インタビュー
[インタビュー]「ラグナロクオンライン」の現行メインストーリーがついに完結? 運営スタッフに2025年のロードマップを聞いた
2024年も新エピソードの実装などがあった半面,予定されていたアップデートやコンテンツの一部が実装されなかったということもあった。
そこで,毎年恒例となっているRO運営スタッフの中村聡伸氏と山本兼寛氏へのインタビューで,2025年のロードマップとともに,そのあたりの理由も含めて聞いてみることにした。2024年に起こったこと,そして2025年にどんなことを為そうとしているのか,その内容をお届けしよう。
4次職向けのコンテンツ拡充に邁進した2024年
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは2024年の振り返りからお願いします。
2023年末に拡張4次職が実装され,各職業が横並びで同じように成長できるようになりましたので,2024年は4次職の拡張,4次職向けのコンテンツの実装に注力していました。
具体的には,4月に「EDDA生体工学研究所」と「並行世界のヒメルメズ」を4次職用のものに拡張アップデートし,季節イベントなどでも従来のものに加えて4次職向けのクエストを入れています。
続けて8月にはレベルキャップの開放を行い,BaseLvの上限が260,JobLv55が最新の状態となっています。これに合わせて4次職実装後にあまり使われていなかったスキルなどの調整を実施しました。一部スキルは使い方がだいぶ変わりしましたが,基本的にはほぼ上方修正されました。
4Gamer:
去年の話にあった“職業改善プロジェクト”が,そのスキル調整にあたるのでしょうか。
中村氏:
そうです。下方修正がほぼない調整で,新しい遊び方ができる形のアップデートとなりました。反響も良くて,“こういうスタイルで遊べるようになった”というご意見をいただいてます。
同時にβテストのころからあった重量ペナルティの緩和をようやく行い,所持限界量50%以上でペナルティが発生する状態だったのを,70%以上からにしました。
4Gamer:
職業や育成タイプにもよりますが,狩りに行くためにギリギリまで回復アイテムを持ち歩いて,現場ではドロップアイテムを拾っていると,簡単に50%を超えてしまっていました。
中村氏:
また,アップデートに合わせて,初心者を4次職に転職するまでのサポートするイベント「ミミミのミッションマスター」を更新してアフターストーリー的なものを追加し,グレイウルフシリーズや雪花シリーズといった装備アイテムを選んで獲得できるようにしました。
ミミミのミッションマスターだけだと装備面が不安だったので,そこをケアする形です。
4Gamer:
4次職実装からもう3年ですから,4次職も一般的になってきて,その先をということですね。
中村氏:
あと忘れてはならないのが,夏のイベント「サマーバケーション2024」です。日本で大人気の教皇様も出る,ウォーターパークのようなイベントで,韓国での実装直後にデータを請求し,超スピードで開催にこぎつけました。
山本 兼寛氏(以下,山本氏):
あれは夏を逃したくなかったので,間に合うか瀬戸際の攻防でした。
中村氏:
夏イベント後の9月には,エピソード「死なない者」を実装できました。バゴットの支援によって巨大な力を得たラスガンドと戦うというストーリーで,ラスガンドの封印には成功しました。
ですが,彼の力を完全に削ぐことはできず,日々少しずつ彼の力を削るぐらいしかできない。このままだといつか復活してしまうかもしれない……という形で次に続く終わり方となってます。
4Gamer:
幻想叢書は,昨年のインタビューで残りが2つあるとおっしゃっていましたが,1つ増えていました。
中村氏:
「私と私」「アカデミーで私ひとりが純粋人間」,そして「クリトゥラ業務ガイドブック」の3本ですね。これらは既存の幻想叢書から1ステップ上がった形で,今までのものがBaseLv200から220向けでしたが,BaseLv220〜240向けになっています。
1キャラクターで3つ遊ぶと1日あたり必要経験値の20%が入るので,日々の育成の底上げなどで使っていただけるようにしています。
あとは「英雄の痕跡」シリーズに「悔恨の墓」が実装されました。「呪いの剣士」の続編にあたるストーリーで,超高難度メモリアルダンジョン(以下,MD)という形で提供させていただきました。
4Gamer:
お聞きしていなかったものが登場して,ちょっと驚きました。
中村氏:
BaseLv上限が上がって,Lv260に達成したプレイヤーがチャレンジできるコンテンツを実装しておきたかったという事情もあるんです。
4Gamer:
なるほど。そして,22周年のアニバーサリーイベントへとつながるわけですね。20周年も力が入っていましたが,あれと同じぐらいの規模感になっていますよね。
中村氏:
今回のテーマは“テーマパーク”で,20周年のときよりも広くなってますよ。
エリアもエントランスを含めると6つあって,マップ内にこっそり書かれているメッセージやギミックを探して楽しめます。過去のアニバーサリーイベントから復刻したものもあって,遊べるアトラクションの数もこれまでの3倍以上です。
実装初日は「えっ,どれから遊べばいいの?」なんて反応もありました。かなり遊びごたえのあるイベントなので,今回は期間も長くして年明けまでお楽しみいただけるようなっています。
4Gamer:
そうすると,来年(2025年)はお正月イベントは行われないのでしょうか?
中村氏:
いえ,お正月はお正月で開催はします。お正月イベントとアニバーサリーイベントの同時開催みたいな感じですね。
アニバーサリーイベントとしては,もともとROも遊んでいたという「料理研究家リュウジのバズレシピ」コラボも行いました。リュウジさんにROに出てきそうな料理を作ってもらい,それをゲームに実装するという,普通とは逆のアプローチとなっています。
よろしければぜひ,調理動画も見てください。
4Gamer:
そういえば,4次職で3次職以下のコスチュームが着られるシステムはどうなりましたか。
中村氏:
年末ギリギリになってしまいましたが4次職が1つ下の職業コスチュームになれる形で,年内実装できそうです(※12月17日に実装)。
想定外のトラブル!? 露店代行サービスで発生したトラブルの真相とは
4Gamer:
こうしてまとめると,多くのアップデートが行われてますね。一方でYggdrasillワールド関連は,あまり動きがなかったように思えます。
中村氏:
2024年の始めごろに露店代行サービスで不具合が発生しまして,Zeny(ゲーム内マネー)が意図的に増やされてしまい,その確認と回収作業にずっと山本が付きっきりだったからなんです。
4Gamer:
それはまた大きなトラブルですね。
山本氏:
はい。露店代行システムを使って不正にZenyを増やされてしまったのですが,これが日本だけの話ではなかったんです。調べてみるとほかの国でも行われていて,全世界を巻き込んだ大事件となりました。
発覚後,日本では対象アカウントをすべて停止し,同時に露店代行システムも停止することとなったんです。
4Gamer:
不正に増やされたZenyは回収できたのでしょうか。
山本氏:
9割以上は回収できました。
4Gamer:
残り1割の回収の目途はどうでしょう。
山本氏:
残りの1割は,現時点で受け取った不正Zenyよりも少ないZenyしか持ってない回収前に休止してしまったアカウントや,不足分を貯めるごとに回収しているアカウントなどありますが,回収できる見込みです。
中村氏:
状況を見ると,RMTで何かを受け取った形跡もあります。実際に凍結された対象者から「RMTをしました」という告白もありました。
4Gamer:
あぁ,RMTも絡んでいるんですね……。
山本氏:
これは体感ですが,RMTに対する心理的なハードルが今は下がっているような印象を持っていますね。
4Gamer:
ロールバックは考えなかったのでしょうか。
中村氏:
ロールバックは可能な限りしないようにしています。なぜかというと,ROは非常にランダム性の高いゲームだからです。巻き戻した結果,成功していたものがもう1回成功するとは限りませんし,皆さんの大切な体験をなかったことにはしたくない。ですから,もう絶対にダメだと思ったとき以外はロールバックしない,という考えを守っています。
4Gamer:
そうなるとログを洗い出して,それぞれ対応して回収することになるわけですから付きっ切りになってしまいますね。
中村氏:
ただ,今回は我々の油断もありました。長らく今回のような大きなトラブルがなかったため,トラブルへの対処法も古くてカバーしきれなかったんです。スタッフの世代交代などもあって,対策方法がうまく継承できていなかったのも一因でした。なので,今回のトラブルを機にあらためて不正対策環境を構築,強化できたのは,不幸中の幸いと言えるかもしれません。
山本氏:
最近はBOTもまた増えていて,そちらの取り締まりも強化しているところです。潰しても潰しても出てくるので根本的な解決は難しいのですが,プレイヤーの皆さんにご協力をお願いできればと思っています。
中村氏:
僕らもROを盛り上げようといろいろとやってきて,20周年ぐらいからまた盛り返してきてはいるのですが,それがBOTをはじめとした不正を呼び込んでいるという面もあるんです。
4Gamer:
クライアントのアップデートが多かったのも,不正対策の一環だったんですか。
中村氏:
それもありますが,より便利に遊べるようにUIの更新とかシステムの改修を積極的を行った結果です。
山本氏:
システムのアップデートとしては,メモリアルダンジョン(MD)がありますね。これまではMDの生成時間を短くするところに注力していましたが,2024年はそれと並行で作業できるようにしました。
中村氏:
とくにBreidablikワールドのように人が多いサーバーですと2時間待ちというケースもありました。生成時間を短くするのにも限界がきていたので,サーバーを強化して,さらに並列処理できる容量を増やしました。つまりMDを生成できる数を増やしたうえで,処理が飽和しないようにという対策を行ったわけです。
4Gamer:
その効果はどれくらいありましたか。
中村氏:
ほかのワールドですとあまり実感はできないかもしれませんが,1日に100,200と生成されるBreidablikワールドでは「あれ? なんか早くなっている」みたいな声を聞きますので,一定の成果があったと思っています。
山本氏:
ただ生成できる数はもう限界に近いので,また別のベクトルでの対策も考えています。
中村氏:
MDの生成数を減らすという作業も行っていて,例えばいくつかの幻想叢書は「文庫版」というMDを使わずに通常マップで終わらせるバージョンの実装を行いました。文庫化と言っても内容はほぼ同じで,MD生成の待機時間もなく,すぐに遊べます。
4Gamer:
では,現状のMDも同じ形に移行していくのでしょうか。できるものとできないものがあるとは思いますけれど。
中村氏:
幻想叢書はストーリーがメインとなり,戦闘がそこまで多くないコンテンツなので,通常マップにしてもとくにプレイヤー同士のバッティングは起こりません。ただ,モンスターを討伐するタイプのものとなると難しいですね。昔のモスコビアのようになってしまって。
4Gamer:
モンスターの取り合いになって,クエストが全然進められないというやつですね。イベントでNPCの前に長蛇の列ができていたこともありました。
七王家・イスガルド編がいよいよ完結!
中村氏:
それでは,2025年のロードマップについて話を進めていきます。まずは通常ワールドのアップデートで,高レベル帯向けのコンテンツ「生命の殿堂」を実装します。
どういった内容かと言いますと,ルティエの街に次元の狭間が出現し,オスカーとレティシアが先行して調査に向かったらしいという話を聞いて,冒険者の皆さんもルティエに向かいます。
そこにはリゲルという人物がいて,冒険者は彼女に協力してMDに挑むというストーリー展開になります。リゲルという名でピンとくるプレイヤーさんもいると思いますが,リゲルは「星座の塔」に出てきた「ベラルギウス」と同じ「星座」と呼ばれる強大な力を持つ人物の1人です。次元の狭間が舞台になることもあり,別次元のリゲルも登場します。
4Gamer:
並行世界を股にかけたストーリーという感じですね。
中村氏:
見た目は同じだけど,性格がどこか違うといったキャラが出てきて,同時に存在するとお互い問題が発生しそうだ,ということで問題の解決に向かうというストーリーになります。
4Gamer:
実装時期はいつになりますか。
中村氏:
実装時期は1月予定なので,おそらくインタビューを掲載した翌週か翌々週に情報を出せると思います。
続いてこちらも高難度コンテンツになりますが,「バルムントのバイオスフィア(仮称)」です。
大賢者とも呼ばれているバルムントですが,本人不在のなか彼の邸宅の調査を進めていましたが,そこで新たな空間実験施設へのマスターキーが見つかります。
それが「バルムントのバイオスフィア」という研究施設で,自然環境でモンスターがどんなことをしているのかを観察する施設としてバルムントが制作し,そこにモンスターを放り込んだまま封印し,放置されていたんです。
当然メンテナンスなども行われていなかったのですが,モンスターは過酷な環境を生き抜いてしまいました。
その結果,とんでもないモンスターに進化を遂げてしまい,手に負えないという状況になりました。そこで調査兼討伐をするために冒険者プレイヤーはバイオスフィアにチャレンジするというコンテンツとなります。
4Gamer:
これはステージが4つあるコンテンツなんですか?
中村氏:
4つの研究テーマに沿って作られたバイオスフィアごとに極まったモノが現れるという設定です。このコンテンツはMDではなく通常マップとして実装しますので,皆さんが協力して戦うシーンも出てくるかもしれないです。こちらの実装時期はだいたい夏予定で,暑くなる前ぐらいに実装しようと思っています。
4Gamer:
ちなみにバイオスフィアは,狩場として実装するのでしょうか。
中村氏:
狩場として入れます。ただ,けっこう難度が高めの狩場になると思います。「生体工学研究所:獄」が実装された当初のように,強いモンスターを頑張ってみんなで倒すみたいな形に近く,プレイヤーの皆さんが本気で挑む最高難度のコンテンツになると思います。
あとはエピソードで,題名は「英雄の時代(仮称)」です。今年(2024年)に実装した「死なない者」では,ラスガンドを封印したものの,彼がいつ封印を破ってくるか分からない状態になっています。このままでは危険なので,なんとか彼の力を削ぎ落としたい。
4Gamer:
ラスガンドを倒してしまうのは不可能なんですか。
中村氏:
ラスガンドの力はヨルムンガンドの力の一部を得たものですから,いまの状況ではもう倒すどころではありません。
ならば,そのヨルムンガンドを封印した人たちから何らかのヒントが得られるかもしれない……さて,ヨルムンガンドを封印したのは誰か?
そう,ルーンミッドガッツ王国の建国に関わった七王家の方々です。
4Gamer:
ここにきてルーンミッドガッツに話が戻ってくるんですね。
はい。正確には七王家のストーリーからここまでは,一連の流れでつながっているんですよ。そもそも「七王家とユミルの心臓」は,次の王様を決めましょうというストーリーで,王位継承の証となる「テラグローリア」というアイテムをハートハンターに奪われる。
4Gamer:
それを奪還しにアインブロックやラヘルへ向かいましたよね。
中村氏:
そこで奪還しに行った相手が,実はずっと悪さをしているイルシオンという組織に関わっていました。イルシオンはバルムントの技術などを奪おうと暗躍していて,一部の研究者がイスガルドへ逃げましたが,その結果,ラスガンドに技術供与をしたことでイスガルドでも騒乱が起こります。
4Gamer:
それを追っかけてプレイヤーはイスガルドへ,というのが大きな流れですよね。
中村氏:
ようやく追いついたところでラスガンドが大暴れし,それを収めてひと段落というところでしょうか。
ここで1度原点に戻り,過去の英雄たちに会います。彼らが活躍した時代であれば,ヨルムンガンドの力を封印する方法が分かるかもしれないというところで,ストーリーが始まるんです。
4Gamer:
そう簡単に過去に戻れるんですか。
中村氏:
次元の狭間をうまく利用して過去に戻る,と。もっとも,それは並行世界の可能性もありますが。
もともと「英雄の痕跡」シリーズも過去の英雄が活動していた時間に巻き戻るというか,過去に戻って体験するという設定です。その次元のパターンを使って過去に戻るのですが,歴史を書き換えられるわけではない,ということはある程度結論が出ています。
4Gamer:
なるほど。結果は変えられなくても,封印した方法は分かるはずだと。
中村氏:
本当に藁にもすがる思いで時代をめぐるという形ですね。イメージイラストには10人のキャラクターが描かれていますが,それぞれのキャラ上にエンブレムが描かれています。これが七王家のものになっていて,「七王家とユミルの心臓」に登場したキャラの祖先にあたる人物です。
イスガルドには8つめの王家と呼ばれている方々が存命しています。封印をつかさどるために彼らは時が止まった状態になっているという設定で,彼らの話を聞きつつ,当時の戦いを実際に体験するといった流れになります。
4Gamer:
時空の狭間から向かった過去の世界は,完全に新規マップになるのでしょうか。
中村氏:
新マップですね。それもあって,ローディング画面は新マップをモチーフにしたデザインになってます。
ストーリーについてはこれから翻訳を進めていくのですが,「七王家とユミルの心臓」から始まった一連の集大成というか,完結するストーリー展開になっています。実装時期は2025年の秋ぐらいになる予定です。
4Gamer:
これでメインストーリーは完結ということになるのでしょうか。
中村氏:
「七王家とユミルの心臓」が始まったのが2016年で,8年かけて七王家・イスガルド編が終わることになりますが,韓国では新たな物語の制作が始まっています。
エピソードはストーリーも作り込まれているので,楽しみにされている方もいらっしゃいますし,サイドストーリー的なものも公開できるものは見せていけたらと思っています。
4Gamer:
「英雄の時代」は何レベルから参加できるコンテンツになりますか。
中村氏:
「死なない者」の続きになるので,少なくとも死なないものをクリアするレベルになります。BaseLv240が「死なない者」のスタートレベルだったので,少なくともそこより高くなりますね。
4Gamer:
ストーリー的なものと言えば幻想叢書もありますが,あちらはもう終わりなのでしょうか。
中村氏:
まだ実装していないものがあるので,随時入れていく予定です。また,先ほどのMD対策として,可能ならば文庫化も進めていきたいと思っています。季節イベントに関しては,基本的に今年と同じものは最低でもやります。
4Gamer:
まったく同じものをやるわけじゃないですよね。
中村氏:
もちろん,新要素の追加も行います。先ほど最低でもと言いましたが,余裕があれば新規イベントにも手を出したいですね。
4Gamer:
イベントと言えば,前回のインタビューで話していた「深淵の回廊」や「コーデバトル」は実施できていませんでした。
中村氏:
先のトラブルに巻き込まれて延びています。準備は進めているので,できるタイミングになったらやりたいです。
山本氏:
丸々1年,不正対策やシステム改修などの案件を全部やっていたので,結果として実装しようと考えていたコンテンツに手が回りませんでした。
中村氏:
でも,その分だけ安心して楽しんでいただける環境は作れたと思っています。何か見つけたときは,すぐにお知らせいただければ迅速に対応できるようになりました。
2024年を自己採点すると,実装の割合で言えばだいたい70点ぐらいじゃないでしょうか。相変わらず自己評価が高いと言われそうですが(苦笑)。
Yggdrasillで予定されていた実装物は2024年からスライドに
4Gamer:
ところで,山本さんの担当するYggdrasill関連の話題ですが……。
山本氏:
2024年はほとんど何もできなくてですね……。
4Gamer:
そうですよね。でも,RJS(RJS RagnarokOnline Japan Siege wars)は1回だけですが開催できていました。もしかすると,いつもより開催期間が長かったのはトラブルの影響だったのでしょうか。
そうです。問題が発覚する前だったので開催はできましたが,トラブルの影響で期間が延び,その後は不正対策の結果,別のところで問題が発生したので1回だけの開催となりました。
あとは,レベルキャップ開放に合わせて攻城戦のルールをいじったりとか,ティアマト攻城戦の人数制限など,細かいところに手を入れていたりとかしていたら開催する余裕がなくなってしまったんです。
中村氏:
ティアマト攻城戦は経験値が稼ぎやすいところもあって,レベル上限開放後に人気が増しました。しかし,人が多すぎて身動きが取れないみたいなことがあったので,やむを得ず人数制限を設けたんです。
4Gamer:
MDのように生成して増やすといったことはできなかったのでしょうか。
中村氏:
もともと3ラインあるんですけれど,人数が多いと有利になるので1つに集中していました。
4Gamer:
なるほど。1つに集まればより確実にクリアできるし報酬も増える,と。
山本氏:
そういうわけで,2025年は2024年にできなかったことをやることがメインなります。
まずRJSですが,トラブルが発生するとそちらにリソースを取られてしまうので,いっそ思い切って半自動化します。現在は人の手がけっこう入っているのですが,そういったものを一旦取り払って,参加申請から終了後の報酬の支払いまで自動化し,終わったら次の大会に切り替わるようなものを考えています。
これならば,トラブルがあったとしても大会自体は年に3回行えます。期日としては,1月末スタートで,5月と9月に切り替えで大会を実施する予定です。
4Gamer:
スタートする期日はなにか理由があるんですか。
山本氏:
ROプレイヤーの皆さんは年齢層が高くなっていることもあって,家族サービスとかもあると思います。休みは休みでしっかり取っていただきたいので,そこを避けた結果,このような日程になりました。
4Gamer:
RJSには参加登録すれば,自動で出られるのでしょうか。
山本氏:
参加登録などのフローは変わらないですけれど,戦績を自動的に集計管理して,終わったら報酬アイテムを渡すところまでパッケージングしたものを組んでいます。
4Gamer:
自動化システムはもう完成しているんですか?
山本氏:
ほぼ終わっています。何もなければ1月末に実装する予定です。ちょうど1月末に個人報酬の切り替えがあるんです。それも1月,5月,9月に切り替えるようにして渡すという形でやっていきたいと思っています。
4Gamer:
分かりました。バトルコロッセオとモンスターハウスについても教えてほしいのですが。
山本氏:
そうですね。その前にもう1つ新しいものがありまして「ヘロスリア攻城戦」というのが韓国で実装されて,これを日本に持ってきたいと考えているところです。
4Gamer:
現在の攻城戦とどう違うんですか?
山本氏:
極端な話をすると日本人向けではない攻城戦なんですよ。簡単に説明すると,だだっ広いマップの中心にエンペリウムがあり,それに向かって四方八方から敵が入ってきて防衛側が守るんですが,まず守れない(苦笑)。
4Gamer:
それは1ギルド対1ギルドで行うのでしょうか。
山本氏:
1ギルド対複数ギルドですね。
4Gamer:
それはどう考えても守備側が不利というか,攻城戦になっていないような?
山本氏:
そうですよね。でも,これが海外で成り立っているのは,エンペリウムをすぐ壊すのではなく,そこにいるほかのプレイヤーを倒して“●●が××を討ち取った!”というのを楽しんでいるからなんですね。
最終的にはエンペリウムを獲りにいくんですけれど,戦争時間中ずっと守れるわけがないんだから,自分は何人倒したとか自分はだれだれから守り切ったというのを楽しむ文化で,日本には合わないかと思っているんですね。
中村氏:
日本では防衛を主体に置き,攻城戦における攻めと守りが楽しみの中心なので,現在の攻城戦を楽しんでいる層にはちょっと受け入れにくいだろうと思っています。
4Gamer:
聞いている内容だと,それをなぜ日本に? と単純に思うのですが。
山本氏:
プレイスタイルの違いはありますが,システムは非常にいいんです。これに付随してギルドスキルの改善や,装備品のレンタルシステムが実装されていて,このあたりの仕組みが日本の攻城戦に合わせられるんじゃないかという理由で実装を考えているんです。
4Gamer:
攻城戦そのものというより,付随するシステムが理由になるわけですか。レンタルシステムは日本にもありますよね。それとはまた別に導入するということなのでしょうか。
中村氏:
ヘロスリア攻城戦とパッケージング化されているレンタルシステムは,サーバーの機能として持っているんです。現在の日本のものは,NPCと会話をすることによって,期間限定アイテムを渡すというプログラムを組んで,無理やり実現したものなんです。
山本氏:
プレイヤーさんから見ると,現在のレンタルシステムとそう変わらないかもしれませんが,僕からするとかなり期待しているシステムです。これが運用できるようになると,例えば全然装備を持っていないけれど攻城戦をやりたいというプレイヤーに,そのまま装備を貸し出せるんです。
4Gamer:
そうなれば攻城戦への参加のハードルが下がりそうですね。実装はいつを考えているのでしょう。
山本氏:
実装は4月から5月ぐらいを考えています。システム自体を取り寄せて,入れられるかを確認しますが,その結果バランスが大きく変わってしまう可能性もありますので。
4Gamer:
貸し出せるアイテムなどで,ですか?
山本氏:
アイテム自体は調整できるんですけれど,ギルドスキルが新しくなったときなどに変化するであろうバランスです。もちろん,いけそうだとなったらヘロスリア攻城戦自体も実装するかもしれません。
4Gamer:
攻城戦としてはともかく,タワーディフェンス的なものとしてイベントで使えそうな感じはしますね。
中村氏:
PvEだと逆に面白そうだと思える部分はありますね。PvPのスタイルとマップが日本の環境だと合っていないだけで,使えるところはあると思っていますので。
山本氏:
そのあたりを入れたあとに今の攻城戦プレイヤーの皆さんがもらっている報酬に調査を入れて,調整する予定です。
4Gamer:
4月,5月のシステム導入と同時に行うわけじゃないんですか。
山本氏:
調整前にレンタルシステムの具合を見たいのと,それによって新規参加されるプレイヤーがどれぐらいいるかとかというのも確認したいんです。報酬の変更はそのあとになります。
というのも,不正ではないですけれど,ギリギリを詰めてくるプレイヤーさんはやっぱりいて,対人戦なのに対人しない,「何もせず得しよう」で報酬が手に入るのはよくありません。
そのあたりの調査を含めての調整になります。報酬自体も古くなっている部分があるので,その見直しという面もあります。
中村氏:
ただ,あまりガチガチに規制するのも違うとは思ってはいるんです。
いまでも「特定のスキルを組み合わせると面白い動きをするけれど,やっていいんですか?」という質問をいただくことがあります。運営としては白黒つけないほうがいいと思っていますけれど,ルール上,使っていいか分からないから問い合わせるみたいな流れになっているんですね。
積極的にみんながやるようであれば少し問題があるねとなりますが,ときどき発生してしまう程度のものであれば,そこはしょうがないかなと。
4Gamer:
プレイヤーとしては日常的に使ってもいいものか,それが実はバグ使用で突然BANされないかといった恐怖がありますから。
中村氏:
BANとかアカウント凍結とかをいきなりやる気はありません。問題が本当に発生したら,まずはルールかシステムでそれを止めます。そのうえでやっていたプレイヤーをいきなりBANはありえません。
でも,お墨付きがほしいと言われるとダメですと返す以外ないので,節度を持って遊んでいただくのが一番いいのですが。
4Gamer:
では,その節度とはどの程度なのか,となるんですよね。
山本氏:
とは言っても,基準を決めるとギリギリを攻めてくるプレイヤーさんはいますからね。我々は決めようと思えば決められますが,暗黙のルールじゃないですけど,ルール内で仲良く遊んでほしい。ふわふわしている部分は遊びとして残さないと面白くないので,あえてしているところでもあるんです。
4Gamer:
たしかに,プレイヤーの遊びとして工夫できる部分がなくなるのはもったいないですから。
話題を戻して,2024年に再開できていないバトルコロッセオについてですが,いかがでしょうか。
山本氏:
はい,2025年で本当に再開します。実はエンチャント材料をバトルコロッセオの報酬にしていたのですが,あそこまで高騰するとは思わなくて……。
4Gamer:
それで再開のタイミングを逸したわけですか。
山本氏:
ただ,もっといろいろな物を渡して,かつコロッセオでのみ手に入るアイテムを増やそうとも思っていたので,そちらを行って再開したいと思っています。
4Gamer:
システムの開発は終わっているのでしょうか。
山本氏:
終わっています。あとは止まっていた期間の報酬アイテムをどうするか,レンタルシステムのアイテムをどうするかをまとめれば,すぐにできます。
4Gamer:
そのレンタルシステムは,先ほどのヘロスリア攻城戦とセットになってるものですか。
山本氏:
はい。流用できそうなら,そのまま使うつもりです。プレオープンは,遅くても7月ぐらいに,早ければもっと早くに入れたいですね。
4Gamer:
分かりました。では,Yggdrasill版モンスターハウスはいかがでしょう。
山本氏:
モンスターハウスは,バトルコロッセオのあと,10月ぐらいを目処にしています。難度にはBaselv260ぐらいの人が参加するコンテンツになる予定です。InfernoとUltimateに関してはそんな感じで,Extraに関してはそれよりも難しくなるでしょう。
中村氏:
モンスターハウスは,もともと多人数で攻略するコンテンツなので,リーダー的なプレイヤーさんがいれば,レベルが多少足りなくとも途中までは行けるくらいにはなりそうですね。
山本氏:
戦えなければ戦えないなりに,例えばギミック処理などの役割を作ろうと思っています。高レベルのプレイヤーさんが主力になりますが,そこに達していなくても参加できるコンテンツにするつもりです。
4Gamer:
せっかく新しくできたのに行けないんじゃ,ちょっと寂しいですからね。ところで,前回も手付かずの状態と話していた「不夜城」はどうなりましたか。
山本氏:
ご期待されている方がいらっしゃるのは重々承知ですが,2025年は難しいです。僕としても作りたいのですが,先にシステム回りを強化したいということもあります。
中村氏:
いまのうちに,いろいろ足りなかった部分を改修したいというのがあるんです。不夜城にも力を入れたいのですが,ほかの力を削らなければいけなくなってしまいますので。
2025年は4次職向けのパッケージを発売予定。新職業の情報もチラ見せ
4Gamer:
ロードマップは以上ということなので,質問したいことがあるのですが……2023年にGravityから「5次職とは違う新しい職業を作りたい」という話が出ていたと思います。その後,どうなったのかなと気になっていました。
中村氏:
実はGravityから出していい写真を一枚もらっています。最後にとっておきとして出そうと思っていたんですけれど(笑)。これは,海外で開催されたVIPユーザー向けのイベントで公開された画像です。
4Gamer:
ずいぶんと人数がいますけれど,これで1職業なんですか?
中村氏:
いまのROは,普通に職業を入れたら4次職相当まで入りますので。ただ,この画像がどういう意図で並んでいるのか,1つの職業なのかも聞いていなくて「そこから読み取れそうなものは読み取っていただいてけっこうです」とのことです。それに対して私は正解,不正解を言えない立場ではありますが(苦笑)。
4Gamer:
そういえば4次職が実装されて3年経ちますが,各4次職向けのスターターパックはリリースされないのでしょうか。
中村氏:
職業パックは2025年に出せそうです。3次職のパックでは全部を装備すると特定のスキルが強力になって,それをメインにして戦えるという感じのパッケージにしていました。
ですので,4次職に転職したらこのスキルメインで遊んでみてくださいというのをご提案できる,我々のお勧めの1つをパッケージとして販売する形になると思います。
4Gamer:
3次職パックを使っていると,4次職になっても少し力不足な感じはありましたし,広告で「4次職から遊べる」とあるので,そろそろ出るのかなと思っていました。
中村氏:
ただ,全職業まとめて出すか,1職ずつ順に出すかはまだ調整中です。
なお,職業パックとは別に「全力攻略パック」というのも出ていて,こちらはそれぞれのエピソードクエストが始められるレベルまでのレベルアップチケットが付いていますが,装備は入っていません。どちらかと言うと,2キャラめ,3キャラめ向けといった扱いで,アイテム面が若干寂しくなっているんですね。
ですから,4次職パックとは差別化できているので,こちらも購入をご検討いただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございます。では最後に,プレイヤーへのメッセージとして2025年の抱負をお願いします。
山本氏:
Yggdrasillに関しては,2024年にほとんど実装できず申しわけありませんでした。2025年は2024年に予定していたものの実装を目指しつつ,同時にシステム面の強化を引き続き行っていきたいと思っています。導入できるコンテンツ数はそんなに多くないかもしれませんが,そのぶん楽しめるものにしていきますので,よろしくお願いします。
中村氏:
2024年は通常ワールドに新しいコンテンツがどんどん入ったので,プレイヤーさんも十分に楽しんでいただけたと感じています。
22周年を迎え,歴史のあるタイトルということで,新しいものだけでなく古いものにも触れていただける機会を設けたいと考えていて,過去のコンテンツのアナザー版を入れられないかGravityと相談しています。それらが実装できるかはまだ未定ですが,このコンテンツが本当に好きでROやっていましたというプレイヤーさんが,戻ってくるきっかけにればと思います。
皆さんも,そういう懐かしいものでリニューアルしてほしいものがありましたら,ご意見を寄せていただけるとGravityに新たな提案ができますので,ぜひお願いします。
そしてもう1つ,過去にROをやっていたと公言している著名人や配信者さんがいましたら,自薦他薦問わずお知らせいただけると,もしかするとコラボできるかもしれません。そういった方も,ご連絡いただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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