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[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状
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印刷2007/09/07 20:28

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[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状

画像集#001のサムネイル/[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状
7月のE3 Summit,8月のGames Convention,そして9月は今回のAGDCと,ここのところSundi氏と共に世界中を飛び回るスクウェア・エニックスの田中弘道氏。今回は,英語を駆使しての基調講演だった
 スクウェア・エニックスのエグゼクティブ・プロデューサー,田中弘道氏が,オースティンで開催中のオンラインゲーム開発者会議AGDCで「Design for Global Entertainment: Launching Final Fantasy XI」(世界規模のエンターテイメントを満たすためのデザイン:ファイナルファンタジーXIがローンチするまで)というタイトルでの基調講演を行なった。また,田中氏と入れ替わる形でSage Sundi氏が登場。RMT(リアルマネー・トレード)業者に対するタスクチームの結成と活動内容を報告した。

 田中氏は,20年間ファイナルファンタジーに携わってきた経験から過去を振り返った。初めて100万本を記録したのは「ファイナルファンタジーIII」(1990年)においてだそうだが,そこから現在に至るまでミリオンセラーであり続ける同シリーズを軽く紹介。なかでも,今年でローンチから5年を迎えた「ファイナルファンタジーXI」は,開発期間を含めるとシリーズの歴史の4分の1を占める,スクウェア・エニックスにとってはかけがえのない作品であることを強調した。
 ファイナルファンタジーXIは,クロスプラットフォームでの開発/運営に成功した初めてのMMORPGである。しかも,欧米の一般的なMMORPGよりも開発期間はずっと短く,「クロノクロス」「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」「パラサイト・イブ」などの開発メンバーを中心に新チームを結成したのが1999年の末。そこから2001年末にはパブリックβに突入し,2002年の5月にはPlayStation 2版のリリースに漕ぎ着けている。
 その後,日本語のPC版を同年11月にリリース。さらに「ジラートの幻影」(2003年11月),「プロマシアの呪縛」(2004年10月)と拡張ディスクを1年ごとに発売した。その後は1年半周期に切り替わり,「アトルガンの秘宝」(2006年4月),そして「アルタナの神兵」(2007年冬)のリリースが控えている。ちなみに,Xbox版は中止されたものの,アトルガンの秘宝がリリースされたのと同じ頃に,Xbox 360のサービスが始まった。現在では,全プラットフォームを通じて50万アカウントという,世界的な人気MMORPGの一つである。
 ファイナルファンタジーのグローバル化に不可欠だったのが,自動翻訳機能の導入であると田中氏は説明する。これにより,日本語版と英語版を利用したプレイヤーが,世界を共有できるという強みを生み出したのである。「ウルティマ オンライン」が翻訳機能を導入した先駆けではあるものの,地域によってプレイヤーの優先サーバーが決まっていた。この違いにファイナルファンタジーXIの開発理念が見え隠れする。「他国の人とプレイすることの楽しさ」が,本作のユニークフィーチャーでもあるわけだ。
 また,2007年3月にはフランス語とドイツ語版をリリース。長きにわたるゲーム文化を持つ日本,北米,ヨーロッパ3か国(イギリス,フランス,ドイツ)という地域でのサービスが本格的に始まっている。フランス語/ドイツ語への開発にも2年という年月が費やされたが,4か国語になった今後も全言語版の同時アップデートを行うという。ファイナルファンタジーXIの強みが一層引き立ちそうだ。
 さらに,この“世界に散らばるゲーマーの一括統制”は,日本,イギリス(欧州),北米の3か所に7〜9時間ずつの時間差があるため,サーバーを共有するうえでの負担にならない。さらに,サーバーがほとんど使われない“デッド・タイム”がなく,非常に効率良く運用できているそうだ。
画像集#002のサムネイル/[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状
「Final Fantasy XI: Wings of the Goddess」とは,「アルタナの神兵」の英語タイトル。今冬にはアルタナの神兵の4か国語版が世界同時リリースされることになっている
画像集#004のサムネイル/[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状
ファイナルファンタジーXIでは,32のゲームワールドが稼動し,一つのワールドには1万5000から2万人のプレイヤーが同時にアクセスしている。画面右下のグラフでも分かるが,現在のところはEUからのアクセスはアメリカの陰に隠れる形になっており,フランス/ドイツ語圏での市場開拓に期待がかかる

画像集#003のサムネイル/[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状
世界中を移動し続けているという点では,田中氏以上に忙しそうなのがSage Sundi氏だ。2005年末にRMT業者の活動を追跡/分析することを始めたという
 さて,ここまで講演を行った田中氏に,「日本,ロサンゼルス,ロンドンを股にかける,“飛行機の中に住む男”」と紹介をうけて登場したのがSage Sundi氏だ。同氏は,ウルティマ オンラインの日本地域マネージャーを経てスクウェア(現スクウェア・エニックス)に移籍し,現在はファイナルファンタジーXIのグローバル・オンライン・プロデューサーという役職にある。一時期,同作に蔓延していたRMT業者と戦う“スペシャルタスクチーム”のリーダーとしても活躍しており,当サイトで最も登場回数の多い開発者の一人であることは,読者の皆さんならご存じだろう。

 この後半の講義の内容は,「スクウェア・エニックスが,いかにしてRMT関連活動を取り締ったか」というものである。Sundi氏は,まずチームが問題とするRMTを「ゲーム経済にインフレを引き起こし,ファーミングにより狩り場を占拠し,不法なツールを使用する“ほかのプレイヤーのゲームプレイに悪影響を及ぼす存在”」と定義付けた。スクウェア・エニックスでは,RMT業者の仕事を,「Hunter」(ゲーム内通貨とアイテムの集め役),「Bank」(Hunterの集めた資金を蓄積する),そして「Front-End」(RMTサイト運営や客引き係)にわけ,「追跡していくと,結局数団体のBankが独占している状態に行き着く」のだという。そしてこの金(ギル)が,北米や日本のプレイヤーへと流れていくのである。
 これまでにもSundi氏が公言してきたように,Front-EndやBankを見つけ出してアカウントの強制解約を行っても,実際に悪さをするHunter達が参入を諦めたくなるほど締め付け続けなければ,何度でも帰ってくるのだという。しかし,2005年後半から急激に増加し,2006年前半に150を超えていた,ギルを取り扱うRMTサイトは確実に減少し,現在では50を少し超えるほどまでになったという。2006年11月の時点で6000人は超えていたと見られるHunterも,現在では90%が去ったことが確認されているとの成果を報告して,Sundi氏は再び田中氏にバトンをタッチした。
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2005年後半以降,急速にRMT業者の活動が悪化しているのが分かる
画像集#006のサムネイル/[AGDC 2007]スクウェア・エニックスの田中弘道氏とSage Sundi氏が語る,「ファイナルファンタジーXI」の国際化と現状
Sundi氏は,現在までに90%以上のHunterがゲームを去ったと報告

 スクウェア・エニックスのファイナルファンタジーチームの今後だが,近々新しい発表があることが知られている。White Engineという名称で発表されたゲームエンジンは,異なるプラットフォームでも共有できるミドルウェアやツールを独自開発したものだ。
 田中氏は最後に,「クロス・プラットフォーム,クロス・リージョン(地域)」と解説するその新型エンジンは,もうすぐ準備が整うと話し,今回の基調講演を締めくくった。
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