさんに一番良いのか検討しているところです。もちろん,プレイヤーさんが楽しみやすいものを模索しています。
中村氏:
一方,レベル上限の解放でモチベーションは上がると思うのですが,攻城戦をやっている人は「またレベルを上げなきゃ」となると思います。リリーフポーションはすでに実装していますが,レベル上限開放に伴って消費数を少なくするように調整しようかと考えています。
山本氏:
古いアイテムは当時の事情に合わせてあるので,現在の時流には合ってないものも多いんです。そういったものを,レベル上限開放のタイミングで使いやすく調整しようと考えています。単純にレベル上限を開放するだけでなく,同時に発生するマイナス部分を消せるように調整を進めます。
4Gamer:
分かりました。ここまでの内容を春から夏に実装したい,ということですね。
中村氏:
狩り場の配置変更や経験値調整は,1年を通して実施することになると思いますが,それ以外のものは夏までに段階的に実装していければと考えています。
4Gamer:
楽しみにしています。そしていよいよ夏には「エピソード:TERRA GLORIA」の実装です。これは「七王家とユミルの心臓」の続編になるのでしょうか。
長澤氏:
はい。「七王家とユミルの心臓」の続編です。前回は「メモリーレコード」から1年半もかかってしまったんですが,今年は1年以内,夏ぐらいまでに実装したいですね。
長澤氏:
「TERRA GLORIA」では,シュバルツバルド共和国が舞台になります。七王家を襲撃した犯人の調査をするため,シュバルツバルド共和国に出向くことになるんですね。ここで,覚えておられるかどうか分かりませんが,大統領が出てきます。
4Gamer:
大統領って,確かクエストで,あちこちに行くように指示してきた人ですよね……たしか。
「しばらく待ってくれ」と言ってから,もう10年ぐらい経つんですけど(苦笑)。
中村氏:
あの大統領は,ストーリー上,敵対組織を排除しようと試みたんですが,腹心の部下に裏切られて権力を奪われ,放心状態だったんですよ
長澤氏:
その大統領派の「秘密の羽」という部隊と,リベリオン,そして襲撃犯の三つ巴の戦いが描かれることになります。規模としては「メモリーレコード」や「七王家とユミルの心臓」を楽しんでくれた方々のためにも,それらと同規模のものを用意したいと考えています。
4Gamer:
どのような内容になりそうでしょうか。
長澤氏:
ここでいろいろと概要を紹介したいんですが,先ほどお話ししたように大幅に内容が変わるかもしれないので,残念ながらまだお話できないんですよ。
4Gamer:
なるほど……ちなみに「TERRA GLORIA」で,王家関連のストーリーは完結するんですか?
長澤氏:
えーと,こうご期待ください!!
一同:(笑)
中村氏:
韓国の実装状況を見ると,ストーリーを終わらせることも,そこから先につなげることもできそうな終わり方になっていますね。Gravity側で,この先のストーリーが公開されていないこともあるので,現状だとどうなるかは僕らにも分からないんです。
長澤氏:
韓国では「TERRA GLORIA」の次は「エピソード17.1」になると思うのですが,まだ実装されていませんから。「TERRA GLORIA」が「エピソード16.2」なので,ここで一段落付いてから,ルーンミッドガッツ王国で,また別のストーリーが走るのではないかと予想しています。
4Gamer:
分かりました。秋にはローカライズマップが実装とのことですが,これも懐かしい感じのコンテンツですね。何年ぶりになりますか?
中村氏:
2011年のデワタ以来になると思います。
長澤氏:
昨年,韓国で実装されたので,満を持して日本でも導入します。西部劇を舞台にしたマップで,サボテンや水牛が銃を持っているなど,見た目もキャラも面白そうなローカライズマップになりそうです。ローカライズマップは先ほどの話のとおり2011年に実装されて以来なので,当時とは同じ規模にはせず,もっと盛った内容にするつもりです。
4Gamer:
街が1つとフィールドが3〜4つ,ダンジョンが1〜2個という感じでしたよね。それ以上の規模になるということですか。
長澤氏:
それにプラスしてアイテムですね。デワタの時にはクリスとクリスエンチャント,ティドゥンなど装備品も少ししかなかったので,アイテムを増やして数か月は楽しんでもらえるような狩り場になるよう,またレベルに関係なく楽しめるような形にしたいです。
4Gamer:
ちなみに,ローカライズマップを調整する裁量権はあるんですか。
長澤氏:
ありますよ。アイテムとかモンスターの数とか,メインアップデートでできることは大体できます。カードをすぐ作ってくれ! というのはちょっと難しいですが,グラフィックスが足りているものなら,なんとかなります。
2017年は,より多くのプレイヤーが集うMMORPGの原点回帰を目指す
長澤氏:
スケジュール上で動いているのはこのような感じになるのですが,実はそれ以外にも動いているものがたくさんあります。それにプラスして,Gravityがいろいろなものを開発しているので,面白そうならスケジュールに挟み込むような形で実装するかもしれません。
4Gamer:
どういったものがあるんですか。
長澤氏:
2016年12月末に韓国で「イリュージョンダンジョン」というものが実装されました。ナイトメアダンジョンの進化版とでもいうべきダンジョンで,フェイヨン地下洞窟に似たマップです。
4Gamer:
マップの形は同じだけど,モンスターが違うという感じですか。
長澤氏:
いえ,マップの地形も違いますし,モンスターもグラフィックスがちょっと違っていたり,新モンスターが登場したり,また結構な数の新アイテムも実装されたりしていました。さらに軽くストーリーも入っていて,これまでとは異なるダンジョンです。我々としても狩り場としてアプローチはしていきたいので,可能なら早いタイミングで実装したいと考えています。
山本氏:
イリュージョンダンジョンには,カードなども同時に入っています。我々もピラミッドナイトメアや時計塔ナイトメアを導入した時に,同時にカードを実装していますが,カード以外にもストーリーやアイテムをプラスしたものを,シリーズ化して実装しようとGravityは考えているようです。
長澤氏:
つい先日,韓国のサクライ (韓国のROテストサーバー)では,ヴァンパイアをテーマにした,第2弾のイリュージョンダンジョンが実装されたみたいです。
4Gamer:
それは続報が楽しみです。
長澤氏:
イリュージョンダンジョンがどうなるかは分かりませんが,それ以上に僕らが2017年に実現したい3つの柱があるんです。
4Gamer:
3つの柱ですか。
長澤氏:
1つめがワールドの人数が減ってアイテムの流通が滞っていたり,GvGの対戦相手がいなかったりという問題の解決です。ここについては,本気でアプローチしたいと思っています。
2つめは,ROの原点回帰ということで,昨年はそれなりに手応えを得られたので,さらに一歩踏み込んで「MMORPGの原点回帰」を狙っていきたいなと思っています。
3つめは,その2つをやりつつ,今年も昨年以上のアップデートを行っていくことです。
4Gamer:
昨年以上というのは嬉しいですが,どのようなものになるのでしょうか。
長澤氏:
裁量権のおかげで,日本向けにいろいろとカルチャライズできるようになりましたが,今後はシステム面でもGravityと共同で企画していきたいというのがあるんですよ。
例えば,ワールド統合やワールドエクスチェンジ(WES)にはそれぞれに利点はありますが,同時に欠点もありますよね。ですから,ワールドを統合するのではなく,すべてのプレイヤーが集まれる特設ワールドを用意して,そこでみんなで遊ぼう,GvGを行おう……というものを実現したいと考えています。まだ企画中ですし,あくまで方向性としての表現ですけど。
4Gamer:
というと,チャンネル制でしょうか。もしくは以前,セカンドコスチューム体験ワールドがありましたが,あれの発展型に近いものですか?
長澤氏:
現在のワールドはそのまま残るので,チャンネル制とは少し異なりますね。自分のワールドでキャラクターを育てて,そこで得られたアイテムなどを持ち込んで,特設ワールドに集まっていろんな遊びができる感じです。体験ワールドの発展型というのは正しいかもしれませんね。ただし,究極まで発展させた形になると思いますが。
中村氏:
特設ワールドへは,自分の意思で移動できることが望ましいので,それを実現させたいです。これが実現できれば,ほかのワールドの方と交流もできるようになりますし,アイテムに関しても慎重に進めますが,仮にそこで露店が開かれれば,ほかのワールドに流通させられます。1つめの問題点はROでは一番大きなものですので,実現できる範囲で優先度を上げたいと思います。
4Gamer:
最終的にはワールドを1つにしたい,というところに行き着くのでしょうか。
山本氏:
今のところは,その構想はありません。
長澤氏:
自ワールド愛が強いプレイヤーさんもいらっしゃいますし,単純に統合すると狩り場も減ったりするので,ボス狩りとかで無用のいさかいが起きかねません。レベル上げにはメモリアルダンジョンがあるので,さほど問題はないとは思うのですが……。
4Gamer:
それもMMORPGらしさと言えば,そうですが……いさかいになるのは避けたいですね。
例えばGvGについて,プレイヤーの「GvGを楽しむために統合してほしい」というご意見がありますが,その本質が「対戦相手が欲しいから」なんです。逆にいえば,豊富な対戦相手がいれば統合しなくてもいいということになります。
長澤氏:
実はこの問題って,日本だけでなく海外でも共通で,世界規模の問題でもあるんです。Gravityでも,プレイヤーさんから指摘されていますし,どこでも同じ問題を抱えているんです。
4Gamer:
なるほど。でも,これが実現するとかなり面白いことになりそうですね。ほかのワールドの方とダンジョンへ行って狩りができたりするのでしょうか。
長澤氏:
狩りに行けるかどうかはまだ分かりませんが,モンスターハウス的なコンテンツを用意して,集結した全ワールドのプレイヤーとレイドモンスターを倒すといったMMORPGらしい遊びを考えています。
山本氏:
モンスターハウスは現在,ワールドごとに参加人数が異なります。でも,特設ワールドのモンスターハウスは全ワールドのプレイヤーが楽しめますよ,というシステムとなれば,集まって楽しめます。
そこで得たアイテムを自ワールドに持って帰れるようになれば,PvEとしては楽しめると思いますし,これだけ人数が集まるならもっと大きくて新しいPvEコンテンツを作れるよね,となります。そうした循環が成立すれば,MMORPGらしい大規模な遊びが提供でき,長澤が2番めに挙げていたMMORPGらしさにつながるはずです。
4Gamer:
システム的にかなり大変そうな感じですが,期待したいです。ちなみに,いつ頃の実装を見込んでいるのでしょうか。かなりの規模になりそうなので,時間はかかってしまいそうですが。
長澤氏:
詳しい実装時期はなんとも言えませんが,我々としては年内に実装したいと交渉しています。もちろん,Gravityの開発速度などにも関わってくるので,正確な時期は僕らも読めません。仮にシステム的に無理だとしても,何かしらの手段を模索してアプローチしたいと思います。もしこれが実現可能だという回答がいただけたら,ロードマップにある中から,いくつかを遅らせてでも,こちらを優先することになるでしょう。
また,ロードマップに入れていない案件として,ドラム族という新しい種族についても作業を進めています。ここもGravityの開発工程にかかってくる部分で,少し時間を要しますが,可能であれば2017年中に実装できればと思っています。
中村氏:
実はもう,雄一郎氏にイラストを描いてもらっています。
4Gamer:
早いですね! まだ先の話でしょうに(笑)。
実装できるよ,という時期が具体的になれば,すぐに動ける体制が整っているので(笑)。韓国側でもまだキャラクターの性能や装備品など,調整しているところなので,それが落ち着いてきたら「これをどう日本に実装するか」を決めることになると思います。
長澤氏:
見た目も可愛くて,スキルも結構強く,専用武器なども持っています。韓国では初心者向けのハイブリッド職業という形で実装したのですが,レベルを175まで拡張したあとに,3次職よりもHPが多くなったりしたんです。あちらでは実装後に調整していく傾向があるので,それによってコンセプトがどんどん変わってしまうんですよ。
4Gamer:
コンセプトがコロコロ変わると,どの時点のものを日本に実装するかの判断が難しそうですね。
長澤氏:
ええ。ですから,ある程度落ち着いてきたところで,それをベースに日本でコンセプトを立てていけばいいかなと考えています。先日,台湾でもドラム族が実装され,僕らとしてもそろそろ本格的に動こうかというところです。
4Gamer:
とはいえ,ロードマップを見ると,スケジュールがもういっぱいいっぱいという感じですけど。これに,定例とも言える季節イベントなどもありますし,毎月何かしらのイベントは走っていますよね?
中村氏:
そうですね。毎年「この時期にはあのイベントやるよね」とプレイヤーさんも楽しみにしてくれているので,季節イベントに関して大きくいじることはないようにします。
長澤氏:
それと,ここしばらくプレイヤーさんから,直接声を聞く機会がなかったので,規模の大きなアンケートの実施を予定しています。プレイヤーの皆様の情報,ご意見をいただいて,それをアップデートに活かせればと考えています。アンケートの内容がアップデートに影響することもあるかもしれません。
4Gamer:
アンケートの実施はいつぐらいに始まるのでしょうか。
中村氏:
2月上旬頃を予定しています。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,4Gamer読者へのメッセージをお願いします。
中村氏:
2017年は,昨年以上の内容を提供したいと思っています。2017年は15年周年を迎える節目の年でもありますし,ここまできたら「MMORPGと言ったらROだよね」と言えるくらいのタイトルにしたいです。
少し離れていた人が戻ってきたときに,「そう,あの頃はこれが楽しくて遊んでた」ということを体験できるような,内容が盛りだくさんの1年にしたいと思っています。
長澤氏:
14周年を迎え,そして15周年に向かって進んでいけるのは,ここまで支えてくださったROのプレイヤーさん達のおかげだと思います。皆様にお応えするためにも,ROとして,MMORPGとして面白いものを追求して,より楽しんでもらえるものを実現していきたいと思います。これからも応援をよろしくお願い致します。
山本氏:
13周年のときにプレイヤーさんと一緒にアイテムを作ろうというオフラインイベントがあったのですが,そのときにも「ワールド統合をしないんですか」とか「ワールドエクスチェンジしないんですか」という質問をいただきました。
あれから本格的に新システムについて企画を詰めていた結果,2016年を丸々使ってしまったんです。実現させるためには,もう少しお時間をいただいてしまいますが,必ず良いものをお届けしますのでお待ちください。
直近ですと,僕もテストプレイに参加している「夢幻の迷宮」が,とても面白いです。かなりプレイヤースキルが求められるコンテンツなので,腕自慢プレイヤーさんはぜひチャレンジしてみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
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