インタビュー
「リネージュ」20周年記念。新旧プロデューサーに聞く,長く愛され続ける理由と思い出のよもやま話
そんな祝賀ムードも落ち着きを見せているところだが,今回4Gamerでは日本サービスチームにて運営プロデューサーを務めるイ・ジョンウォン氏と,2018年まで同職に就いていた川南 巌氏に話を伺った。オンラインゲームの黎明期から続くMMORPGの思い出,長期にわたって愛され続けるリネージュの面白さ,そして“これから”のリネージュ。現役プレイヤーはもちろん,かつてアデンの地を駆け抜けた冒険者もぜひ目を通してほしい。
「リネージュ」公式サイト
「リネージュ」の「20TH ANNIVERSARY」特設サイト
日本サービス開始から20周年を迎えて
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは「リネージュ」の日本サービス20周年,おめでとうございます。現役プレイヤーにとってはお馴染みのお二人ですが,あらためて「リネージュ」との関わりを教えていただけますか。
川南 巌氏(以下,川南氏):
2004年のエヌシージャパン入社当初から「リネージュ」に携わってきました。その後,日本運営プロデューサーの任に就き,2018年に「リネージュM」(iOS / Android)の運営へと異動したのですが,思い返してみると14年近くも関わっているんですね。
イ・ジョンウォン氏(以下,イ氏):
私は2016年に入社し,「リネージュ」のアシスタントPM(プロジェクトマネジャー)を務めていましたが,川南の異動に伴い,日本運営プロデューサーを引き継ぎました。
4Gamer:
近年はスマホで遊べるシリーズタイトルも増えたことで,“リネージュブランド”は確固たる存在感を放っていますが,オンラインゲームの黎明期を知る“元祖”リネージュは20周年の節目を迎えましたね。
川南氏:
20年間,運営を続けられるMMORPGは本当に稀有な存在です。黎明期のMMORPGが持っていた雰囲気,あの頃の興奮を後世にもしっかりと残していきたいですね。
イ氏:
「リネージュ」は学生時代,ネットカフェで熱心に遊んでいたゲームです。当時はまだ,お世辞にも「プレイヤーに優しいゲーム」とは言えない部分がありましたが,ネットカフェで隣りの席に座っていたお兄さんにいろいろと教わりながら遊んでいました(笑)。そんな思い出深いゲームに運営プロデューサーとして携わっているのですから,やはり感慨深いものがあります。
4Gamer:
歴史を感じる話です。ちなみに,川南さんもプレイヤーとして「リネージュ」を遊んでいたのでしょうか。
川南氏:
日本でのβテストが行われていたときにプレイを始めました。ただ,正式サービス開始のときには遊んでいなくて,しばらくしてから再開した形なんです。βテストからプレイしている皆さんが「正式サービスに切り替わるときが,最もカオスで面白かった」とよく言っておられるので,その時期を経験していないことは残念ですね。
4Gamer:
なるほど。その数年後にはサービスチームに加わっているわけですから,縁があったのでしょうね。
川南氏:
当時,さまざまなMMORPGが世に出ていましたが,担当タイトルであったということを差し引いても「リネージュ」における思い出が最も色濃く残っているように思います。
4Gamer:
差し支えなければ,その体験を聞かせてください。
川南氏:
その頃は土曜の夜に仲間と集まって,日曜の朝まで遊ぶというのが習慣になっていたのですが,解散直後に100人規模で戦うボスを発見してしまったんです。耐久力は高いけれど,攻撃力はそれほど高くないボスだったこともあり,その場にいた数人で気軽に殴り始めたんですが……。
4Gamer:
“黎明期のMMORPGあるある”に発展しそうなシチュエーションです。
川南氏:
仲間に連絡をして人数を集めたりしたものの,タンク役が「お腹が減った」とかいいながら抜けちゃったりして……。結局,終わったのは昼過ぎでしたか,あれは大変でした(笑)。僕はバフ(強化)役だったので,お腹が減っても眠気があっても抜けることができなかったんですよ。
それは印象的なエピソードですね(笑)。今でこそSNSツールで仲間と気軽にコミュニケーションを図れますが,当時のコミュニティは「チャット」がメインでした。振り返ると不便ではあるものの,チャットを通じて体験できるコンテンツの面白さに衝撃を受けました。
川南氏:
「リネージュ」はリアルの生活と密着したゲームでしたね。「攻城戦があるから,飲み会の誘いを断って早めに帰宅する」という人も多かったと思います。ゲーム仲間なんだけど,ゲームとは関係のないチャットをするだけでも,とにかく面白かった記憶があります。
イ氏:
「リネージュ」は“狩り”がメインなので接続時間が長くなりがちですが,手が空いている時間はまめにチャットをしますよね。
4Gamer:
ひたすら敵を倒して経験値を稼ぐ狩り自体にも,みんなが熱中していました(笑)。経験値のバーがちょっと増えるだけでも興奮したりして。
川南氏:
「あの狩場は効率がいいらしい」といった情報を,仲間と共有するのも楽しかったですね。すでに情報が出回っていて,実際に行ってみると混雑しすぎて稼げないこともありましたが(笑)。「“狩り効率”を考えてプレイするほうがクール」という風潮もありましたし。
イ氏:
狩りの最中には予期しないハプニングが起きたり,敵対勢力のプレイヤーと接触したりすることが頻繁にあったので,狩りに飽きるなんてことはありませんでした。先ほど「リアルの生活と密着している」という話がありましたが,「リネージュ」に接続すれば,顔も本名も知らないけれど,いつでも仲間に会えることが楽しかったのかなと。
川南氏:
そうですね。私も毎日のようにログインしていましたが,仲間たちも毎日いましたから(笑)。リアルの友人たちよりも,「リネージュ」の仲間とのほうが話している時間は長かったと思います。
20年間,プレイヤーに愛され続けている理由
サービスチームとして,印象に残っているエピソードはありますか。
川南氏:
入社当時は不正対策やカスタマーサポートを担当していたのですが,当時のこともよく覚えています。日々増えていくBOTを見つけては,対処していくわけですが,長く続けていくとコツを覚えます。ゲーム内マネーの流れをチェックして,トレード記録からお金を一手に集めている胴元を見つけ出すんです。膨大なデータとの戦いは大変でしたが,やりがいはありました。
4Gamer:
そうした地道な作業のおかげで,オンラインゲームは成り立っていたんですね。
イさんは日韓のプレイヤーどちらもご存じだと思いますが,日本のプレイヤーの傾向について聞きたいです。
イ氏:
日本ではPvPサーバーより,NON-PvPサーバーの人気が高いです。少なからずプレイヤー同士の戦いは勃発しているものの,PK(プレイヤーキル)ではなく,攻城戦のようにルールを設けているほうが受け入れられていますね。韓国のNON-PvPサーバーには人が少ないので,正反対です。
川南氏:
日本にはPKを好まないプレイヤーが多いことは認識しています。コンシューマ向けRPGに親しんでいる人が多いからか,ほかのプレイヤーに勝ちたいという欲求より,自分のキャラクターをとことん育てることを目標にしている人が多い傾向がありますね。
4Gamer:
日本で20年ものあいだ,多くのプレイヤーに「リネージュ」が愛され続けている理由は何だと思いますか。
川南氏:
毎日やらなければいけない“日課”がほとんどなく,ゆるく遊び続けられるのが“リネージュらしさ”かなと思います。狩りをして,レベルを上げる。とにかく狩りがメインになるので,数日,数か月,数年休んだとしても,いつでもすぐに復帰できることが大きな魅力です。
MMORPGはコミュニティが大事であることは言わずもがなですが,「リネージュ」におけるコミュニティ「血盟」には,ほかのMMORPGにはないユニークな特徴があります。君主を中心にしてプレイヤーが集まるわけですが,血盟同士のつながりや衝突が筋書きのないドラマを生み,ゲームのストーリーとは違ったところで物語が紡がれていく。長くログインしている人が多いのは,こうした突発的に生まれる物語の当事者になりたいという気持ちがあるからでしょうね。
4Gamer:
確かに……。「リネージュ」の思い出と言われて頭に浮かぶのは,ストーリーの一場面よりも,ほかのプレイヤーと時間を共有して得られた体験のほうが多いです。
20年間,サービスを続けられたのはプレイヤーの皆さんがあってのことです。もちろん途中でゲームから離れてしまった人もいるでしょうが,サービスチームとしてはいつ戻ってきても昔と変わらず,思い出深い場所である「リネージュ」を残していくことが大きな命題です。プレイヤーの方から「NCのゲームはサービスが終わることがなくて,安心して遊べる」と言われることもあるのですが,その期待を裏切らないように頑張ってまいります。
イ氏:
初めてプレイしたMMORPGが“故郷”のような場所になっている人もいるでしょう。今後もできるだけ変わらずに,サービスを続けていきたいと思っています。
4Gamer:
「リマスター」アップデートではグラフィックスが向上したり,PSS(プレイサポートシステム)の自動狩りを導入したりと,時代に合わせた進化をしていますが,面白さの本質は変わっていませんね。
イ氏:
そのように言っていただけると嬉しいです。ただ,定期的にアップデートを継続していくことも重要です。最新のアップデート「アデン激変」(3月2日実施)はレベル90台をフィーチャーしたもので,「100レベル変身」をはじめとする100レベル向けコンテンツの導入も予定しています。
川南氏:
僕が「リネージュ」を担当していた頃は,トップ層がレベル88前後でしたね。レベル90台と聞くと,時代が動いていることを実感します(笑)。
イ氏:
以前はアークパスというイベントがあって,チュートリアルが終わるとレベル54,そこでもらえるアイテムを使ってレベリングをすると1か月弱でレベル70まで行けましたが,今回はこれをバージョンアップした感じですね。今回のイベントでは、参加するとレベル87まで一気に駆け上がれるようになっています。レベル90から入れるダンジョンもありますから,格段にレベリングしやすくなっています。
4Gamer:
先日の公式放送「20周年記念! しゃべりね」を拝見したところ,プレイヤーの皆さんは狩場の調整を気にしているようですね。
イ氏:
細かい調整によって,1日の狩り効率が0.1%変動すると,月や年単位では入手経験値に大きな差が生じますから,狩場の調整は慎重に行っています。また,プレイヤーの皆さんからサーバー統合に関する要望もあるのですが,こちらも慎重に検討したいと思います。
4Gamer:
20周年という節目を迎えましたが,これからの運営方針を教えてください。
イ氏:
目指すところは「変わらない面白さ」です。現在,プレイされている皆さんに評価していただいている要素はそのままに,しっかりとコンテンツを増やしていく形が理想ですね。
4Gamer:
川南さんが現在,担当されている「リネージュM」はいかがでしょう。
川南氏:
「リネージュM」の日本サービスは今年5月で3周年を迎えますが,ログアウトをしても自動狩りを継続する機能が好評です。PC版「リネージュ」をプレイしていたけれど,まとまった時間が取れなくなって離れてしまった人も少なくないと思いますが,そうした方にも喜ばれています。
形は変われど,MMORPGの醍醐味はしっかりと感じてもらえるタイトルになっているので,「大人のためのMMORPG」として,かつて熱中した世代に向け,アピールをしていきます。
4Gamer:
これからも変わらない面白さを追求しつつ,さらに歴史を積み上げていくことに期待しています。本日はありがとうございました。
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