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[TGS 2006#10]「1チップMSX」が登場したD4エンタープライズのブースを訪問
1983年に登場したMSXは,発売からしばらくはそれなりの成功を収めたものの,共通規格というコンセプトがかえって仇になり,際限のない機能向上を続けるPCと機能を特化したコンシューマ機の間に挟まれて静かにフェイドアウトしていったのだ。
だが,そのオープン性と8ビットという手頃なハードウェアには奇妙な訴求力があり,発売終了後も数多くのファンが「MSXの火を消すな」とばかりに地道な活動を続けていたのである。おそらく,MSXには「生産中止後に最もファンのついた機種」賞を贈ってあげてもいいんじゃないと思うが,誰に贈っていいのかはよく分からない。
「プレイステーション3の前で8ビットのゲーム機を展示しているのは我々だけでしょう」と同社のプロジェクト運営管理を担当する清水氏が笑うので,ふと振り返ってみると,そこにはSony Computer Entertainmentの「これでもか!」といわんばかりの超巨大ブースが。ごもっともです。
もともとこれは,MSX Associationという非営利団体というかファンクラブが開発したもので,1983年にMSX規格を提唱したアスキーが販売する予定だった。しかし,予約台数が採算に乗るために必要なだけ集まらず,お蔵入りしていたもの。それがこのたび,めでたくD4エンタープライズから発売される運びになったというわけである。餅は餅屋というか,販売先を探していたMSX Associationと,レトロゲームの配信側であるD4エンタープライズががっちりタッグを組んだわけだ。
展示されていたのは開発途中のバージョンだが,予価1万9800円,5000台限定で2006年内には発売される予定であり,ネットの予約販売のみとなっている。詳しいことは,1チップMSXの公式サイトをチェックしよう。
基本的に同製品はMSXマシンの所有者を対象にしており,コントローラなどはついていない(PS2用のキーボードは接続可能)。ただ,ゲームのカセットを挿すスロットのほかにSDメモリカードが使えるので,MSX BASIC(というのがあったんですよ)などで作った自作ゲームを保存することは可能だ。D4エンタープライズでは,SDメモリカード用のMSXソフトのダウンロード販売のほかに,カセットそのものを販売することも考えているが,具体的にはまだ何も決まっていないとのこと。
それにしても,あのMSXと同等の性能がたったの1チップに収まるとは,まさに電子工学の長足の進歩を目の当りにする思い。けれど,その高度な半導体技術を利用して作られたのがなぜかMSXで,ブースで実演されている「グラディウス」に,技術の進歩を見に来たはずの人(大半はちょっと歳が上)が足を止めて見入っているのである。だからゲームショウって面白いや。(松本隆一)
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